2016年12月28日水曜日
1227 らくごカフェに火曜会OB会
小せん「三人無筆」
力の抜けた軽妙な語り口だが、ちょいちょい噛むのが引っかかる。
文菊「夢金」
何処かで聞いたのだが思い出せず。オチが違ったのでデジャブではないはず。金玉を掴んで目が覚めるオチより、船屋の親父のぼやきで終わるこちらのほうが好みだ。
改めて、文菊の語り分けが鮮やか。侍の低い声がぞっとさせる。
中入りを挟んで再び文菊「安兵衛狐」
幽霊の女とか、狐の化けたのとか、女に色気がある。
小せん「ふぐ鍋」
上方でもよくかかる噺だけれど、ちょっと勝手が違った。
2016年12月26日月曜日
1225 古今亭文菊独演会@なかのらくご長屋
林家たま平「牛ほめ」
上方でもよくかかる演目だが、江戸のためか微妙に異なる。おじさんの家を褒めに行くよう勧めるのが父親で、馬鹿さ加減を嘆いているとか、お小遣いか5円でなく50銭だとか。
古今亭文菊「我慢灸」
マクラで、上方の話しをするのでどきり。私のためでもあるまいが。曰く、大阪には上方落語に出てくるような人がまだいて、「何言うてけつかんねん」(←正確に何と言ったかは忘れた)みたいなことを言う人がその辺の路地裏にいそう。東京の落語家は「するってえと」とか言うんですかと聞かれたが、さすがに普段からそんな言葉遣いはしない。江戸っ子は噺の中だけ、とのこと。上方に勢いがあるのかは?だけど、そう思ってくれているのはありがたいことかも。
本編は、お灸を我慢する男の顔の変化が絶品だった。
「芝浜」
去年聞いた談春のに比べるとあっさりしているようにも思ったが、最後はうるっときた。派手さはないのだけれど、しみじみええ噺だった。余韻が深くて、どうやって落ちにつなげるかとハラハラしていたが、取って付けたようだったかも。(だからと言って、オチのためにこの風情を無しにして欲しくはないのだけど)
1225 十二月大歌舞伎 夜の部
「二人椀久」
勘九郎の椀久に玉三郎の松山。玉三郎が幽玄の美しさ。
「京鹿子五人道成寺」
玉三郎と勘九郎、七之助、梅枝、児太郎の若手4人の共演が目に艶やか。所化も総勢20人で、花道の出では端から端まで埋め尽くすほど。
まず花道から登場するのは七之助。可憐な娘の風情に時折鐘のほうを見つめ、秘めた思いをうかがわせる。すっぽんから勘九郎が現れ、2人で踊る。勘九郎は娘らしい美しさには欠けるが、所作で魅せる。
勘九郎がすっぽんから引っ込み、七之助1人が舞台中央でひと舞。玉三郎に交代すると、やはり格の違い。
その後、5人での踊りは華やかどこを見ればいいのか迷う。前の方の席にしたのだが、2階席あたりから引いてみるほうが正解だったかも。それにしても、玉三郎の美しいこと。さすがに年上には見えるのだが、せいぜいお姉さんといったところ。親子ほども年の離れた若手と並んで驚異的だ。
児太郎、梅枝それぞれにもソロの場面があり、最後は鐘の上から玉三郎、勘九郎、七之助、梅枝、児太郎と並んでの幕切れ。
2016年12月12日月曜日
1211 日本・シンガポール・インドネシア 国際共同制作「三代目、りちゃあど」
中村壱太郎が女形の発声、所作でリチャード三世を演じ、男性が女装し、女優が髭面の扮装で登場。日本語、英語、インドネシア語が入り混じり、性別も国境も曖昧模糊となったような舞台。インドネシア語はちんぷんかんぷんなので、字幕を見なければならず、1人が複数の役を演じることもあり、最初はだれが誰だかわからず混乱した。だんだん慣れてはきたけれど。
全体的に白っぽい衣装で、白塗りの顔に蛍光ピンクの口紅。暗がりで浮かび上がるしかけなのだが、違和感が拭えない。シェイクスピアの茂山童司は狂言風のせりふ回し、弁護士=シャイロックをシンガポールの女優、ジャニス・コーが英語で演じ、法廷シーンが引き立っていた。一方、野田秀樹の言葉遊びというかダジャレのセリフは英語にしてしまうと意味が薄まると感じた。孟宗竹と妄想、松と待つ、モーソーバンブーやパインになったら意味が違う。英語のセリフを聞きながら、日本語字幕で理解するって余計な手間だ。
江本純子は短髪に髭に違和感がなく、男の人かと思ったほど。たきいみきは立ち姿が美しい。久世星佳が喋ると舞台に引き込まれる。
インドネシアの影絵師イ・カデック・ブディ・スティアワン。影絵の精巧さに反して朴訥としたルックス、人形を持ち替えるときのつたなさが微笑ましい。
1211 太鼓×歌劇「大阪城パラディオン―将星☆真田幸村―」
OSKと宝塚歌劇のOGと和太鼓の打打打団天鼓のコラボ。戦国武将ゲームのような衣装で、いい意味でB級感あふれる。
幸村を桜花昇ぼる。華のある人なのだが、衣装が重いのか動きにキレがなかったのが惜しい。梯子を上ったり、客席に下りたりするのがもたついて見えた。
後藤又兵衛の鳴海じゅんがやんちゃなキャラづくりが奏功して印象的。塙団右衛門の未央一が狂言回しのような役回りで客席を沸かせていた。エンターテナーだ。淀君のこだま愛、九尾の狐にとりつかれているという設定で、狐っぽい手振りなど。娘役トップらしく存在感は格別だった。
2016年12月10日土曜日
1210 繻子の靴 四日間のスペイン芝居
30分の休憩を3回挟んで、1日約2時間の芝居を4日ぶっ続けで上演。文楽や歌舞伎のような観劇体験だった。
膨大なセリフ劇で半ば朗読劇のよう。衣装は着けているが、大道具はほとんどなく、3階状の舞台に映像を映して場面転換するのだが、星空や草原が動くのが船酔いのようで気持ち悪い。
ヒロイン、プルエーズの剣幸が圧巻で、1~3日は内容はよくわからないのだけれどセリフに聴いているのが心地よく、長さを全く感じさせなかった。ペラージュほかの阿部一徳も上手かった。壮大なすれ違い恋愛劇なのだが、共感はほとんどできず。でもなんだか引き込まれた。
一方、剣の出ない4日目はしんどかった。造形芸大の舞台芸術学科の卒業生が主要キャストで出ていたのだが、長い場面を引っ張るには力不足。何人か、狂言風の発生をしているなと思ったら、大蔵流の狂言師らしい。茂山七五三、宗彦、逸平が出てくる綱引きのシーンもなんだか退屈だった。
1209 iaku「車窓から、世界の」
3人の女子中学生が飛び込み自殺をした新駅のホーム。中学の副担任、PTA副会長、ガールスカウトの指導者が彼女らのお別れ会に向かうところ、列車の運休で足止めを食い、彼女らの死に思いをはせる。大阪のおばちゃんらしく「常識」を振りかざす副会長や、仕事に疲れが見える中学教師、冷めたガールスカウトなどのキャラ設定が明確で、絶妙な間の会話にはおかしみがある。
中学生が傾倒していた同人誌漫画が原因だというのだが、作家がいかにもなオタク風で中学生が「神だ」なんて崇めたてるとは思えないのと、ピュアな恋愛ストーリーに思い入れるのはいいとして、ガラっと作風が変わってグロテスクな自殺の描写がされたらそこで醒めてしまうのではないか。今一つ納得できない。もうちょっと突っ込んでほしかった。
中学教師が漫画家に向かって「甘えるな!」と啖呵を切るところはすっとした。
2016年12月9日金曜日
1208 燐光群「天使も噓をつく」
ママたちによるメガソーラー反対運動が、実は自衛隊の誘致だったと分かり、基地反対運動へと変貌していく。実際の、沖縄の宮古島や石垣島で起きている運動をモチーフにした作品で、基地反対運動や自衛隊の活動範囲拡大への懸念などがダイレクトに取り入れられている。ワンマンで野党の質問をのらりくらりとかわす市長が安倍総理と重なる。すごく現代を象徴した作品だなと思う半面、主義主張がそのままの形で盛り込まれているので、芝居として昇華されていないようにも感じた。離島の防衛を強化することが、逆に中国を刺激することになるのでは。国境警備なら海上保安庁で十分。なぜ勝手に安保関連法を決めてしまうのか。などなど、今の政権への苛立ちはよくわかるが、ではどうするのか。「戦争で死者がでるくらいなら、占領されたほうがまし」みたいなセリフがあったが、それでいいのか。占領されて今のような人権が守られる保証などないのではとモヤモヤした。
ドキュメンタリー映画監督役に竹下景子。思っていたよりも普通のたたずまい。役者たちは専門用語満載の膨大なセリフをよくこなしていた。
2016年12月7日水曜日
1204 国立劇場開場50周年記念 通し狂言「仮名手本忠臣蔵」第二部
七段目
「祇園一力茶屋の段」
九太夫の三輪、伴内の靖、一力亭主の始の3人の太夫だけが床にいて、三味線なしの素語り。下座から細棹の音。仲居の声は舞台上手の袖から。店の奥からの呼びかけはそのままでいいが、仲居の人形が店先に出てからも遠くから聞こえるのはいかがなものか。
盆が回って、由良之助の咲と清介。持って回った口振りは由良之助のキャラには合っている。床下で聞いているのに声のチカラが弱いよう。喉をゴロゴロいわすのも気になった。酔態の表現?
平右衛門の咲甫は下手袖で「待った、待った~!」の呼び止めから颯爽と登場。口跡がいいのはもちろん、裃は□に平の紋に、人形と同じ△の柄がお揃いで、よく目立つおいしい役どころ。人形と並んでいるので、そのまま自ら演技してしまいそう。人形を観ているつもりがいつの間にか太夫ばかり見てしまった。
後半は盆が回って由良之助が英・清治に交代。公演期間の前後半だと思っていたのでちょっとびっくり。清治が聴けるのは嬉しいが、英の語りは咲よりの軽いので由良之助の人物が変わってしまうのはいただけない。
お軽の呂勢は期待通り。特に、平右衛門とのやりとりで、父と夫勘平の死を知ってからのクドキが秀逸。簑助の人形もまた、艶かしいことといったら!2階から降りるところではハラハラさせられたが、ほかは危なげもなく。ここの咲甫は床で呂勢の隣に。
八段目
「道行旅路の嫁入」
五枚五梃の華やかな演奏。が、津駒に小浪はちょっと似合わないのでは。可憐さに欠ける気がする。戸無瀬の芳穂はよく合っていた。
和生の戸名瀬がしっとりとした風情。小浪は勘弥が初々しく。
九段目
「雪転しの段」
松香・喜一郎。
「山科閑居の段」
千歳の語りが素晴らしかった。語り出しの第一声からぐっと引き込まれて、そのままのテンションで最後まで掴まれたままだった。お石の本心を隠した様子、戸名瀬の武家の奥方らしく抑えながらも小浪かわいさの必死の訴えが胸を打つ。最近耳についた変な癖も封印されていて、文句なしに今公演で一番のでき。感心して千歳の顔に見とれていたら、それを見ていた富介の視線に気づいてばつが悪かった。
なので、後半の文字久・藤蔵がねえ…。決して悪くないどころか、当人比ではかなりよかったはずなのに、千歳・富介との落差がつくづく残念。本蔵が中心になってくるので、武張って語るのは正しいのだろうけど、急に場面まで変わってしまったようだった。
十段目
「天河屋の段」
睦・清友。25分ほどだろうか、思っていたよりも長く、聞き応えがある。睦は前半よりは断然よく、「天河屋義平は男でござる」も聞かせた。倅の声が掠れるのが残念。
人形は、天河屋義平(玉志)が箱の上にどっかと座るところで左遣いが邪魔になってもたついていた。改善を期待したい。
十一段目
「花水橋引揚の段」
芳穂、希、文字栄に団吾。
10分ほどの短い場面だか、これがあると口直しというか、気分良く帰れる。
1203 国立劇場開場50周年記念 通し狂言「仮名手本忠臣蔵」第一部
大序
「鶴が岡兜改めの段」
御簾内で小住→咲寿→亘の順か?三味線は清允、燕二郎、錦吾、清公だが順番は不明。
小住の声が枯れて辛そう。
「恋歌の段」
始の師直、南都の顔世、希の若狭之助に龍爾。
始は声が立派で大きさがある。希はきりっとして若侍らしい。
二段目
「桃井館本蔵松切の段」
睦・錦糸。
三味線は危なげなく的確だが、睦の若狭はキレが悪い感じがした。相性悪いのか。
三段目
「下馬先進物の段」
希・清公。語り分けがくっきりと聞きやすい。
この場に出てくる伴内から出遣い。賄賂を渡すところで三味線が調子はずれなのはそういうものなのか。
「腰元おかる文使いの段」
三輪・喜一郎。
この場の判官は水色?の裃。こっちの色のほうがイメージにあう気がする。
「殿中刃傷の段」
津駒・寛治。
師直が憎らしいのだが、なんだかコミカルな風味があってかわいさも。ちょっと声が小さく感じた。
幸助の若狭之助は人形よりも先に主遣いが目線をつけすぎ。和生の判官が緊張感があっていい。
「裏門の段」
芳穂・清馗。よく通る声。伴内が軽快でおかしみがあり、勘平、おかるの語り分けもくっきり。
四段目
「花籠の段」
呂勢・宗助。
人形が板付きで幕開き。呂勢の九太夫が憎らしいのだが、いじわるを楽しんでいるよう。
「塩谷判官切腹の段」
咲・燕三。
素塗の見台が静謐な雰囲気。咲はちょっと持ってまわった語り振りで、由良之助の「ハッ」が吐きそう。
和生の判官がやはりいい。
検死役が要を外した扇を背中に乗せるのはどういう意味?
「城明渡しの段」
亘・錦吾。
五段目
「山崎街道出会いの段」
小住・寛太郎。高音が苦しそうだが、堂々とした語りぶり。
「二つ玉の段」
靖・清丈。胡弓に燕二郎。靖が定九郎の非道ぶりを活写。
人形は簑紫郎の定九郎がきっぱりしていていい。が、やはりこの人は黒羽二重ではないほうがいいように思う。
六段目
「身売りの段」
咲甫・清志郎。咲甫は上手いのだが、作りこみすぎているようにも。
「早野寛平腹切の段」
英・団七。熱演なのだが、声の力強さが足りず、感動が薄いのが残念。与市兵衛女房の哀れさはよく出ていた。
勘平は清十郎。珍しい立役だが、スマートな感じ。与市兵衛女房の紋壽が休演で勘壽が代役。
2016年12月2日金曜日
1202 虚空旅団「誰故草」
戦争と放射能汚染で郊外での共同生活を強いられた女たち。取り立てて大きな事件が起こるわけでもなく、会話だけで進むのだが、90分を飽きさせない。
東日本大震災と福島の原発事故を感じさせる設定で、今の不安を感じさせるが、いたずらに不安をあおるのではなく、現状に根を下ろして生きていこうとする。
1201 吉例顔見世興行
南座が閉鎖中で先斗町歌舞練場での上演。こじんまりとした劇場は古い小劇場にも似て舞台と客席が近くてお得感がある。ただ、第1部は花街の総見があって華やかだったが、一般の客席は普段着の人が多く、いつもの顔見世のような華やいだ雰囲気はなかったような。
第一部
「実盛物語」
愛之助の実盛は仁左衛門に習ったせいか、セリフ回しが仁左衛門っぽい。が、まだ板についていない感じもする。子役が上手かったので、こちらのほうが印象的だった。
亀鶴の瀬尾は年齢に合わない老け役で、最初誰だか分らなかったほど。葵御前の吉弥は品格があって美しく、九郎助の松之助もよく似合っていた。小万の友右衛門がごつくてちょっとしんどかった。
「道行旅路の嫁入」
襲名の雀右衛門の小浪と藤十郎の戸無瀬、奴可内で鴈治郎がつきあう顔合わせ。藤十郎と並ぶ雀右衛門の可憐なこと。芝居の終わりに襲名披露の口上があり、藤十郎が披露。
第二部
「車引」
鴈治郎の梅王丸に孝太郎の桜丸、愛之助が松王丸という配役。松王の衣装が外衣が卵色で、中が水色だったり、今まで見た車引とはいろいろと違うところが。
「吉田屋」
仁左衛門の伊左衛門は鉄板だと思っていたのに、期待値が高すぎたせいか精彩を欠いたような。匂うような色香が薄く、陶酔できなかった。夕霧の雀右衛門は美しかったのに。
喜左衛門の彌十郎、おきさの秀太郎は期待通り。
勘当が解けて夕霧の身請けが決まるラストで襲名の口上が。仁左衛門の披露に続き、秀太郎、彌十郎も一言。
「三升曲輪傘売」
石川五右衛門が花街で傘売りをしているという設定の舞踊で、15分ほどの短い出し物。海老蔵がいろいろなところから傘を出して広げるのが手品のようで目に面白い。期待していなかったのに存外楽しめた。
第三部
「引窓」
厳しい条件下で開催された今回の顔見世で一番見応えのある芝居だった。
十次兵衛の仁左衛門が格好いい。が、この芝居の主役は濡髪かも。彌十郎の大柄な体格が相撲取りによく似合う。吉弥は母お幸で、第一部とはまったく異なる老女形も上手い。
「京鹿子娘道成寺」
舞台装置にはいろいろ不自由があったろうに、雀右衛門が奮闘した一幕。最後、海老蔵が大館左馬五郎で登場して花を添えた。
1129 宝塚宙組「双頭の鷲」
轟悠と美咲凛音の共演で、実力のある2人が荘厳な雰囲気を醸し出し重厚な芝居だった。王妃がスタニスラスに惹かれるのがやや性急だったように感じたが、見応えたっぷり。轟は美形だし、歌も芝居もうまいのだが、心奪われないのはなぜだろう?ヴァルレンスタイン公爵の桜木みなとがキリっとしたいい風情。フェーン伯爵の愛月ひかるは長身で威厳があり、出番がもっとあってもよさそう。ストーリーテラーの和希そらはセリフのないときも舞台の端に出たままで、観客いじりもよくこなしていた。
6人の登場人物の芝居をミュージカルにするために、傍観者というか、パパラッチというかの群舞が合間合間に挟まる。不自然ではないけれど、ストレートプレイでじっくり見たかった。
2016年11月28日月曜日
1227 ケイ☆バレエスタジオ
良かったのはパート1の「カントリー・ガーデン」の工藤雅女と恵谷彰。パート2の「ゴットシャルク組曲」は福岡雄大と福田圭吾がコミカルなやり取りを交えながら技を魅せるところが面白かった。パート3の「Gebet」はスピード感のある音楽と振りで見飽きない。一部に矢上恵子が踊っていて大きな拍手を浴びていた。
教室の子どもを躍らせるのはかわいらしく微笑ましいが、あまりたびたびだとうんざりする。
1227 遊劇舞台二月病第薙難回公演 「survive」
人に害を与える熊は殺されるのに、なぜ人は殺されないのか。私には共感しがたい問題意識だ。
LGBTや熊害を絡めてというが、それっぽい登場人物を並べて無理につないだよう。レイプ被害の女、父親に虐待されて男性不信の女、トランスジェンダーの女、熊に仲間を殺された男など、誰もがトラウマを抱えている。サバイブというタイトルなのに、生き残ろうとしているようには感じられず、ただ、生きにくさだけが描かれる。無理やり盛り上げたようなラストでなんとなく片が付いたように見せているが、私には最後まで何が言いたいのかよくわからなかった。90分がとても長く感じた。
2016年11月26日土曜日
1125 五代目旭堂小南陵・四代目玉田玉秀斎~ダブル襲名披露興行
新玉秀斎の縁でジャズミュージシャンがでてくるなど、講談師の襲名らしからぬ様相。
玉秀斎の講談は無難な感じ?
新小南陵は緊張のせいか、硬く力が入っているように感じた。
2016年11月22日火曜日
1121 OSK日本歌劇団「ROMEO & JULIET」
楊琳のロミオが瑞々しい若者というか少年というか、恋に一途なピュアな風情で好感が持てた。正直、この物語はあまり共感できないのだが、このロミオは許せるというか。振り付けがいまいちだったり、物語の運びが残念だったりするのがつくづく惜しい。特にラストの墓場のシーン。ロミオ、ジュリエットそれぞれが死体とデュエットダンスするのだが、「らくだ」のカンカン能みたいで…。あと、手遊びみたいに手を合わせる振り付けがたびたび出てきたのも気になった。ジュリエットの舞美りらは写真より舞台が断然いい。バレエをやっていたそうで、踊りも端正で好印象。
2016年11月20日日曜日
1120 深川秀夫版「白鳥の湖」
ロームシアターのオープニング事業で、京都ゆかりのダンサーが集まった。全体的にレベルが高く、満足度は高い。よかったのは1、3幕で、肝心の白鳥の踊りは私の好みではなかったけれど。
オデットとオディールを別のダンサーにして、冒頭のオデットが白鳥の姿に変えられるところから魅せるのは分かりやすくていい。オデットと王子の出会いなど、心情の変化が分かりやすく表現されていた。
目を惹かれたのが、1幕のパ・ド・サンクの吉田旭。きりっとした踊りが際立っていた。3幕のスペインの踊りもよかった。
王子の青木崇は1、2幕はパッとしなかったが、3幕では高いジャンプや姿勢の美しさに引き付けられた
オディールの矢部希実加は3幕のフェッテが圧巻。トリプルも何回か混ざっていたのでは。
一方、オデットの井澤照予は硬い印象。手足が細くて骨っぽいのと、しなりが少ないせいか。カーテンコールで見せた笑顔は素敵だったのに。
4幕で、オデットと王子が命を捨てるのはいいとして、残された白鳥たちがロットバルトとオディールを倒す展開が理解不能。だったら最初からすれよと思ってしまうのと、2人が死んでからじゃしょうがないでしょうと思う。
1119 Kバレエカンパニー「ラ・バヤデール」
熊川哲也の新演出だが、評価はしがたい。
1場はガムザッティの浅川紫織の印象が強く、恋した男に一直線といった風情。ニキヤの中村祥子との対決はマイムで進行したが、踊りで表現してほしかった。ソロルの遅沢佑介は全く魅力なし。ニキヤが毒蛇に噛まれて瀕死の時にガムザッティの手を取ってしまうあたり、もうニキヤを見捨ててるよね。なのに2幕で後悔してるって変じゃないか?
