2026年4月29日水曜日

4月29日 第五回 みのり会

「桂川連理柵」 芳穂も燕二郎も健闘していたが、世話物の難しさも感じた。幕開き前に燕三が言っていたが、筒いっぱいでやるだけではダメで、もう少し余裕というか、柔らかさが必要なのだろう。芳穂は意地悪婆や儀兵衛が憎らしく、長右衛門の優男ぶり、お絹の出来過ぎた女房、お半の可愛さをよく語っていた。燕二郎はキッパリしすぎかなと思うところも。 本公演で役がつかないからやるのではなく、時間に余裕のある時に経験しておくことが大事と燕三。誰かのことを念頭にしているのだろうか。

2026年4月26日日曜日

4月26日 御名残四月大歌舞伎 昼の部

「毛谷村」 獅童の六助は義太夫みが薄く、世話に見える。無禄で村人と共に暮らしているとはいえ、無類の剣豪なのだから人間としての大きさがあって然るべし。獅童は素朴な気のいい兄ちゃんだった。 吉弥の一味斎後室に武家の女らしい風格があり、お園と張り合って椿を贈る可愛さも。孝太郎のお園はいつも通り。 弥三松の夏幹は小柄でかわいいが、セリフや所作をこなしているだけという感じ。名子役には及ばす。 杣人斧右衛門は美味しい役なのだろうけど、精四郎は勿体無いと思う。杣人に松十郎、翫政、冒頭の大坪軍内に千次郎。 六助内のみの上演だったので、斧右衛門母の件がなくて分かりづらい上、敵討もないのでスッキリしない。 「夕霧名残の正月」 藤十郎七回忌追善ということで、虎之助の伊左衛門、壱太郎の夕霧と若手二人が家の芸に挑むのはよろしいのだが、まだまだという感じ。特に伊左衛門は所作をこなすだけではダメで、内から滲み出る風情がないとつまらなくなってしまう。扇谷主人に鴈治郎、女房に扇雀と、成駒家勢揃い。太鼓持に亀鶴。 「大當り伏見の富くじ」 松竹座で生まれた作品ということで御名残公演で上演されたのだろうが、もっとふさわしい演目があるだろうに。喜劇なのにちっとも笑えず、むしろ不快感でムカムカした。 幸四郎の紙屋は楽しそうだが、独りよがり。鴈治郎の鳰照太夫は前回は意外な可愛さに驚いたが、今回はちっとも可愛く見えず。鴈治郎が絶世の美女という意外設定がキモなのd、2回目ともなると面白くないのだ。紙屋の妹、お絹(壱太郎)に言い寄る家老・黒住の獅童は化粧だけでよくあそこまで不細工にできると感心するが、下品は笑いに走りすぎ。 良かったのは歌舞伎塾出身者ら上方の役者が多くでていたことで、吉弥の遣手や松十郎の男衆は敵役を好演。鳰照の愛猫、初音役の吉太朗は着ぐるみだけでなく、前半のぬいぐるみ操作も担当していたそう。河童の翫政もいい味出してた。何より 神官役の進之介が冒頭、紙屋とやりとりするのが軽妙で、こんなにのびのび芝居している進之介は初めて見た。

2026年4月25日土曜日

4月25日 文楽公演 第3部

「二人禿」 三輪、咲寿、聖、文字栄に清友、団吾、燕二郎、藤之亮。 不協和音な床。 人形は簑太郎と勘次郎。 勘次郎の禿に柔らかさがあった。 「ひらかな盛衰記」 辻法印の段を芳穂・錦糸に清允のツレ。 チャリの場面を生き生きと語り、楽しい。百姓たちの語り分けも面白く。 神崎揚屋は千歳・富助に清公のツレ。 切り語りの風格。 奥座敷は睦・清馗。 高音の掠れはあったがあまり気にならず、いい語りだった。 人形は勘十郎の梅ヶ枝。一輔の梶原源太の貴公子ぶりがよき。

4月25日 大槻能楽堂自主公演

「茶壺」 茂山忠三郎のすっぱに善竹隆平の田舎者、隆司の目代。 忠三郎は軽妙。隆平は芸の輪郭が太くなったようで、おおらかさがあって良かった。 「景清」 浅井文義のシテ、ツレの人丸は大槻裕一。トモの人丸の従者は浦田保親。ワキは福王茂十郎。 冒頭の解説(三浦裕子)によると、シテが水衣に髭のある景清の面を付けているのは、景清の武勇に着目しているのだそう。三保の谷の錣引きの武勇を語るところが眼目。人丸との別れは淡々として余韻が残った。

2026年4月19日日曜日

4月19日 文楽公演 第2部

北嵯峨の段は碩・寛太郎。 キッパリとした三味線に、伸びやかな声がいい。 人形遣いは頭巾をかぶって。山伏に化けた松王丸の正体を明かしてはいけないからね。 寺入りは亘・友之助。 うーん。チャリな場面もあるけど、砕けた語り。三味線はシャープ。 寺子屋は前半の切を若・清介。 地を這うようなじっとりとした語り。 後を呂勢・清治。 盆が回って語り出した途端、色彩が鮮やかになった気がした。いろは送りも美しく。 人形は和生の源蔵の抑えが芝居がいい。勘寿の戸波は珍しい配役。 勘昇の小太郎が健気。

2026年4月18日土曜日

4月18日 OSK日本歌劇団「春のおどり」

1部の「たまきはる命の雫」は和物なの? 幕開きのチョンパの総踊りは扇を使った日本舞踊で、よく揃っている。衣装がチープなのと、打ち込みの音楽の安っぽさはどうにかして欲しい。 本編はロミオとジュリエットを古代ヤマト風に翻案したもの。とはいえ、登場人物の名前はそのままだし、衣装も中途半端。仮面舞踏会、バルコニー、マキューシオの死など、名場面は概ね取り入れられているが、70分ほどに収めているので展開が早すぎて、感情の振り幅についていけない感じ。 翼和希のロミオはちょっと幼い感じもするが、素直な少年。千崎えみのジュリエットも少女らしい。 マキューシオ(椿りょう)がロミオに片恋していて、ロミオを庇って命を落とすという設定はどういう意図なのだろう。 キャピュレット夫人の城月れいが曲者そうでよき。 2部の「Silenphonyーサイレンフォニーー」は洋物のダンス。何もない真っ暗な舞台で男役が無音の中踊り始めるオープニングからコンテ色が強い。作品として成立させているのは劇団のダンス力。中盤にも、公園のベンチで踊るシーンなど、コンテっぽい振り付けが散見。 ロケットで初舞台生を紹介するのはいいね。5人だからできることだけど。そして、やっぱりOSKのロケットの団結力には感動してしまう。 サテンドレス、タキシードの男女が踊るレビューらしい振りや、インド風、ファンク風、タップダンスなど、バラエティに富んで楽しい。

2026年4月17日金曜日

4月18日 文楽公演  第1部

「菅原伝授手習鑑」 道行詞の甘替 桜丸の希、斉世親王を南都、刈谷姫を咲寿、織栄のツレ。三味線は勝平、清丈、錦吾、清方。 飴売りに身をやつした桜丸が親王と橘姫を匿っているのだが、飴の岡持ちの中に隠しているというのは無理ありすぎでは。 終盤に出てくる里の母娘。母の衣装が緑の紋付きみたいな感じで八重と勘違いしてしまった。娘(簑悠)は首の顔がビミョーに不美人だったのは、田舎の子だから? 車曳の段 靖の松王、小住の梅王、亘の桜丸、薫の杉王、津国の時平に燕三。 松王と梅王は共に声がよく出ていて、がっぷり四つの対峙ぶりがよき。亘は桜丸にしては柔らかみがなく、ガチャガチャした印象。薫は杉王としては許容範囲か。顔つきは惚けた感じだが、いつもより声の調子は外れてなかった。燕三の指導のおかげ? 茶筅酒は藤・団七。 喧嘩の段は小住・清志郎。 ハリのある声が良く、松王と梅王の取っ組み合いに迫力がある。 人形は玉佳の梅王が俵を受け取るときに落としそうになったのか苦笑い。 訴訟の段は織・宗助。 朗々と歌っている感じ。 桜丸切腹は錣・藤蔵。 なぜか、泣けなかった。こういうの、錣は得意なはずだが、三味線が派手すぎたのか。南無阿弥陀もしみじみとしなくて。 人形は玉助の桜丸。こういう柔らかい役はあまりニンでないような。玉佳の梅王丸、玉志の松王丸。 白太夫は玉男で、珍しい老け役だが、情のあるいい親父ぶり。 春の清十郎は首が時折震えているのが気になる。意図してやってないように見えるので。あと、脚が左にずれて見えるのはよろしくない。

