2016年3月11日金曜日
0229 ETERNAL CHIKAMATSU
「心中天網島」を題材に、現代と江戸時代の芝居の世界が交錯する。美しい舞台だった。
冒頭、ニューヨークの街並みや、リーマン破たんの映像が流れ、金融恐慌でハルの人生が転落したことを示す。
舞台は現代大阪の歓楽街。売春婦ハルを演じる深津絵里がすごみのある演技。借金を返すために身体を売るのだが、したたかさと繊細さが見え隠れする。
恋愛関係にある妻子持ちの男、ジロウを中島歩。軽薄そうで、なぜハルがこんな男に入れあげるのか分からない。が、治平衛も頼りない男なので、その現代版と思えばこんなものか。
ジロウの兄に手切れ金を渡され、自暴自棄になってさすらううちにハルは蜆川で七之助演じる小春と出会う。2人並ぶと、七之助でかっと思ったが、だんだん違和感は薄らいだ。それより、アイメイクが現代風というか、私にはピエロのように見えて、最後までしっくりこなかった。
現代劇の俳優たちのなかで、七之助ひとりが歌舞伎調で、せりふ回しもゆっくりなのだが、不思議とかみ合って面白い。
江戸時代から何度も何度も心中を繰り返す小春と治平衛。見せしめのため晒しものにされ、心中は決して美しくはない。ハルは2人を止めるのだが、これは現代の価値観だろう。最後、心中を止められた小春が傘の陰に引っ込んだ一瞬ののち、七之助が白シャツにチノパンの男装に早変わりし、自殺したハルの旦那となって現れる。衣装はともかく、一瞬でメイクを落としていたのにびっくり。本水の中を歩きだすハル。悲劇で終わらず、希望を感じさせるラストだった。
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