2016年12月7日水曜日

1204 国立劇場開場50周年記念 通し狂言「仮名手本忠臣蔵」第二部

七段目 「祇園一力茶屋の段」 九太夫の三輪、伴内の靖、一力亭主の始の3人の太夫だけが床にいて、三味線なしの素語り。下座から細棹の音。仲居の声は舞台上手の袖から。店の奥からの呼びかけはそのままでいいが、仲居の人形が店先に出てからも遠くから聞こえるのはいかがなものか。 盆が回って、由良之助の咲と清介。持って回った口振りは由良之助のキャラには合っている。床下で聞いているのに声のチカラが弱いよう。喉をゴロゴロいわすのも気になった。酔態の表現? 平右衛門の咲甫は下手袖で「待った、待った~!」の呼び止めから颯爽と登場。口跡がいいのはもちろん、裃は□に平の紋に、人形と同じ△の柄がお揃いで、よく目立つおいしい役どころ。人形と並んでいるので、そのまま自ら演技してしまいそう。人形を観ているつもりがいつの間にか太夫ばかり見てしまった。 後半は盆が回って由良之助が英・清治に交代。公演期間の前後半だと思っていたのでちょっとびっくり。清治が聴けるのは嬉しいが、英の語りは咲よりの軽いので由良之助の人物が変わってしまうのはいただけない。 お軽の呂勢は期待通り。特に、平右衛門とのやりとりで、父と夫勘平の死を知ってからのクドキが秀逸。簑助の人形もまた、艶かしいことといったら!2階から降りるところではハラハラさせられたが、ほかは危なげもなく。ここの咲甫は床で呂勢の隣に。 八段目 「道行旅路の嫁入」 五枚五梃の華やかな演奏。が、津駒に小浪はちょっと似合わないのでは。可憐さに欠ける気がする。戸無瀬の芳穂はよく合っていた。 和生の戸名瀬がしっとりとした風情。小浪は勘弥が初々しく。 九段目 「雪転しの段」 松香・喜一郎。 「山科閑居の段」 千歳の語りが素晴らしかった。語り出しの第一声からぐっと引き込まれて、そのままのテンションで最後まで掴まれたままだった。お石の本心を隠した様子、戸名瀬の武家の奥方らしく抑えながらも小浪かわいさの必死の訴えが胸を打つ。最近耳についた変な癖も封印されていて、文句なしに今公演で一番のでき。感心して千歳の顔に見とれていたら、それを見ていた富介の視線に気づいてばつが悪かった。 なので、後半の文字久・藤蔵がねえ…。決して悪くないどころか、当人比ではかなりよかったはずなのに、千歳・富介との落差がつくづく残念。本蔵が中心になってくるので、武張って語るのは正しいのだろうけど、急に場面まで変わってしまったようだった。 十段目 「天河屋の段」 睦・清友。25分ほどだろうか、思っていたよりも長く、聞き応えがある。睦は前半よりは断然よく、「天河屋義平は男でござる」も聞かせた。倅の声が掠れるのが残念。 人形は、天河屋義平(玉志)が箱の上にどっかと座るところで左遣いが邪魔になってもたついていた。改善を期待したい。 十一段目 「花水橋引揚の段」 芳穂、希、文字栄に団吾。 10分ほどの短い場面だか、これがあると口直しというか、気分良く帰れる。

0 件のコメント: