2026年8月11日火曜日

8月11日 LCバレエ「ジゼル」

セットや衣装は簡素だが、奥村康祐のアルブレヒトを間近で見られる幸せ。悪気なく、初心な村娘をたぶらかす大人の男という風情がたまらない。とはいえ、バチルドに正体を明かされそうになると、背後のジゼルを気遣ってシーっと口に手を当てるなど、気遣いも見せる。2幕は一転、深い後悔が滲み、懸命に許しを乞う姿が哀れを誘う。ジゼル役の冨岡玲美は初役だそうで、華奢で、瑞々しい感じが役に合っている。奥村アルブレヒトと並ぶと、経験の差というか、初々しい感じとのギャップで、アルブレヒトの狡さが顕になるというか、ウィリーになってからは、浮遊感がもっと欲しかったが、一心にアルブレヒトを思う感じが現れた。ミルタの望月美利は冷静だが、健康的な体つきなので人ならぬものの感じは薄い。 発表会なので、群舞は素人らしく、村娘がやたら多かったり、子どもが加わっていたり。ウィリーにバレエシューズの子が混じっていたのはびっくりしたが、破綻なく踊っていたのは立派。 客席は6割ほどの入りと、空席が目立ったのは勿体無い。

2026年8月9日日曜日

8月9日 八月納涼歌舞伎 第一部

通し狂言「怪談牡丹燈籠」 辰之助のお露が可憐で、世間知らずな箱入り娘の一途さで、恋煩いで死んでしまうのも不自然ではない。死んでからは湿度を増して、美しさの中に薄寒さを漂わせる。緑の乳母が好演で、お嬢様大事の忠義さと、幽霊になってからはじっとりと不気味。染五郎の新三郎は色男だが案存在感が薄い。 巳之助の伴蔵がチャキチャキした江戸弁で気風のよさ。お峰を殺すところは、騙して連れ出したのに何の呵責もない感じで、冷酷さを感じた。本水を使っての立ち回りののち、最後は川に落としたはずのお峰に引き摺り込まれ、何とも殺伐とした幕引きだった。お峰の右近は達者で、立板に水のセリフでは拍手が起こったほど。だが、玉三郎の方がよかったと感じてしまう。ポスターで誰よりも狡そうな顔をしているのだが、むしろ一番悪意がないのではと思う。 新悟のお国、橋之助の源次郎ペアの悪巧みがかなりしっかり描かれ、最後は平左衛門の亡霊?に操られた源次郎が自らの腹を刺し、その刀にお国も刺されて事切れる。 伴蔵宅で、お六(菊三呂)が新三郎が亡くなった経緯を語るのはリアルか狂言か。 満員御礼ながら、アップグレード幕見はガラガラ。

2026年8月1日土曜日

8月1日 貞松・浜田バレエ団「バレエ・ドラゴンクエスト」

ゲーム原作と軽く見ていたが、ストーリーも、振付も、バレエ作品としてとてもよくできていた。中世ヨーロッパ風のファンタジー世界とバレエの相性はいいのだろう。音楽も、オーケストラで奏でられるメインテーマは盛り上がりるし、ほかも木琴を使った軽やかな曲やフルートを効果的に使うなど、バラエティにとんだシンフォニー。一部、戦隊モノみたいな劇伴音楽もあり、いい感じでゲームとのコラボだった。 白の勇者の後藤俊星が主役だが、踊りの見せ場は黒の勇者の小森慶介により多く、高い跳躍、回転の速さなど、テクニックを遺憾無く発揮。王女の宮本萌は可憐なだけでなく、敵に立ち向かう強さも魅せた。何より、賢者役の山本隆之は立っているだけで存在感があり、物語に説得力を加えた。重いローブを纏っているので、動きは大きくないのだが、手を挙げたり回ったりするだけでも、際立つ美しさ。魔王役の法村圭緒は禍々しい感じだがラスボス感が薄く、最初出てきた時は黒の勇者のお付きみたいに見えた。 2幕で出てくる聖母(竹中優花)は重要な役どころながら、王女(正木志保)と衣装が似ていて、同一人物かと混乱した。(カーテンコールで並ぶと王女は金、聖母は銀だと分かるのだが、別々に出てくると見分けがつかない。せめて王冠の形はもっとはっきり違いを出す方がいいと思う) 伝説の勇者(水城卓哉)は案外弱い。ラスト、黒の勇者が魔王を道連れに死ぬところは、魔王が理由なく後ろの方へ移動するのに段取り感があって残念。黒の勇者と揉み合いながら動くなど、もっと自然な形だとなおよかった。