2026年4月12日日曜日

4月12日 四月大歌舞伎 夜の部

「十種香」 時蔵の八重垣姫が秀逸。後ろ姿での登場シーンから隙がなく、所作とセリフで一途な恋心が滲み出る。健気でいじらしくて、かつ深窓の姫君らしい箱入り娘感と品格があって、勝頼への一途な恋心がリアル。こんな女の子は現実にはいないのでどこか嘘っぽくなりがちだが、この八重垣姫は共感できる。応援したいというか。七之助の濡衣もとても良く、年上のお姉さん感があった。もっと落ち着いていてもいいかも。萬寿の勝頼も気品があって、よい貴公子ぶり。芝翫の上杉謙信も大きさが合ってよき。 「連獅子」 右近の親獅子と眞秀の子獅子。 トータル50分ほどで、毛張りもあっさり目。右近はドヤっと高速回転していたが、眞秀は腰が高く、首で回してる感じが少し心配。 後シテで花道を出てくるところ、子獅子、親獅子の順で出てきて共に後ろ向きに引っ込むのだが、ここって子獅子だけではなかったっけ?その後は、親獅子に続いて子獅子が舞台まで進む。右近はベテランが肩の力を抜いて踊っているような感じが逆に鼻につく。30代はまだ懸命であっていい。 客席に寺島しのぶがいて、宗論(福之助・歌之助)は笑って見ていたのに、終演後は浮かない表情。ロビーでお客さんと話しているのが漏れ聞こえたのだが、親の言うことを聞かないとか。 「浮かれ心中」 井上ひさしらしい、よく練られたコメディで、適材適所の役者も揃って、観客は笑いっぱなし。勘九郎の栄次郎と⑧菊五郎のおすずの仲睦まじい夫婦ぶりが微笑ましい。(ただ、菊五郎は意外に腰回りが太い) 吉原を訪ねた栄次郎が七之助の箒木に一目惚れして、微笑みに腰を抜かすなど籠釣瓶を思わせる場面も楽しい。 橋之助演じる箒木の恋人、清六に向かって「従兄弟と言ってるが本当か」とか、クスリとさせるところも。

4月11日 四月大歌舞伎 昼の部

「廓三番叟」 梅玉、魁春をはじめ、福助、芝翫、東蔵ら中村姓の役者が総勢13人と、揃い踏みみたいな一幕。新造が莟玉と玉太郎で、並んで踊ると莟玉に一日の長あり。莟玉のほうが所作が滑らかで、柔らかく見える。年齢はあまり変わらないと思うのだが、経験値の差か。福助が病後の舞台では一番動いていた。後見に支えられながらも歩いたり、回ったり、動く左手だけながら手振りもあったり。打掛を脱ぐところは複数人で囲んでたり、その場で回るだけでも、着物の裾は後見が処理していたりと、まだまだ不自由なのだということも分かって切ない。 「裏表先代萩」 ⑧菊五郎が政岡、弾正、小助の三役を勤める。一番ニンに合っているのは政岡で、義太夫の台詞、毅然とした姿に説得力がある。千松の亡骸に縋り付いてのクドキは緊張感が途切れず、拍手の隙を与えないほど。弾正は悪の凄みが足りず、小助は世話の軽やかさがもう少しほしい。 下女お竹の七之助、沖の井の時蔵が適材適所。芝のぶが出ていたのも嬉しい。 弥十郎の八汐も憎たらしく好演。 千松の秀乃介はセリフはちゃんとしていたし、やるべきこともこなしていたが、気持ちが乗っているというほどではなく、名子役には至らず。鶴千代の尾上琴也は菊之丞の長男。千松の秀乃介より身体は大きいが、舞台経験は少なそう。 勘九郎の細川勝元が颯爽とした捌き役でよき。

2026年4月5日日曜日

4月5日 御名残四月大歌舞伎 夜の部 Aプロ

「寺子屋」 仁左衛門の松王丸が胸を打つ。源蔵が裏に入って小太郎の首を打つ音に反応して哀しみを咳払いで誤魔化すところ、首実験ではわずかに揺らぐ表情に我が子への想いが滲んだ。源蔵に小太郎の最期の様子を聞いて「笑いましたか」からの泣き笑いには涙腺が崩壊。孝太郎の千代とも息のあった芝居で、充実していた。終幕、極まったあとで顔を俯け、最後まで涙を誘われた。 幸四郎の源蔵、壱太郎の戸波も悪くない。小太郎は陽喜。3階から見たせいかすごく小柄に見えた。 寺入りでは吉太朗の涎くり。周りの子役がとりわけ小柄なので、大人が混じっている感じ。いたずらを叱られて机の上に立たされる。土産の饅頭を頬張ったり、下男三助の松之助と、戸波と千代のやりとりをパロディでなぞったりと見どころたっぷり。 「五条橋」 獅童の弁慶に陽喜の牛若丸。体調不良(骨折?)で休演した夏幹の代役で急遽登板したことを考慮すればまずますか。弟の方だったかと思うほど小柄なので自分の刀ですら持て余してる感じで、弁慶の長刀を奪うところなどは不安になる程だった。それにしても、松竹座のお名残でなぜこの親子の舞踊を見せられるのかとは感じた。 「河庄」 鴈治郎の治兵衛に扇雀の小春。2人ともセリフが辛く、1時間半の芝居がとても長く感じた。藤十郎七回忌の追善ということで、藤十郎の台詞回しを思わせるところも多々あるのだが、ねちっこいというか、ねばっこいというか。歌六の孫右衛門のセリフが一番耳に心地よく、救われる思いだった。扇雀の小春は貫禄があって、娘というより年増女に見える。おさんを思って耐えている健気さより、恨み節な感じで、重たくしんどい。治兵衛、孫右衛門、小春が並んで、小春が一番大きく見えるのはやはりバランスが悪い。身体が大きかったとしても、華奢に見せるのが芸でしょ。 幕開きで吉太朗の女郎が綺麗。河内屋お庄の吉弥が凛として、小春より若々しく見えた。

4月5日 欲望という名の電車

篠井英介のブランチに胸が締め付けられた。特に2幕の、追い詰められて正気を失っていく様が痛々しい。女性が演じるよりもより、胸に迫るように感じるのはなぜだろう。最後、見知らぬ男女につれられて去っていくブランチは、白い衣装が花嫁衣装のようにも見え、より哀れさが際立った。ステラの松岡依都美がベランダからブランチの名前を叫ぶ幕切れに余韻が残る。松岡は明るく朗らかで、悲壮な話の中で心休まる存在。 スタンリーは田中哲二。粗野で乱暴な男を好演。ミッチの坂本慶介も、礼儀正しい好青年から、ブランチの正体を知ってからの自暴自棄な様子への変化ぶりがすごかった。大屋夫婦の夫にイキウメの森下創。労働者階級の世界観を作り出していた。 近鉄アート館の3面客席の舞台で、舞台奥に玄関とキッチン、手前が寝室、上手側の通路奥にバスルームという設定。A席 から見たので、正面からとは違う面から見られたのも興味深かった。 ブランチは篠井が女方を志すきっかけになった役だそうで、これが最後だというのを観に行って本当によかった。ブッキングミスですぐに移動しなければならず、カーテンコールを後目に会場を後にしたのが心残り。

2026年3月27日金曜日

3月27日 令和大序会

織太夫主催の若手会の2回目。松竹座閉館のニュースを見てすぐはり重社長に電話し、本店の3階を無料で貸してくれることになったそう。

「由良湊千軒長者 山の段」を靖・清公。
安寿とつし王のお話。珍しい浄瑠璃に挑む心意気はよき。姉弟の健気さが聞きどころだと思うが、我流が出ちゃっている感じで、耳に触る浄瑠璃。

