2016年9月11日日曜日
0909 秀山祭九月大歌舞伎 夜の部
「吉野川」
玉三郎の定高が素晴らしい。花道を現れるところから心に秘めた決意を感じさせ、娘は可愛いが久我之助はどうでもいいなどと本心にないことを言いながら肚のうちを滲ませる。雛鳥の首を討つところ、文楽と違って何度かためらうのだが、ここはスパッといってしまったほうが背山との対比が鮮明になるのでは。印象的だったのは雛送りで、雛鳥の首を愛しそうにかかえ、輿に乗せる時に語りかけるように顔を寄せる。万感の思いがあふれ、じわっときた。
菊之助の雛鳥は綺麗だが、前半は可憐さが薄いというか、恋する娘にしては淡々としているのだが、定高の本心を知ってからはよかった。この人はもう雛鳥ではなく、久我之助のほうが似合うのかも。桔梗を演った梅枝のほうがニンだったのかもしれない。
その桔梗はとてもよかったのだが、小菊の萬太郎は女形が不慣れなせいか、硬く、可笑しみにかける。
一方の背山は大判事が吉右衛門、久我之助が染五郎。悪くない配役だが、妹山ほどの感動はなかったか。染五郎は久我之助にしては落ち着きすぎていて若さゆえの一途さが感じられないのだ。
「らくだ」
これほど面白くない喜劇も珍しい、というくらい、ちっとも笑えなかった。まず、松緑の半次かチンピラらしくなく、なんだろう、爽やかというのとも違うのだが、汚れた感じがなくて薄っぺら。染五郎の久六も、久我之助との落差はあるけれど、わざとらしくてリアリティがない。
途中、半次の妹(米吉)が出てきて、オチにつながるのは、前回の松竹座で見たのと違うところ。オチもつまらなかった。
「元禄花見踊」
玉三郎か若手を引き連れて、華やかな踊り。暗転から舞台中央に天井から光が差し、花びらの降りおちるなか、玉三郎がせり上がってくるという印象的なオープニングから、終始目に鮮やか。定高のときは老けたかと思ったが、化粧のせいだったのだろう。美しさは健在。
20分程度と短いので、お口直して帰路につくのにぴったり。両花道を使う演出があったり、楽しめた。
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