2026年5月24日日曜日

5月24日 御名残五月大歌舞伎

「寿式三番叟」 又五郎の翁、米吉の千歳が厳かに。翁は面をつけないので、千歳が持ってくる面箱は何のため? 2人が引っ込んだあとに後見が持ち去るので余計に意味不明。 歌昇、虎之助の三番叟は全く合わせる気がなさそうなバラバラぶり。同じ振りでも音の取り方が違う感じで、違う踊りをそれぞれ踊っているみたい(そのくせ、出だし虎之介は歌昇の方を見ながら踊っていたのだが)。歌昇は足の運びはともかく(足踏みを蹴り上げるなど)腰を落としているので日本舞踊らしい身のこなしだが、虎之介は腰が高く踊りの体使いになっていないと感じた。 「義賢最期」 愛之助は顔面を大怪我してから封印しようとしていたそうだが、御名残公演なのでとあえて選んだそう。2年前に同じ松竹座で観たばかりだったのでまた⁉︎と思ってすまぬ。 適材適所の配役で、前半部分の物語が際立った。隼人演じる折平実は行綱とのやり取りで心底を明かすくだりの駆け引き、葵御前の吉弥との夫婦の別れ、生まれてくる子どもへの思いなど、立ち回り以外のところも丁寧に描かれ、物語がよく伝わった。迫力ある立ち回りはやはり見応えあり。戸板倒しでは、戸板の位置を微調整する様子もあり、周囲の役者たちも気を使っているのが感じられた。 子役がとても小柄で(多分、九郎助の松之助が背負えるよう)セリフも辿々しいのだが、しっかり演じていた。九郎助が振り返るたびに振り回されているくらい、小柄なのだが、しっかり剣を振るう姿が微笑ましい。 虎之介の進野次郎。義賢を引き上げるところで腰が引けているように見え(むしろ、愛之助が自力で上がっていたよう)、迫力が削がれた。 申し次ぎの侍に愛治郎、詮議の使者に松十郎、當吉郎、腰元に竹之助、折之助、りき弥、千太郎と、上方の役者がいい役で出ているのも御名残ならでは。 「鰯売恋曳網」 勘九郎の猿源氏、七之助の蛍火というゴールデンコンビで、面白くないはずがない。1時間5分ほどはショートバージョン?勘九郎は愛嬌が増した感じで、ほのぼのと笑いを誘う。 博労六郎左衛門に歌昇。こういう田舎者っぽい役はあんまり似合わないかも。

2026年5月23日土曜日

5月23日 第十一回 糺勧進能

弓神事の後、能の「邯鄲」 アイの宿の女主人公(茂山逸平)が舞台に上がって、枕の言われを話すところからは始まる。アイから始まる曲は珍しいのでは。 シテの林喜右衛門は良い声が糺の森に響く。冒頭、橋がかりで長い独白があるのだが、舞台の裏になっていたためしばらくシテの姿が見えず、誰が喋っているのかわからなかった。寝台に休むと夢の場面に移り、栄華の日々を舞で描くと思ったら、急に寝台に飛びこむように横たわり、目を覚ます。色々イレギュラーな舞台なので、通常の能楽堂で再見したい。 ワキは勅使の原大と輿昇の岡充、原陸、廷臣の有松遼一と4人も出演。舞童に子方の樹下應介。 曇り空だったので、夕焼けが見られなかったのは残念だが、日が暮れていくにつれて舞台が浮き上がるようで幻想的だった。

5月23日 南座 歌舞伎鑑賞教室

解説は真山隼人。 歌舞伎の歴史を浪曲で紹介。声のよさが南座の広い空間でも響く。去年までは客席側で観ていたとか、子どもの頃歌舞伎役者になりたいと言って、歌舞伎の家の子でないとなれないと諭されたというエピソードを交え、親しみやすい。千次郎が隈取の実演。白塗りまでは映像で見せ、その後スッポンから登場。あらしの夜にの浴衣だった。 曽我兄弟の敵討を隼人が唸り、芝歌蔵、橋三郎、翫延の役者3人が紋付き袴で立ち回りで演じる趣向も面白かった。 「正札附根元草摺」 千次郎の曽我五郎に吉太朗の舞鶴。吉太朗は首から肩にかけて動きがしなやかで美しく、色気も感じさせる。千次郎はちょっと大きくなりきれないところもあったが、血気にはやる若武者らしさがあった。