「一谷嫩軍記 熊谷桜の段」は聖・清志郎。
のびのびと素直な発声で好感が持てる。女2人の語りわけはまだまだだが。清志郎は切先鋭い三味線で、後輩を引き立てていた。

「仮名手本忠臣蔵 殿中刃傷の段」は小住・友之助。 堂々とした語り。師直は威厳のある様子で、意地悪ぶりが憎々しい。友之助も小気味のいい演奏。

2026年3月26日木曜日

3月26日 霜乃会プラス

燕二郎が櫓太鼓の曲弾きを披露。 糸の間にバチを通したり、撥の持ち手側で弾いたり、三味線を逆さに置いて弾いたり、果ては棹に置いた撥を右手側に飛ばしたり(ちょっと遠くに飛びすぎて伸び上がっていた)と、見せ所たっぷり。太鼓を思わせる力強い叩き撥など力強い演奏で、本舞台でもぜひやってほしい。ただ、一度弾くと棹が傷だらけになるそうで、あまり頻繁にはかからないかも。燕三が20年前に勤めていて、やってみたい曲だったそう。

2026年3月24日火曜日

3月24日 素浄瑠璃の会

豊中市の桜の庄兵衛で浄瑠璃を聞く趣向。木造だが、天井の高い空間は音の響きもよく近くだったこともあって迫力十分。 かつて錦糸が五代目呂太夫と復曲した「軍法富士見西行 江口揚屋の段」を千歳と。 盛りだくさんの浄瑠璃で、山場に次ぐ山場という感じ。人物関係も複雑で理解しきれないところも合ったが、勢いに飲まれて充実感が残った。錦糸の三味線もアグレッシブで、勢いのある演奏だった。

2026年3月22日日曜日

3月22日 三月大歌舞伎 夜の部 Bプロ

「寿春鳳凰祭」

舞踊をつけるのはいいのだが、出演者多すぎない? 梅玉の帝に魁春、雀右衛門の女御を筆頭に、総勢15人の幹部役者が出演する華やかさ。

「三人吉三巴白波」

時蔵のお嬢、隼人のお坊、巳之助の和尚のバランスがとてもよく、今まで観た中で一番スリリングな三人吉三だった。なにより、時蔵のお嬢が格好いい。女の形をしていても男だという性根がしっかりしている。大川端のツラネは聞き惚れたし、娘と男の変わり身が鮮やか。100両を手にして寺を出た行くところなど、颯爽として、ヒーローの趣き。最期も振袖を着ていても仕草は男で立ち回りも力強い。隼人のお坊は以前はどこか頼りなかったけど、今回はたくましくなって、お嬢との並びも美しい。巳之助の和尚は骨太な感じが頼もしく、兄貴分の風格がある。
おとせを左近、十三郎を染五郎が勤めたためか、この2人のくだりがじっくり描かれた感じ。左近のおとせは顔が真面目すぎな感じで、もっとしどけなくてもよさそう。歌六の伝吉は長い独白を聞かせた。

2026年3月21日土曜日

3月21日 新国立劇場バレエ団「マノン」

奥村康祐のレスコーが秀逸。幕開きにマントにくるまってうずくまっている姿に漂う虚無感。マノンとは裏表の関係で、マノンの美を利用してのしあがろうとする野心が固く引き締まった表情に見える。常に奥歯に力が入っている感じ。なのに、力及ばす無惨に撃ち殺される哀れさ。終始悪そうな感じで、利用できるものは妹も使う強かさ。木村優里の愛人とは長いキスから始まるも、態度は冷たい。所有物としての執着はあるが、愛情はないよう。2幕の酔態は本当に酔っ払っているみたいにフラフラしてて、倒れ方も大胆。
小野絢子のマノンは役そのもの。デ・グラューへの愛も、贅沢や宝石に惹かれるのも、心の赴くまま。悪気ないのは深く考えていないからで、男たちを破滅に導く。
福岡雄大のデ・グリューは優男みがなく、ニンとしては奥村と逆ではと思うが、超絶技巧リフトの安定感たるやさすが。
木村優里の愛人は虐げられる立場ながら、うまく立ち回る賢さがある。踊りはもっとアダっぽくても

3月21日 三月大歌舞伎 昼の部

「加賀見山再錦絵」

松緑が又助と岩藤の二役。実直なのに不器用で容易に騙されてします又助は悪くないが、丸顔もあって、亡霊なのにどこか可愛い岩藤はあまり怖くない。骨寄せは右脚が下に落ちたまま引っ込んでしまうアクシデント。もう公演も後半なのに。宙乗りはフワフワしてメルヘンチック。
萬寿の尾上は体つきや動きのゆったりさがちょっと重たげに見える。
又助妹に莟玉。技量よしの健気な娘を好演。ただ、兄が匿っている主君と出来ちゃうってどうよ。
芝翫の大膳は大悪党の大きさが足りないからと思ったが、最期の殺されぶりは風格があった。
大詰めに7代目菊五郎。小屋の中でスタンバイして御簾を上げての登場だったが、刀を杖代わりに歩いて元気そうです何より。

3月20日 文楽京都公演 夜の部

解説は芳穂。落ち着いていて、笑わせる間もいい。

「曽根崎心中」

生玉を睦・清丈。
出だしはよかったが、後半声が辛かった。

天満屋は藤・燕三。
三味線がしっとりとしてとてもいいのに、藤はますます浄瑠璃らしさがなくなってないか?お初のセリフも地声のままみたいで、オンはどこへいったの?

曽根崎森は芳穂のお初、小住の徳兵衛、織栄のツレ。三味線は錦糸、勝平、清允。
芳穂は危なげない語り。錦糸の道標がしっかりしてる。恋の手本となりにけり、で、終わらなかった?

人形は和生のお初にしっとりとした色気。玉男の徳兵衛は磐石。玉志の九平次はもっと嫌なやつでもいい。

3月20日 文楽京都公演 昼の部

解説は織栄。ハキハキと大きな声は若手落語家のよう。メガネ姿に会場のマダムは「のび太くん」を連発。緊張のためか後半はカミカミで、自分の名前すら噛んでいた。

「道行初音旅」

織の静、小住の忠信、咲寿のツレに清志郎、清丈、燕二郎。なんだか不協和音というか、音が沈んで聞こえた。織はいつも通りだが、小住は声が風邪気味みたい。
人形は簑二郎の静に玉助の忠信。簑二郎はうまいのだが華に欠けるのは如何ともし難い。玉助は動きが大ぶりで、狐にしなやかさがないし、忠信への早替わりでは狐火の衣装を脱ぎ捨てるのがセットからはみ出して見えた。静から忠信へ投げた扇が直線的にビュンと飛ばしたが、キャッチしたのは見事。

「新版歌祭文」

野崎村の中を小住・錦吾、前を靖・富助、後を織・勝平に燕二郎のツレ。 靖が久しぶりによき。富助のおかげか。お光、お染を語り分けつつ、どちらも可愛いし、久作は純朴ながら分別がある。織はなんか、急に武家の屋敷に変わったよう。久作は合邦みたいで、娘2人は年齢がグッと上がったみたい。
床はイマイチだったが、人形は充実。一輔のお光は村娘にして落ち着いていたようにも思うが、まめまめしく動いたり、お染な嫉妬したりする様が可愛らしい。髪を整える仕草が細かくリアルだった。玉佳の久松は板挟みで右往左往する頼りなさが秀逸。紋臣のお染はお嬢さんのわがままさ、一本気さがとてもらしい。

2026年3月17日火曜日

3月17日 映画「道行き」

勘十郎が役者として初出演したというので見に行った。
奈良の古民家を守りたいと移住した青年(渡辺大知)と、古民家の元の持ち主(勘十郎)を中心に、町の歴史を辿りつつ、壊されていく古民家を描く。
勘十郎は訥々と喋る様子に歴史を感じさせる。セリフ拙いところもあったが、味と言えなくもない。
途中、文楽の「面売り」のシーンが入るのだが、ちょっと意味不明。昔の町の賑わいを匂わせたのかもしれないが、面売りが盛んだったわけでもないだろうし。思いがけず呂勢・藤蔵の浄瑠璃が聞けたのは良かったが。