2026年7月31日金曜日

7月31日 第十一回あべの歌舞伎 晴の会

「瀧汗舞踊顔見晴」の外題通り、大汗かいての舞踊づくし。 幕開きは「ようこそ晴の会へ」と題して、第一回の映像から過去公演を振り返るトークへ。晴の会の名前の由来(ハルカスにちなんで「晴」の字を使いたい、「はれのかい」ではつまらないと秀太郎が難色、かつて自主公演の際に「そらのかい」の名前を提案され実現しなかったことを思い出し「晴」を「そら」と読むことにしたとか)。途中、友五郎も登壇し、還暦祝いで3人からもらった辰模様の赤いネクタイを披露。 舞踊三題は長唄の「傾城」から。 千寿の傾城とりき弥の新造。美しいが重たい衣装のためあまり動かず、舞踊としては見応えにかける。 常磐津「粟餅」は翫政の杵造に千次郎のお臼。千次郎の女方は珍しく、緊張した面持ちながら可愛らしい。朗らかな翫政との掛け合いも軽妙。 長唄「橋弁慶」は松十郎の弁慶に千太郎の牛若丸。松十郎は第一回でも踊っていたが、重厚感が増し、弁慶の貫禄があった。千太郎は若々しさ。 上方笑作事と題した新作「三人ほら吹き」は古典舞踊「三人片端」の翻案。用心棒募集の立て札を見た3人の盗賊が、力持ち、鼻がきく、俊足と大嘘をついて、殿様の屋敷に入り込む。狂言仕立てで、晴岡主馬の佑次郎に使える翫政の吾郎太が主人と太郎冠者のような感じ。松十郎の剛の権蔵、千寿のおきゃんのお花、千次郎のはしこい半平がそれぞれ踊りを披露し、千次郎は三つ面の踊りで大奮闘。最後は、盗賊を捕まえようと主従入り乱れてのドタバタで、賑やかな踊りに。最後は3人が財宝を手に逃げおおせるのもおおらかでいい。吾郎太の翫政が三人の嘘を見抜く、抜け目のない従者を好演。 晴の会名物?の屏風の演出が活用され、表面は松の絵が描かれ松葉目の代わりに、途中、裏返すと宝物蔵になる。 りき弥と千太郎が屋敷に使える腰元、鴈大が立て札の内容を誤解して飯を貰いにくる浮浪者ぐう太郎。屋敷ないをうろうろしていてもおかしくない役柄を、小道具を手渡すなど後見役としても生かすのはうまい演出と思った。 長唄、常磐津に鳴物も加わり、演奏面も贅沢だった。 上方笑作事と題した新作「三人ほら吹き」は古典舞踊「三人片端」の翻案。3人の盗賊が、力持ち、鼻がきく、俊足と大嘘をついて、殿様の屋敷の用心棒として入り込む。狂言仕立てで、晴岡主馬の佑次郎に使える翫政の吾郎太が主人と太郎冠者のような感じ。松十郎の剛の権蔵、千寿のおきゃんのお花、千次郎のはしこい半平がそれぞれ踊りを披露し、千次郎は三つ面の踊りで大奮闘。最後は、盗賊を捕まえようと主従入り乱れてのドタバタで、賑やかな踊りに。最後は3人が財宝を手に逃げおおせるのもおおらかでいい。