2幕はニキヤを中心とするダンサーの踊りが幻想的で素敵。中村祥子の踊りも、ピルエットでぐらついたものの、総体としては素晴らしかった。
一番馴染めなかったのが、ブロンズアイドルを神殿が崩壊した最後に出てくるところ。すべてが崩れ落ちたあとの浄化として現れたということだが、神殿はヒンドゥー教なのかバラモン教なのか判然とはしないが、インドの土着宗教なのだとすると、その浄化のためにブッダが出てくるのは別物という感じ。井澤諒の踊りは素晴らしかったけれど。
2016年11月19日土曜日
1118 宝塚宙組「バレンシアの暑い夏」
べたなスペインもの。初演は40年前だそうだから、設定や話の運びが古臭く感じなくもない。
フェルナンドの朝夏まなとが情熱を秘めた男をそれらしく演じ、浅黒い肌の下町の歌手ラモンの真風涼帆も存在感あり。娘役は怜美うららがラモンと同じく浅黒い肌でも褪せない美貌で魅せ、許嫁マルガリータの星風まどかは楚々としたお嬢さんらしさがあった。
ショーは正月公演でもあった「HOT EYES!!!」。実咲凛音がいないので歌はちょっと物足りなかった。
2016年11月18日金曜日
1117 宝塚花組「雪華抄」「金色の砂漠」
「雪華抄」
宝塚では2年ぶりという和物のレビュー。チョンパで銀橋と舞台にきらびやかな和装姿がズラリと並んで圧巻。が、若衆姿が男に見えず、女同士で戯れているよう(まあ、実際そうなのだけど)。
春夏秋冬が足早に移り変わるので飽きさせない。琳派風の背景など、セットも豪華というか派手でキラキラしすぎで眩しい。
安珍清姫をモチーフにした部分では、安珍(明日美)が清姫に恋心を抱いたことに苦悩。清姫(花乃)はぶっかえりで蛇に変化するのだが、なぜか大きなヴェールで隠れての早変わり。せっかくなら歌舞伎のように、見えるところでやったほうがいいのに。
「金色の砂漠」
上田久美子の脚本・演出がよい。生まれついての奴隷という人物が主人に恋したり、野心を抱いたりするかなあというところは疑問だが、そこを除くと人物の感情の流れが分かりやすく、物語に破たんがない。舞台を横切るベールやダンサーで砂漠を表す演出もキレイだった。何より、花乃まりあのタルハーミネは気の強い王女役がはまっている。明日美りおの奴隷ギイは奴隷らしくないのだが、復讐に燃える男という役どころはよかった。王を倒して復讐を果たしても、母は自害し、タルハーミネは砂漠に逃れ、追いかけたギイも砂漠に倒れる。ハッピーエンドでないのは思わせぶりだが、観ているほうとしては爽快感がないかも。
2016年11月13日日曜日
1112 清和文楽「雪おんな」
嶋太夫の熊本地震復興応援公演。口語体なので分かりやすい反面義太夫の調子には馴染まないところもあったが、嶋太夫の語りは健在。美しくも不気味な雪女、純朴な巳之吉、母を慕う娘の心情が豊に表現され、胸を打った。三味線の竹本友清は1回目はちょっと残念なできだったが、2回目の公演では音の響きもよく、なかなかだった。
人形は洗練とは程遠いが、素朴な感じは悪くない。ただ、雪女と人間に化けたお雪の顔があまりにも違うのと、雪女の正体を現した顔が仁王のようなのはいかがなものか。ガブにも通じる般若顔のほうがいいように思った。場面転換は薄暗い暗転のなか、大道具を動かしているのが丸見えで、こういうところも飾らないというか、素朴な感じ?
2016年11月12日土曜日
1111 ミュージカル「バイオハザード」
柚希礼音の退団後初ミュージカル。ソロの歌唱はもちろん、男性とのハモリが新鮮で聞かせた。長い棒を使っての立ち回りは、男役で鍛えただけあって鮮やか。全体的に音楽が良いのと、ダンスが格好良く、エンターテインメントとしては上々。ゾンビが音楽で大人しくなるなら戦わないでずっと歌ってればいいのではという疑問がぬぐえず、最後までモヤモヤ。終盤、リサをかばってゾンビに襲われた男に特効薬を打たないのも??「B型じゃないから」とか、「1人分しかないからダンのために」とか説明がないと。危険なウイルスを持ち出したのが誰なのかが最後まで分からないのは続編に含みを持たせるためか。
セットは無機質で面白みがなかったが、クジラのシーンは美しかった。
2016年11月8日火曜日
1110 庭劇団ぺニノ「地獄谷温泉 無明ノ宿」
鄙びた温泉宿を舞台に東京からやってきた人形芝居の親子と湯治客らの一日の出会いを描く。小人症の人形師をはじめ、盲目の男や太った芸妓、しゃべらない三助など出てくる人がどれも異形で、観ていて常にざわっとした居心地の悪さがある。見たいけど見るのを憚られるようなところ、盲目の男は好奇心を隠さないうえ、異様なほどに怖がる様子が不快感を掻き立てる。露骨にのぞき見する三助がむしろすがすがしく見えるから不思議だ。
宿の帳場、客室、脱衣所、浴室の4面が回り舞台になっていて、箱庭のような作りこまれたセットがすごい。場面転換がスムーズなのも素晴らしい。
1107 笑う門には福来たる~女興行師吉本せい~
藤山直美がたくましい女傑の波乱万丈な人生を活写。船場の御寮さんが、頼りない旦那の夢をかなえようと奔走。家業がダメなだけでなく、好きな興行の世界でも芸人とトラブルを起こしたりと頼りないことこの上ない吉本泰三だが、田村亮は憎めない若旦那という風情。盛りだくさんの内容なので、シーンが細切れで慌ただしく思われるところもあったが、テンポよく楽しめた。何より、暗転前の藤山直美の表情がいいので、次のシーンへの期待が高まる。せいの弟、林庄之助に喜多村緑郎。すらりとした長身でスマートな身のこなしは泥臭い興行の世界にはどうかなというのと、藤山直美と並ぶと兄弟には見えないかも。せいの息子、頴右の西川忠志。浪花の坊といえばこの人という感じだが、この年で学生服を着こなしていたのに驚いた。
夫や桂春団治、頴右などせいの大切な人の死があっさりと字幕で済まされてしまったのがちょっと物足りない。
あと、やたらと登場人物が多いのも煩わしいかも。
2016年11月7日月曜日
1105 永楽館歌舞伎
「信州川中島合戦 輝虎配膳」
思うに、この演目をするには若い座組なのだけど、健闘が光ったという印象。
吉弥の越路は若さが見えるのものの、きっぱりとした佇まいで、武家らしい気丈さに溢れる。
壱太郎のお勝はどもりが不自然だったり、琴を扱いかねて輝虎に当たりそうになったりしていたが、義母を気遣う健気さがあった。
千寿の唐衣は登場から立派な武家の女房。千次郎の直江は若さが頼りなく感じられるところもあったが、無難に。
愛之助の輝虎は重々しさがあった。が、この人って悪人というか敵役だよね?無理難題をふっかけて手打ちにしようとする。最後、命を助けてやるからって、いい人では決してない。自ら好んでやりたい役だろうか?
越路が輝虎から贈られた小袖を「古着だ」と言って突き返すところや、膳を足蹴にされた輝虎が刀に手を掛けんと上衣を次々に脱いでいくところで笑いが。歌舞伎をあまり見たことのないひとも多い永楽館だからなのか、だからってこんなシリアスなシーンで笑われてしまうのは役者の力不足なのか…。あとの口上で、何枚も着ているのは身分の高い人だからと言い訳してたけど。
恒例の口上はいつものように。
愛之助:9年前は夏の開催で暑くてカツラが解け、冷蔵庫に入れていた。11月にしたら今度は寒い。お練りには人口1万人の町に4万人も来た。輝虎は13世仁左衛門や我当も勤めた松島屋にとって大事な役。今回は我当に手取り足とし教えてもらった。
吉弥:7回目の出演で町を歩くと声をかけてくれる。声だけれなく缶コーヒーやウーロン茶も欲しい。コーヒーはブラックで。越路は三婆と言われる難しい役。言われたことを十分にできていないが、千秋楽までによくしたい。
寿治郎:言うべきことは前のこと2人が言ってしまった。
壱太郎:お勝はどもりで難しい役で、まだまだできていない。(恒例のご当地キャラ紹介のあと)豊岡ではふるさと納税も受け付けている。但馬牛など景品が当たる(←と言っていたけど正確には返礼品をもらえる)永楽館のチケットもあるので今年チケットが取りにくかった人はぜひ。
「春重四海波」
松竹新喜劇の演目を取り入れただけあって、バカバカしいくらいの喜劇。
武術指南役に家に婿入りすることになった頼母(愛之助)は娘の波路(壱太郎)とは相思相愛の間柄。祝言の前日、婿入りの条件として波路と剣術の試合をして勝って見せよと言わ たところ、あっさり負けてしまう。諸国を修行し、きっと強くなって帰ってくると旅立つ頼母。
頼母が卜伝流の奥義を極めて帰ってくるのが20年後。さらに、再び試合に負けて再度修行に出、次に帰ってくるのは25年後という気の長さが喜劇らしい。すっかり白髪になった頼母と波路はまるで「じいさんばあさん」のよう。ほのぼのと笑わせたが、新喜劇だったらもっと爆笑だったかもと思われた。あと、時間経過を表す太陽と月のくだりが長く、飽きた。
2016年11月5日土曜日
1104 木下歌舞伎「勧進帳」
国境警備隊のような、黒の上下の番卒たちに囲まれ、椅子の上で体育座りする富樫。タバコをふかして不良少年のような振る舞いには威厳がなく、小物っぽい。番卒たちも「~じゃね?」「ありえねーし」みたいな何とも軽い口調で、関の警備に飽き飽きしている様子。
弁慶が米国人で、日本語は喋れるもののややたどたどしく、アクセントがところどころ違うので、セリフがすんなりとは入ってこない。狙いなのかもしれないが。所作も、日本人ならば自然にできるお辞儀などの動きがどこかぎこちなく、弁慶らしい風格は見られなかった。
義経はすり足などの動きが美しく、気品を感じさせた。この人がいたから芝居が締まった。女優かと思っていたら、トランスジェンダーで女性になったそう。端正な顔に男の声だったのが、義経には合っていた。
2016年11月3日木曜日
1103 ブラック★タイツ「ファウストの檻」
アニメキャラのようなビジュアルにアクションシーンが多く、エンターテインメントとしてのレベルは高い。“イケメン”ぞろいなのも、女性受けしそうだ。
人間関係が複雑で、回想シーンがランダムに挟まれて時間が前後するのがちょっとわかりづらい。
カイン役の加藤慎吾はくっきりした顔だちが舞台映えする。メフィストの野村有志、錬金術師の為房大輔が印象に残った。
男ばかりの芝居ということだったが、カインの恋人であるアベルの姉とのシーンが意外に多く、相手役なしでの芝居で引っ張るのはちょっと無理があったように思う。回想とか、カインとアベルのやり取りとかに盛り込んだほうがよかったのでは。
1102 キンキーブーツ
シンディローパーの音楽がよく、歌唱力のある役者がそろっていて、つい体を動かしてしまう楽しさ。久しぶりに楽しいミュージカルを観た!という気分。
ドラァグクイーンのローラ率いるエンジェルズが美形ぞろいで、ダンスもキレッキレで盛り上がった。
ローラ役のJ・ハリソン・ジーは本人もドラァグクイーンをやっているそうで、ピンヒールでの踊りにも危なげがない。
チャーリーのアダム・カプランがおなかぽっちゃりなのは役作り?あれだけ歌って踊る役者さんとしてはありえない体形だが、役柄には合っていた。
2016年11月2日水曜日
1101 錦秋文楽公演 第2部
「増補忠臣蔵」
前を睦・清友、切を咲・燕三、琴の燕二郎。
睦はつやのある声で掛け合いのときよりもだいぶ良いと感じた。
咲は本調子には届かないような気がするものの、さすがの安定感。琴、尺八も加わって耳に楽しい。
※14日再見
咲の若狭之助は1~2段目の若々しさというか、後先見ない血気盛んな様子と比べるとやや分別のある感じか。この間に人間的に成長したとも考えられるけど。
玉佳が使う井波伴左衛門、タイガースカラーの黒と黄の縞の着物が派手だ。悪そうな顔の玉佳が目についてしまう。
本蔵の玉也が重厚感のある感じ。
「艶姿女舞衣」
酒屋の段の中を希・清丈、前を文字久・宗助、奥を津駒・寛治。
文字久は世話物はあまり合わないよう。
津駒、寛治は安心感があるが、お園のクドキ、あまりぐっと来なかったのはなぜだろう。
簑助の三勝は短い出番ながら印象に残る。お園が勘十郎。
※文字久のお園、悪くなかった。
お園のクドキがあまり胸に響かないのは、貞女ぶりに共感できないせいなのか。親の決めた結婚相手だからといって、愛妾のもとに入りびたりで妻を顧みない夫を「自分が至らないから」とかばったり、「来世では一緒に」とか言われて喜ぶって…。この違和感を覆すだけの語りの力がなかったとも言えるかも。
勘十郎のお園はキビキビとよく動き、しおらしさとかいう感じではなかったかも。
「勧進帳」
弁慶・千歳に富樫・咲甫。7枚7丁の床は迫力があるが、ここまでいるかなあ。
咲甫の出だしが良く、千歳の弁慶も重厚感があってよいなあと思ったが、山伏問答がもったりしている。もっとスピード感が欲しいところ。
番卒の咲寿と小住がわあわあとやかましい。
人形は玉男、玉佳、玉路が3人出遣いで弁慶。花道の引っ込みはうーん。足遣いさん大変そうとは思ったけれど、迫力が今一つ。歌舞伎の真似をしなくてもいいと思う。
※咲甫の畳みかけるような物言いで山伏問答の緊張感は増していたが、千歳の弁慶があまり乗ってこないというか、ゆったりした話し方を保っているのが重しとなっているようで。
和生の富樫がきりっとして、形も決まってよかった。
2016年11月1日火曜日
1101 錦秋文楽公演 第1部
「花上野誉碑」
志度寺の段の中を靖・錦糸、前を咲甫・藤蔵、奥を英・清介。
靖・錦糸は安定感が増してきた。
咲甫・藤蔵、相性はあまりよくない?終始眉間にしわを寄せて演奏する藤蔵。咲甫の語りもぱっとしないような。
英は出だしはよかったが、クライマックスで息切れした感じ。清介の三味線は派手な手で迫力十分。
「恋娘昔八丈」
城木屋の段の前を松香・清馗、奥を呂勢・清治。
期待していなかったせいか、面白かった。呂勢は悪役の喜蔵を楽しそうに演じていて、客席の笑いも呼んでいた。
鈴ヶ森の段は掛け合いで、睦、津国、南都、咲寿、小住、文字栄に喜一郎。
睦が高音でかすれるのは癖なのだろうか。咲寿、小住はうるさい。つられたか。
「日高川入相花王」
三輪の清姫に始の船頭、芳穂、靖、亘・団七、団吾、清丈、錦吾、清允。
日高川に五丁五枚は必要だろうか。
2016年10月31日月曜日
1030 劇団クラルテ「冥土の飛脚」
味のある木彫りの人形は雰囲気があって、独特の世界観を作っている。が、3頭身のような頭に比べて小さい手足はバランスが悪く、子供向けの童話はともかく、近松のような大人の話には似合わないのでは。
八右衛門がええ人で、廓での忠告は忠兵衛のためを思っての行動。忠兵衛は廓に駆け込んだときから為替に手をつけるつもりでいたのを、八右衛門が諭し、それすら振り切って封印を破るという展開。近松の原作には近いのだろうが、忠兵衛に同情はしにくい。
2016年10月30日日曜日
1029 ピッコロ劇団「砂壁の部屋」
健全なイメージのピッコロらしくない、社会の最下層を描いたアダルトな話。脇役たちがニワトリになって話し出す演出がユニークで、設定の悲惨さを緩和していたような。
主人公のユカミは金髪のベリーショートヘアで少年のよう。女性らしい役だと思うのだが、どうしてこういうビジュアルにしたのだろう。
2016年10月29日土曜日
1028 宝塚月組「アーサー王伝説」
珠城りょうの新トップお披露目。堂々とした様はトップらしい風格を感じさせ、愛希れいかとも似合いのコンビだ。 ただ、脚本家のせいか、役者の力量なのかはともかく、アーサー王の異父姉モーガンの美弥るりかや、妃の浮気相手ランスロットの朝美絢のほうが存在感があったような。
愛希れいかの妃は尻軽すぎて、共感できないどころか嫌な女にしか見えないのはヒロインとしていかがなものか。
2016年10月28日金曜日
1027 仮名手本忠臣蔵 第一部
口上人形による配役紹介からスタート。
大序は義太夫に名前が呼ばれると、ややうつむいて静止していた役者が人形のように動き出す。
梅玉の判官は清廉な様子が役らしいが、卵色の装束はちっとキツイのでは。若狭之助の錦之助が浅黄色でより若々しく見えるので、並ぶとどうしても年齢を感じてしまう。
顔世御前は秀太郎。品のある様子は役らしいが、立ったり座ったりがしんどそう。
由良之助は幸四郎。隈取が濃くて悪人みたいだった。
2016年10月27日木曜日
1026 Kバレエカンパニー「シンデレラ」
衣装が洒落ていて、舞台装置も美しく、目に楽しい2時間だった。結構芝居っ気の多い演出で、継母や姉たちの意地悪ぶりが楽しい。中村祥子のシンデレラは、健気な少女を好演。踊りの見せ場はそれほどでもなかったようだが。王子の遅沢はやや華が足りない。
2016年10月24日月曜日
1024 劇団☆新感線「Vamp Bamboo Burn~ヴァン!バン!バーン!~」
かぐや姫の愛を求めて不老不死のヴァンパイアになった青年貴族に生田斗真。平安装束も、現代のヴィジュアル系バンドの格好もよく似合い、生田斗真の美しさを存分に楽しめる。「一千年前から愛してる」とかキャッチャーなセリフや歌詞も効いている。かぐや姫が地球侵略を企むエイリアンだとか、次から次へ吸血鬼になってしまうとか、なんでもありの破茶滅茶ぶりは面白いが3時間はちょっと長い。2時間くらいだったらよかった。
2016年10月23日日曜日
1023 劇団Patch「磯部磯兵衛物語」
若い男の子たちが、ひたすら元気に跳ねまわる。ギャグ漫画が原作だから、筋は大層なものではないし、大げさなキャラクターも漫画らしい。深みや重さは全くないけれど、元気さはいっぱい。
2016年10月22日土曜日
1022 第三回雀林遊会
第一部は落語、第二部は弟勘十郎と清元と文楽の共演。
「たちぎれ線香」はかつて米朝に勧められたという演目。女性が演じる面白さを期待したのだろうか。三林こと桂すずめの噺はぶっきらぼうなくらいサバサバとした話しぶりで、変な色気はないけれど、深みもないような。
清元の「月」で文楽の人形が踊る第二部は、舞台の背景に大きな月。幻想的な明かりとともに美しい舞台だった。
2016年10月21日金曜日
1021 清流劇場「アルトゥル・ウイ」
ヒトラーをモデルにしたというシカゴのギャングがのし上がっていく様を描く。猿のやうな身振りで落ち着きがなく、大物のようには見えないウイが、側近たちの力で次第に支配力を強めていく不気味さ。利用したつもりで飲み込まれていくカルテルのメンバー、気づいたらペストに侵されたいた人々。どこで止められたのか、答えは見出せなかった。
登場人物が多く、関係が複雑なので、背後の壁に役名を出すのは理解の助けになった。が、膨大なセリフを聞き漏らすまいとしすぎて、全体の流れを見失ってしまったかも。もっと構えずに見る方が、カギとなるセリフが耳に残ったのかも。
1021 劇団伽羅倶梨「ペチカ珈琲」
高齢者の集うコーヒーショップが実はグループホームの施設で、客は入居者、店員は介護スタッフという設定。認知症の高齢者の様子がリアルだが、シリアスになりすぎずに笑いになっていたのはさすが。暖炉の妖精の造形がアフリカ風味というか、いまひとつ合ってなかったのが残念。
2016年10月20日木曜日
1020 第9回酒屋万来文楽
「日高川入相花王」
頻繁に上演されるので食傷気味と思っていたら、出だしの「安珍様いのう~」でやられてしまった。
床は呂勢・芳穂に藤蔵・清志郎の組み合わせもよく、アグレッシブな三味線が盛り上げる。
人形は和生が清姫。あの狭い舞台での早変わりはさぞや大変だろうが、鮮やかに見せた。
「定之進切腹の段」
「恋女房染分手綱」の一場面を小鼓の久田舜一郎との共演で。人形が能を舞う趣向は興味深くはあったけど、やはり人間のようにはいかない。
「関寺小町」
文雀追悼で、当たり役を和生が。床も呂勢・藤蔵と若いので、老女の枯れた感じよりも、若々しさを感じた。
2016年10月19日水曜日
1019 秋の特別講演 古典への誘い
能の「安宅」と歌舞伎の「勧進帳」を見比べるという企画は面白いのだが…。
能楽は舞囃子「安宅」。シテは片山九郎衛門で、抑制された滑らかな動きが美しい。だいぶ短くカットされていたのは致し方ない。
一方の「勧進帳」は海老蔵の弁慶に獅童の富樫。山伏問答で笑いがおきるのはいかがなものか。
2016年10月15日土曜日
1014 宝塚雪組「私立探偵ケイレブ・ハント」 ショーグルーブ「Greatest HITS!」
久しぶりの完全オリジナルという探偵ものはいろんな意味で薄っぺらく感じた。まず、ストーリー。冒頭のエキストラ女優の謎の死の真相を解くのかと思っていると、ヤクザの情婦で金にまつわる揉め事から始末されたという背景は分かったものの、犯行の手口などは不明。ケイレブとイヴォンヌの関係も大人かと思いきや、互いの仕事への無理解ぶりがステレオタイプ。何より、いくら戦後間もないとはいえ、ヤクザの一味を狙撃して一件落着ってどうなんだろう。主人公が会話しているバックで入れ代わり立ち代わり踊っているのは、何かの比喩なのだろうか。踊りのシーンがやたら多いのだが、いまいちさえない振り付け。
ショーは、東京公演の時期に合わせたクリスマスソングメドレーはやはり時期尚早で違和感が強い。「ハロウィンも終わってないのに」と自ら突っ込んではいたけれど、それだけではどうしようもなく。マドンナやフィルコリンズなどのヒット曲は耳なじみがあっていいのだが、終盤、唐突に戦闘シーンが始まり、倒れた人々の間でのデュエットダンス。世界を一つにするのは歌の力という、肩に力の入りすぎたメッセージは宝塚には不釣り合いだと思う。
1013 維新派「アマハラ」
ゲネプロを所見。奈良・平城宮跡に作った巨大な野外ステージ。廃船をイメージしたという舞台の後方にはススキが茂る野原越しに生駒山が望める。所見日はあいにくの曇り空で夕日は見られなかったけれど、暮れていく空に彩られる舞台は神秘的だ。
明るいうちは、近くで草刈りをしているらしい音が耳障りだったのが残念。だが、音楽が非常に効果的で、白い衣服に白塗り姿の役者たちの、芝居というよりダンスのような統制のとれた動きが美しい。物語は山形県天童市と熊本県天草市で生まれた男が島に渡り、一旗あげるものの戦争に翻弄される様子を描く。露骨な言葉ではないけれど、いろいろな感情を揺さぶられる気がした。最後、整然と並んだ役者たちが「忘れない」と言うのは、松本氏への追悼なのか。
2016年10月12日水曜日
1011 ヨーロッパ企画「来てけつかるべき新世界」
退屈はしなかったが、ゲラゲラ笑うほど面白いかなあ。テンポよく進むし、ありそうな近未来をうまいこと描いていると思う。自動制御なのか、リモコン操作なのか、ロボットの動きも良く合っていた。ディストピアとか、聞きなれない横文字が急に出てくるのに違和感。串カツ屋の娘、藤谷理子が可愛かったのが大分好印象になってる気がする。
2016年10月11日火曜日
1010 劇団ジャブジャブサーキット「猿川方程式の誤算あるいは死亡フラグの正しい折り方」
行方不明になった猿川教授だけでなく、なんだか訳あり風な彼女も行方をくらまし、ミステリータッチで物語が進む。箱を動かすことで場面転換する演出がテンポよく、どうなるんだろうと興味をそそられるので、2時間という長時間もダレることがなかった。どんでん返しのように意外な関係が明らかになる、 歌舞伎のような展開が爽快。伏線を広げすぎて回収しきれないきらいはあったけれども。
それぞれのシーンでがらりと印象が変わるのも面白い。物書きのセンセイ役の教仙拓未が妙に二枚目。京香役のまどかリンダがアニメの戦う少女キャラよう。慈音役のなかさこあきこも印象に残った。
2016年10月10日月曜日
1009 松竹大歌舞伎「獨道中五十三驛」
猿之助と巳之助がダブルキャストで宙乗りと早変わりを務める演出。昼夜で所見。
Bプロは巳之助の宙乗り、猿之助の早変わり。
4時間超の芝居を休憩入れて2時間半に圧縮していて、作品として物足りないなあと思っていたら、プログラムには見取り狂言として上演すると。宙乗りと早変わりを見せるだけと思えばこれもありか。
2幕、巳之助の化け猫は頑張ってはいるのだが、いっぱいいっぱいのせいかばたばたした印象。妖しさとか怖さが足りないか。
3幕の早変わりは猿之助鮮やか。基本、舞台裏に引っ込んで花道や下手から出てくるオーソドックスな演出なのだが、とにかく速い。1回だけ、昆布巻きがあったのだが、入れ替わってからしばらく、頭巾を取るために傘の陰に隠れている間があった。昆布巻きはさっと変わっておお!というのが楽しいので、この間はちょっと興ざめ。
最後、調之助で出てきた巳之助が役にあってよかった。
Aプロは猿之助の化け猫が怪しく迫力があった。
巳之助も早変わりは上手くこなしていたが、女形がどこかおかまっぽくて女に見えない。女形を主にやってきた役者さんではないので仕方ない面もあろうが…。
最後の調之助で出てきた猿之助。若侍にしては老けた印象。この人は女形がいいと再認識。
2016年10月9日日曜日
1008 大川興業 暗闇演劇「The Light of Darkness」
今回はハーフブラックシアターとのことで、照明のなかでの芝居も結構あり。暗くなったときも、蛍光素材を身に着けているので、ぼんやりと位置はわかるので、暗闇演劇の本質は分からなかったかも。
お笑い集団だと思っていたが、意外にシリアスな芝居。いじめ問題なんかも取り上げていて。脚本は悪くなさそうだが、役者の力不足かあまり面白くない。
ゲスト出演の小椋あずきの声がよく、彼女の出ていたスキー場で出会った男女のくだりは悪くなかった。
1007 法村友井バレエ団「バヤデルカ」
ニキヤの法村珠里はピルエットでぐらつくなどテクニックにあれっと思うところがたびたび。出番の多いタフな役に果敢に挑戦したといったところか。
ガムザッティの今井沙耶は1幕の終わり、ニキヤと対決するシーンの激しさがよかった。
サロルのミハイル・シヴァコフはミハイロスキー劇場からの客演。ほか、男性ダンサーの多くは客演だったらしく、セットや衣装の豪華さも含めてお金かかってるなあと。
女性ダンサーは団員なのだが、群舞に難あり。3幕の冒頭の印象的な場面で、バランスを崩してぐらぐらする人が続出。がっかりだった。
2016年10月7日金曜日
1002 荒野のリア
リア王なのだが、なぜかヘルメットをかぶった人が出てくる…と思ったら、火星?なのだそう。なぜ?