2026年3月10日火曜日

3月9日 歌舞伎交響曲第急番 エヴァンゲリオン

アーカイブ配信をギリギリで視聴。 左近の渚カヲル、吉太朗の碇シンジの配役で、セリフなしの舞踊で二人の関係を描く。2人ともアニメのキャラクターの雰囲気をよく再現していて、左近は凛としたクールビューティーの佇まい。体感が細くしっかりしているので、舞姿が美し苦、宙乗りで去っていくラストシーンは神々しいほど。吉太朗はナイーブな少年らしさを繊細に描き、カヲルを死なせてしまってからの慟哭など表情の演技が秀逸だった。 音楽は雅楽と長歌?、琴など、時代を跨いだ和楽器の混成で歌舞伎?という感じがしなくもない。1時間程の上演時間だったが、男女のアンサンブルの場面が半分くらいを占め、もっと主役の2人を観たいと思った。横浜アリーナという大きな舞台にもかかわらず、観客席にはオペラグラスがほとんど見当たらず。会場で見ていた人の満足度は十分だったのだろうかtお思った。

2026年3月7日土曜日

3月7日 花形歌舞伎特別公演 曽根崎心中物語 桜プログラム

壱太郎のお初、右近の徳兵衛は前回の大阪松竹座でも観ており、期待通りというか想定内。2人とも綺麗なのだが、作り物のような美しさとも感じる。壱太郎のお初は徳兵衛に一途でそれ以外のことには思いが至らなそう。右近の徳兵衛はどこかシュッとしていて、上方のつっころばし感が足りないので、同情しにくい。縁の下でお初の足を取るところ、なんかもたもたしていたのも気になった。 「物語」がつくのは、初めての人にも分かりやすいよう、演出を変更したためとのことで、観音巡りや梅田橋の道行の場面が加わる一方、場面転換がスムーズでテンポ良く物語が進む。1時間30分弱にまとめた本編は、ストレスなくみられる長さだろう。ただ、新演出は色々疑問で、観音巡りが付くのはいいとして、お大尽に連れられたお初と徳兵衛がすれ違って互いに気付かないのは意図不明。その後の生玉神社で久しぶりに再会するのだから、その前にニアミスしていると久しぶり感が薄れるのでは? 梅田橋の場面も、舞台中央に橋があるだけのシンプルなセットで結構な時間をかけているのだが、森の中をゆく道行の方がいいと思った。一番意味不明だったのは、白い花が咲き乱れる中で心中するのかと思いきや、その後手を取り合って花道をゆく引っ込み。2人が倒れて幕の方がシンプルで分かりやすいと思うのだが。 上方歌舞伎の面々が重要な役に抜擢されていたのは嬉しい限り。九平次の松十郎は二枚目で色気があり、正直、徳兵衛より格好いいくらい。もっと意地悪くいけずな感じにもできるのではと思ったが、主演の2人(というか徳兵衛)に遠慮していたのか。熊左衛門は千次郎。お初を連れ回す豪商の役をおおらかに。丁稚とお玉は吉太朗と翫政のダブルキャストで、桜プロは丁稚・吉太朗、お玉・翫政。吉太朗の丁稚はちょっととぼけた感じがほのぼのとしてよき。翫政の下女はちょこまかとよく働く。 アフタートークはゲストなしで、壱太郎と右近のみ。1日3公演の疲労からか、2人ともハイテンションでよく喋る。南座の花形歌舞伎の初回を振り返っての話題が多かったが、同じことを繰り返しているところもあったり。15時の回の時点では残席があったが、宣伝したかいあってチケットは完売だったそう。映画「国宝」を観て初めて歌舞伎を観たという人も多かった。

2026年3月5日木曜日

3月5日 エリザベート TAKARAZUKA 30th スペシャル・ガラコンサート

念願の望海風斗のトートは歌唱力といい、存在感といい、これまでみた最高のトート。深みのある歌声が会場を包み込み、黄泉の帝王としての妖しさや威厳を感じさせる。宝塚版なので、ルドルフとの「闇が広がる」のデュエットで手を繋いで引っ張り合う振り、体操中に倒れたエリザベートに「死ねばいい」と宣うのもよい。惜しむらくは、退団して年月が経ち、キーが高めだったこと。男役の低い声で聴けたらなおよかっった。 エリザベートは夢咲ねね。少女期のかわいらしい感じは悪くないが、やはり歌唱に難ありで、裏声に頼りすぎ。しかも、音程が微妙、、、。せっかくのトートとのデュエットも興が削がれること甚だしい。フランツの北翔海莉は優しく、穏やかな皇帝ぶり。晩年の老いた演技もさすが。青年ルドルフは柚香光。ビジュアルは申し分ないが、歌唱はいまひとつ。死の直前、苦悩を表現するコンテっぽいダンスシーンがたっぷりあったのは、得意のダンスを生かす演出か。ルキーニの宇月颯はやさぐれた感じがよく、歌唱力もあり。狂言回しとしてしっかり物語を率いた。

2026年3月1日日曜日

3月1日 フェニーチェ文楽 燃ゆ〜桐竹勘十郎が描く愛の物語〜

「壷坂観音霊験記」と「生写朝顔話」の2本立て。トークの木ノ下裕一によると、どちらも比較的新しい作品で、男女のすれ違いという共通点がある。盲目の登場人物が出てくるのも共通している。 「壷坂観音霊験記」 錣・宗助の床に錦吾がツレ。ウエットな語りが御涙頂戴にピッタリ。沢市のうじうじした感じがよく出ていた。 人形は勘十郎のお里が細々とよく働く女房ぶりで、細かな所作が雄弁。沢市は簑紫郎。 「生写朝顔話」 宿屋の段は織・藤蔵に清公の琴。目の覚めるような演奏。大井川は芳穂・勝平。芳穂の語りに情があってよかった。 人形は勘十郎の朝顔に一輔の次郎左衛門。朝顔は次郎左衛門が阿曽次郎とわかって追いかけるところは、立役のように遣うとのことで、鬼気迫るほどの躍動感があった。 いつもの小ホールでなく大ホールだったが、客は主に前半分。船底がないので、前方の席は観にくいのではと思った。

2026年2月28日土曜日

2月28日 清流劇場「曽根崎心中」

曽根崎心中を現代に翻案し、一人芝居で描く。現代の心中は何かと考え、介護疲れや生活苦から死を選ぶことにしたそう。 老老介護の男の日常を描きつつ、ラジオ?で古典の曽根崎心中の語り(現代語訳)を流したり、一人芝居で一場面を演じたりするシーンが挟み込まれる。岸本は九平次は凄みのある声色だったり、徳兵衛の狼狽えた様子、お初の健気さなどを達者に演じ分けるが、一人芝居は落語のようにも見えた。現代パートはほとんどセリフがなく、慎ましい食事や通帳の残高を確認する様子で生活苦を想像させる。「もう迷惑かけられへん」というセリフを繰り返し、心中へ至るのだが、淡々とした様子で、最後に妻の首を締め、自らも包丁で首を切った表情はうっとりしているようにも見えた。ミニマルな舞台で、妻の姿はなく、テーブルに置いた浴衣?で表現するのは、能のようでもある。

2026年2月23日月曜日

3月23日 三月大歌舞伎 昼の部 Aプロ

「加賀見山再岩藤」

巳之助が又助と岩藤、時蔵が尾上を演じるAプロを所見。

巳之助の又助は硬派な感じで、時代物らしさというか、武士らしい。その分、情は薄いかも。岩藤は幽霊のおどろおどろしさ、怖さがたっぷり。フワフワは蝶と戯れたり、余裕があって楽しそう。城内で尾上と対決するところは、幽霊でなく生きた人(ただし、すごく嫌味で意地悪)に見えたが、仏像をかざされてからの代わりようは化け物じみていて良かった。
時蔵の尾上は凛とした姿勢の良さ、落ち着いた話ぶりと中臈の威厳がある。最後の対決シーンがないのは物足りない。

2026年2月22日日曜日

2月22日 文楽公演第3部

「勧進帳」 花道を設置し、弁慶の引っ込みが眼目。弁慶は3人出遣いで、玉助の主遣いに玉勢が右、足は前半は玉征、後半は玉路だったか。大きさがあり立派な弁慶だった。 床は錣の弁慶、藤の富樫、小住の義経、聖、薫、織栄、文字栄に藤蔵、清志郎、清馗、清丈、清公、錦吾、藤之亮。 錣は弁慶に似合わないのでは。藤蔵以下の三味線が鮮やか。