2026年7月30日木曜日

7月30日 地主薫バレエ団 ダブルビル

「パキータ」 パキータとリュシアンの結婚の場を、グランパドドゥやパドトロワ、群舞で華やかに。 パキータ役の山崎優子は華があり、アームスがパキッと決まって美しい。リュシアンは怪我で降板の松田大輝に変わって石神航一。着地でグラつくなどヒヤッとするところもあったが、大過なく大役を勤めた。 パドトロワは葭岡未帆、宗近匠、三谷ゆり。葭岡が存外冴えず、三谷の端正な踊りに目を惹かれた。 貴族など、大人数の群舞もよくまとまって、見応えがあった。 「ラ・シルフィード」 倉永美沙のシルフィードは妖精の軽やかさ、神秘性を体現。序盤のピルエットでポワントが落ちたように見えたが、他は危なげなく、ヴェールを掛けられて苦しむ様も美しい。奥村康祐のジェームズも期待通りで、浮気な青年の揺れ動く心情を生き生きと描き、幕切れの悲嘆に暮れる後ろ姿が哀れ。(マッジに怒って両拳を振り上げる仕草はなんか可愛いかった) マッジは元スコティッシュ・バレエ団の下村由理恵。得体の知れない老女を快演。ラスト、高らかに笑う姿は清々しいほど。エフィの奥村唯、グァーンの巽誠太郎も役に合っていた。 エフィやジェームズの友人、子供たちなど、舞台上にたくさんの人がいて賑やか。

2026年7月25日土曜日

7月25日 Noism0+Noism1「私は海をだきしめていたい」改訂版「春の祭典」

「私は海をだきしめていたい」 坂口安吾の小説がモチーフ。サティの曲なのか、開演前から客席には静かなピアノが流れ、全身黒の衣装にシルクハット、傘をさした金森が下手側な客席後方から歩いてくる。舞台に上がると同じ出立ちの男性ダンサー、舞台の上手奥に真っ赤なドレスを纏った井関の後ろ姿…と、シックでスタイリッシュな雰囲気。金森・井関を含め、5人ずつの男女がすれ違ったり、絡んだり、様々に交わる。女性の衣装は裾を引き摺るくらいのロングドレスで、前に大きくスリットが入っていて、時に挑発的に大きく広げたり、腰に巻きつけたり、男性ダンサーを包み込んだり、多様な表情を見せる。 終盤、井関と金森のパドドゥが 2回繰り返され、循環を感じた。アクロバティックなリフトも多く、金森の桃の付け根あたりに両手を置いた井関の腕を金森が掴んでそのまま回転する(井関の足が宙に浮いた状態)など。 「春の祭典」 裾の長い白いシャツに短パンの衣装、背景や小道具の椅子も白っぽくどこか最新病院を思わせる。椅子と共に倒れたダンサーの真ん中で井関が震えている幕開きから、起き上がったダンサーらも何か大きなものが襲ってくるのに怯えるよう。途中、椅子取りゲームのようになり、仲間はずれを排除したり、椅子をバリケードのように積み上げたり。最後は最初のシーンに戻り、永遠に繰り返されそう。

2026年7月24日金曜日

7月24日 「虹のかけら〜もう一人のジュディ」

三谷幸喜作のジュディ・ガーランドの付き人で親友というジュディ・シルバーマンを通してガーランドの反省を描く音楽劇。シルバーマンな「オズの魔法使い」のドロシー役のオーディションでガーランドに敗れ、一方的に親友扱いされ、愛憎入り混じりつつも生涯そばにいたという設定がよくできている。彼女の書いた日記のタイトルが「a piece of rainbow」で、ニューヨークの本屋で戸田が見つけ、三谷に紹介して日本語出版、脚本化したとか(出版社がカドワキショテンとかいうのでおやとは思った)だとか。 何よりエンターテナーとしての戸田が素晴らしい。登場しただけで観客を惹きつける華がある。ガーランドの出演作を追いつつ、代表曲を歌うのだが、曲によって表情を変える歌唱が素晴らしい。 ラストは、三谷のナレーションでジュディ・シルバーマンは架空の人物であることが明かされ、きれいにオチもついた。 還暦記念で作品を作ったことから、どうして4回目を上演することになったか(3回目のニューヨーク公演が大幅な円安で赤字になったため、赤字を回収するため)を話す前フリ(?)から、終演後のパンフレットやグッズの宣伝まで含めて90分ほど。短い時間なのに、倍くらいの充実感があった。