麿赤児は迫力あるし、途中なぜかスカート姿でかわいらしく踊るのもキモかわいいのだが、ほかのキャストが今一つ?セリフがちっとも頭に入ってこなくて、リア王ってこんな話だっけ?と思うばかり。なぜか娘たちが映像で、口元のアップなのもよくわからん。
1001 文楽巡業公演 夜の部「近頃河原達引」
「四条河原の段」
文字久&団吾。
肩の力が入りすぎずにのびのびと語っていたような。
「堀川猿回の段」
藤蔵の三味線が唸る。手数が多くて面白いよね。
クドキで勘弥のおしゅんが色っぽくてよかった。お猿は誰だか分からなかったけど可愛かった。
1001 文楽巡業公演 昼の部「妹背山婦女庭訓」
巡業初日の河内長野ラブリーホールで。
「杉酒屋の段」
呂勢&清介。
期待値が高すぎたせいか、ひと味足りないような。語りが単調というか、語り分け(人物だけでなく場面も)がはっきりしない気がした。
「道行恋苧環」
呂勢・文字久・芳穂&清治・清志郎・寛太郎・清公。
よくかかる段なので目新しさもないのだが、清治のソロでハッと目が覚めた気分。
「姫戻りの段」
芳穂&清志郎。
声がよく、語り分けがくっきりして良かった。
「金殿の段」
英&団七・団吾
語りに力がないというか、盛り上がり切らない。声が三味線や鳴り物、足音などに負けて言葉がききとりづらいので、物語にはいりきれない。
勘十郎のお三輪は少女らしくなく大人びた印象。
2016年10月1日土曜日
0930 宝塚星組「桜華に舞え」「ロマンス」
北翔海莉のサヨナラ公演は男の友情物語。 北翔は幕末の薩摩の剣豪、桐野利秋。紅ゆずる演じる衣波隼太郎とは幼馴染だが、維新後は政府との距離感や考え方の違いから袂を分かち、西南戦争では敵味方となって戦う。宝塚における2人の立場とダブらせる演出で、サヨナラにふさわしい出し物。衣波が桐野の亡骸を抱えて号泣するシーンは目頭が熱くなった。 西郷隆盛(美城れん)とは同期だそうで、信頼関係にある様子が役柄とも重なっていい雰囲気だった。 ロマンティックレビュー「ロマンス」。 妃海風がローズ色のロマンティックなドレスで登場、甲高い声で「ロマンス!私の大好きな言葉です!!」という冒頭から宝塚らしいというか、レビューの王道らしい。 歌よりもダンスに重点を置いたのか、北翔の歌を聴くとう意味では物足りない気もしたが、ムードのあるデュエットダンスや、男役を引き連れての群舞など踊りには見応えがあった。…が、北翔の衣装がいまいちなのか、終始もっさりしていたのが残念。
2016年9月23日金曜日
0922 劇団チョコレートケーキ「治天ノ君」
大正天皇の一代記という、意外に硬派な芝居。歴史に埋もれがちな大正時代をクローズアップする意欲作だ。
松本紀保演じる貞明皇后節子役の目から語られる明治~大正~昭和の記録。松本紀保の落ち着いた気品のあるモノローグがいい雰囲気を作っていた。
大正天皇役の西尾友樹は病に倒れた後の様子がリアル。
明治天皇や昭和天皇との関係はフィクションなのだろうが、これも一つの歴史の側面なのかと考えさせられた。
2016年9月22日木曜日
0921 マシュー・ボーンの「眠れる森の美女」
ゴチックな衣装と美術が美しく、マシューらしいスタイリッシュな振り付け。
意外と原作に忠実な話の運びで、オーロラのアシュリー・ショーが可愛かった。王子に相当する狩猟番のレオ役、ドミニク・ノースは格好いいというより人が好さそうな好青年。トッポい感じ?ローズアダージョがオーロラとレオがじゃれてるシーンになっていたのが、原作とは違うけど、ムードがあって素敵だった。
リラの精=ライラック伯爵のクリストファー・マーニーはマシュー作品の定連だけあって出てくると安定感が増す。ちょっと怪しい魅力も素敵だ。
2016年9月20日火曜日
1020 九月新派特別公演
市川月乃助改め二代目喜多村緑郎襲名披露。
「振袖纏」
火消しに惹かれて家を出てしまう若旦那、芳次郎を松也。江戸っ子のパリッとした感じにはやや足りない気もするが、ボンボンらしさはこの役にあっているのかも。親分の娘で芳次郎に惚れる娘、お喜久の瀬戸摩純はなぜか年増感が。実年齢は若いのに何でだろう。クライマックスで、芳次郎の最後の晴れの舞台にと火事場に駆け付けるところが、髪振り乱してちょっと狂気すぎ。
藤右衛門の猿弥は貫禄があって立派。お徳の春猿もらしさがあって、新派というより歌舞伎の公演のよう。
「深川年増」は仕事で見られず。
夜の部は口上のあと、「婦系図」
喜多村緑郎の早瀬主税はこの役に出会って新派への移籍を決めただけあって、よく似合っている。が、人物像が理解しがたい。先生がなんで怒るのか、お蔦が死にかけるまでなんで許さないのかとか、そんな師匠に黙って従ってしまう早瀬とか、登場人物の行動が理解の範疇を超えていて、ずっと??。それぞれの登場人物の見せ場はそれなりなのだが、全体としてのお話はよく分からなかった。波乃久里子のお蔦は上手いのだが、喜多村と並ぶとどうしてもお母さんのようで…。
0919 SSTプロデュース「月光町月光丁目三日月番地」
唐十郎の埋もれていた短編は上演時間が1時間弱と短いのに濃厚。夫婦らしい男と女が会話しているのだが、お互い自分の記憶を喋っているので話が噛み合わない。すれ違いが切ない。
2016年9月19日月曜日
0919 エイチエムピーシアターカンパニー「四谷怪談」
女性ばかりの猫版を所見。伊右衛門以外は1人の役者が複数の役を兼ね、メークや衣装が変わるわけでもなく、場合によっては数歩移動するだけで役者が変わったりするので、ちょっと分かりにくいというか、見失わないよう緊張感を強いられた。
映像を組み合わせた演出は面白く、白い洋服の上にT字状の布をまとって、着物の袖や合わせにしたり、スクリーンにしたりする。登場人物の名前を投影して分かりやすくしていたが、ややうるさくも感じた。あと、岩の面体が変わるのを映像にしたのはイマイチ。ちゃんとしたスクリーンではないので映像がボヤけて、怖さが削がれてしまった。
古典の場面をあまり端折ることなく、それぞれをダイジェストにしていたようで、話の運びが性急。もつと場面を絞って掘り下げた方がよかってのでは。直助とお袖のくだりとかなくてもいい。歌舞伎でも伊右衛門が義父を殺してまでヨリを戻したお岩を邪険にする、心変わりの理由が分からなくてもやもやするのだけど、今回は時間の経過も短いので余計に違和感が強かった。
役者陣は総じて好演。伊右衛門か格好いい色悪だった。
0918 五世千作 十四世千五郎 襲名披露公演
「 翁 」 金剛永謹、茂山千五郎、茂山竜正
「末広かり」 茂山七五三、茂山宗彦、丸石やすし
「千 鳥」 茂山千三郎、茂山あきら、網谷正美
「庵 梅」 茂山千作、茂山逸平、茂山童司、井口竜也、鈴木実、山下守之、茂山宗彦
「靱 猿」 茂山千五郎、茂山茂、茂山良暢、茂山蓮
「石 橋」 片山九郎右衛門、浦田保親、大江信行、林宗一郎、原大、茂山童司
一族総出演で、新しい当主を祝う気持ちにあふれる。
「翁」の三番三を舞った新千五郎は力強く、やや力みすぎな感も。
「庵梅」の新千作は逆に、ひょうひょうと。
ここの子供たちはなんというか、元気いっぱいすぎてやかましく感じる。ボリューム調節を間違っちゃったような。
2016年9月18日日曜日
0916 現代演劇レトロスペクティブ「夜の子供2 やさしいおじさん」
何だかよく分からないけど、凄いエネルギーのようなものを感じた。20世紀の終わりに、東京オリンピック直前の子供時代をマンガに描く少女漫画家。演じているのが女性だし、少女漫画家は女でしょと勝手に思っていたので、おじさんになるのに戸惑う。
マンガの主人公であるボクと、同姓同名で性格は真逆のもう1人のボク、少年の憧れる病弱な少女や病に倒れる母親など、雑多な要素が交錯していく。医者と看護師役で出演した岩崎と高橋恵がいい味出してた。
衣装や美術が秀逸で、白いシャツやズボンに黒マジックで書き殴ったように彩色することで、マンガの登場人物を表したり、段ボールで造形したような小道具が面白い。
2016年9月14日水曜日
0914 ミュージカル「エリザベート」
東宝版は新演出とかで、観ている間中「これじゃない」感がぬぐえなかった。
花總まりは初々しい少女期から晩年までをこれ以上ないくらい好演していたのに。花總は高音がやや不安定だったものの、歌唱もよく、何より演技が素晴らしい。ただ、育児を人任せにして旅歩いていたとか、スイスに隠し口座があったとかいうことでわがままぶりが協調され、困難な時代・状況を懸命に生きた女性への共感はなくなった。
トートの井上芳雄は歌は上手いが、ソフトすぎる歌唱に違和感。黄泉の帝王らしい、超越した感じもなく、生身の男っぽい。
フランツの田代万里生も皇帝らしい重々しさが薄い。総じて職務に忠実で冷たい感じで、宝塚版のほうが包容力があって魅力的だった。
ゾフィーの涼風真世は低音はいいが、高音域になるとかわいらしくなってしまうのが惜しい。
一番の違和感は、オーストリア王国の危機にユダヤ人迫害やナチスの台頭を重ねたこと。時代が違うでしょ。
マダムヴォルフの館で娼婦が貞操帯をしてるとか、ルドルフが自殺するまえに自ら銃を取りに行ってトートに死のキスするとか、ルキーにがエリザベスではない別の人を殺そうとしていたが来なかったので偉そうなやつなら誰でもと殺害に至ったとか、細々演出の違いがあるが、意図がよくわからなかった。
2016年9月12日月曜日
0910 九團治の会
「義士残花抄」
井上ひさしの「不忠臣蔵」からとったという、新作になるのかしら?歌舞伎というより、時代劇風。もう1人の赤穂義士、橋本平左衛門ともう1人のお初の物語。
冒頭、近松門左衛門が廓に取材に来ているところから一転、過去の回想シーンに。近松から平左衛門への早替わりはを見せたかったのだろう。九團治はやや上ずった口調で若々しさを表現するが、上滑りな印象も。お初の千寿が廓の苦労を飲み込んだ、可憐で健気な遊女を好演。この人が出ると舞台が引き締まる。
「太刀盗人」
能仕立ての滑稽な舞踊なのだが、やや間延びして感じた。
2016年9月11日日曜日
0909 秀山祭九月大歌舞伎 夜の部
「吉野川」
玉三郎の定高が素晴らしい。花道を現れるところから心に秘めた決意を感じさせ、娘は可愛いが久我之助はどうでもいいなどと本心にないことを言いながら肚のうちを滲ませる。雛鳥の首を討つところ、文楽と違って何度かためらうのだが、ここはスパッといってしまったほうが背山との対比が鮮明になるのでは。印象的だったのは雛送りで、雛鳥の首を愛しそうにかかえ、輿に乗せる時に語りかけるように顔を寄せる。万感の思いがあふれ、じわっときた。
菊之助の雛鳥は綺麗だが、前半は可憐さが薄いというか、恋する娘にしては淡々としているのだが、定高の本心を知ってからはよかった。この人はもう雛鳥ではなく、久我之助のほうが似合うのかも。桔梗を演った梅枝のほうがニンだったのかもしれない。
その桔梗はとてもよかったのだが、小菊の萬太郎は女形が不慣れなせいか、硬く、可笑しみにかける。
一方の背山は大判事が吉右衛門、久我之助が染五郎。悪くない配役だが、妹山ほどの感動はなかったか。染五郎は久我之助にしては落ち着きすぎていて若さゆえの一途さが感じられないのだ。
「らくだ」
これほど面白くない喜劇も珍しい、というくらい、ちっとも笑えなかった。まず、松緑の半次かチンピラらしくなく、なんだろう、爽やかというのとも違うのだが、汚れた感じがなくて薄っぺら。染五郎の久六も、久我之助との落差はあるけれど、わざとらしくてリアリティがない。
途中、半次の妹(米吉)が出てきて、オチにつながるのは、前回の松竹座で見たのと違うところ。オチもつまらなかった。
「元禄花見踊」
玉三郎か若手を引き連れて、華やかな踊り。暗転から舞台中央に天井から光が差し、花びらの降りおちるなか、玉三郎がせり上がってくるという印象的なオープニングから、終始目に鮮やか。定高のときは老けたかと思ったが、化粧のせいだったのだろう。美しさは健在。
20分程度と短いので、お口直して帰路につくのにぴったり。両花道を使う演出があったり、楽しめた。
2016年9月5日月曜日
0904 文楽9月公演 第二部
「寿式三番叟」
津駒の翁、呂勢の千歳、咲甫、睦の三番叟に寛治、藤蔵、清志郎、清丈ほか9枚9丁の太夫三味線が舞台後方にズラリと並んで壮観。だが、演奏は…。寛治の三味線は床が分厚くなった分、1人で演奏すると弱々しさが強調される気が。ユニゾンでの演奏もテンポが合わせにくそうで、もっと速く弾きたい人が何人かいるような感じ。
人形は千歳=文昇、翁=玉夫、三番叟=玉勢・簑紫郎が堂々と時にコミカルに。
「一谷嫩軍記」
「弥陀六内の段」
三輪・喜一郎に安定感。石塔の建立とか、青葉の笛とか、陣屋に出てくるアイテムの由来がよくわかる。
「脇ヶ浜宝引の段」
咲・燕三。
40分余りの一段を1人で語り、久しぶりの長さに回復してきたのかと思いきや、声が弱々しく、全盛期には程遠い。
いわゆるチャリ場で、「上を向いて歩く」「永六さんに聞いてみよう」「簑助、勘十郎、玉男…でなく玉織姫」などの入れ事が。百姓たちのキャラクターの語り分けは見事なのだが、テクニックに感心するもののあまり笑えない。笑いには多分、ある程度のテンションが必要なのだ。いくら上手くても6割くらいの力(←勝手な印象)で語られるとおかしみが半減してしまう。
「熊谷桜の段」
靖・富助。
普段は省かれることの多い場面なので、藤の局と相模の関係、どうして藤の局が陣屋の奥にいたのかに改めて納得。
富助と組んで、靖の語りが一段と進歩したような。
「熊谷陣屋の段」
前を呂勢・清治、後を英・団七。
呂勢は低音が甘いので、時代物はちょっと不利か。相模や藤の局はとてもよく、敦盛が討たれたと思って悲しみに沈む藤の局に対し、小次郎が無事と信じて内心安堵している相模。観客は2人の立場が後に逆転するのを知っているだけに無常観が際立つ。
英は淡々としていて、陣屋の感動が今一つ。
人形の勘十郎は大熱演だった。
0903 文楽9月公演 第一部
「一谷嫩軍記」の半通し。いつもは「熊谷陣屋」しか見たことがないが、その前のストーリーが分かって理解が深まった。
第一部は初段~二段目。
よ
「堀川御所の段」は亘、小住、咲寿に清允、燕二郎、錦吾、清公が御簾内で。
物語の冒頭で物語の発端が語られる。
「敦盛出陣の段」
口を希・寛太郎、中を始・團吾、奥を文字久・清介。
希、始、文字久に共通して立派な語り。
嫁入りして敦盛とは敵対関係になるからと連れ戻しに来る使者を一撃で手打ちにする玉織姫や女房達が凛々しくてすかっとする。
や
「陣門の段」
松香、津国、文字栄、亘に清友。
この掛け合いはなんだか勿体ない気がする。
敵陣へ先陣を切って突入した小次郎を抱えて救出する熊谷が思わせぶり。
「須磨浦の段」
芳穂と清馗。
夫を探して彷徨う玉織姫をわが物にしようとする平山が嫌らしくおかしい。
「組討の段」
咲甫・錦糸。
冒頭の謡調の語りが堂に入っていて、心地よい。
本当は敦盛でなくて小次郎なのだと思うと、2人のやり取りは不自然なのだが、この場面は建前というか、後の世に伝えるための方便なのか。
熊谷と敦盛の一騎打ちは、遠見での馬上の戦いから一転、実寸大になっての組合いへの変化があざやか。敦盛の首を一撃で落とす熊谷。文楽の登場人物はなかなか死なないのが常だが、こんなにあっさり死んじゃうこともあるのね…と。瀕死の状態で敦盛の首と対面する玉織姫が切ない。
「林住家の段」
小住・清公、睦・清志郎、千歳・宗助。
小住の堂々たる語り。睦の高音のかすれはだいぶましだが、ちょっと心もとない。千歳は長い場面で事実上の切場を不足なく。
自ら詠んだ和歌を歌集に入れてほしい忠度。「うぬらごときに刃物はいらぬ」とか言って素手で刺客を倒してしまう大立ち回りを玉男がダイナミックに演じる。恋人を追ってくる菊の前を簑助。移動の際は腰をささえて介助する黒子が1人加わっていて少し心配。
0902 宝塚花組「仮面のロマネスク」
ラクロの「危険な関係」が原作で、大人の恋の駆け引きが描かれる。ところどころ、こんな話だったっけ?と思うところもあったが、甘々のラブストーリーよりはスリリングで楽しめた。明日美りおのヴァルモンと花乃まりあのメルトゥイユが、本心を隠して腹を探り合うのが現実とダブるようで。
2016年9月3日土曜日
0902 コンブリ団「カラカラ」
震災後の避難所。寝そべって漫画を読んでいる女とその兄、勉強している少女と先生、端で見ている女。
脈絡なくつながっていく会話、唐突に訪れ去っていく人。意味を追求しようとすると困惑する。
見舞いに訪れた先輩がカメラを持っていて、どこか野次馬気分だったり、漫画を読んでいる妹にもっとちゃんとしたものを読めという兄など、被災者とそれ以外の人の温度差が上手く描かれている部分もあった。
アフタートークにMONOの土田氏。終始笑わせながら、深津作品の読み解きや思い出などを語った。「カラカラ」のキーワードが、「砂は何からできている」という指摘になるほど。
0901 「ヒトラー最後の20000年~ほとんど何もない~」
ストーリーは特になく、ばかばかしさを追求したコメディー。終始一貫して意味などなく、客席に仕込んだ観客をいじったり、いろいろ盛り込んだ小さな笑いをごったに集めた感じで、面白いのだが2時間半は長かった。ヒトラーやアンネ・フランク一家、ユダヤ人や黒人が登場し、ところどころ人種差別的な表現やヒトラーの演説を茶化したりする表現があるのが気になった。日本人だったら笑うのかもしれないが、ユダヤ人やドイツ人が見たら眉をしかめそう。
0901 「ガラスの仮面」
想像を上回る完成度の高さで、原作を忠実に再現しているのに驚いた。一路真紀の月影先生は期待どおり。貫地谷しほりは一生懸命だけどちょっとうざいマヤそのものだったっし、マイコは亜弓らしかった。小西遼生はダサさと紙一重の気障なセリフをこなして真澄様だったし、水城や紫織も原作から抜け出したよう。ちっとも格好いいと思えない桜小路も思えば原作の通りだ。
冒頭、それまでの話しの流れを足早に説明するシーンに詰め込み感があったけれど、「2人の王女」のオーディションからの流れは良かった。月影が紅天女を踊るシーンもたっぷりあって、満足度の高い舞台だった。
舞台は3階建てのスクエアなセットと、テントのような装置が表裏で、それぞれオフィスや劇場の空間を表現。3階に役者が上ると相当首を上に向けなければならなくて見にくかったが、うまくできているなあと感心した。1幕の終わり近くでセットが引っかかるアクシデントがありはらはらしたが、休憩を挟んでのやり直しできちんと芝居の世界を取り戻した。
2016年9月1日木曜日
宝塚星組「桜華に舞え」「ロマンス」
北翔海莉のサヨナラ公演は男の友情物語。
北翔は幕末の薩摩の剣豪、桐野利秋。紅ゆずる演じる衣波隼太郎とは幼馴染だが、維新後は政府との距離感や考え方の違いから袂を分かち、西南戦争では敵味方となって戦う。宝塚における2人の立場とダブらせる演出で、サヨナラにふさわしい出し物。衣波が桐野の亡骸を抱えて号泣するシーンは目頭が熱くなった。
西郷隆盛(美城れん)とは同期だそうで、信頼関係にある様子が役柄とも重なっていい雰囲気だった。
ロマンティックレビュー「ロマンス」。
妃海風がローズ色のロマンティックなドレスで登場、甲高い声で「ロマンス!私の大好きな言葉です!!」という冒頭から宝塚らしいというか、レビューの王道らしい。
歌よりもダンスに重点を置いたのか、北翔の歌を聴くとう意味では物足りない気もしたが、ムードのあるデュエットダンスや、男役を引き連れての群舞など踊りには見応えがあった。…が、北翔の衣装がいまいちなのか、終始もっさりしていたのが残念。