2月22日 文楽公演第2部

妙心寺の口を南都・団吾。 奥は織・燕三。 織はいつもの自信に溢れた語り。鮮やかに情景を描く燕三の三味線とのケミストリーを感じたかった。 瓜献上は睦・勝平。 百姓に扮した田島頭が策を労するもちょっと浅はかでは。 夕顔棚は希・団七。 尼ヶ崎の前を呂勢・清治。 清治は力が入りきらないように感じるところもあったが、細かいニュアンスの描出はさすが。 切は若・清介。 「現れ出でたる武智光秀」はまあまあの声量だったので、上村氏の評論が効いたかと思ったが、その後はいつもの低速運転。「こは母人か、しなしたり」を淡々と語るので、感情と表現が食い違って違和感がすごい。床を諦めて人形に集中しようと思うのに、気を削がれること。 人形は玉男の光秀に勘十郎の久吉、和生のさつきが揃って充実。

2月22日 文楽公演 第1部

「絵本太功記」の半通し。 大序は御簾内で薫→織栄→聖→碩、清允→清方→藤之亮→燕二郎のリレー(順番は多分) 人形は頭巾を被っていて、本役とは違う人が遣っていた。 二条城配膳は三輪の光秀、津国の春長、咲寿の蘭丸、亘の中納言・十次郎に清友。 本能寺の口は碩・寛太郎。 蘭丸と腰元しのぶの恋人同士のやり取りがいい節で聞かせた。 奥は芳穂・錦糸。 局注進の口は亘・友之助。 弾き出しのテンポが速かったような。前段までで2分ほど押していたから? 奥は靖・宗助。 まだ 顔を真っ赤にして声を張り上げるのは、聞いていて辛そう。 長左衛門切腹は千歳・富介。 堂々とした語りは切り語りの貫禄。 人形は簑二郎の春長に大物感が足りず、玉男の光秀に位負けして見えた。 一輔の阿野の局は本能寺の段での舞、局注進では薙刀を振り回しての立ち回りと、硬軟の大奮闘。

2026年2月21日土曜日

2月21日 猿若祭二月大歌舞伎 夜の部

「一谷嫩軍記」

あまり上演されない陣門・組討は初めて。
勘太郎の小次郎・敦盛は声変わりもあってセリフに難ありだが、凛とした立姿は無冠の太夫の気品があった。勘九郎の熊谷は太い役が似合う。敦盛の身代わりとなった小次郎と一騎討ちとなってからが長く、我が子を手にかける父親の苦悩を存分に体現した。 遠見の熊谷と敦盛に種太郎と秀乃助。ちっちゃい子が頑張っている様子が微笑ましい。 玉織姫に新悟。勘太郎の敦盛の許嫁には大きすぎな気もする。平山に切り捨てられ、そのまま死んだと思っていたら、最後に瀕死の状態で現れて、敦盛の偽首と対面するのにびっくり。

「雨乞狐」

休演の鶴松に代わり、勘九郎と七之助が踊り分け。踊り上手の2人で見られて存外の眼福。のっけから飛び回る女狐・七之助は普段にない弾けぶりだが、素早い動きはあまり得意ではない? 最後、セリから飛び上がって現れた勘九郎の狐の躍動感たるや。MJのポップアップみたい、というか、高さはもっとあったかも。

「梅ごよみ」

七之助と時蔵の芸者2人の鞘当てが絶品。七之助の仇吉は文句なく美しく、時蔵の米八は深川芸者の粋と意地が鮮やか。仇吉の方が美人という設定なのだが、ちゃんと美人じゃない感じがするのがさすが(色より芸を売ってる感じがする)。吉弥の政次が意地悪そうでよき。莟玉のお蝶は善良なお嬢さんだが案外強かそう。3人の女に思いを寄せられる丹次郎に隼人。女の諍いを適当にやり過ごす優男がよく似合う。すったもんだのあげく、丹次郎は許嫁の元へ。芸者2人が「しらけるねぇ」と終わるのも、のんだかスカッとして、後味のよい芝居だった。

2月21日 猿若祭二月大歌舞伎 昼の部


「お江戸土産」

結城からの行商人、お辻とおゆうを鴈治郎と芝翫。コメディなのだが、鴈治郎の田舎女が滑稽というより痛々しい。人のいい田舎女という設定なのだが、くどくどしく、最後、役者の手を握っただけで13両でもいいと笑うところはもっとカラリとしてくれないと笑えない。芝翫は気のいいおばちゃんという感じ。
役者の栄紫を巳之助。女方だから、整った綺麗どころという設定はなんかムズムズする。栄紫と恋仲のお紺は種之助。遠目もあって最後まで誰かわからんかった。 お紺の養母文字辰を孝太郎。意地悪な年増がよく似合う。

「鳶奴」

松緑らしい舞踊だが、花道のくだりが長く、3階席からだとよく見えない。カツオを鳶に攫われて、追いかけるだけといえばそれだけなので、ちょっと退屈。

「弥栄芝居賑」

中村屋兄弟が猿若座の座本夫婦、芝翫と福助が猿若町の名主夫婦、男伊達に歌昇、萬太郎、橋之助、虎之助、歌之助、女伊達に新悟、種之助、男寅、莟玉、玉太郎、京の呉服商に仁左衛門、孝太郎と格別豪華な配役が、今月休演の鶴松のために集められたのかと思うとつくづくがっかり。
仁左衛門が「私の目の黒いうちに19代目勘三郎の襲名を」とエール。観客も一緒に手締めで賑々しく。

「積恋雪関扉」

勘九郎の関兵衛、七之助の小町姫・墨染、⑧菊五郎の宗忠と、この上ない好配役なのに、途中で意識が途切れた…。後半のぶっかえってからはテンポもよく、集中して観られた。

2026年2月15日日曜日

2月15日 上村吉太朗 素踊りの會

「越後獅子」 きっぱりした動きが清々しい。 通常より長い晒を使っているそうで、何度か晒が絡まりそうになるところもあったが、うまくリカバーしていた。 「鷺娘」 素踊りで拵えがない分、恋の苦しみを眼差しで語る感じ。藤間勘十郎振付らしい振付、ポーズがところどころに見られ、宗家の影を感じる踊りだった。 杉江能楽堂というミニマルな空間で、間近にいい踊りを観られて満足度高し。 踊りの前のトークで、昨年の印象深い役として「車引」の桜丸を、江戸、上方の両方演じられたことと言っていた。いつか通しで勤めたいと。 曽根崎のお初はやってみたい役と。(3月に右近がダブルキャストで演じ、成駒家だけのものでなくなったので) 立女方を目指しているというのは意外だった。立役もしっかりできているので。壱太郎の次の、上方の女方を目指すそうだが、相手役はどうするの?

2026年2月14日土曜日

2月14日 blank First Collection

「Classic in b」
白やゴールドのクラシックチュチュにビジューのついた衣装というバレエの王道のような出立ちで、動きもクラシックなのだが、テンポがやたら速いのはちょっと違和感。王子や姫はゆったり動かないと、優雅さがなくなってしまう。これで衣装がミリオンのようなシンプルなものだったらしっくりくるのかも。

「Scribble」
おもちゃのようなコミカルな動きが楽しい。曲は何かのピアノソナタ(タイトルが出てこない…)
男性3人に女性1人、長袖の白シャツに黒い細身のパンツというシンプルな衣装。長椅子を使った動きも面白い。

「ダイイングスワン」
単調な音楽、リズムは原始の表現か。類人猿のように背中を丸めて行き来する男女が次第に惹かれあうようになって、なぜかフニクリフニクラで最高潮?に。最後は「瀕死の白鳥」の音楽で、首飾りや腕輪を贈られた女性ダンサーが得意げに踊るも、周りは離れていって最後は1人取り残される。ダンスの誕生から発展、退化していくという物語を込めたそうだが、うーん…。

