2016年6月4日土曜日

0603 イキウメ「太陽」

近未来のSFで映画化もされたというので、映像の方が向いているのではと思ったが、ミニマムなセットで世界観を表現していた。 ウイルスに感染し、太陽を浴びれない代わりに、老いず、病気にもならない新人類NOX。独善的で、他者への共感や情緒が欠如しているNOXの嫌みな感じがうまく表現されていてムカッとする。 虐げられるものになってしまった旧人類の鉄彦はNOXに憧れる。学校で習うことなんて大したことない、生活に根ざした知恵が尊いのだといわれても、そんなことを言えるのは知っているからで、知らない俺には分からないと突き放す。なんだか、高学歴にコンプレックスを抱きながらむやみに崇めるひとを連想してしまった。 実の母であるNOXの勧めで、自らもNOXになることを選択する結。変化の後では過去のことなど忘れてしまったかのように振舞う。捨ててしまったものの大きさには気づくことがないように。芸術が生まれるのは、歳をとり、痛みや苦しさから逃れられない旧人類のほうで、NOXは新しい芸術を生み出すことができず、子孫も残せないというのは象徴的だ。私たちの世界も、障害をすべて除いてしまったら、それは幸福ではなくなってしまうのかも。

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