2016年8月29日月曜日
0828 女流義太夫 竹本駒之助の至芸
「良弁杉由来 二月堂の段」
駒之助を生で聞くのは初めて。やはり生のほうが迫力があるが、渋い声は私の好みではないのかものすごい感動というほどではなかった。生き別れた母と息子の30年ぶりの再会という感動的な話で、母の情感は女性のほうがもしかしたら適しているのかも。クライマックスに向けての盛り上がりはさすがと感じさせた。周りではすすり泣く人が多かったので、響く人には響くのだろう。
三味線は津賀花。軽いというのではないが、キレがよく、気持ちのいい音だった。
2016年8月28日日曜日
0827 堀内元バレエUSA Ⅵ
「ヴィヴァルディ・ダブル・チェロ・コンチェルト」
8人の女性と4人の男性、華やか。
「チャイコフスキー・パ・ド・トゥ」
木村綾乃、末原雅広。ピルえっとの後ふらつくところもあったが、総じて高いテクニックで見応えがあった。
「Bloom」
森ティファニー、上村崇人ほか。
スタイリッシュな衣装で、おしゃれな振り。
「ロマンティーク」
吉田都、堀内元ほか。
ジャジーな音楽で、楽しい雰囲気。男性の黒い短パンのような衣装が…。
2016年8月27日土曜日
0827 虚構の劇団「天使は瞳を閉じて」
防護服に身を包んだ人たちの体に放射能汚染などの文字が次々に映される。不穏な雰囲気のなか場面が変わると、放射能汚染地域から出るように指示する電力会社(?)の職員と、中に入れろという人々の押し問答。「安全だ」と言っているのに、急いで避難せよという矛盾。そうこうするうち、サイレンが鳴り、街は透明な壁に封鎖される。
時が過ぎ、放射能汚染で地球上の人類は滅亡。透明な壁に逆に守られた街の中の人だけが生き残ったが、人々は壁の外に出たいと思っている。現代社会のあちこちで見られるような皮肉。幸せだった人々がいつの間にか不幸に向かっている。
ギャグや踊り、歌が織り込まれ、テンポよく進んでいく舞台。振りも格好いいし、踊りもよくそろっている。面白かったとは思えども、この作品が伝えたいことは何だろうとしばし考えてしまった。福島原発事故のあとだけに、原発との関連を考えてしまうが、別に原発でなくてもいい話かも。人類が滅亡しそうな要因として最有力なだけで。
役者のなかでは、芽の出ないミュージシャン、ケイを演じた佃井皆美が印象的。ギャグが手だれていたのと、踊りが上手かった。
0826 ムムム!文楽シリーズ 中之島文楽
「日高川入相花王」
睦、希、亘と喜一郎、清公、清允。睦は高音がかすれるのはもう癖になっているのだろうか。
「曽根崎心中 天神森の段」
英、希、亘に清介、清公、清允。英の声は後ろまで聞こえたものの、舌先で転がしているようで胸に迫るものがないのだなあ。人形は勘十郎のお初に玉男の徳兵衛で、ある意味鉄板。
0825 若手素浄瑠璃の会
「伽羅先代萩」
竹の間の段
靖太夫と燕二郎。靖は前半は硬かったが後半は声もよく出てきて悪くなかった。健気な子どもがいい。気のせいか、背後に嶋太夫を感じた。
御殿の段
芳穂太夫と清丈。いやもう、情感あふれる語りで本公演にかけてもいいのではというくらい。先代萩というと玉三郎をイメージしてしまうのだが、それとは違った堅実な政岡だった。
2016年8月25日木曜日
0824 第26回上方歌舞伎会
「夏祭浪花鑑」
女形は総じて良かったが、立ち役は今一つの印象。
お辰の千寿は期待通り。粋ないい女っぷりで、セリフの言い方など吉弥を思いだした。「こちの人の好いたのは…」のくだりが出ないなあと思っていたら、引っ込みのときに花道の上で。ちょっとあっさり目だけれど。
三婦女房おつぎの當史弥がよかった。
女形初挑戦という娘おてるの未輝は声が地声のまま?吉太朗の若旦那と若々しいカップル。
団七九郎兵衛は松十郎。化粧のせいか海老蔵のように見える。端正な二枚目なせいか、市井のやんちゃな男である団七にはちょっと似合わないように思った。ざんばら髪になったラストは落ち武者のようで。
義平次の千次郎は年齢的に無理があるのは仕方なく、拵えで薄汚さを出す工夫はしていたが、やはり爺には見えず。
三婦の當吉郎は数珠を切る前の「やかましい」など声はよかったが、動きが硬いというか、窮屈そう。
「五条橋」
牛若丸の翫政、弁慶の光。光は弁慶にしては小柄で大きさがほしい。
「団子売」
松四郎の杵造と當史弥のお臼。中堅らしく手だれた感じ。
2016年8月23日火曜日
0821 内子座文楽 午前の部 「仮名手本忠臣蔵」
三段目
下馬先進物の段は靖太夫・清馗
何でか、靖の語りの裏に嶋太夫が透けて見えた。時代物は性に合うのか、安定感がある。
殿中刃傷の段は呂勢太夫・藤蔵
今回の公演で一番の聞き応え。意地悪な師直の憎らしいことといったら!判官の無念、悔しさが何倍にも膨らんだ。呂勢の大笑いはもしかしたら初めて聞いたが、声の重々しさはないものの、長い時間をかけて会場を釘付けにしたのはさすが。三味線はあまり手数が多くはなく、じっと待っているところが多いのだが、要所要所で効果的な一音。判官が切り掛かってからはアグレッシブな音で盛り上げる。師直の人形は勘十郎で、表情豊かに憎たらしい。判官の和生も動き少なく堪える様がよかった。
四段目
塩谷判官切腹の段は津駒・宗介。
黒紋付に黒の裃という渋い出で立ち。
判官切腹の場合など、床なしの静寂のなか人形の動きだけで進めるシーンが多くあったので、少々間延びする印象。城明け渡しの段の一言を待ちわびてしまった。
0820 内子座文楽 午後の部 「仮名手本忠臣蔵」
五段目
山崎街道出会いの段は希・清公。
会場のせいか、三味線の音が軽く、語りもあっさり。
二つ玉の段は芳穂・團吾。
芳穂の安定感が増している。定九郎の低音がいい。
人形は玉男。歌舞伎風の、黒羽二重の拵えだったが、文楽の定九郎は山賊姿がいいと思う。歌舞伎では言葉少なく一撃で惨殺し、「50両」と一言だけ言うのが格好いいのであって、文楽のようにベラベラしゃべる奴にあの拵えは似合わない。
六段目
身売りの段を睦・清志郎。
睦は高音が掠れぎみなのが惜しい。
早野勘平切腹の段は英・團七。
会場が狭いせいか、声はよく聞こえたが、何でか語りが頭に入ってこず。勘十郎の寛平は腹を切るときに大きな動き。迫力はあるけれど。
0819 BENT
いい舞台だろうと予想していたけど、それを上回るものだった。主人公マックスが享楽的な日々を送る前半部、一夜の相手との明け透けな性描写に驚く。中島歩はかわい子ちゃんタイプのゲイを好演。グレタ役の新納慎也はきれいな脚で、スカート捌きが美しい。
佐々木蔵之介は熱の入った演技で、収容所でのホルスト(北村有起哉)のセックスシーン(といっても2人並んで直立したままなのだが)が圧巻。極限状態で心を通わせる2人が切なかった。ホルストが最後の抵抗をして銃殺された後、マックスはゲイを現すピンクの星がついた囚人服に着替え、電気鉄線に向かう。護送列車の中で、ルディが殺されかけているときには見捨てて自分の命を守ったのに、ホルストが死んだあとを追ったのは、本当の愛に気づいたから?
2016年8月13日土曜日
0813 葛河思想社「浮標」
休憩を挟むものの4時間余りの舞台だが、意外と長いとは感じなかった。
単純化してしまえば、結核の妻が死ぬまでの話なのだが、主人公の画家、久我五郎(田中哲司)の演技力のせいなのか。迫りつつある妻の死に何もできない無力感から、芸術と生活の間で苦悩する中共感できるセリフが沢山あった。妻、美緒(原田夏希)の透明感、母や妹、弟の様はこんな人いるよなあというリアリティがあった。
2016年8月12日金曜日
0811 エトワールガラ2016
オペラ座のダンサーはスタイルが何しろ美しく、ほれぼれと見た。技術的には、もの凄い、というほどではないと思うのだが、容姿が美しいということはバレエの要素の一つなのだ。
レオノール・ボラックとジェルマン・ルーヴェのペアが若々しくフレッシュで好感。
「ランデヴー」は大人っぽくスタイリッシュな踊り。ラスト、剃刀で首を切りつけるのが衝撃。
「ル・パルク」の、女性が首に抱き着いた格好でぐるぐる回るところは、いつもハラハラしてしまう。
「ラ・シルフィード」
レオノール・ボラック&ジェルマン・ルーヴェ
「ランデヴー」
アマンディーヌ・アルビッソン&バンジャマン・ペッシュ
「See」
シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ
「シルヴィア パ・ド・ドゥ」
ローラ・エケ&ユーゴ・マルシャン
「ロミオとジュリエット」
レオノール・ボラック&ジェルマン・ルーヴェ (マドリガル)
ドロテ・ジルベール&ユーゴ・マルシャン (バルコニーのパ・ド・ドゥ)
アマンディーヌ・アルビッソン&マチュー・ガニオ (寝室のパ・ド・ドゥ)
「病める薔薇」
エレオノラ・アバニャート&オードリック・ベザール
「人魚姫」第1幕よりパ・ド・ドゥ
シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ
「それでも地球は回る」 〈女性版世界初演〉
アマンディーヌ・アルビッソン
「With a Chance of Rain」より 〈日本初演〉
ローラ・エケ&オードリック・ベザール
ドロテ・ジルベール&マチュー・ガニオ
「ル・パルク」より“解放のパ・ド・ドゥ”
エレオノラ・アバニャート&バンジャマン・ペッシュ
2016年8月11日木曜日
0810 空の驛舎「ただ夜、夜と記されて」
痛いというか、辛い芝居だった。精神を病んだ人の思考はこうも辛いものなのだろうか?ファンタジックに、と演出家は言っていたが、夢の世界が私にはどうにも受け入れ難くしんどかった。主人公がなんで、今のままでいいと悟るのか。もう少し生きたいと思うのか。少し唐突な気がした。だって、状況はなにも変わっていないのだし。あんな、先生の一言で救われるなら、もっと早くに楽になっていたのでは?
2016年8月8日月曜日
0805 空晴第15回公演 「ここも誰かの旅先」
小さな誤解が誤解を生んで、もどかしさが笑いになるという、いつものパターンではあるのだが、今回はとても面白く、何度も笑った。古いアパートに引越してきた初老の男・藤堂に南河内万歳一座の河野洋一郎、手伝いに来た妙にハイテンションな男に太田清伸という2人のゲストがよかったのか、テンポというか、間なのだろうか。藤堂を「とうさん」と呼ぶことや、顔の似ていない兄弟の血のつながっていないことが暴露されたりと、ありえへんやろ、と突っ込みたくなるような展開なんだが考える間もなく笑ってしまった。
母と伯父との関係を疑っていた甥(上瀧昇一郎)との関係修復をうかがわせるラストに余韻があった。
0807 林家たい平独演会 「たい平ひとりvol.7」寝床!寝床!寝床!
まずは古典の「寝床」。番頭が長屋の一人一人のこられない理由をたっぷりと語る。病気だったり、臨月だったり、急な仕事で手が離せなかったり…。実際に義太夫を語るところはなかった。
くまざわあかねの「寝床」は婚活。小学4年の息子がいるのを言い出せない女と、親父ギャグが止まらない男。なぜか大阪弁の息子が健気で、ええ話に仕上がった。女とその友人のガールズトークもいい感じにおばちゃんぽくて面白かった。
小佐田定雄の「寝床」は怪談。流しの「寝床屋」の言う「安らかな眠り」というのがそもそも怪しい。てっきり寝たら最後二度と起きられないのかと思ったら、意外にスプラッタホラー。3作のカラーがまるで違うので面白かった。
2016年8月7日日曜日
0806 下鴨車窓「旅行者」
町から追われてきた3姉妹。父の兄弟である伯父を頼ってきたのだが、教えられた住所はすでにほかの人が住んでおり、幼いころに養子に出されたというもう一人の妹、紛争(?)を逃れるときにい生き別れになったさらに別の妹が現れ、混乱する。父は伯父に「3姉妹」の分しか切符やお金を用意しておらず、姉妹として暮らしていた3人のうち2人は偽物か思い込みということになると指摘する弁護士。父からの手紙という「証拠」がある後からの2人と違って、証拠となる書類のない3人は法的には認められないというのだ。私たちが信じているものが、実はもろいものだということを考えた。
0806 納涼茂山狂言祭2016
丸石やすしのお話から。フランクな話しぶりが親しみやすく面白い。舞台は演者と観客で作るもの、面白くてもつまらなくても半分の責任は観客に。樋の酒の竹は茂山家では丸のまま使う(野村は半分に割ったもの)といううんちくも。
「樋の酒」
太郎冠者と次郎冠者、そこまでして酒が飲みたいか。太郎の宗彦が樋を伝って注いだ酒に浮いたごみをとる様子など細かい演技で笑わせる。あきらの主人、千三郎の次郎。
「磁石」
茂の田舎者と童司の男が息の合った様子で楽しそう。田舎者なのだが、したたかで、世情にたけたはずの男が翻弄されるのが爽快だ。ちょっとばたばたしすぎの感もあるけれど、ばかばかしいお笑いなのでそれもありか。磁石の機能というか、役割というか、「毛抜」とは違うのね。
「死神」
落語が原作なのだが、ちょっとダイジェスト版な感じ。確かに何人もの病人を診るのは狂言では冗長だ。
主人公の男を千五郎。とぼけた雰囲気が笑いを誘う。金持ちの重病患者を診察して唱える呪文が、どこかで聞いたような鼻歌で、しまいには「フレー、フレーフレーフレー」(←阪神タイガースの応援歌)。もう自由すぎて、笑いが止まらない。
最後、男の命のろうそくが消えてこと切れてしまうのだが、しばらくするとむくりと起き上がる。狂言は自分で歩いて引っ込まなければならないから仕方ないのだけど、少し違和感があった。
0806 ピッコロ劇団ファミリー劇場「オズのおじさんやーい」
「オズの魔法使い」よりということだが、ほぼオズの魔法使いのダイジェスト版のような。
竜巻に巻き込まれる幕開き、天井から何枚もの布が降ってきて花畑?を現すなど気の利いた演出。
「にじからおじへ」のような言葉遊びは子どもには楽しいのかな。
ドロシー役の樫村千晶は少女っぽい可憐んさがもう少しほしいが、歌が上手い(というか高音が出ていた)。
2016年8月2日火曜日
0801 第二回あべの歌舞伎「晴の会」
「伊勢参宮神乃賑」
落語「東の旅」を題材に、清八(松十郎)と喜六(千次郎)のドタバタ道中。
千寿が煮炊屋の婆から、遊女、狐と多彩な役を演じ、芸達者ぶりを発揮していた。
途中、勧進帳のパロディなどの見せ場も。
佑次郎とりき弥も加わり、にぎやかな舞台ではあったが、約2時間の間ではダレるところもあった。
2016年7月31日日曜日
0730 宝塚雪組「ローマの休日」
グレゴリー・ペックとオードリー・ヘップバーンの往年の名作を舞台化。これまで舞台にかけられていなかったのが不思議と思っていたが、観て納得。この作品は、ローマの観光地をめぐるところが一つの見せ場なので、舞台での再現は難しいのだ。映像をスクリーンに映すなど工夫はしていたが、いかんせんぼんやりした映像では魅力は伝わらない。
早霧せいなはコスプレの名手というか、いつもがらりと違うキャラクターを演じるのがすごい。ハリウッド的二枚目を好演。王女の咲妃みゆはちょっとおっちょこちょいな娘の可愛さはあるが、王室の高貴さに欠けるか。
全体としてよくまとまっていて飽きさせない舞台だが、それ以上ではない。
0730 大阪女優の会「あたしの話と裸足のあたし」
戦争にまつわる証言や書かれたものをオムニバス風につなぎ合わせた朗読劇。20人ほどの女優(男優1人)が代わる代わる演じる。赤い毛糸を年配者から若者につなぐことで、大切なのは記憶を言葉で伝えることというメッセージが明確。おでこをくっつけてもコピーロボットのように記憶は伝わらないから。
始終、戦争について考えるきっかけにはなるが、空襲を受けた市民の悲惨さを知るだけでは、未来の戦争を防ぐことにはならない。悲惨なのは負ける戦争で、勝てばいいという考えにもなりうる。「戦うのはいけない」という母親に、「それでは攻められたときに守れない」と反論する息子の言い分はもっともで、反戦を叫ぶ女性たちは往々にして前者でストップしてしまいがち。
最後のあたり、1904年の日清戦争からの戦争や内戦を次々とあげていくいくのだが、朝鮮戦争やベトナム戦争が入っていなかったような。何か意図があるのだろうか。
2016年7月30日土曜日
0729 劇団鹿殺し「名なしの侍」
生バンドにブラスバンドの演奏に乗った殺陣は迫力がある。織田信長や秀吉、家康など実在の武将の名を交えつつ、描くのは農民から下剋上でのし上がろうという名もなき足軽たち。菜月チョビらのうまくもない歌謡曲風の歌は相変わらずで、歌詞で物語を進めているようにも、世界観を現しているようにも感じられず、退屈で意識が遠くなった。よく作りこんでいるのだが、やりたいことをなんでも詰め込んだごちゃまぜのごった煮のようで、統一感がなく、メッセージがあるのだろうか。
0729 宝塚宙組「エリザベート」
朝夏まなとのトートはクールで性別を超えた雰囲気がいい。歌も変な癖がなく、音程が安定しているので安心して聞いていられる。視線で誘う妖しさ、「死ねばいい!」もしびれた。長い手足を生かした踊りも映える。
実咲凛音のエリザベートは、健気というか懸命な感じが共感を誘う。何より高音域に無理がないので、音楽に身をゆだねられるのがいい。
コーラスもよく、身長が高い人がそろっているので群舞も格好良かった。
2016年7月29日金曜日
0728 夏休み文楽特別公演 第3部
「金壺親父恋達引」
井上ひさし原作の幻の文楽作品。モリエールの「守銭奴」を翻案し、設定その他をそのまま江戸の浅草に移した喜劇。
金左衛門の英はもうちょっとこってりやってもと思うが、おおむね面白かった。お梶ばばあの芳穂がいい味出してた。
0728 夏休み文楽特別公演 第1部
「五条橋」
睦の牛若丸に始の弁慶、南都、咲寿、文字栄。三味線は喜一郎、清馗、錦吾、清允、燕二郎。
蓑紫郎の牛若丸が軽々と。弁慶の玉勢は当人はひょろりとしているのだが、人形は力強くて弁慶らしい。
「新編西遊記GO WEST!」
猪八戒をフォーカスしたところが面白く、仕掛けがいろいろあって楽しめる。天界から落ちるところは、舞台後方から前方への移動で立体感がある。舞台セットもカラフルで絵本のよう。が、うさぎが復讐に走る動機が軽すぎないか?あっさり謝っちゃうのも肩透かし。
太夫は猪八戒の靖がいい味出してる。沙悟浄の小住は年齢に似合わぬ安定感。
三味線は琴や胡弓も使って華やか。5丁で弾くと迫力あり。
0728 夏休み文楽特別公演 第2部
「薫樹累物語」
豆腐屋の段
松香の谷蔵、三輪の累、津国の三婦、咲寿、亘。三味線は清友、団吾、錦吾。
人形は累の和生が期待通り。姉の敵と分かっても、娘の恋心は止まらず。まあ、古典では典型だけれど、そうでないと物語が進まないけど。
あと、主君のために高尾を殺さなければならない理由もよくわからない。
埴生村の段
中を咲甫・団七、奥を千歳・富助。
咲甫の語りが師匠に似てる。これまで意識したことなかったが。けどそれが咲甫のよさを損ねているような。
千歳・富助は安定感が増してきた。千歳は力が入りすぎてなくてよかった。
累は自分の顔が変わっているのが分かった時、なぜ姉のせいと分かったのだろうか?
土橋の段
中を靖・錦糸、奥を呂勢・清治。
靖は錦糸と組んでぐんぐん伸びている印象。明快な語りがいい。
呂勢は悋気な女がはまるのだが、またかという気がしなくもない。後半早口になると、言葉が聞きづらかった。清治の三味線が、激しくはないのだが淡々とした緊張感で怖さを引き立てる。
「伊勢音頭恋寝刃」
古市油屋の段は一段まるまる、津駒・寛治。
寛治は相変わらずの超省エネモードの三味線。時折不協和音に聞こえるのはミスタッチ?
津駒の万野はネッチリしてていいが、歌舞伎に比べるとあっさりした印象。
奥庭十人切りの段は咲・燕三。
咲はまあ、病み上がりなので声に力がないのは仕方ない。
勘十郎の貢は形相からして恐ろしいのだが、罪もない子供まで切り捨てる十人斬り、事件の後だけに素直には楽しめず。
2016年7月19日火曜日
0718 花形狂言2016「おそれいります、シェイクスピアさん」
執筆に行き詰ったシェイクスピア(茂山宗彦)が、、かつて書いた脚本の登場人物とやり取りをする。狂言風の言い回しで「ハムレット」を演じる逸平、女形なのだがいまいち可憐でない(←たぶんわざと)茂など、キャラクターを生かした楽しい舞台。正邦のトトロもどきはもうええっちゅうねんという感じだし、後半ちょっとダレたようにも思うが、楽しそうなので何より。
2016年7月18日月曜日
0716 A級missinglink「或いは、魂のやどり木」
過疎が進む片田舎のバラバラになっていく家族の話。高校生だった長男が飛び降り自殺をしてから、父が蒸発し、女手ひとつで育てられた次男と妹は独立して都会へ出、一人残っていた母も再婚して海外に移住する。現在と過去、現実の世界と長男が自殺していなかったらの妄想の世界が入れ替わりつつ、次第にいろいろなことが明らかになっていくのはサスペンスのよう。
失踪した父と共に暮らす女が物語りをかき回す。
2016年7月17日日曜日
0716 ワハハ本舗「ラスト2~NEW HOPE 新たなる希望~
面白かったのは久本雅美と柴田理恵の漫談くらい。江頭ならぬ赤いスパッツの婆さんの扮装でババアあるあるみたいな。観客は中高年女性が多く、ウケていた。佐藤正宏が日舞の名取とかで、オペラ座の怪人を日舞風に踊っていたのはなかなか堂に入っていたが、笑いではなかった。
若手(?)のところは全般的にちっともおかしくない。ダンスに力を入れているらしく、オープニングから、ラストまで踊るシーンが多いのだが、ダンサーの訓練を受けているわけではなく、また笑えるでもないので中途半端。何人か本気で踊っている人もいたけど、この劇団にはそぐわないというか、面白いことやりたくて入ったんじゃないの?後半のコンテンポラリー風の踊りはコント風でドリフのようだった。
やたら会場を巻き込みたがり、いろんなものを投げ込んだり、客席降りしたりするのだが、マンネリぎみ。
2016年7月16日土曜日
0715 豊澤雛文 女義太夫を楽しむ会
川崎の人形劇団ひとみ座の乙女文楽による「新口村」のさわり。一人遣いの人形は初めて観るが、人と一体で動くのが興味深い。人形遣いに結び付けた支柱で人形を支え、両手、両足を人形の手足にして動かす。人形の首と人形遣いの頭を糸で結び、顔を動かすと首も動く仕組み。首は文楽のものと同じように胴串がついていたが、一人遣い専用のものというわけではないようだ。
トークをはさんで素浄瑠璃で「御所桜堀川夜討 弁慶上使の段」。竹本雛子の語りに雛文の三味線。女流の義太夫は初めて聞いたが、雛子の声がだみ声かかっているせいかあまり男との違いは感じなかった。しいて言えばやや音が繊細というか、上品かなあ。
2016年7月13日水曜日
0713 太棹の響き―初代藤蔵の音を聞く―
二代目鶴沢藤蔵襲名の5周年記念。
三味線組曲は5丁の三味線が舞台に並んで圧巻。藤蔵、清志郎、清馗、清丈、清公。
初代藤蔵の未公開音源を聞くでは、30代のころの住太夫や源太夫らの語りがすでに出来上がっているのに驚く。同じ年齢の今の太夫陣との差は大きいなあ。
最後は津駒太夫の語りで「近頃河原伊達引 堀川猿回しの段」。ツレ弾きは清志郎。一段まるまる、じっくり聞かせた。
2016年7月11日月曜日
0711 ニットキャップシアター「ねむり姫」
平安時代が舞台の、ある時から長い眠りに落ちる姫と姫に恋する少年の話?群像劇ということで沢山の人で舞台が埋め尽くされる。
平安風の装束は主要人物だけで、ほかは普段着のような格好なのは予算を考慮した工夫だろうが、ごちゃごちゃした雰囲気になって悪くない。姫は純白のダウンジャケットのような上衣はいいとして、顔の上半分だけ白塗りで頬紅のメークはあまり可愛く見えなかった。
ギターやバイオリン、打楽器の生演奏で効果音など挟むのが面白い。つどつど挟まれるダンスシーンはこの劇団の売り物なのだろうが、小劇場のダンスって役にならなずに素のままで踊っているような人がたまにいる。
0710 三谷文楽「其礼成心中」
4度目の公演にして初の大阪。文楽の本拠地の観客の反応はまずまずといったところか。
主要キャストにほとんど同じだが、人形遣いが何人か入れ替わっていたのと3人目の太夫が睦と靖のダブルキャストになっていた。
新しい演出も特になく、何度も見ているとだんだん笑えるところが少なくなっていくなあ…。はじめのころは太夫が「カップル」とか「パトロール」とか言うだけでおかしかったけど。お福ちゃんがジタバタするところとか、人形の動きとかは工夫があって笑えるところ。
2016年7月9日土曜日
0709 劇団犯罪友の会「風の姿で」
高校の文芸部を舞台にした娘(上木椛)と顧問教諭(松山カオル)、同級生のムラカミ(中西謙吾)の話と、和菓子屋を舞台に父(川本三吉)と娘、来店の厚労省職員(和久本あさ美)、お茶の先生(自称、中田彩葉)の話が交錯する。関係が分かりづらく、物語に入りづらい。
親切気に浪曲師(?)との出演交渉を買って出るお茶の先生に、うさんくささを感じていたらやっぱり詐欺だったり、才能のある詩人かと思っていたムラカミが連続動物殺傷事件の犯人だったりと、いい人かと思ったら悪人という裏切り、進路に悩む娘が最終的に文芸の道をいったんあきらめ父と一緒に和菓子屋をしていく決意をしていく心の動きが山場かと思うが、チラシにあった「恋の行くへ」はどこに?
0709 萬狂言大阪公演
「棒縛」
野村万蔵の太郎冠者に能村晶人の次郎冠者、野村虎之介の主人。
おなじみの狂言なのだが、これまで見たものよりも品がいい感じ。
「骨皮」
野村萬の老僧に小笠原弘晃の新発意、檀那に河野佑紀、野村万禄、野村万蔵。
弘晃は発声、所作など思っていたよりしっかり。だが、話の面白さが伝わらないのは年若ゆえか。
萬の演技はゆったりしていて、体調不良の身は意識が飛んでしまった。
「弓弥太郎」
小笠原匡の太郎。コントのような気軽な面白さ。わあわあと大勢(8人+後見)が舞台に登場するのも珍しく面白かった。
0708 Nonism劇的舞踊vol.3「ラ・バヤデール―幻の国」
モノトーンの舞台にシルバーの柱が数本並び、これを動かして場面が変わる。
衣装が素晴らしく、踊り子カリオン族のブルー系のひらひらしたドレス、馬賊の赤系のフリンジのついた衣装が動きと合わさるととても効果的。衣装で民族の違いを表現していたのも、分かりやすかった。
セリフを語る役者が3人入ることで、物語は分かりやすくなる。ムラカミ(貴島豪)が狂言回しのように物語の背景を説明する。マランシュ族の皇女フイシェン役のたきいみきは王族の重々しさだが、やや重厚すぎに感じた。ダンサーに対抗するためか、役者は全体的に重々しい芝居だった。
2幕、アヘンにおぼれるバートル(中川賢)の幻想で踊り子たちが現れるシーンが印象的。グレーの薄いベールを重ねたような衣装が幻想的だ。最後、ミラン(井関佐和子)は衣装だけをバートルの手の中に残し、裸のような姿で舞台後方に去る。残された衣装は数枚の布切れになってしまうはかなさ。
0705 だいこん役者
藤山直美と大杉連の初共演。
直美が出てくると舞台が締まる。大杉連は舞台経験は少ないようだが“大根”役者を好演。2人並んだ様子がいい夫婦だ。
台本のせいか、前半はテンポよく進むのだが後半がダレた感じ。料理やの娘(前田亜季)が実の娘だと分かったところで一つの山が終わってしまい、立ち退き云々のくだりがつけたしのようになってしまった。
0704 七月大歌舞伎 夜の部
「鬼一法眼三略巻」
奴虎蔵実は牛若丸に梅玉。うーん。この年で前髪役をするのはすごいが、奴知恵内の橋之助に「若輩者ゆえ…」と言われると違和感がぬぐえない。
「口上」
藤十郎が書状を読み上げる形。秀太郎のほのぼのとうれし気な口上がよかった。
「鳥辺山心中」
仁左衛門の半九郎が格好いい。雀右衛門のお染はしっとりとかわいらしい。
遊女お花の秀太郎と中居お雪の竹三郎が花を添える。
「芋堀長者」
踊り上手の橋之助。ユーモラスな舞踊劇で観劇の最後を締めくくるにはいい。
0704 七月大歌舞伎 昼の部
五代目中村雀右衛門の襲名披露。
「小さん金五郎」
松竹新喜劇のようなゆるゆるのお話。鴈治郎の金五郎の風情がはまってる。
吉弥演じる女髪結お鶴は金五郎に一方的に思いを寄せて空回りするイタイ人なのだが…。
芸妓お糸の児太郎がきれいになってた。
「夕霧名残の正月」
襲名公演の雀右衛門の夕霧が美しい。藤十郎の伊左衛門は立っているだけで風情がある。
「与話情浮名横櫛」
仁左衛門の与三郎に雀右衛門のお富。シュッとした仁左衛門と並ぶと不利だよなあ。
2016年7月4日月曜日
7月3日 坂東玉三郎京丹後特別舞踊公演
京丹後での初公演。和久傳がかかわっているだけあって、最寄り駅からタクシーの無料送迎など至れり尽くせり。会場で販売していたお菓子や軽食もおいしそう。
演目は「傾城」と「藤娘」。会場が小ぶりなので、手先、足先の細かい動きまで見えて、芸の繊細さを感じた。藤娘の初々しさ。これまで見た年若のどの役者よりももっと若々しいのが脅威だ。
7月2日 正邦・茂兄弟会「傅之会」
「しびり」
連の太郎冠者に慶和の主人。セリフは一本調子で聞き取りにくいが、小さい子が一生懸命やっているのでかわいらしく、微笑ましい。
「萩大名」
正邦の大名に、逸平の太郎冠者、宗彦の亭主。
正邦は自身が言っていたように大らかな大名が嵌る。宗彦がさもうんざりしたような顔つきでとりわけ笑いを誘っていた。
「文山立」
山立甲、乙を茂、童司。
わあわあとやかましい、ばかばかしい芝居。ほぼコントだ。
「附子」
竜正、虎真の太郎冠者、二郎冠者に鳳仁の主人。
このくらいの年になると、やってるだけでかわいいとは思ってもらえず、さりとて大人のような芸はできないわけで、なかなか難しそうだ。
「止動方角」
正邦の太郎冠者、茂の主人、千五郎の伯父、島田の馬。
正邦、茂は力が入りすぎているような感じで、千五郎が出てくるとホッとする。
狂言の馬って初めてみた。
0701 宝塚雪組公演「ドン・ジュアン」
宝塚とフレンチミュージカルは相性がいいようだ。本作で4作目。宝塚の魅力を感じられたように思った。
何より、主役ドン・ジュアンの望海風斗がハマり役。ニヒルで非道な色男を衒いなく演じきった。これぞザ・宝塚という、ホンモノの男がやるとどこか生々しくなってしまいそうなところだ。歌が上手いのもこの役には重要で、ほぼ全編歌いっぱなし。白い衣装で幸せいっぱいな場面が似合わないように感じたのは、マリアと恋に落ちるところがやや唐突だったからか。もう少し丁寧に描いてほしかった。
マリア役の彩みちるは前半は歌に難ありだったが、後半もちなおした。歌だけ見れば、妻エルヴィラ役の有沙瞳の方が良かった。
は歌が上手いというイメージはなかったのだが、イザベル役に専科の美穂圭子を迎えるなど上手い人を集めたおかげか、全体を通して聞き応え十分。衣装も素敵で、ダンスシーンに映えた。
2016年6月27日月曜日
0626 能勢人形浄瑠璃鹿角座
オリジナル演目の「風神雷神」と「生写朝顔話」の2本立て。
風神雷神は勘十郎監修だけあって、力強い動きやコミカルな動きでみせる。
「朝顔話」は去年文楽で観たばかり。全体的に素人芝居ではあるのだが、中には情感あふれる人形遣いや太夫がいてほろりとさせられた。
2016年6月26日日曜日
0625 「冷蔵庫のうえの人生」
末期がんのシングルマザーと15~16歳の娘が、冷蔵庫に張り出すメモでやり取りする。舞台中央の冷蔵庫と簡素なテーブルとイスのみという、シンプルな舞台に役者2人だけ。音楽もピアノ1台のみで、静かな芝居だ。
母親役の大空祐飛が、次第にがんが進行して気力、体力ともに衰えていく様子を巧みに表現。天真爛漫な娘、クレアの大野いとも、病の深刻さを知るにつれて、思慮深く大人になっていく。日常的な言葉だけでつづられるやり取りなのに、とても胸を打たれた。後半は涙をこらえられなかった。歌は2人とも残念。ないほうがよかった。
0625 おはんちょう
南光の落語「どうらんの幸助」、浄瑠璃の師匠の語りが長めで、稽古の成果を発揮?さすが、他の落語家のものより本格的だった。
続いて、英太夫の「帯屋」。能楽堂の音響のせいか、三味線に負けてしまっている。よくよく聞いてみて、多分私は声が響いていないのが好きではないのだ。発声方法として、身体で音を響かせていないというか。語りわけや、音程はちゃんとしているのだろうに、ちっとも心に響かないのはなんでかなと。
アフタートークで「若太夫を継ぎなはれ」と言われて満更でもなさそう。呂太夫はツナギですか?
0624 歌劇な噺劇
元宝塚と元OSKの女優による、落語の芝居。「井戸の茶碗」「江島屋騒動」「ねずみ」
衣装はシンプルな着物、小道具は手ぬぐいと扇子だけという落語のような拵えなので、役者の力量がよくわかる。やはり、洋あおい、桜花昇ぼる、未央一の3人の芸達者ぶりが目立つというか、華がある。注目したのが、友麻亜里。所作がきれいで、芝居でも目を引いたし、踊りでも際立っていた。
2016年6月23日木曜日
0622 文学座「何か いけないことを しましたでしょうか? と、いう私たちのハナシ。」
イエスの方舟事件がモデル。教祖おっちゃん先生が入院し、マスコミを避けて日向灘の島まで逃げてきた信者の女たち。
個性豊かな女たちの描き分けが鮮やか。途中、アカペラで讃美歌や唱歌が挟まれ、場面を和ませる。
最後、教祖が死に、女たちは島で飲食店(スナック?)を始める。たくましく生きる女たちを描きたいのかもしれないが、なんだか伝わるものがなかった。
教祖の妻で、グループの代表的存在の塩田朋子の発声が美しかった。
0620 五代目中村雀右衛門襲名披露 六月博多座大歌舞伎
「君が代松竹梅」
友右衛門、錦之助、廣松。襲名を祝うおめでたい舞、わずか10分。
「毛抜」
松緑の粂寺弾正。メークの目元がオレンジ系なのはスタンダード?なんだか違和感があった。セリフの語尾をいちいちクレッシェンドで発音するのが耳障り。所作はきれいだし、型はきっちりしているのだろうが、なんだか好きになれないのは、私が荒事が嫌いだからだろう。
「熊谷陣屋」
是非にと勧められて観に行った。もちろん、仁左衛門の熊谷陣屋は心理描写が丁寧で素晴らしいのだが、過去と比べて著しく進化しているというほどではないような。
雀右衛門の相模は素晴らしく、ほろりとさせられた。菊之助の藤の方はちょっとハラが薄いかなあ。セリフのないところで時々、気持ちが入っていないように見えた。
「身替座禅」
菊五郎の右京はあっさり加減が前回見た時よりは濃くてまずまず。けど、好色なオヤジという感じで、イヤラシイんだよなあ。
左団次の玉井は恐妻。
千枝、小枝の右近と米吉がキレイだった。
0619 リリパットアーミーII「銀の系譜」
意外にも非常にオーソドックスな芝居。戦中、迫害を受けるプロテスタントの牧師補を細川ガラシャを重ねて描く。笑いをまぶしているので、深刻になりすぎないのはいいが、何を伝えたいのかがよく分からなかった。牧師補に信仰を明かしながら、憲兵に売る軍人に、時勢に逆らって信仰を貫くことのできない苦悩みたいなのはあったけど、それがテーマでもなさそうだし。牧師補はなんとなく聖職についたようで、いろいろ脇が甘いくせに、拷問に屈しない理由がわからん。おばあちゃん役のわかぎえふが可愛かった。
2016年6月19日日曜日
0617 鄭義信 三部作「パーマ屋すみれ」
休憩挟んで3時間という長丁場だが、物語の力が強いので最後までダレなかった。
九州の炭鉱の町。炭鉱事故による後遺症に加え、石炭産業の衰退で苦しめられる人々。3部作の中で一番暗いという重苦しさがある。
南果歩が床屋をしながら夫を支える力強い主人公を熱演。こういう激しい女性を演じているのが意外だった。
0617 宝塚月組「NOBUNAGA」
一言でいえばトンデモ信長。龍真咲の退団公演で、本人の希望した役柄だというが、こんな信長でよかったのか。何かに似ているなあと考えていて、高校生の暴走族のトップ争いというか、とても少年漫画っぽい(いい意味でなくて)。子供っぽいというか幼稚というか、天下国家を争うスケールがない。秀吉が謀反に加わろうとしたのもびっくりだし、よくわからない外国人を二番手が演じているのも違和感があった。別天地へ旅立つ龍に重ねて、逃亡説をとるのはありうるが、あれは違うよ。
終盤、娘役トップの愛希れいかを切り殺し、倒れたまま放置していたのにも、愛のなさを感じた。
2016年6月17日金曜日
0616 劇団太陽族「執行の7人」
PTAの執行役員になった7人。いろいろ決めなければならないことがあるのに、話はあっちへ行き、こっちへ行き、議論は進まない。働く女性と、唯一の父親役員が引っかき回して、会議は紛糾。途中、働く女性への男の無理解について述べたくだりは、とても共感できた。が、子どもを0歳のときから保育園に預けたことを、母親業の放棄と批判したところで、女性全員が味方に回ったところはどうかな…。専業主婦で男以上に保守的なひともいるのに。
防犯研修が劇団の体のいい資金源になっていて意味がないという批判は一理あり、それで研修をやめるやめないで一悶着あるのだが、内容を見直すべきではないのかと誰もいいださなかったことにモヤモヤした。
最後、「消しゴム」という歌を皆で歌うのは唐突にも思えたが、詞が素晴らしいので納得させられてしまう。
とはいえ、引き込まれる芝居で、2時間あまり(遅れて行ったので実際観たのは2時間弱だが)が短く感じた。
2016年6月14日火曜日
0613 文楽鑑賞教室 D
「二人三番叟」
希太夫と清馗。全体的にもっちゃり?テンポアップしてからの三味線のリズムに乱れというか、転んでなかったか?
「夏祭浪花鑑」
口は希太夫と龍爾。
奥は咲甫太夫と錦糸。期待していたほどではなく、咲甫は意外とあっさり。おつぎも三婦も若くて、おつぎとお辰の区別がはっきりしない。焼ごてのくだりもあれ、という間だった。まあ、後ろのおっちゃんが凄いイビキでそれどころではなかったのもあるかもしれないが。
アトの小住太夫と錦吾。小住は語りわけはまだまだ。錦吾が思ったよりしっかり。
「長町裏の段」
津駒太夫、靖太夫に清志郎。
靖は「おーい」が被せぎみで、「待った、待った」は力入りすぎの感もあったが、津駒・義平次とのがっぷり四つな感じがとてもよい。義平次のぶりにニヤニヤしてしまう。
2016年6月13日月曜日
0612 笑えない会
桂よね吉、茂山正邦のトークから。
会場からの質問は、笑点についてや昨日の晩ごはんなど。父の日にちなみ父との思い出で「昼寝ごっこ」が微笑ましい。
狂言は「鱸包丁」正邦の叔父は終始怒鳴っているよう。最後のオチまでの長い前ふりのような。
落語は「本能寺」。鳴り物満載で、たっぷりとした芝居噺。オチがしょーもないというのはなるほどね。なんでイナゴよ。
0612 文楽鑑賞教室 C
「二人三番叟」
睦、靖、小住に喜一郎、団吾、寛太郎、燕二郎。三味線はテンポゆっくりめ?