「frustration」 男性5人の踊り。センターの八幡顕光のみ上半身裸で肌色のパンツ、後の4人は体操選手のような衣装で赤、黄(橙?)、青、紫の4色。
「Pas de deux in b」 秋山瑛と奥村康祐のグランパドドゥはこの日一番の眼目。2人のシルエットが浮かび上がる幕開きからうっとりする美しさ。ブルーの衣装が清廉な感じで、可憐な秋山とノーブルな奥村のコンビは難しい技もさらりとこなす。アイコンタクトもしっかりしてて、醸し出す幸せ感が素晴らしい。距離感が測りきれなかったのか、ジャンプしてリフトする時にぶつかったような音がしたり、手を取る時に近すぎてあれ?という顔をしたらもあったが。奥村は男性バリエーションの最後、下手にはける直前で滑ったようでぐらりとしたが、踏みとどまった。 「Pas de deux in b」 秋山瑛と奥村康祐のグランパドドゥはこの日一番の眼目。2人のシルエットが浮かび上がる幕開きからうっとりする美しさ。ブルーの衣装が清廉な感じで、可憐な秋山とノーブルな奥村のコンビは難しい技もさらりとこなす。アイコンタクトもしっかりしてて、醸し出す幸せ感が素晴らしい。距離感が測りきれなかったのか、ジャンプしてリフトする時にぶつかったような音がしたり、手を取る時に近すぎてあれ?という顔をしたらもあったが。奥村は男性バリエーションの最後、下手にはける直前で滑ったようでぐらりとしたが、踏みとどまった。 秋山瑛と奥村康祐のグランパドドゥはこの日一番の眼目。2人のシルエットが浮かび上がる幕開きからうっとりする美しさ。ブルーの衣装が清廉な感じで、可憐な秋山とノーブルな奥村のコンビは難しい技もさらりとこなす。アイコンタクトもしっかりしてて、醸し出す幸せ感が素晴らしい。距離感が測りきれなかったのか、ジャンプしてリフトする時にぶつかったような音がしたり、手を取る時に近すぎてあれ?という顔をしたらもあったが。奥村は男性バリエーションの最後、下手にはける直前で滑ったようでぐらりとしたが、踏みとどまった。 「Not Chained」 舞台中央に大きな鎖のオブジェが象徴的。黒くシンプルな衣装の男女12人が鎖のように連なったり、輪になったり。 振付ユニットの初公演ということで、意欲的な試みと思うし、ダンサーのレベルも高かったが、あまり個性が感じられなかったかも。

2026年2月7日土曜日

2月7日 サド公爵夫人

登場人物が全て女性のセリフ劇をオールメールで上演。舞台中央に配した丸く大きなが不気味な感じを醸す。サド侯爵夫人ルネ以外の衣装は黒一色で、キャラクターに合わせて、慎ましやかだってり、セクシーだったり。ルネ役の成宮寛貴がただ一人白い衣装で際立ち、清廉さを象徴。女っぽくしすぎることなく、口跡の良さでルネの誠実さや慎ましさを表していた。一方、サンフォン伯爵夫人の東出昌大はショートパンツや上半身をむき出しにしたドレス(スカート?)でセクシーだが、オネエっぽい台詞回しは色気を意識したせいかもしれないが気持ち悪く、三島由紀夫戯曲の流麗なセリフの美しさが感じられなかった。以前も三島戯曲の経験があるはずなのにがっかり。モントルイユ夫人の加藤雅也は男のままに感じるところもあったけど、オールメールで演じるのはその効果を狙ってのことだろうし、それはそれで悪くないと思った。ルネの妹アンヌ役の三浦涼介は小悪魔っぽい魅力があり目を惹いた。シミアーヌ男爵夫人役の大鶴佐助、家政婦役の首藤康之はちょっと役不足では。 ルネが全ての衣装を脱ぎ捨て裸になって去っていくラストは、全てのしがらみから自由になった姿かと思うが、宮本亜門演出のあざとさ?裸のインパクトに頼りすぎているようにも思った。

2026年2月6日金曜日

1月30日 ミュージカル「エリザベート」

博多座公演を後日配信で視聴。 望海風斗のエリザベートは歌のうまさは抜群で、「私が踊るとき」の自信に溢れた歌唱や、精神病院やルドルフの葬儀の感情を露わにした歌は感動的だった。…のだが、演出のせいか今一つ入り込めず。特に、精神病院のシーンをハンガリー国王に就任した絶頂期のあと(少年ルドルフが母を求めるところを挟んだが)に移したのが意図不明。精神病患者に同情する理由がないと思うのだが。(宝塚版では、フランツの浮気が分かって失意のうちだから、感情の流れが自然)全体的にメイクが薄いのか、少女時代に無理があったり、全盛期も今一つ地味だったり。(トートの方が化粧濃くないか?) 山崎育三郎のトートは、歌はうまいのだが、キャラクターとしては似合わなくて、3か所くらい、声に出して笑ってしまった。(寝室のシーンでエリザベートの背後からニュッと出てくるところと、体操室で「待っていた!」と叫ぶところ、ルドルフの墓から這い上がるところ)何というか、粘着質で変態っぽいのだ。最後の、胸をはだけたレースの白シャツの衣装もなんか変で。ああいうのはスラリとした細身でないと似合わないと思う。濃いアイシャドウのせいか、ソバージュヘアのせいか、顔が「翔んで埼玉」の二階堂ふみに似てた。 松也のルキーニは、目線を上目遣いでキョロキョロして、イっちゃってる感じがちょっとうざい。フランツの佐藤隆紀は庶民的というか、善良なおじさんみたいで皇帝の威厳が足りないか。ルドルフの伊藤あさひはナイーブな若者らしさが役にあう。目を見開くと漫画のびっくり目みたいで、追い詰められた感じが出ていた。ゾフィーの香寿たつきは作りすぎず、威厳があってよき。 演出面であれ?と思うところがいくつかあって、失意のエリザベートが各国を放浪する中でギリシャの別荘を訪ねてハイネの詩にかこつけて父親のようになれなかったと嘆く場面は唐突な感じ。その後の「Hass」でハイネの銅像を建てようとしているという件があるけれど、それとの絡みなのか。もしその為に精神病院のシーンを前に移したのだとしたら、良策とは言えないと思う。体操室のシーンでも、フランツの浮気を知ったエリザベートが「命を絶つわ」と自ら言うのもよくない。「どうやって生きていったらいいの?」と言うのに、トートが「死ねばいい」と言い放つのがいいのに。後、「闇が広がる」でトートとルドルフが手を引っ張り合う振付がなくなったのも残念。

2026年1月31日土曜日

1月31日 第52回バレエ芸術劇場

「ラ・シルフィード」

シルフィードの荻野あゆ子は端正な踊りだが、あまり妖精ぽくないなぁと思っていたら、奥村康祐のジェームズが絡むと途端に軽やかでこの世ならざるものに見えた。追いかけたり、手を伸ばしても触れられなかったり、という動きが加わるとこんなに変わるのかとびっくり。奥村ジェームズは、細かな脚使いの多い振付だったが、足先まで神経が行き届いて美しかった。エフィは吉村茜、グルーンは吉田旭。マッジの法村圭緒は猫背になっているものの、身のこなしが男性で??となった。 「卒業舞踏会」 怪我で降板した佐々木大に代わって山本隆之が女学院長でお得な気分。スカートの膨らんだドレス捌きも美しく、年配女性がとてもチャーミング。老将軍の山本庸督との絡みはちょっとセクシーだったり。 即興第1ソロの佐々木夢奈はファニーな雰囲気が役にピッタリ。第2ソロの水本千晶はノーブルな踊り。フェッテ競争の東川実奈美、吉田裕香は後半少し崩れたが、あれだけ回れば仕方ないかも。トリプルを入れたり、手の振りを入れたりしていたのは吉田かな。

1月31日 第三回素浄瑠璃の会

「合邦住家の段」を芳穂・錦糸。 メリハリのある語りで、約80分の熱演。三味線がたっぷりと間を持たせて、「おいやい」の息遣いも緊迫感があってよかった。後半の三味線の手が多いところは、少し音が乱れるところもあったかも。

2026年1月29日木曜日

1月29日 第三十三期文楽研修終了発表会 第三十四期文楽研修発表会

「二人三番叟」

研修生の定番なのは、足遣いが活躍するからか。研修生は33期の鶴野森大と34期の遠藤匡。2人とも、足踏みのテンポがよく、鶴野の方が動きがきっぱりしているか。 むしろ三味線の足取りが乱れ気味なのが気になった。シンの錦吾が舞台をチラチラ見ていたのは、人形(足遣い)がついてこられるか確かめていたのか。2番手以下の三味線が走りそうになったが、踏みとどまった。 太夫は小住、碩に県秋雨生の岡本凱、梅江亮介、三味線は錦吾、燕二郎、清方、藤之亮。 「寺入り」は研修生の梅江が清公と。 ハキハキとした発声で、キャラクターがはっきりして聞きやすいと思ったのだが…(後日、錦糸に聞くと、話にならないと。義太夫節の基本が身についていないのだそう) 「熊谷桜」は研修生の岡田が清丈と。 語りにメリハリがなく、長時間聞くのは辛かった。 「丗三間堂棟由来」平太郎住家から木遣り音頭。 床は碩・燕二郎の中、亘・友之助の奥。 人形は研修生の鶴野が進ノ蔵人の主遣い、遠藤がみどり丸の足遣い。 進ノ蔵人は派手な動きはなく、歩いたり座ったりという程度だが、少しぎこちなく見える。一方のみどり丸は舞踊っぽい振りがあるので、足遣いもなかなか難しそう。