2026年5月17日日曜日

5月17月 能狂言「日出処の天子」

初演時と大筋は変わっていないが、細かな変更がいくつかあったよう。

2幕の冒頭、橋がかりに穴穂部間人媛(大槻文蔵)と共に来目王子(観世淳夫)が現れる。間人媛は来目に「厩戸と遊んではならない。石が降るから」「あまり勉強しすぎてはいけない」と諭すやり取りが加わる。来目王子は勉強しなくていいと喜んでスキップし、ほのぼの笑えるシーンになっているが、厩戸との違いを描き、厩戸との母子関係の歪さがより鮮明になった。 野村萬斎の厩戸王子は神秘的な雰囲気が役にあっているが、やはり美少年ではない。毛人と出会う池のシーンは10歳という設定だと知り、よりそう思った。福王和幸の毛人とのやりとり、初演時のような気恥ずかしさが薄まったのは慣れたせいだろうか。舞人に混じった厩戸に毛人が惹かれ、王子と知って「初めて惹かれた女人なのに」と嘆くなど、毛人も厩戸に惹かれていたことがはっきり描かれた(和幸の芝居はちょっとくさかったが)。厩戸が現代劇のような言い回しなのに対し、毛人は能のような発声でチグハグに聞こえたが、2人の立場の違いやすれ違う心情を描く狙いだろうか。 大槻祐一の刀自古、鵜澤光の布都姫と子という、厩戸と関係する女性たちが哀れ。刀自古は2幕のみの登場だが、長めの舞で毛人への激しい思いを描くなど、印象は強かった。 通常地謡が並ぶ後ろ(今公演では囃子方が並ぶ)にモニターが設置され、舞台装置に映す映像のいくつかが投影された。脇正面席からは見えにくい映像を補うためだと思うが、ちょっと無粋な感じがした。 第1幕60分、休憩20分、第2幕60分とあったけど、15時半開演で終わったのは18時過ぎだった。

5月16日 文楽公演第3部

「伊勢音頭恋寝刃」 古市油屋を錣・宗助。 ちょっとウエットな語りが、万野の意地悪ぶりにはあっているかも。 奥庭十人切りは芳穂・錦糸。 演奏は申し分ないのだが、改めて聞くと陰惨な話で、沈んだ気持ちで劇場を後にした。貢はたまたま万野を切ってしまうのは仕方ないにしても、その後の虐殺に理由がないのが救われない。小女郎なんか何も悪ことしてないのに、足を切られてしまうし。それで最後は、名刀と折紙を手にしてメデタシって、酷い話としか思えない。 人形は一輔のお紺がしっとりと美しい。貢は玉男で、色男ぶりがよき。(が私の好きな一輔・玉男ペアだったことに今気づいた…)万野は玉也で珍しい女方。

5月16日 文楽公演第2部

引き続き「小写朝顔話」の半通し。 薬売りの段は希・清馗。 希は変な力みがなく、最近聞いた中では悪くなかった。 浜松小屋の前は織・燕三。 織はビブラートを効かせ歌い上げるような語り。燕三の三味線が豊かな音色で場面を鮮やかに描く。 後は小住・清丈。 真葛が原とは打って変わったシリアスな場面で、どっしりとした語りが頼もしい。 嶋田宿笑い薬の中は碩・寛太郎。 キレのいい語り、三味線で、気持ちよく聞けた。 次は千歳・富助。 千歳のチャリはどうかと思ったが、緩急のある語りでしっかり笑わせた。 宿屋の段は若・清介に清方の琴。 暗がりの中慎重に足を進めるような語り。清方の琴は慣れていない感じがした。 大井川は睦・勝平。 前半は悪くなかったが、後半声の掠れが気になった。 人形は勘十郎の祐仙が、笑い薬の段で大いに活躍。今回の半通しは深雪を軸にという触れ込みだが、祐仙を見せるためではと思えるほど。

5月16日 文楽公演 第1部

「二人禿」 南都、咲寿、津国、織栄、文字栄に団七、団吾、清允、清方、藤之亮。人形は紋秀、紋吉。 床の不協和音に重ねて、人形も振りが合ってなくてびっくり。シンの南都からしてどうしちゃったの?というくらい調子が外れていて、団七を筆頭に三味線もチグハグ。人形は紋秀はキッチリしてたが、紋吉の所作が甘い感じがした。 「生写朝顔話」 宇治川蛍狩の口は聖・燕二郎。 燕二郎は本公演での盆回しは初めてと言っていたが、聖もかな。若手らしい、楷書の芸で好感がもてる。 奥は三輪・清友。 三輪は痩せたのか、精彩を欠いた感じ。 真葛が原茶店は小住・友之助。 コミカルな場面で客席の笑いも多かった。小住はふざけた感じは全くなく、どちらかというと骨太な語りだが、笑いのツボは押さえている。元服して白塗りに月代姿になった祐仙に「映画国宝の吉沢悠みたい」。友之助は涼しげな顔で弾いてた。 岡崎隠れ家の中は亘・清公。 亘はガチャガチャした声がいただけない。チャリ場ならばともかく、どこか調子に乗ったような語り口は、特に深雪のような娘にはふさわしくない。 奥は藤・藤蔵。 あんまり合っていないような。今気づいたが、藤藤コンビだ。 明石裏船別れは呂勢・清治に清允の琴。 ようやく義太夫らしい語りが聞けた安堵。ただ清治はいつもの精彩がなく、心配。 弓之助邸の口は薫・錦吾。 薫はいつもの調子だが、視線をキョロキョロするのが気になった。錦吾は落ち着いた様子。 奥は靖・清志郎。 今日はいい靖。 人形は簑二郎の深雪に華がなく、勘彌の浅香と逆だったらと思ったら、ダブルキャストで後半はチェンジするのか。 和生の阿曽次郎が清々しい美青年ぶり。祐仙は勘十郎。真葛が原と弓之助屋敷があると、深雪への執心ぶりがよくわかる。左、足遣いも含めて、コミカルな仕草が達者で客を沸かせた。