人形は玉佳と文哉。玉佳が意外にフツーだった。
「夏祭浪花鑑」
三婦内の段
始太夫と寛太郎。
始は出だしが立派。三婦はいいが。磯之氶や琴浦などのキレイどころに難あり。
文字久太夫と藤蔵は期待しすぎたのかちょっと肩透かし。文字久はおつぎとお辰の語りわけにもう少しメリハリがほしい。声のトーンだけでなく、語るテンポも変えるとか。お辰の焼ごてシーンでは藤蔵の三味線がかけ声とともに盛り上がる。途中、三婦の珠数が落ちてしまい、どうするのかとハラハラ。後ろを向いてナンマイダとやるところで直してた。
「できた〜!」の間はこれまで観た中では一番しっくりきた。そこまでのやり取りが重厚だと、なんだか早すぎるように思っていたので。逆に言えば、お辰のクドきなんかがちょっとかるいのかも。
咲寿太夫と清公。咲寿は腹から声を出しているのはいいが、老け役がまだまだ。おつぎなんか誰かと思ったよ。
長町裏の段は津駒太夫の義平次に芳穂太夫の団七、清介。
三味線の出だしが軽快で祭の風情。
芳穂は骨太な男らしい団七。津駒も憎たらしくてよい。
人形は玉志の団七が、「悪い人でも〜」のくだりで眉を動かすなど表情がよい。玉也の義平次は断末魔の表情が、顔を上げてから目と口を剥くのが他と違うところ。面を上げると同時に変わっているほうがいいように思う。
0611 桂米団治春秋座特別公演
落語は2席はそうばの「手水回し」から。ガチャガチャとうるさい話し方。 隣の女性はケラケラ笑ってたけど、私はあまり笑えず。
米団治の「七段目」は全体的にさらりとした印象。途中、猿翁の名前を挟んだのは会場の春秋座にちなんで。猿之助の富樫に団十郎の弁慶が良かったなんて言ってたけど、そんな座組あったのかしら。団十郎の真似が、デフォルメされてるけど特徴がよく出てた。オチは「七段目から落ちたのか?」「いえ、てっぺんから」
おぺらくごは「コシ・ファン・トゥッテ」。ナポリが舞台なので、コジではなくコシなのだとか。話題にはなっていたが、私にはあまり面白くなかった。オペラと落語の融合って言葉で説明しやすいから、記事にしやすいのだろう。落語で話を進め、要所要所で歌が挟まる構成なのだが、一体感がなく、寄せ集めな感じ。米団治が落語でセリフのやり取りを語り、歌手と黒衣が無言で芝居をする場面もイマイチだ。米団治は歌も披露したが、微妙?生オケの演奏で気持ちよさそうではあった。
0611 OSK日本歌劇「紅に燃ゆる~真田幸村 紅蓮の奏乱~」
用事があって休憩前の前半しか見られなかったが、そのうえで。
幸村の悠浦あやとは低い声がよく、歌も達者。だが、むやみに腹から絞り出すような発生をしていたのが気になった。
半蔵の楊琳はキャラクター作りがなんだかなあ…。変にふざけた感じ?でステキとは思えない。
物語は史実をなぞりつつ、歌やダンスが挟まる感じなのだが、盛り上がりに欠ける印象。幸村と半蔵の関係とか、佐助の恋とかをもっと丁寧に描いてほしい。全体的にそこはかとなく安っぽくて大衆演劇チック。そこが魅力でもあるのだが。
0610 「文楽応援の落語会」
「仮名手本忠臣蔵」はもともと文楽ということで、忠臣蔵ゆかりの演目を揃える企画。
トップバッターは立体紙芝居。手間がかかる割に受けないので、他にやる人がいないそうだが、確かに。でも、やりようによってはもっと面白くなるんじゃないかなあ。1ヶ月半かけて作ったという紙芝居で、忠臣蔵のあらましを解説したのだが、せっかくなら史実と仮名手本忠臣蔵の違いについても一言あるほうが親切だと思った。
二番手に早くも春之輔が「質屋芝居」。マクラで、手違いからチケット100枚を売りそびれたので赤字だとのぼやき節。なんだか話にも身が入っていないような。
米二の「蔵丁稚」は手堅く。文楽や歌舞伎よりも先に落語を聞いていたので、逆に芝居を見て「落語と同じ」と思ったとか。
露の新治の「中村仲蔵」は聞き応えたっぷり。よくぞ20分であそこまで聞かせてくれました。仲蔵もいいが、奥さんがまたステキだった。
中入りをはさんで、英太夫を招いてのトーク。仲野先生の義太夫披露はご愛嬌だが、ちと長かった。内海英華が太棹三味線でお付き合いしたのにびっくり。なんでもなさるのね。
生寿の「仮名手本天神祭」は新作落語で討ち入りの前、天神祭で吉良上野介と大石内蔵助が遭遇していたという。通常は25分の話をぎゅっと縮めて15分くらいだったが、随所で笑いが。
トリは春蝶の「七段目」。マクラで世界の3代目の話は食傷気味だが、本編は悪くなかった。これまで見た春蝶のなかでは一番だったかも。
2016年6月10日金曜日
0609 ピッコロ劇団「メトミミトヤミー小泉セツと八雲の怪談ー」
現実と幻想ら過去と未来が錯綜する不思議な舞台。耳なし芳一や雪女、未来の子供達、ネコやハト、蛍が現れたり。松山弁?と八雲のカタコトの日本語が聞きづらく、集中がそがれる。八雲のキャラクターも好感が持てず、共感できなかった。
2016年6月7日火曜日
0606 文楽鑑賞教室 A
「夏祭浪花鑑」
靖太夫の三婦がそれらしかった。
咲甫太夫の団七、出だしの「おおい、おおい」で遠くから息せき切って近寄ってくる様がはっきり。立体的な語りだ。
「コリャコレ男の生面を」のところで、見台をバンッとはたくのが勢いにのってよかった。
対して英太夫の義兵次は声が小さいのは老人だからと思えなくもないけれど、憎らしさが薄い。殺されるほど酷い人かなあという感じで、最後の「悪い人でも舅は親」のセリフが中ぶらりんな感じだった。
人形は勘十郎の団七がきびきびとした動きでひき付ける。和生の義平次がそれほどでなかったのは、語りのせいか。
2016年6月5日日曜日
0604 文楽鑑賞教室 B
「二人三番叟」
清志郎率いる三味線がアグレッシブで、すごくテンポ速くてびっくり。
「夏祭浪花鑑」
釣船三婦内の段
口が芳穂太夫と清丈、奥が呂勢太夫と燕三、アトが希太夫と龍爾。3人分割はそれぞれが短すぎでは。
人形は三婦女房おつぎの玉佳が、人形よりも表情豊かで微笑ましい。
呂勢太夫は出だしはやや精彩を欠くが、おつぎとお辰など語り分けがくっきり。
長町裏の段
睦太夫の団七に英太夫の義平次、三味線は宗助。
睦はスキッとした男前な感じで、真面目ないい人そう。が、団七としてはどうなのか。(2回目に見たときはそれほどでもなかった)
2回目は社会人のための鑑賞教室。普段の解説とは違って住吉鳥居前の段のさわりを春野恵子のナビ付きで。
なぜか口上の黒子(勘市)をフォーカスしていて、顔出しでインタビューしたり、ツケ打ちの解説をしたり。
スケルトンの手すりで足遣いの動きが見えるのが面白い。
希太夫の語り分けはちょっと区別がつきにくかったかな。
三味線の引き分けで、「551があるとき~」「ないとき~」というのが面白かった。龍爾のキムタクが観られないのは残念な気も。
2016年6月4日土曜日
0603 イキウメ「太陽」
近未来のSFで映画化もされたというので、映像の方が向いているのではと思ったが、ミニマムなセットで世界観を表現していた。
ウイルスに感染し、太陽を浴びれない代わりに、老いず、病気にもならない新人類NOX。独善的で、他者への共感や情緒が欠如しているNOXの嫌みな感じがうまく表現されていてムカッとする。
虐げられるものになってしまった旧人類の鉄彦はNOXに憧れる。学校で習うことなんて大したことない、生活に根ざした知恵が尊いのだといわれても、そんなことを言えるのは知っているからで、知らない俺には分からないと突き放す。なんだか、高学歴にコンプレックスを抱きながらむやみに崇めるひとを連想してしまった。
実の母であるNOXの勧めで、自らもNOXになることを選択する結。変化の後では過去のことなど忘れてしまったかのように振舞う。捨ててしまったものの大きさには気づくことがないように。芸術が生まれるのは、歳をとり、痛みや苦しさから逃れられない旧人類のほうで、NOXは新しい芸術を生み出すことができず、子孫も残せないというのは象徴的だ。私たちの世界も、障害をすべて除いてしまったら、それは幸福ではなくなってしまうのかも。
0603 毛皮のマリー
美輪明宏で一度は観ておくべきと思っていたのだか、20年前に観たかった。常に片乳を出している衣装なので、身体の弛みがどうしても目に付いてしまうのと、動作にキレがないのだ。若いころだったら、一見美しく見えるなかにグロテスクがにじむという感じだったろうが、今はただグロテスクなだけ。頼みのセリフも、息絶え絶えといった感じで、酔えなかった。美少女役の若松武史もだいぶ年配なので、どうしたって役柄に無理がある。
欣也役の勧修寺保都はピュアで嫌みのない美少年ぶりに好感。名もない水夫の木村彰吾はなんだか変なしゃべり方で違和感がぬぐえなかった。
2016年6月3日金曜日
0602 南河内万歳一座「肥満男」
いやあ、笑った。
同窓会で集まって、顔は分かるのに名前が思い出せなくて、なぜかあだ名で呼び合うのだか、呼ばれるほうは覚えがなくて、本当に同窓生なのか確信が持てないまま船が出港。明らかに年齢層が違ったり、高校生?の演劇部が混ざって稽古していたりと、ドタバタが面白いのは間がいいのだな。
最後まで幹事の中山田が現われず、謎のままなのだか、その余韻もまたいいのかも。始まりと終わりが分からない、というのは、前回の「似世物小屋」にも通じるのか。
0529 VOGA「Social Walk」
竹藪や木々に囲まれた野外劇場はあいにくの雨だったけど、風情があっていいものだ。
2人の少年の1人の少女、白のブラウスに黒いスカートという制服のような出で立ちの女たち、4組の夫婦が舞台上を整然と立ち回る。上がる、下がる、東入る、西入ると唱えながら、たぶん本当にその方向へ向かう。ときおり京都の地名が入ったりして、地図を移動しているよう。
新婚夫婦や生まれなかった子どもなど、抽象的なモチーフが散りばめられ、物語は具体的ではないのだが、空間と相まって不思議な時間が流れる。カッパで視界が遮られたのと、寒くて縮こまって集中力がなくなっていたのだが、引き込まれて途中で帰りたくはならなかった。(動くのが面倒くさいとかケーブルが動いてなくて帰れないというのもあったけど)雨に映るライトとか、雨だからこその美しさもあったように思う。けど、今度は晴れた日にみたい。
0528 わらび座「奇想天外歌舞音曲劇 げんない」
休憩10分を挟んで2時間、飽きることなく楽しめた。曲もダンスも感動するほどではないけれど、よく出来ている。
杉田玄白に「解体新書が発行できたのは、清濁併せ呑む田沼時代だったから。為政者が変わればできなくなる」というようなことを言うシーンがあって、現代を暗示しているよう。平賀源内について、成功したかはともかく、たくさんの種を蒔いた人と評していたのが心に残った。
2016年5月24日火曜日
0523 劇団伽羅倶梨「LaLaフレンズ」
過去と現在を行ったり来たりするのだが、話の盛り上がりがないまま場面転換が続くのが退屈。
中学時代と、中年になった現在と、それぞれ別の役者が演じていて、大して似てないのに同一人物に見せたのには感心した。
0523 「1789-バスティーユの恋人たち―」
フレンチロックがいかなるものか初めて聞いたが、何だかちょっとダサい?歌詞のせいかもしれないが、王宮のシーンにはそぐわない安っぽい感じ。「俺たちは友達だ」とか、歌詞も鳥肌モノでがっかり感が。踊りは振りが格好いいし、ダンサーのレベルも高くて見応えあり。群舞から、クライマックスの高揚感には心揺さぶられた。
花總まりのアントワネットは気品があって美しく、母の情愛や王妃の威厳も感じさせた。
2016年5月23日月曜日
0522 こぐれ塾「広島に原爆を落とす日」
つか作品に近づけるべく、後の加筆部を除いての上演だというのに、2時間15分くらいあった。途中、山崎の着替えのためと思しきダンスシーンがあったけど、せいぜい5分ほど。どこが長くなったのだろうか。
ディープ山崎の田谷野亮は滑舌が悪いのが惜しい。芝居が進むにつれて持ち直してはいたが、センテンスの終わりが不安定だった。とはいえ、あれだけのセリフを澱みなく、緩急つけて語り切ったのは立派。自信と不安を揺れる人物描写もよく、最後の長ゼリフは揺さぶられた。
夏枝の永池南津子は清廉な雰囲気で、彼女がいたから上演を決めたというのがうなづける。
土人のくだりなど、差別発言は酷いのだが、この場面があることで、原爆投下の実験の地にドイツではなく日本が選ばれた理由を考えてしまう。
敗北を悟ったヒトラーが原爆を引き受けようとする様が何だか格好よく見えたのは、脚本がそうなのか、役者のせいか。兵隊役の役者も皆良くて、充実した舞台だった。
2016年5月20日金曜日
0520 がっかりアバター「THE KING OF THEATER」
下ネタの連発が不快で、あまり楽しめなかった。排泄物を食べるとか、勃起したペニスを露出させている男とか、どういう意図でやっているのか知らないが、嫌悪感しか感じられないし、その嫌悪感が何かの効果を生んでいるとは思えない。レイプされる少女が缶コーヒーをもらったくらいで心を許すとか、ステレオタイプな描写も不愉快。中二か。
宙乗りしたり、最後にセットを崩したりといろいろ頑張っているのはよくわかった。ただし、ラストがカタルシスだったかというと、私には伝わらなかった。
2016年5月19日木曜日
5月18日 文楽公演「絵本太功記」
本能寺の段
口を小住太夫と清公、奥を咲甫太夫と宗助。
小住太夫は今日が初日のはずなのに、安定感がある。
咲甫太夫は前半の酒宴の場面は歌うように華やかに、謀反が明らかになるときっと正面を見据えてキリッと、語り分けがはっきりしてた。
妙心寺の段
口を芳穂太夫と清丈、奥を呂勢太夫と錦糸。
今一つ楽しめなかったのは、迷い揺れる光秀に共感できないからかも。今回は上演されなかったが、春長の人物像も光秀を試すにしてはやりすぎだし、そりゃ逆ギレされて殺されるよと思わなくもない。逃げられないと観念するのま早すぎ。というわけで、呂勢太夫は丁寧に語っていたと思うのだけれど、浸れなかった。錦糸が掛け声を結構入れて、派手な演奏。
夕顔棚の段
睦太夫と清友。
ちょっと声がかすれてたようで、女性の声がちょっとキツかった。
尼ヶ崎の段
前を文字久太夫と藤蔵、後を津駒太夫と清介。
藤蔵の三味線は掛け声もしきりと、アグレッシブ。
津駒太夫&清介は前半盛り上がりに欠けたが、後半は音楽的に盛り上がり聞き応えがあった。
2016年5月14日土曜日
0513 ブロードウェイミュージカル「スウィーニー・トッド」
大竹しのぶのミセス・ラヴェットはしたたかでキュートでとてもはまっているのだが、キャラクターを優先するためか地声で歌うところが多く、音程が外れているように聞こえた。
市村正親はさすがの存在感だが、やや軽さに欠けるか。
武田真治のトバイアスは子役だったのね。ちょっと足りない青年に見えてしまった。
全体的に陰惨で重苦しい雰囲気のなか、アンソニーとジョアンナの恋が一服の清涼感。なんであんなに簡単に恋に落ちちゃうのか不明だけど。
0513 松竹新喜劇
藤山寛美二十七回忌追善ということで、冒頭に寛美のVTR上映と出演者一同のご挨拶。
「夜明けのスモッグ」
扇治郎が寛美の当たり役だったというスモッグ。浮浪者でとらえどころのない人物だそうだが、育ちの良さが邪魔をしてそんな風に見えないのが惜しい。表情など寛美に似ているなあと思うところはたびたびあったけれど、残念ながら面白さとはまた別。客席は大いに受けていたけれど、私はちっとも笑えなかった。
「大当たり神津の富くじ」
天外が大店の息子、伊之助なのだが、つっころばしが似合わない。薄く白塗りにして目じりに紅を入れたりしているのだけど、仮装みたい。
2016年5月13日金曜日
0512 THE CONVOY SHOW「1960」
50歳代の男性6人によるダンスかと思ったら、意外と芝居のパートが多かった。あと歌。ハモったりもしているが、やはり本職ではないので聴かせる域にはない。ダンスと歌ならまだしも、歌だけのパートは正直退屈だった。
キレのいい踊りはよくそろっていて、振り付けも格好いいので、踊りをもっと見たい。
年の割にこんなにできる、というのをやたらアピールしているので期待しすぎてしまったのか。物足りなく感じた。
2016年5月10日火曜日
0509 はなしか宝塚ファン倶楽部「ME AND MY GIRL」
宝塚にちなんだ落語3席ののち、落語家によるミュージカル。
落語は松五「動物園」(これはオリジナルのまま)、生喬「書割」、春雨「ん廻し」。
ミュージカルは正直、本家宝塚より笑ったし楽しかった。生寿のサリーが愛嬌があってかわいいし、生喬のマリアも威厳があって美しい。ダンスと歌はまあ…なのだが、これもご愛敬。一生懸命なのに笑えてしまう。1時間45分ほどに凝縮されて、テンポよくまとまっていたのもいい。脳内のミーマイが噺家版に書き換えられてしまいそう。
0509 宝塚花組「ME AND MY GIRL」
二枚目というのも損なものだ。主人公の2人ともが伯爵/淑女になってからのほうがしっくりくるので、物語の大部分が似合わない服を着ているよう。明日海りおのビルは前半の下町っ子が無理をしている感じで、ちっともおかしくない。これはサリーの花乃まりあも同じ。精一杯下品に振る舞っているのだが、蓮っ葉な感じというか子供っぽくてチャーミングさに欠ける。何でビルがサリーにぞっこんなのかさっぱり分からん。楽しそうに演じていたのはとてもよく伝わってきたけれど。
ジャッキーの柚香光は女っぽく品を作ってみたりするのだが、足さばきが雑なのが惜しい。
0506 ミュージカル「グランドホテル」
GREEN版を所見。
男爵の宮原浩暢、歌が上手いと思ったらクラシックの出身だそう。
エリザベータの安寿ミラはピークを過ぎたプリマの悲哀や焦りはよく出ていたが、体つきがバレエダンサーらしくない。ジゼルの衣装がやせぎすの体に似合わなくて辛かった。
フレムシェンの昆夏美は溌剌としたかわいらしさはいいのだが、小柄なせいか子どものようで、社長に手籠めにされそうになるところが児童虐待のように見えてしまった。オットーと並んだときのバランスでキャスティングされたのだろうか。
オットーは中川晃教。上手いのだが、主役にしては地味な役だ。男爵のほうが格好いいし、見せ場もあった。
スペシャルダンサーという触れ込みの湖月わたるの踊りはうーん。死神なのですか。
最後、オットーとフレムシェンがパリに行くことになり、ちょっと希望が見えたと思いきや、スーツケースを奪われ打倒されるのでなんで??と思っていたら、戦争の脅威が近づきつつあることを示すラストなのだそう。
0506 OSKレビュー春のおどり
「花の夢 恋は満開」
和物なのだが、歌謡曲のような音楽が使われ、日舞らしさがあまりない。
廓の物語なのに、なぜか火消しが出てきて??
扇を使った早い群舞がきれいにそろっていたのは凄かった。
「Take the beat !」
様々な種類の音楽で、踊り踊り踊り!を魅せる。高世麻央のソロもよかった。
2016年5月5日木曜日
0504 地点アンダースロー「かもめ」
チェーホフ作品をバラバラにして再構成した感じで、絵画に例えるならキュビスムのようなイメージ。
音節をイレギュラーに区切ったり、言葉のイントネーションが突飛だったり、突然叫び出したりするのがこの劇団のスタイルらしいが、ざわざわするというか、不快で、落ち着かない。喜劇というのにちっとも笑えない。
コンテンポラリーダンスのような、オフバランスの動きやポーズ、独特の台詞回しをこなすのは役者に力量がいるのだろうが、個性は不要になるように思った。
2016年5月3日火曜日
0503 宝塚宙組「ヴァンパイアサクセション」
現代を生きる吸血鬼の話なのだが、吸血鬼というより不老不死の苦悩なのか。本気で人を愛し、愛されれば人間になれるという設定がご都合主義的だし、700年も生きてきて初めて恋に落ちる相手にしては、女子大生のルーシーには魅力がないというか、それだけのエピソードが描かれていなかったように思う。
真風涼帆のちょっと苦みのある二枚目ぶりは堪能できたが、二枚目がちょっと外したことをやるだけで笑えると思うのは大間違いだ。コメディタッチという割にちっとも可笑しくない。冒頭、南北戦争や第二次世界大戦の写真に同じ人物が映っているといって、変な合成写真が映し出されたときの笑いは面白いからではなくて失笑だ。
テーマ曲のデュエットは、特別歌が上手いわけではなかったが、声の相性がよいのか悪くなかった。
0430 大蔵流五家狂言会
同じ流派ながら、家ごとの芸風の違いが観られて興味深かった。
善竹家の人々は朗々とした声が私は好きだ。分かりやすくサービス精神にあふれているのが茂山千五郎家か。
小学生でも知っている「附子」というコミカルな演目を、一番硬い芸風の山本家が演じたのだが、なんだか余計に面白く感じた。
0429 唐組「秘密の花園」
初の紅テント体験は季節外れの寒波で寒かった。
サラリーマンのアキヨシは日暮里の安アパートで暮らすいちよとプラトニックな恋愛関係にある。いちよの夫もアキヨシの金を当てにして公認している関係。
一線を踏み越えるのかの危うさや、生と死、プラトニックと肉欲が混然として不思議な感覚に襲われる。アキヨシの姉もろはといちよ(1人2役)で、どちらがどちらかもあやふやになってくる。本水を使う演出もあり、休憩をはさんで2時間あまりの芝居は長いと感じなかった。
最後、舞台の後ろの壁が開き、去ってゆくいちよ。木の陰で見えなくなるまで歩いていく姿から目が離せなかった。
0428 鄭義信 三部作「たとえば野に咲く花のように」
舞台は九州らしく、方言がキュートだ。
ともさかりえ演じる満喜は戦争から帰ってこない婚約者を忘れられないまま、ダンスホールで働く。凛としたたたずまいで存在感が抜群。
満喜に言い寄るライバル店のオーナー康雄は戦争で顔に傷を負い、後に心にもトラウマを抱えていることがのちに明らかになる。山口馬木也はそういう屈託のある男のぎりぎりした感じが上手い。
ただ、あれだけ言い寄っていたくせに康雄が逃げてしまうのが解せない。戦地での非道な行いがばれてしまったとはいえせっかく満喜は受け入れる気持ちになったのに。
最後、ダンスホールの女たち3人とも妊娠して、強く生きていくというラストがやや強引に感じた。
あと、康雄の婚約者あかね(村川絵梨)はわがままなお嬢さんぶりがすごくよかったのだが、アル中という設定は必要だったろうか。
海上保安官?といい仲になる珠代(池谷のぶえ)が逞しさとかわいらしさのある女で魅力的だった。
4月25日 こんぴら歌舞伎 昼の部
「毛谷村」
愛之助の六助に壱太郎のお園。巡業と同じ顔触れで慣れているのか、板についた様子。
子役がかわいい。いつもながら松嶋屋の芝居は子役がいいなあ。
「口上」
鴈治郎をはじめ、総勢7人の口上は慌ただしくなくアットホームな雰囲気。
藤十郎が披露口上を述べ、「では中車さん」と名指しで振ってしまうおおらかさ。千秋楽だからといって特に変わったことは言わなかったようだが、琴平のボランティアやスタッフへの感謝を口々に述べていたのが印象的だった。
「幸助餅」
松竹新喜劇から取り入れたという人情話。あまり笑いはなかったように思うが、最後にほろりとさせるいい話。鴈治郎の良さが出る作品だ。
中車の雷が歌舞伎らしい関取で立派。
亀鶴が女房と、毛谷村の敵役とはがらりと変わった役どころで芸達者ぶりを見せた。
4月24日 こんぴら歌舞伎 夜の部
「あんまと泥棒」