2026年1月28日水曜日

1月28日 坊ん倶楽 vol.20

雪鹿「寄合酒」
雪鹿は初めて聞いたが、鯛を捌く仕草などちゃんとしてる。マクラで披露したケータイのバイブ音が上手かった。机の上とポケットの中の違いまで。

吉坊「初天神」
寅ちゃんがだいぶおませさんで、父母の夜の営みに耳をそばだて、向かいのおっちゃんに話そうとしたり。お父ちゃんは飴をねぶり、みたらしをねぶり。お父ちゃんの羽織がお母ちゃんが褒美に貰ったのを男仕立てにしたというのは初めて聞いた。

対談は大槻文蔵と。好きな落語は「算段の平兵衛」「はてなの茶碗」と「蔵丁稚」(だったか?)。新作に取り組むのは舞台は作らないといけない、模倣ではだめだから。復曲を選ぶときは普遍的かどうかがテーマ。鬼滅の刃は炭治郎が妹を助けたいという思い。親子や戦争など。演者の熱気と観客によって活気が作られる。松竹座がなくなってしまうが、劇場がなければどうしようもない。芝居の根本は真ん中に役者が居て、周りに客がいる。繁昌亭の舞台は能舞台に比べて奥行きがないので、一番動きの少ない「景清」にした。
「景清」の仕舞。トークで言っていたように終始目を瞑ったまま。戦の模様が浮かぶのはさすが。最後に後ろに下がるところで軽く壁にぶつかってヒヤリ。

「へっつい幽霊」
ネタおろし。テンポよく、楽しかった。

2026年1月23日金曜日

1月23日 寿初春大歌舞伎 夜の部

「女鳴神」

鳴神の男女を逆転したパロディなのだが、色仕掛けに騙されるのが女になると全く笑えない。尼僧とはいえ元々弱い立場の女を騙すという構造がダメなのだと思う。孝太郎の鳴神尼に鴈治郎の雲絶間之助という配役も、構造的な欠陥を補うにはとても足りなく、後味が悪い。

「仮名手本忠臣蔵 七段目」

愛之助の由良之助は口跡の良さが大名家の家老らしい風格。2回目で慣れてきたのか緊張感が薄くなったのはマイナス。壱太郎のお軽は浅薄な感じがとても役らしい。上方の演出で衣装や団扇わ使わないなどの違い。種之助の平右衛門は素朴な人の良さが感じられ、元は百姓という役には合っているものの、元来の弟属性のため壱太郎と並ぶと兄妹に見えないきらいがある。中車の九太夫は悪人が上手い。歌之助の力弥はちょっと大人すぎかも。
三人侍は松十郎、蝶三郎、愛三郎。仲居に千寿、竹之助、折之助、りき弥ら。

「京鹿子娘道成寺」

壱太郎の花子は吊り目気味のアイラインで、はじめからキリリと強そう。おっとりとした娘と思わせて実は、という演出が多いと思うのだが、性根をより濃く滲ませる狙いかもしれないが、その分、終盤とのギャップが弱くなったようにも感じた。押し戻しが付き、鐘に入って鬼の形相に。所化に吉太朗、歌之助ら。

2026年1月22日木曜日

1月22日 寿初春歌舞伎特別公演 昼の部

「車引」 吉太朗の桜丸がよき。深編笠をかぶったまま、これまでの境遇を吐露するセリフに心がこもっていて思わずほろりとさせられた。様式美の強い演目なので、このように心が揺さぶられたのは初めて。歌之助の梅王は若さ漲る感じで少し子どもっぽい感じも。桜丸の方がお兄さんに見えた。種之助の松王は別人に見えた。時平は猿弥で、怪しい力を発揮しそう。3階席だったので、登場時に袴の裾を整えようと足をバタバタさせていたのが見えてしまった。ここは堂々と出て欲しい。 金棒引に當吉郎、杉王に翫政と上方の役者がいい役を勤めているのも嬉しい。 「金閣寺」 壱太郎の時姫は品がありセリフの癖もいつもより抑えられていた感じでよかった。鴈治郎の大膳は恰幅のよい悪人。愛之助の東吉はシュッとした二枚目。吉弥の直信が憂いのある様子で、雪姫と視線で気持ちを交わす。 千次郎の鬼藤太。 「らくだ」 また!?と思ったが、上演を重ねて間合いがよくなったのか、前よりも面白かった。愛之助演じる熊五郎の乱暴ぶりと気の弱そうな中車の久六の掛け合いがテンポよく、小気味いい。鴈治郎の家主、猿弥の女房は似たもの夫婦で仲がよさそう。亀鶴のらくだは緑色?でキスされた猿弥の顔にもドーランが移っていた。

2026年1月18日日曜日

1月18日 2025年度全国共同制作オペラ「愛の妙薬」

カワイイがテーマという杉原邦生演出の舞台はポップでキュート。まず目につくのは大きなピンクのハートのオブジェ。裏は黒く、表になったり裏になったり主人公の心の動きを表す。主人公のネモリーノは同じピンク、ライバルのベルコーレは黒の衣装でハートの表裏と対応する。デニムや青を基調としたカジュアルな衣装のコーラスの中にあって、主要登場人物の明るい色彩の衣装が際立つ。アディーナは黄色地のチェックのパンツスーツで明るく快活なイメージ。ジャンネッタはオレンジ、ドゥルカマーラ博士は紫で怪しい雰囲気。主人公の心情をバックアップするダンサーはピンクのキッチュな衣装で、振付もカワイイ。 ネモリーノ役の糸賀修平は小柄なこともあって、ぬいぐるみみたいなかわいさがあり、応援したくなる主人公。物語としてはどうってことないのに、2幕で2人の心が通じ合うところでは、歌唱の素晴らしさもあってほろりとした。アディーレ役の高野百合絵の方が長身なこともあって、姉さん女房的な感じのギャップも。アディーレがネモリーノをバックハグするハッピーエンドは、身長差がまたカワイイ。この後オケがなかなか始まらず、舞台上の2人が戸惑うのは大千秋楽だからかな。

2026年1月12日月曜日

1月12日 新春浅草歌舞伎 第2部

挨拶は左近。
成人の日の話題から、「男女道成寺」の解説。狂言師左近は清姫の分身か安珍かと思ったが、調べたら関係ないただの「陽気なおじさん」(お兄さんでなく?)とのこと。手拭い撒きの練習と称して、後ろ向きで手拭いを投げるサプライズも。時間オーバーしそうになって噛み嚙みになったのも可愛い。

「傾城反魂香」

橋之助の又平、鶴松のおとくは15年前の約束だそう。勘九郎、七之助兄弟に習ったそうだが、だいぶ違うと思った。橋之助は吃りが不自然なうえ、喋るところで舌足らずになるのはよろしくない。苗字を許されて喜ぶところなど、精神年齢が低い感じ。吃りではあっても、絵師としての技量はあるのだし、ちゃんとした大人として描くべきでは?鶴松は立板に水のような喋りには至らず、綺麗だけど情が薄く見えた。
男寅の修理之介は似合う。染五郎の雅楽之助は線が細い。

「男女道成寺」

莟玉の花子、左近の桜子が可憐で美しい。立役の人が桜子をする場合、女方の拵えが似合わないことが多いが、この2人はビジュアルに申し分ない。同じ振りでも微妙にタイミングが違ったり、身体の角度が違ったりするのだが、息ぴったりに見える。花道でキマルところなど、「国宝」にもあった場面がホンモノの歌舞伎で見られる嬉しさ。左近は狂言師の姿になってからは伸び伸びとして、キビキビとした踊り。莟玉は左近に比べると動きがミニマムだが、おっとりとして健気な感じ。