中車のあんまに愛之助の泥棒。小悪党は愛之助のニンかと思いきや、それほどでもなく。猿之助とやった時よりもあっさりした印象。泥棒を上方出身にして関西弁にしたのがまずかったのか。
「鷺娘」
扇雀の鷺娘は骨太で繊細さに欠ける。薄暗い金丸座の空間で舞う様は幻想的でよかった。
「封印切」
鴈治郎の忠兵衛、壱太郎の梅川、愛之助の八右衛門。
花道からの忠兵衛の出で、「がんじろは~ん」という掛け声がいいなあ。頼りない、運に見放された色男の風情があり、期待以上。一方、梅川は情が薄い感じで泣けず。八右衛門も突っ込みが足りず物足りなかった。
2016年4月23日土曜日
0405 真紅組「おしてるや」
道頓堀掘削にかかわる人々の群像劇。小劇場であれだけの人数を描くのは大したものだ。ほとんどセットもないなか、舞台の床を外して堀にする工夫。最後、舞台前方から後ろまで一本の筋ができると堀に見えてくる。
主人公である道頓の甥がウジウジした男で、観ていてイライラするのは狙いだろうが、物語の運びが遅い感じがしてじれったい。遊女歌舞伎の一座の踊りは長い割に完成度が低く辛い。しかもなんで曲が「君の瞳に恋してる」なのか。日本語の歌詞をつけていたようだが、違和感があった。
2016年4月21日木曜日
0420 劇団☆新感線「乱鶯」
いのうえ歌舞伎ブラックと銘打ち、いつもの新感線よりも大人な、ビターな作りだそう。ばかばかしいギャグは抑えめだった。
1幕は話の運びが冗長でダレたが、2幕はスピード感が増して楽しめた。
ただ、救いがない話だ。大東駿介演じる勝之助は人を疑うことをしらないせいか、思慮が浅く、計画が盗賊方に漏れて、結果お店の人たちも自身も惨殺されてしまう。十三郎(古田新太)が盗賊を皆殺しにして復讐を果たすが、最後、黒幕といざ対決というところで幕。カタルシスが足りず、もやもやした気分が残った。
立ち回りが冒頭とラストにあるのだが、むやみに血が飛ぶのが生理的に嫌なのと、あまり代り映えしない気がして、長く感じた。これが楽しみという観客も多いのだろうけど。
勝之介の大東が、むやみにやる気があるが、能力が伴わず空回りする役人を好演。稲森いずみの居酒屋のおかみも、ちゃきちゃきとした江戸の女房が気持ちよかった。古田は足を洗った元盗賊がはまるし、存在感はさすが。立ち回りの動きがやや重かったのは年齢のせいか。
2016年4月17日日曜日
0415 「魔術」
中山美穂の初舞台だそう。足首の細さに目を奪われた。
セリフの言い方や間の取り方でややぎこちなく感じるところもあったけれど、あの声で「魔術よ!」というのが印象的だった。澄んでいるのだけどちょっと舌足らずというか、コケティッシュというのか、中山美穂の声と話し方。天然なのか、夢見がちなのか、突拍子もないことを言い出す女という役どころには嵌っていたように思う。
話の筋は幻想と現実が入り混じる、摩訶不思議な空間に??を浮かべながら、けれど心地よい時間。萩原聖人の深刻ぶる男、勝村政信のひょうひょうとしたオッサン(ビールをこぼすのはほどほどにしてほしいかった)はさすがの上手さ。橋本淳の若い男が一人だけ陽でいいアクセントになっていた。
2016年4月10日日曜日
4月10日 歌舞伎女子大学「妹背山女庭訓に関する考察」
講義のタイトルのようだが、芝居仕立てで妹背山女庭訓の4段目を解説する。
憧れの女性の先輩の気を引くために先輩の好きな妹背山女庭訓について勉強するとう設定がしっくりこないと思って調べたら、初演時は彼氏に浮気されたOLが主人公で、お三輪に共感する話だったらしい。
惚れた男に浮気され、嫉妬に狂うお三輪。入鹿邸で官女らに虐められた挙句、突然現れた大男に刺され殺される理不尽さが理解できないという主人公に、蘇我入鹿vs藤原鎌足の壮大なバトルの中で死なざるを得なかったお三輪の切なさが鍵だと解説する先輩。面白く観たけれど、普通に4段目を観たら、お三輪がなんで殺されるかは分かるよなあ…と思った。ただの三角関係ならトレンディドラマや韓流ドラマだと一緒だけど、妹背山女庭訓はちょっと違うということを伝えたかったのはよく分かったけれど。
2016年4月3日日曜日
4月3日 文楽公演 第2部
「鹿殺しの段」
亘太夫と錦吾。簾内の短い段。鹿がかわいい。
「掛乞の段」
始太夫と龍爾。
始太夫は体つきのせいか立派な感じ。クールな龍爾との対比が面白い。
「万歳の段」
睦太夫と清馗。コミカルな場面でホッとする。睦太夫はちょっと硬いか。
「芝六忠義の段」
英太夫と宗助。
それなりに大事な場面のはずなのに、英太夫の語りが気の抜けたようで盛り上がらず。最初の口上で宗助の名前間違われるし。
「杉酒屋の談」
咲太夫の代役で咲甫太夫と燕三。
急な代役とは思えないくらい落ち着いた様子。お三輪は可憐でよろし。
人形は勘十郎が出てくると舞台が映える。橘姫の勘弥も求馬の清十郎もニンにあってる気がする。
「道行恋苧環」
お三輪の津駒太夫、求馬の咲甫太夫、橘姫の希太夫と咲寿太夫、小住太夫。三味線は寛治、清馗、寛太郎、燕二郎、清允。
華やかな道行。お三輪は津駒太夫より希太夫か咲甫太夫のほうがあっている気がする。
「鱶七上使の段」
文字久大夫と清志郎。
こういう時代物の語りは文字久太夫の得意とするところだが、今回は特に立派に感じた。入鹿の大笑いで客席から拍手が。前日の靖太夫と違って余裕があった。
「姫戻りの段」
芳穂太夫と清丈。
「金殿の段」
津駒太夫と団七。
最近、歌舞伎で見たばかりなので、比べると、お三輪の可憐さとか、官女の意地悪さとかがちょっと足りない気がした。
勘十郎のお三輪は可憐なのだけど、津駒太夫の官女が上品なので、対比がはっきりしなかったせいか。
4月2日 文楽公演 第1部
妹背山女庭訓の通し。国立文楽劇場の前の桜も満開でいい陽気だ。
「小松原の段」
久我之助に三輪太夫、雛鳥に南都太夫、小菊の靖太夫、桔梗の咲寿太夫、玄蕃の文字栄太夫、采女の亘太夫に三味線は喜一郎。
靖太夫の小菊がコミカルなかわいさがあってよかった。
「蝦夷子館の段」
口を小住太夫と清公、奥を松香太夫と清友。
小住太夫の声がすごく前に出ている。
「猿沢池の段」
津国太夫と団吾。
「太宰館の段」
靖太夫と錦糸。大笑いで顔を真っ赤に、血管が切れるんじゃないかという勢いで語ったのに、思わず客席から拍手が。
「背山妹山の段」
背山は千歳太夫の大判事に文字久太夫の久我之助、三味線は藤蔵と富助。
妹山は呂勢太夫の定高に咲甫太夫の雛鳥、三味線は清介と清治。
いやあ、すごかった。2時間近い長丁場で途中寝ちゃうという話も聞いていたのだが、興奮しっぱなし。特に、大判事と定高が出てからはもう。なにより両床の迫力というか、緊張感というか、心揺さぶられた。舞台も凄いし、床も凄くて、目がもう一つほしい気分。下手側の席だったせいか、妹山のほうに特に心が動かされた。心情的にも、まっすぐに忠義を訴える大判事に対して、本心を隠して入内を進める定高のほうが複雑な心情に気持ちが動かされるのかも。もう泣くしかないって感じ。
3月20日 うめだ文楽
トークは三浦しをん。期待していたのだが、司会の関テレアナウンサーが空回りしていてうっとおしい。ぽつりぽつりと挟む三浦のコメントが面白かっただけに、もっとちゃんと話を聞きたかった。
「傾城阿波鳴門」
小住大夫と寛太郎の若手コンビが奮闘。住大夫さんが観にいらしていて緊張したせいか、ちょっと硬い感じもあったけれど、全体として悪くはなかった。お鶴やお弓など高音域はちょっと聞き苦しかったかな。小住大夫は肩衣にまで汗がにじんでいて、驚いた。
2016年3月27日日曜日
0325 ミュージカル「ジキル&ハイド」
冒頭から病院での審査の場面までは盛り上がりがなくダレたが、石丸幹二のソロあたりからは聞きほれた。歌が上手いのはもちろん、声が素晴らしい。ジキル博士の紳士ぶりと、ハイドになってからの野性味。ジキルの邪魔をした人々を殺害するのは、ジキルの隠れた本性とも見える。
ルーシーの濱田めぐみ、エマの笹本玲奈も対照的な2人で、ともに歌が達者。と
カーテンコールの2回目くらいから客席総立ちで(私はそこまでではなかったが)観客の満足度は高かったよう。石丸もガッツポーズをしたり、最後、客席に投げキッスをしたりするサービスも。
侯爵夫人役の塩田朋子、出てきた時から貴婦人の格好なのに身分が低そうな立ち居振る舞いに違和感があって、役作りなのか何なのか考えてしまった。
2016年3月25日金曜日
0324 MONO「裸に勾玉」
弥生時代の言葉をモデルにしたという、濁音のない独特のセリフ回しに戸惑うが10分もすると慣れてきた。
嫉妬などの漢語や英語など、普段何気なく使っている言葉が通じないのを笑いにするなど、セリフのやり取りが面白い。
主人公の妻や上司、三兄弟の三男など、うまく立ち回って周囲に適合してしまう人々と、愚直に心の良心に従う人たち。
後者でいたいとは思うけれど、いざとなったら自分はどちらになるのだろうと考えさせられた。
三男の妻だが、後に主人公らと行動を共にする踊り子の存在が印象的だった。
2016年3月22日火曜日
0320 文楽 京都公演Bプロ
「絵本太功記」
夕顔棚の段は睦大夫と錦糸。同じ時代物だが、2月公演ほどの迫力は感じられず残念。
尼崎の段の前を文字久大夫と清志郎、後を津駒大夫と宗助。
津駒大夫はたまにセリフにはっとするものの、全体としては気持ちが盛り上がらないのはなぜだろう。
「日高川入相花王」
靖大夫の清姫に南都大夫の安珍、咲寿大夫のツレ、三味線は清馗、清丈、清允。
靖大夫の清姫がかわいらしい。
2016年3月19日土曜日
0319 宝塚月組 「激情―ホセとカルメン―」「Apasionado!!Ⅲ」
珠城りょうが主役のドン・ホセを演じ、事実上のトップお披露目。客席の拍手がいつもより大きく熱かった。背が高く見栄えがするが、運命の恋に翻弄される男にしては淡々としているか。後のショーのほうが堂々とした風格を感じさせた。両方ともスペインが題材で代り映えがしないのは、観ていて飽きる。
カルメンの愛希れいかは男を堕落させる魔性の女という設定が前回の「マノン」と似ていて、これも代り映えせず。カルメンの強烈な押しの強さが足りないのか、ベトナム人のほうが似合っているように思った。
0318 野田地図「逆鱗」
水族館が舞台で、水槽のアクリル板のような装置の屈折率の不思議で背景が歪んで見える。泳ぐように舞台上を移動する演出など、水中を感じさせる。人魚をめぐる騒動から、いつの間にか太平洋戦争末期の人間魚雷の話になる。こんなにストレートに戦争を扱ったことに驚いた。
松たか子、阿部サダヲ、瑛太、井上真央といった実力のある役者の個性がぶつかりあい、緊張感のある舞台だった。
0318 宝塚月組「こうもり」「THE ENTERTAINER!」
「こうもり博士の愉快な復讐劇」という副題にあるように、オペレッタ「こうもり」を宝塚風にアレンジし、こうもり博士ことファルケが主人公に。
ヨハン・シュトラウスの曲素晴らしいのはもちろんだが、トップの北翔海莉の確かな歌唱力が聞かせる。ポスターで見るとこの楽しさが伝わらないのがつくづく惜しい。確かな芸に裏打ちされた上質なエンターテインメントで、1時間半ほどの舞台を飽きさせることなく満足感が高い。
アイゼンシュタイン侯爵家の侍女アデーレの妃海風も、北翔ほどではないにせよ歌が達者。アイゼンシュタイン侯爵の紅ゆずるはクールなルックスよりもコミカルな演技に魅力を感じた。
ショーの「THE ENTERTAINER」は北翔が芸達者ぶりを遺憾なく発揮し、タップダンスあり、ピアノの弾き語りありと盛りだくさん。2番手以下の人たちもそれぞれ見せ場があって。
0317 工藤俊作プロデュースプロジェクトKUTO-10「骨から星へ」
仕事や人生に疲れた中年男2人が駅のベンチに座っている。「電車に乗ることは不自然だ」という話からぽつりぽつりと過去が明らかになっていく。
離婚した妻が引き取った思春期の娘と話したいといっても、会話がすべて元妻にさえぎられる様などはリアルな感じ。
望めば電車は来る、疲れたら乗らなくてもいいというのは、なんだか当たり前すぎてあまり共感できなかった。
認知症の高齢男性と、若いころの恋人の話が素敵だった。
2016年3月17日木曜日
0313 松本雄吉×林慎一郎「PORTAL」
奥に向かって傾斜になった舞台は直線を組み合わせ、独特のリズムが異空間を感じさせる。
陣取りゲームと地図製作を重ね、次々と場面が入れ替わる。折々で入る志人によるラップ調の語りがアクセントになっている。
不思議な感覚にたゆたう90分は心地よかった。
2016年3月12日土曜日
2016年3月11日金曜日
0310 清流劇場「賢者ナータン」
人物関係が複雑なのだが、パンフレットの相関図が助けになった。アラブ服のような白地のだぼっとした衣装に、宗教ごとにマークが描かれ、顔は丸い白塗りに女性のみ頬紅と口紅を施す。3つの宗教が交錯し、主人公のナータンを女優の林英世が演じるなど、役と役者の性別がバラバラで、誰が誰だか分からなくなりそうなところ、衣装とメイクの工夫のおかげでよく分かった。
物語の舞台は12世紀のイスラエルだが、舞台の後ろには現在のパレスチナらしき風景が映し出され、今と共通する問題であることが示される。ドイツ人の作者がキリスト教徒を最も独善的で融通の利かない存在として描いているのが興味深い。
宗教の対立を寛容さで乗り越える。宗教のまえに一人の人間であり、そのことによって許し合えるでは。生まれによって決められる宗教が実はあやふやなものだということが分かるラスト。けれど、レヒャと神殿騎士は恋仲になったのに、兄妹と分かってがっかりしないのか。
ナータン役の林英世は膨大なセリフをこなして、説得力のある語り。レヒャの泉希衣子は純真な少女の風情を出して好感が持てた。
初日だったためか、台詞を噛むところが散見されたのが惜しい。
0306 伊藤えん魔プロデュース 「兄貴歌/アニソン!」
昭和のアニメキャラが中年になり、人気がなくなり腐っている。ルパン三世と次元、バカボンのパパ、ドラえもんという顔ぶれがシュールだ。
おそ松さんとして再ブレークしたおそ松くんが勝ち組なのはまだしも、オスカルとバンコランが人気者の代表として登場するのは不思議だ。
新旧のアニメソングが満載で、ライブとして楽しかった。
0305 地点「スポーツ劇」
舞台は大きな人工芝の坂になっていて、前方にネットが張られている。テニスコートのような雰囲気。
役者は坂を駆け上っては滑り落ちたり、反復横飛びをしながら台詞をしゃべったりと、運動量が半端ない。役者たちは大変だろうなあと感心。
音節の途中で区切る話し方はリズムとしては面白いが、中身がまるで頭に入らない。「パッパー」と「マッマー」という叫びだけが耳に残る。
2時間の長舞台はしんどかった。
0305 ダヴィデ・ヴォンパク「渇望」
カニバリズムがテーマだそうだが、のっけから出てきたダンサーが唾を垂らしたり、飛ばしたりするのに嫌悪感。
女性の胸や男性器、尻を出したり、肉弾戦を繰り広げたり………。
壁の後ろで見ている男女。はじめは頭だけだが、次第に姿を現したかと思うと、また消える。場面が変わると今度は尻だけを出している。よく分からん。
0304 Dolly & Rolly LIVE OSAKA ~とにかく夢で逢いまSHOW~
キムラ緑子が歌手ドリーに扮する、芝居仕立てのライブ。ミュージカルナンバーやジャズ、ロック、昭和歌謡など多彩な歌を表現力豊かに歌う。歌が上手いのは無論だが、歌によって別人のように色を変えられるのは役者の本領なのだろう。
共演のローリー。ギター上手いなあ。魅せる。
0229 ETERNAL CHIKAMATSU
「心中天網島」を題材に、現代と江戸時代の芝居の世界が交錯する。美しい舞台だった。
冒頭、ニューヨークの街並みや、リーマン破たんの映像が流れ、金融恐慌でハルの人生が転落したことを示す。
舞台は現代大阪の歓楽街。売春婦ハルを演じる深津絵里がすごみのある演技。借金を返すために身体を売るのだが、したたかさと繊細さが見え隠れする。
恋愛関係にある妻子持ちの男、ジロウを中島歩。軽薄そうで、なぜハルがこんな男に入れあげるのか分からない。が、治平衛も頼りない男なので、その現代版と思えばこんなものか。
ジロウの兄に手切れ金を渡され、自暴自棄になってさすらううちにハルは蜆川で七之助演じる小春と出会う。2人並ぶと、七之助でかっと思ったが、だんだん違和感は薄らいだ。それより、アイメイクが現代風というか、私にはピエロのように見えて、最後までしっくりこなかった。
現代劇の俳優たちのなかで、七之助ひとりが歌舞伎調で、せりふ回しもゆっくりなのだが、不思議とかみ合って面白い。
江戸時代から何度も何度も心中を繰り返す小春と治平衛。見せしめのため晒しものにされ、心中は決して美しくはない。ハルは2人を止めるのだが、これは現代の価値観だろう。最後、心中を止められた小春が傘の陰に引っ込んだ一瞬ののち、七之助が白シャツにチノパンの男装に早変わりし、自殺したハルの旦那となって現れる。衣装はともかく、一瞬でメイクを落としていたのにびっくり。本水の中を歩きだすハル。悲劇で終わらず、希望を感じさせるラストだった。
0227 藤間勘十郎 春秋座花形舞踊公演
勘十郎が7番すべてに出演する活躍ぶり。
猿之助との「種蒔三番叟」は踊り上手の2人が楽しそうで、見ている方も面白い。あの身体つきなのに、女形の踊りがちゃんと女に見えるのがすごい。
「蜘蛛の拍子舞」は蜘蛛の糸をこれでもか、というくらいに投げていて、それが綺麗に広がっていた。
「二人椀久」は中村壱太郎の松山太夫と。素踊りなのに、歌舞伎で見た椀久よりも楽しめた。
踊りだけで2部通しはしんどいかと思ったが、飽きずに観られた。勘十郎の踊りは雄弁で、見物に伝わるものが多いからだと思う。
0226 青年王者館「思い出し未来」
映像の巻き戻しを見ているかのようにリピートする舞台。未来なのか過去なのか混然としてくる。照明や映像も洗練されていて視覚的にも面白い。フォーメーションのようなダンスもクオリティが高かった。
2016年3月10日木曜日
2月22日 文楽二月公演 第三部
「義経千本桜」
渡海屋の段
途中からだったが、靖大夫が立派で驚く。声がビンと前に出ていた。
睦大夫は錦糸と。三味線が尻をたたくというか、盛り立てて力を引き出したようで、今までとは違う語りを聞かせてもらったように感じた。
最後は千歳大夫と富助。安定感があるよなあ。知盛が迫力なのはもちろん、安徳天皇の幼さのなかに威厳を感じさせる様もよかった。三味線も力強く。
人形の知盛が碇とともに後ろに倒れ落ちるのは勘十郎の新趣向だそう。歌舞伎だと役者が後ろ向きに飛び込むところ、人形を放るようにくるり。
道行初音旅
津駒大夫、芳穂大夫ほか。
人形の忠信実は狐を勘弥。最初の狐はやや動きがぎこちなく、勘十郎のリアルさに及ばないと思ったが、早変わりの鮮やかさや、忠信のキレのある動き、美しい仕草には魅せられた。
2月22日 文楽二月公演 第二部
「桜鍔恨鮫鞘」
中の松香大夫と喜一郎、前の呂勢大夫と清治、切りは咲大夫と燕三。
前回の大阪公演がよくって期待値が高まりすぎていたのか、それほどとは思えず…。呂勢大夫は後半はまだしも、前半が今ひとつに感じた。
「関取千両幟」
呂勢大夫の口上は落ち着いた様子。大阪の千秋楽は気が急くのかやたら早口だったけど。「辛いけど大好きと申された浄瑠璃を文楽の床で語るのは本日が最後、心中いかばかりか…」という言葉に目頭が熱くなった。
嶋大夫の語りは全く衰えた様子がなく、つやのあるお声。もう聞かれないのかと思うとつくづく名残惜しい。まだ全然聞き足りないと思う。
終演後、舞台上で寛治、簑助から花束贈呈。寛治とは握手もしていた(大阪ではなかったような…)けど、寛治が手をほどこうとしてもなお嶋大夫はしっかりと握っていたように見えた。簑助はおとわの人形で涙をぬぐったり、嶋大夫に抱きついたりとサービス満点。会場が温まった。
そういえば、おとわの着物が縞でなく、黄色地の格子模様?になっていたのはなぜだろう。
2月22日 文楽二月公演 第一部
「靭猿」
三輪大夫の猿曳に始大夫の大名、南都大夫の太郎冠者。始大夫は立派な声で大名らしい。
先月、狂言で見たばかりだが、子猿の健気さや愛らしさは人間の子役のほうが勝っている気がする。
「信州川中島合戦」
輝虎配膳の段は口が希大夫と清馗、奥が咲甫大夫と清介に琴の清公。
越路が膳を蹴り倒すところ、うまく引っ繰り返らず、介錯が処理したのが惜しい。
お勝が琴を弾きながら訴える場面で、輝虎と直江、越路と唐衣がそれぞれ揉み合っていて、全然話を聞いてる風でないのが変な感じ。
直江屋敷の段は文字久大夫と藤蔵。
藤蔵と組んでからの最近の文字久はすごくいい気がする。攻める三味線がいい具合に盛り立てているよう。時代物があっているのもあるが、お勝のどもりが上手くて、誤解を解こうと必死な様子が胸を打った。
2月21日 二月大歌舞伎
「ひらかな盛衰記」
梶原平次景高の錦之助が休演で又五郎が代役。文武に秀でた兄、梶原源太景季(梅玉)をやっかむ弟には二枚目の錦之助よりも合っているかも。
腰元に千寿やりき弥ら綺麗どころが揃い、孝太郎は分が悪い。…と思ったら、最後、梅玉と並んだところは美しかった。
秀太郎の母延寿が厳しさの中に状を見せてよかった。
「籠釣瓶花街酔醒」
菊之助の八ツ橋が期待を上回る美しさ。見染めの微笑みはうっとりと恍惚の表情を浮かべ、観客も息を呑んで見惚れた。
吉太郎の次郎左衛門の惚けた表情も過不足なく。ただ、一場の最後、「宿に帰るのが嫌になった」の台詞に「気持ちは分かる」と大向こうがかかり、うんざり。やたら「二代目」と言っていた人もいたなあ。襲名披露でもあるまいに。
菊五郎の栄之丞はややくたびれた感じで色男に見えず。菊之助と並ぶと年の差が歴然で、この2人親子なんだなと現実に引き戻されてしまう。
愛想尽かしでは、八ツ橋の苦悩が感じられ、引き込まれた。九重の梅枝は年齢以上の貫禄が出ていた。
最終場の惨殺も狂気と美しさがあり、見応え充分。堪能した。
「浜松風恋歌」
海女小ふじの時蔵と船頭此兵衛の松緑。
2月20日 システィーナ歌舞伎「美女と野獣」
愛之助の野獣に壱太郎の美女という役どころからの期待を裏切らず、おおむね楽しめた。話の運びがやや冗長い感じられるところもあったが、愛之助、壱太郎、吉弥それぞれに見せ場があるのも嬉しい。
壱太郎が女形の声で歌ったのはシスティーナならでは。野獣の愛之助がバルコニーで歌いだすと客席からは失笑が漏れたが、まあお約束のようなもの。
美寿々姫の真実の愛で野獣が人に戻るクライマックスは舞台上での早変わりで見たかった。野獣が洋装だったのも疑問だ。
0219 青年団「冒険王」
バックパッカーの生態てこんな風なんだーというのはよく分かるが、で?イスタンブールのドミトリーのある日を切り取ったらこうだろうという以上のものが感じられず。初演時はもっと伝わるものがあったのかもしれないが、時代が変わった今となってはピンと来ない。「新・冒険王」とセットで見たら違ったのかも。
0219 ピッコロ劇団「天空の恋~谷崎と猫と三人の女~」
谷崎潤一郎が主人公のようで、3人の妻を軸に物語が進む。あまり知られていなかった谷崎の人物像が明かされ興味深い一方、説明的で情報過多にも感じた。
前半はややテンポが悪かったが、最後の妻、松子役の島田歌穂が出てきてから雰囲気が一変。それまでパッとしなかった谷崎(春蝶)も魅力的に見えたし、何より2人のやり取りが微笑ましい。
0218 劇団犯罪友の会「白蓮の針」