2026年1月11日日曜日

1月11日 寿初春大歌舞伎

昼の部終わりの「実盛物語」と夜の部最初の「女暫」を幕見で。

勘九郎の実盛は時代ものがニンに合ってよき。口跡がよく、セリフが明瞭で物語がよく分かる。語尾の言い回しや目配さなどちょっとした仕草が勘三郎によく似ているが、砕けすぎないのがいいところ。
太郎吉の森田緒兜は可愛らしくもしっかり。九郎助が「この子が腕を見つけて…」と説明する件で祖父の顔を見たり、小万の最期を聴かされるところで実盛の方を見たりと、聞く芝居もちゃんとしていて感心した。
九郎助の橘三郎、女房の梅花、瀬尾の松緑、葵御前の新悟と敵役が並び、充実した舞台。

「女暫」は七之助の巴御前の美しさ、愛嬌に尽きる。端々に玉三郎を彷彿とさせるところあり、よく習ったことが分かる。幕切れの舞台番の幸四郎とのやりとりも、よく知ったもの同士の手慣れた様子で楽しませた。 歌昇が赤面の轟坊でキッパリとした体の使い方が際立つ。新悟の女鯰は「中村屋の姉さん」のセリフがいい。芝のぶがキリリとした若衆姿。

2026年1月10日土曜日

1月10日 歌舞伎座公演「鏡山旧錦絵」

時蔵の尾上、⑧菊五郎のお初と、年齢差逆転の主従ながら、全く不自然さを感じなかった。時蔵の尾上は品格、落ち着きがあり、主人としての威厳を感じさせる。菊五郎はちょこまかとした動きで若々しさを醸す。
お初が使いから戻った時に尾上はまだ息があり、最期の言葉を残す歌右衛門の型。尾上がこと切れて倒れ伏す体の動き、派手さはないのに美しかった。好配役だが逆の配役でもぜひ観てみたい。
弥十郎の岩藤が大柄な体も効いて、敵役らしい憎々しさ。草履打ちの場では足がガニ股になっていたのが惜しい。
岩藤の女中頭の橘太郎が「働いて×5参ります」と、初春公演恒例の時事ネタも。
玉太郎の大姫はおっとりとしているが、女方としてはまだ硬さも。

終幕は⑦菊五郎の頼朝、魁春の政子らに加え、時蔵や弥十郎も別役で列座する花見の一幕をつけて、正月らしく華やか。弥十郎が「鎌倉殿」で演じた時政として遅れて登場すると客席も沸いた。手拭い撒きでは、彦三郎の強肩が沸かせた。菊五郎は刀を杖にしながらも、山台から降りて舞台前方まで歩いており、元気そうで安堵した。

2026年1月6日火曜日

1月6日 文楽公演 第3部

「壷坂観音霊験記」 沢市内より山の段の前を織・藤蔵。 切を錣・宗助に錦吾のツレ。 人形は勘弥のお里。一輔の沢市は姿勢が良すぎるのかキリッとして格好よく、盲目らしくなく見えた。 「連獅子」 三輪の雄獅子、希の雌獅子、碩の子獅子に薫、文字栄、三味線は清志郎、清馗、友之助、清公、清允、藤之亮。 人形は玉助の雄獅子、簑紫郎の雌獅子、紋吉の子獅子。 人形の毛振りって…と思っていたが、それなりに華やかで気持ちが晴れた。 25日に再見。公演前に清志郎のトークがあり、珍しく三味線がリードする曲だと。人間が演じるよりも人形は早く動けるので、お囃子や足遣いができるギリギリの速さで演奏したのだそう。

2026年1月4日日曜日

1月4日 初春文楽公演第2部 

「新薄雪物語」 清水寺の段は津国の大膳、南都の団九郎、碩の国俊・左衛門、聖の国行・藤馬、小住の妻平に団七の三味線。 聖は老け役の国行を健闘。南都の小悪党もよき。 渋川使者は咲寿・団吾。 咲寿はまずまず。団吾は終始しかめつらで何かに似ていると思ったら、子泣き爺? 評議の段は芳穂・錦糸。 安定感のある床で物語を不測なく伝える。 園部兵衛屋敷の段は千歳・富助。 さすが切り語りの貫禄。これといった盛り上がりがなく、難しい場面だが聞かせるのがさすが。三人笑いでは、それぞれ違う笑いを聞かせ、語りわけの巧みさにうなった。拍手が起こったのも当然。 28年ぶりの上演だそうで、人形は和生のお梅の方、勘十郎の幸崎伊賀守、玉男の園部兵衛と人間国宝3人が揃う。三人笑いで3人が並ぶと見応え十分。玉佳の左衛門は二枚目なのだが、出て来るたびに玉佳自身の表情が役を代弁していてつい笑ってしまう。一輔の妻平は珍しい奴役だが、立ち回りを鮮やかに決めた。紋臣の薄雪姫が可憐。清十郎は幸崎の奥方だったのだが、首が小刻みに震えていたのが気になった。 床といい、人形といい、3部の中でダントツだと思うが、1部、3部との差が大きすぎるような…。 17日に再見。団七が譜面を見ていて、バチ捌きもミスタッチが目立ったのが気になった。

2026年1月3日土曜日

1月3日 初春文楽公演 第1部

「寿式三番叟」

藤の翁、睦の千歳、小住、亘の三番叟に織栄、三味線は燕三、勝平、清丈、寛太郎、燕二郎、清方。
藤の語りは軽く、厳かさのない翁。三味線ほ厳粛な感じなのに。
三番叟のくだりに入って、小住と亘の若手は声が前に出ていてよろし。
人形は簑一郎の千歳が背筋が左に傾いて見える。玉志の翁。玉翔、簑太郎の三番叟。

「摂州合邦辻」 中を靖・清友。 最近の悪いくせがおさまって、まずまず。 前を呂勢・清治。 玉手のクドキが素晴らしく、こんなに聞き応えのある場面だったかとびっくり。浅香姫と俊徳丸が出てくる前に盆が回ってしまい、もっと聞きたいのに。 切は若・清介。 語り出した瞬間から物語が変わったよう。ボソボソとした語りだったのが、「おいやい」で急に大声になるのだが、合邦の心情としてはむしろ逆では? 聞かせどころだから強調したのかもしれないが、ボリューム調整間違えたみたいに聞こえる。拍手が起こっていたのはびっくりしたせいもあると思う。最後にいつもの「大当たり」の大向こうがかかり「当たってねー」とつい本音が…。
鏡開き効果もあってかほぼ満員の入り。

2026年1月2日金曜日

1月2日 新春浅草歌舞伎 第1部

ご挨拶は橋之助。意外とあっさり。次の梶原で冒頭から舞台に出ているため、着替えて引っ込む間、町人の格好をした役者が場をつなぐのだが、ありきたりな話ばかり。もっと楽しませる工夫がほしい。

「梶原平三誉石切」

染五郎の平三。そつなく勤めているけど、セリフが平坦でなんかつまらない。若いから仕方ないけど、梶原には器の大きさが足りないのだろう。最後のセリフ、「斬り手も斬り手」「剣も剣」の後に「役者も役者」の大向こう(多分1階から聞こえた)。順番を入れ替えているのに無粋なこと。
見応えがあったのは、又五郎と左近の六郎太夫・梢親子。武士同士の様式的なやり取りが続くなか、ここだけは庶民の情がストレートに描かれるので、気持ちが入りやすい。左近の娘は健気で可愛く、もう安心してみていられる。遠目でよく分からなかったが、化粧があっさりめなので、もっと可愛くしてもいいかも。
橋之助の大庭はもっと憎らしくてもよい。俣野は男寅。セリフの滑舌が悪く、迫力に欠ける。優男な風貌なので、父とも祖父ともニンが違うのだろう。

「相生獅子」

鶴松が白、左近が赤の振袖で姉、妹の立ち位置?鶴松は悪くなかったが、時折ドヤ顔が覗くのが興醒め。左近は美しい所作も何気なくさらりとこなす。
獅子の毛をつけた後半、若者らしく勢いのある毛振りはいいが、2人とも首で振っているようなのは心配。左近の扇獅子がグラグラしてた。

「藤娘」

莟玉が潮来出島で踊る。娘が花道から出てくるなど、見慣れた藤音頭とはだいぶ違う感じ。プログラムによると、手の込んだ振り付けらしいのだが、存外派手さがなく、素朴に見えた。