幕末から明治期の女商人の一代記。大河ドラマのようなスケールの大きな話が、ほぼ一人芝居で繰り広げられる驚き。セットはほとんどなしなのに、川や原っぱの情景が目に浮かんだ。若いころと年取った主人公を、メークや鬘を変えるのでなく、演じ分けた中田彩葉の表現力に脱帽。
2016年2月17日水曜日
0216 宝塚花組「For the people―リンカーン 自由を求めた男―」
轟悠のリンカーンが立派。堂々とした立ち居振る舞いに歌も低音が響く。ちょっと高音域に伸びがなかったのは不調だったのだろうか。だが、政治は基本討論なので、ミュージカルとしては見せ場にかけるかも。
柚香光が黒人活動家のフレデリック・ダグラス。まさかの褐色メークでびっくりしたが、冒頭のダンスシーンからキレのある動きで目が引き付けられたのはさすが。
2016年2月13日土曜日
0211 「元禄港唄~千年の恋の物語」
客席から登場した宮沢りえの美しさに息を呑んだ。何も映してないようなうつろな瞳に引き込まれる。
一方、猿之助は能面のような顔が怖いというか不気味だ。肌なんかつやつやしていて、段田安則の母親には見えず。
舞台を大きな椿の木が覆っていて、絶えず花がポトリ、ポトリと落ちてくるのは綺麗だけど、硬質な落下音が耳をついて落ち着かない。
美空ひばりの歌の力がすべてを覆いつくすかのよう。全体的に濃厚な芝居で、ぐったりした。
0211 二兎社「書く女」
ステージ中央に人の字型の階段がしつらえられたシンプルな作りだが、冒頭、和傘をさした着物の人々が行き交うと途端に明治の雰囲気になった。視覚的に美しく、舞台に引き込まれる。雪のシーンなど幻想的で、演出が見事。ピアノの生演奏も効いていた。
書く女=樋口一葉を黒木華。生活のためとはいえ、書かずにいられない衝動や「嫌う恋」といって恋心を封印してまでも創作にのめりこむ様が胸に迫る。
半井役の平岳大もよかった。「あと30分、20分、15分でも…」と引き留めるのを振り切る一葉の切なさが際立った。
0210 南船北馬「これっぽっちの。」
2組のカップル、それぞれに不満を抱えている苛立ちがよく描かれている。
年上妻は子育てに縛られて家から出られない。それを引きこもりと非難しつつ、母親は常に子どもと一緒にいるべきと考え、育児を手伝おうとはしない夫。すれ違う会話がリアルだ。もう一組の20代女とアラフォーのフリーター男はどこで出会ったのか疑問だし、ギャルがさえないフリーターに惚れるとは信じがたいのだが、それぞれはどこにでもいそう。
後半、スーパーマンの格好をしたフリーターと年上妻が2人でいるあたりからよく分からなくなった。サラリーマンは素肌にベスト・蝶ネクタイ姿でキャバクラらしきところでギャル女と会っているし。幼いころに家を出た年上妻の母親にギャルが似ているという設定も消化不良に感じた。
0209 「地獄八景亡者戯」
米朝一門の噺家が芸達者ぶりを発揮して、さながらかくし芸大会のよう。
南光は閻魔役のほか、竹本義太夫を演じて義太夫節を披露し、塩鯛は狂言風に名乗りをあげる。一番驚いたのは吉弥の吉沢あやめ。女形の色気があった。美輪明宏の物まねで「ヨイトマケの唄」も上手かった。
芝居としてはテンポが悪く、間延びしたところも。主人公のざこばがしばしばセリフを噛んだり、落語家同士のやり取りで崩れそうになるのを三林京子が引き締めた。
元OSKの桜花昇ぼるの出雲阿国が華やか。左半身は男装、右半身は女装での一人でのダンスも魅せた。
ISSAはかったるそうに踊っていて精彩がない。役作りなのかもしれないが、桜花と並ぶと見劣りした。
2016年2月6日土曜日
0206 烏丸ストロークロック「国道、業火、背高泡立草」
休憩をはさんで2時間40分の芝居で飽きることがなかったのはたぶん役者さんの力。だが、前半部は主人公が何で出身の町に帰ってきたのかが分かららず、もやもや。
後半は消費社会への皮肉は感じられたが、それで?主人公が2回にわたって首を吊ろうとし、故郷の町に復讐に来たのか、そうでないのか、何をしたいのか不明。作品を通して何を伝えたいのかよく分からなかった。
0204 かあちゃん
藤山直美が大阪弁のちゃきちゃきかあちゃんで、笑わせてくれる。
中村雅俊は茫洋とした感じの元侍で、誠実そう。
子役の年少のほうはかわいいのだけど、何を言っているのか分からない。
最終場、大きな桜の木が見事。
0205 宝塚 雪組「るろうに剣心」
剣心の早霧せいながアニメのキャラクターを見事に再現。人切り時代のシリアスさと剣を封じてからのコミカルなキャラクターの演じ分けもはっきり。何より、殺陣がシャープでキレがよくて見ごたえあり。刀を振り回しての群舞や飛んだり跳ねたりと、男性にも引けを取らない。
オリジナルキャラの加納惣三郎が得な役だ。望海風斗がクールでニヒルな悪役を好演。ソロの見せ場も多いし。
最後に短くショー。早霧と咲妃みゆが黒のタキシードとドレスでパドトゥ。本編では恋人らしいからみのなかった分を補うようなムードのあるダンス。
0203 宝塚花組「Ernest in Love」
英国の貴族を描いた、華やかでコミカルな宝塚らしい作品。
アーネスト(ジャック)の明日海りおは端正な顔立ちが映えるが、コミカルな演技がちょっと硬いか。
アルジャノンの芹香斗亜のほうがのびのび演じているように感じた。
最後に短いショー。長身で手足の長い芹香と並ぶと明日海が見劣りしてしまう。
2016年2月2日火曜日
0202 iaku「仮面夫婦の鏡」
黙って整形手術をした妻に腹を立てた夫が整形、しかも劣化させて。突飛な設定に、ちょっとずれた会話が可笑しい。顔じゃなくて内面を愛しているといいつつ、顔が変わったことに腹を立てる夫。自分が受け入れたのだから、妻にも新しい顔を受け入れろというけど、報復のために整形までしてしまう夫には同意しかねる。
2場では、数ヶ月後、妊婦モデルをする妻の絵が喫茶店に飾られているのが許せない夫。男の独占欲?男と女の価値観がすれ違うのが、あるある!という感じでよく描かれている。
トータルで50分ほどの芝居だったが、楽しめた。
2場では、数ヶ月後、妊婦モデルをする妻の絵が喫茶店に飾られているのが許せない夫。男の独占欲?男と女の価値観がすれ違うのが、あるある!という感じでよく描かれている。
トータルで50分ほどの芝居だったが、楽しめた。
0131 演劇ラボラトリー 上田一軒プロジェクト「花里町プレタポルテ」
素人による芝居ということで、セリフがぎこちなかったりするのだが、ギリギリ鑑賞に耐える水準だったのは、脚本と演出が良かったからだろうか。舞台は衰退する縫製向上の町。海外生産に切り替えようとする大手アパレルが、下請けの底力を知る。ごくごくありがちな話ながら、機械てはなく服を扱うのが目新しく、面白く見た。
2016年1月31日日曜日
0130 第43回バレエ芸術劇場「ショピニアーナ・フェアリードール」
「ショピニアーナ」
ショパンの「ノクターン」や「ワルツ」などのピアノ曲を繋いだ作品。オーケストラにアレンジされると、ピアノと違って流れるような曲の雰囲気になる。
安積瑠璃子、松本真由美、堀端三由季の3人は嫌みのない踊りで曲の雰囲気に合っている。皆同じ衣装だったので、誰が誰だか区別がつきにくかったのだが。
コールドもそろっていて綺麗だった。
「フェアリードール」
様々な種類の人形が出てきて、個性的な踊りを繰り広げる。それぞれのキャラクターに見せ場があって、発表会向きの演目か。
フェアリードールの井澤照予がはつらつとした踊り。
1幕から出ていた黄色と赤の人形がピエロかと思っていたら、道化人形とアルレキン人形(?)だったらしい。ピエロの2人のうち、背の高いほうの踊りがよかった。
0130 メイシアター×ホルマリン兄弟「TOUCHABLES」
「アンタッチャブルズ」のパロディで買収を持ち掛ける腐敗した警官。カポネと呼ばれる大悪党の西川忠志が意外に(失礼)よかった。開演前から客席を役者がうろうろして客をいじったり、芝居中もスナイパー役に巻き込んだりという演出が楽しい。ベテランの役者陣がしっかりしてるので、若手お笑い芸人、素人(吹田市役所職員)とのアンサンブルが面白いアクセントになってた。カポネの執事役の男と女和田ちゃんがいい味を出してた。
0128 劇団鹿殺し「キルミーアゲイン」
ダム建設で村が沈められるのを阻止しようと、東京に出ていた劇作家が帰郷する。古い地元劇場で芝居を開き、村民に訴えかけようという。
スランプ中の劇作家(大東駿介)がうまく、冒頭から引き込まれる。高校時代の回想と現代を行ったり来たりし、劇中、高校時代のブラスバンド部による生演奏や唐突に歌(菜月チョビ)が始まったりとごちゃまぜなのだが、不思議と受け入れてしまうのは完成度が高いからか。歌は決して上手くないのに、一昔前の歌謡曲を彷彿とさせるキャッチ―なメロディーが耳になじむ。
後半、女装した男優陣によるおニャン子クラブのパロディーあたりからは、それまでの緊張感が緩んでダレた印象。
2016年1月24日日曜日
0123 高谷史郎「STIILL」
モノトーン。薄く水を張った舞台上に縦長のテーブル。食事のセットがされているが、グラスが倒れていたり、食事の後?
天井からカメラが下りてきて、テーブルの上を撮影した様子が奥のスクリーンに映し出される。床の水面が鏡のようになって、スクリーンの映像が映るのも面白い。
2人の女がテーブルについて、シンメトリーに食事をする動き。もう一人のダンサー(平井優子)に比べ、鶴田真由は立ち姿、動きともに見劣りしてしまう。後に詩を朗読するのも、滑舌が悪いのか言葉が響かない。狙いなのかもしれないけど。ダンサーというのは立っているだけで、説得力があるのだと再認識した。
ダンサーとスクリーンに映る映像が同期する動きをしたり、水音を立てて踊ったりと、次々に印象が変わる。
天井からたくさんの電球が下がるなか、不思議な言葉(アイヌ語らしい)の詩が朗読されたり、わけのわからない言葉をしゃべる性別不明の女?(薮内美佐子)が紙で作った文字(ひらがな、漢字、アルファベット)をまき散らす。言葉が黒い水面に浮かんできれい。
最後、平井がソロで踊るなかをカメラが下りてきて、旋回するような動きをする。てっきり何か映像を映しているのかと思ったら、ここはカメラという物体とのパドトゥなのだそう。
アフタートークによると、時間と空間。静寂(STILL)のなか、小さな揺らぎから生まれる波紋などがキーワード。だが、伝えたいメッセージは特にないそう。
0122 オイスターズ「この声」
入れ代わり立ち代わり現れる3人の女子高生に翻弄される高校教師。ゾンビとか、セクハラとか、いじめとか、話がかみ合ってるんだかいないんだかわからない、もやもやした感じ。不条理会話劇というのはそういうことか。
最後、友達同士だと思っていた3人が初対面。ではそれぞれに友達がいて、いろいろ問題あったんだよね?どうなったの?
先生の描く妻子の絵も気になる。
何もない舞台に、イーゼルと椅子のみ。舞台の上手下手だけでなく、客席の後ろなどいろんなところから現れて不意を突かれる。
2016年1月18日月曜日
0117 音楽劇「星の王子さま」
有名すぎる、サン・テグジュペリの童話を、ただ演劇化するのではなく、音楽劇にしたのがよかった。心にしみる言葉の美しさを歌にすることで、より響くものに。
王子さま役の昆夏美は小柄で、絵本とおなじ王子さまのコスプレも最初は体にあっていないように見えたが、だんだん違和感がなくなった。何より歌がうまく、高音がきれい。飛行士の伊礼彼方とのデュエットもすごくよかった。
0116 音楽劇「レミング~世界の涯まで連れてって~」
寺山修二を維新派の松本勇吉が演出。どちらも初めて生で見たので新鮮だった。
変拍子を足踏みで取りながらセリフを言う、独特の世界観。物語としては難解なのだが、引き込まれた。
コック1(タロ)の溝端淳平とコック2(ジロ)の柄本時生、キャラクターの違う2人だが、2人で1役のような感じもある。柄本は滑舌が悪く、せりふが聞き取れないところも。
影山影子の霧矢大夢のセリフが印象的。威厳があって、女王然としたキャラクターがはまっていた。
母親の麿赤児は思ったほど不気味でなく、予想通りというか。
0112 宝塚宙組「シェイクスピア~空に満つるは、尽きせぬ言の葉~」
シェイクスピアの人生と戯曲をオーバーラップさせたという脚本にはちょっと無理があると感じた。ウィルとアンの恋に「ロミオとジュリエット」に重ねてバルコニーのシーンのせりふを言わせるのだが、「名をお捨てになって」という展開になっていないとか、宮廷の権力争いと劇場運営を絡ませるとか。
だが、朝夏まなとや美咲凛音ら、歌唱力があるので、歌の説得力が素晴らしく、観終わったあとはなんだか満足な感じ。
ショー「ホットアイズ」は80年代ヒット曲が満載。昔のアイドルのような歌詞にもぞもぞしたけど、ファンにはたまらないのでは。松田聖子の「天使がウインク」を娘役トップが歌ったのが、ツボった。
2016年1月12日火曜日
0110 リサイクル缶の階「話すのなら、今ここにないもののことを話したかった。 今ここにないものの話ばかりしようと思った。」
こういうむやみに長いタイトルは、勿体ぶっているようでげんなりする。
脚本から削除された登場人物とか、上演されなかった芝居の登場人物とか、いないはずの人のことを観念的に論じている。確かにタイトル通りではある。不思議な感じに浸れれば心地よいのかも。
ヒーロー役のひとのしょぼくれ加減がよかった。(←褒めてるつもり)
2016年1月11日月曜日
0109 「熱海殺人事件」
いや〜笑った。風間杜夫と平田満のマシンガンのようなセリフは、ほとんど頭に残らないのだけど、何とも言えない調子と間が凄い。まあ、ちょっと言い切れてないようなところはお年かな、と思わなくもなかったけど。言ってることは無茶苦茶で、平凡な殺人は許さんとか、立派な犯罪者になれとか、ブスを野放しにするなとか、酷いのにおかしい。
殴ったり蹴ったりするところで、歌舞伎のツケのような音が入ったり、歌舞伎調のセリフ回しがあったりするのは演出のいのうえ流か。風間が歌舞伎風にセリフを言うところもあったような。
若い2人は頑張っていたけど、2人だけのシーンはちょっとダレた。愛原実花は身のこなしきが美しく、さすが宝塚出身。中尾明慶はラッパー風のなりで登場するところで、せりふが聞き取りにくかった。
0109 ヨーロッパ企画イエティ「杉沢村のアポカリプティックサウンド」
ホラーコメディというのに、ちっとも笑えなかった。他の客は結構笑っていたのだが。
すぐ怒鳴る男がすごく不快でムカムカしたのと、小学生みたいな会話にうんざりした。山で遭難しかけてるのに駄々をこねて日が暮れてしまうって、そんな大人いるのか?世の人はあんななの?
2016年1月9日土曜日
0107 初春文楽公演 第2部
「国姓爺合戦」の通し。疲れていたせいか、期待したほど面白くなかった。
小住大夫、御簾内でも声が前に出ている。
紅流しより獅子ケ城の段は文字久大夫と藤蔵。最近聞いたなかではよかった。楷書の時代物はあっているからだろうか。
後日再見。
芦辺の段は始大夫と團吾。大きな体で力強い語り。
平戸浜伝いより唐土船の段。柳可君がいいなあと思ったら、簑紫郎だった。
千里ケ竹虎狩の段の奥は三輪大夫と喜一郎。ツレ三味線に龍爾。この段に限らないのだが、ツレの三味線さんが終わったあと、前を向いたままさっと三味線を渡して引っ込むのが格好良くてほれぼれ。虎の着ぐるみが大活躍。かわいい。
楼門の段は咲甫大夫と清介。咲甫大夫は器用だなあと。
甘輝館の段を千歳大夫と富助。三味線の皮を破かんばかりの力強いタッチにびっくり。千歳大夫は相変わらずの熱演だが、今一つ心に響かないのはなぜだろう。
三味線のメリヤス隊が迫力。
0106 ツインズ
日本の海辺の町ということだが、どこか外国のように見える。死期の近い父親のもとに久しぶりに集まった兄弟。
外出を控えたり、食べ物や水を口にしなかったりする人がいて、何かで汚染されていることを暗示している。気にせず口にする人もいて、絶えず悶着がある。
ハルキの古田新太は娘を助けようと手を尽くすものの、空回りする父親。神経質になっている前半から人格が変わったようにいい加減になる後半との落差が面白い。
娘イラの多部未華子は多感な少女といった風情。冒頭などでエアピアノを弾くところがあるのだが、音と手の動きがあっていないのが気になってしまった。ちょっと長すぎかも。
ローラのりょうはお手伝いなのか、看護師なのか不明な、謎の女性にはまる。ほか、吉田鋼太郎、葉山奨之ら。
最後、魚に手足の生えた姿の生き物が2体現れたのは双子の成れの果てか。見終わってなんかもやもやした。
2016年1月5日火曜日
0105 松竹新喜劇 新春お年玉公演
「えくぼ」
久本雅美はもっと面白いかと思ってたので、拍子抜け。ブサイクだけど健気な女の役なのだが、楽しそうで悩みなんてなさそうなので、ちっとも可哀想でない。
「浪花の夢 宝の入船話」
面白かったけど、それは主役が上手いからではなさそう。脚本がいいのと、共演陣が磐石だから。石工の源三を扇治郎。前回よりはよくて、ちょっと間抜けな感じが勘九郎に似て見えた。けど、この人は別に阿呆ではないのでは?
曽我廼家文童の番頭が上手い。
久本雅美はもっと面白いかと思ってたので、拍子抜け。ブサイクだけど健気な女の役なのだが、楽しそうで悩みなんてなさそうなので、ちっとも可哀想でない。
「浪花の夢 宝の入船話」
面白かったけど、それは主役が上手いからではなさそう。脚本がいいのと、共演陣が磐石だから。石工の源三を扇治郎。前回よりはよくて、ちょっと間抜けな感じが勘九郎に似て見えた。けど、この人は別に阿呆ではないのでは?
曽我廼家文童の番頭が上手い。
0104 初春文楽公演 第1部
「新版
歌祭文」
睦大夫が長い段を語り切った。びっくり。
呂勢大夫のおみつが切ない。
「関取千両幟」
嶋大夫の引退興行で、冒頭、床に嶋大夫と寛治か並び、呂勢大夫が口上。一心に芸道に努めてきたこと、引退披露は功なし名をあげてのことで目出度いが、門弟としては大樹を失った小鳥のようとの言葉に涙が出そう。嶋大夫の目にも涙ががにじみ、手ぬぐいで抑えていた。
本編は、一言一言を大切に語る様子。声は力強く、まだまだ聴かせられるという気迫を感じる。猪名川の英大夫との掛け合いも良かったが、願わくば一人で一段語ってほしかった。
途中、三味線の曲弾きで寛太郎。面白いし、見応えあるけど、この演目に必要か疑問。身売りを決意したことを隠して猪名川を送り出したおとわ。その後の相撲場までの場面転換の繋ぎは必要だろうが、物語の余韻をぶった切るようで。
最後、床に嶋大夫だけが残り、長く頭を下げていたのが胸を打った。
「釣女」
お正月らしく賑々しく。
醜女は咲甫大夫。こういうコミカルな役柄がうまい。
0103 壽初春大歌舞伎 夜の部
「桂川連理柵」
藤十郎の長右衛門はじっと辛抱している風情がさすが。辛抱立役とはこれぞ。
壱太郎は2回目の長吉とお半。長吉を楽しそうに演じているのと、お半の可憐さが似合う。
扇雀の女房お絹はちょっと立派すぎて、いまいちかわいそうに見えない。
愛之助の儀兵衛と竹三郎の義母おとせの親子が長右衛門をいびり倒すのが憎らしくていい。
「研辰の討たれ」
愛之助の辰次は愛嬌が足りないか。町人あがりの卑俗な感じはよく出ているのだが、共感できないのは主人公として何かが足りないのではないか。
客席を右へ左へ逃げ回り、サービス精神を発揮。
「芝浜」
一言でいえば、落語のほうが面白い。会話のテンポがいまひとつ。中車の政五郎は江戸弁のちゃきちゃきした感じだがちょっとテンポが遅いのと、扇雀の女房おたつがあっさりしていて薄情に見えるせいか。直近に談春のこってりした話しを聞いたせいか、物足りなく感じた。
0103 壽初春大歌舞伎 昼の部
「鳴神」
愛之助の鳴神上人は4回目ともあって、板についてきた感がある。上人らしい大きさ、落ち着きが出てきた。
壱太郎の雲の絶間姫は美しいのはいいのだが、セリフがこもったような発声が聞き辛い。声は綺麗なのに。
「枕獅子」
扇雀が綺麗だった。
「らくだ」
愛之助はやたけたの熊五郎。ガラの悪いチンピラがハマる。紙屑屋久六の中車との掛け合いも楽しい。
中車は気弱な男が酒を飲んでだんだん人格が変わっていく様子が鮮やか。
寿治郎の家主幸兵衛と松之助の女房おさいのベテラン2人で舞台が締まる。
面白かったのはらくだの宇之助の亀鶴のうまさも大きい。のっけから死体で一言も発せないのに面白かった。
2016年1月4日月曜日
0102 新春天空狂言
「舞初式」
舞台奥に掛け軸を祀ってあり、舞の前後に二礼二拍手一礼するのが儀式らしい。
七五三、あきら、千三郎が並んでの踊り。後のトークで宗彦が「みんな習った人が違うのでバラバラ」と言っていた。確かにピッタリ揃ってはいなかったが、不思議と調和して見えた。洋舞と違って、日本のものは多少の揺らぎは許容するのか。
それぞれ、自分の息子の踊る段になると、ちらっと見ていたのが、家族らしくていいなあと。
「延命袋」
わわしい奥方と離縁したい男。単純に笑える。
「靭猿」
小猿が可愛い。途中、烏帽子がずれて顔が隠れてしまっていたのに、止まることなく演じ続けた。猿回しが実の父親というのは、いろいろ思いが交錯しそう。
舞台奥に掛け軸を祀ってあり、舞の前後に二礼二拍手一礼するのが儀式らしい。
七五三、あきら、千三郎が並んでの踊り。後のトークで宗彦が「みんな習った人が違うのでバラバラ」と言っていた。確かにピッタリ揃ってはいなかったが、不思議と調和して見えた。洋舞と違って、日本のものは多少の揺らぎは許容するのか。
それぞれ、自分の息子の踊る段になると、ちらっと見ていたのが、家族らしくていいなあと。
「延命袋」
わわしい奥方と離縁したい男。単純に笑える。
「靭猿」
小猿が可愛い。途中、烏帽子がずれて顔が隠れてしまっていたのに、止まることなく演じ続けた。猿回しが実の父親というのは、いろいろ思いが交錯しそう。
2016年1月3日日曜日
ピッコロ劇団「さらっていってよピーターパン」
ピーターパンが中年になってやる気がない。ウェンディはやる気満々で、姉さん女房のよう。
宙乗りもあるのだが、ダメダメな感じで。でも、結局、悪者をやっつけちゃうのね。
フック船長もちょっと疲れた感じで、オリジナルのピーターパンの裏バージョンのような。
歌がキャッチ―で、子供が楽しそう。滑って転んじゃう子がいたのもご愛敬。
死刑執行中脱獄進行中
森山未來のダンサーとしての身体能力の高さを改めて確認。
ほかのダンサーが身体を使って、場面や背景を演じ、不思議な空間を演出。よくわからないけど、そういうものを表現しているのだろう。
唯一の女優さん。動きが硬いと思ったら、ダンサーではないらしい。
あごうさとし新作公演「純粋言語を巡る物―-バベルの塔Ⅱ―」
劇場での公演を録画、録音したものを、別の劇場で再生するという実験的な試み。
場所によって音の聞こえ方が違ったりするのは面白いが、エンターテインメントとして面白いかというとちょっと疑問。
劇団空晴「せんたくの日和」
誤解が誤解を生んで…という展開は面白いが、ありがちで少しくどいと感じた。
洗濯と選択をかけているのね。クリニックとクリーニングを聞き違えるかなあ。駅前に同じ名前のクリニックとクリーニングがあるって?
明るく、楽しそうな劇団の雰囲気はいい。
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