2025年12月27日土曜日

12月27日 新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」

ウィル・タケット振付の新制作。全体として演劇よりな感じで、1場などはほどんど踊りの見せ場がなくサクサクと進む。テンポが速いせいか、肝心の雪の場面はバタバタとした印象。2幕のディベルデスマンを各国の踊りからお菓子に変えたのはいいが、スペイン?が外れるなど短くなったのは物足りない。花のワルツは直塚美穂と木下嘉人のフォンダンローズが際立つのはいいが、周りが男女4組+女性4人と少なく、華やかさに欠けるのはいただけない。そのくせ、セットのせいか舞台の中心部分で踊るので、真ん中の2人に被っているという…。休憩を除くと1時間35分ほどというコンパクトさは子ども向けにはいいのかも。 主役デビューの東真帆は、緊張した感じもあったが、奥村康祐王子、福岡雄大ドロッセルマイヤーのサポートもあって、初々しい魅力を発揮。伸びやかな手足が瑞々しい印象。奥村王子はこれぞ王子という優しさ、包容力で、クララもうっとり。ドロッセルマイヤーは手品を披露したり、クララに魔法をかけてお菓子の国へ誘ったりと、狂言回し的な立場で物語をリードする役どころ。ただ、こういうドロッセルマイヤーは地主薫版と重なるし、クララとの関係が明確(ゴッドファーザー)なぶんむしろあちらのほうがよかった。手品の鮮やかさも山本隆之の方が優った。 賛否両論あるなか、私はどちらかというと否だなぁ。元々あまり好きな作品ではないし、再見はないかも。

2025年12月14日日曜日

12月14日 末廣亭 夜席

少し遅れて昇羊の「粗忽長屋」から。爽やかイケメン。

三四郎「MOMO」
文枝門下の新作落語。日本に興味のある外国人に昔話を語って聞かせるのだが、外国人の訛りがわざとらしい。

青年団はコント?時事ネタを盛り込むも、ややすべり。

奈々福の浪曲は「俵星玄蕃」。別のネタをやるつもりが、寄席に来てから今日は忠臣蔵でと聞いて急遽変えたそうで、ちょっと言葉に詰まった?と思うところもあったが、朗々と唸って聞かせた。曲師はまみ。

文治「掛け取り」。マクラで芸人のモノマネから入り、ネタでも芝居の真似ごと。鳴物が入って賑やか。

活動写真の片岡一郎は「槍供養」。忠臣蔵がらみでというのは、赤穂藩の武士の話だから? 粗相をしてよその侍に主人の槍を取られてしまった下人。返してほしければ下人の首を持ってこいたら難癖をつけられた主人は、人の命に勝るものはないと許そうとするも、下人は責任をとって腹を切り…という理不尽極まりない話なのに、なぜかグッときた。

阿久鯉「天野屋利兵衛 雪江茶入」。文楽・歌舞伎でいうところの天河屋の前日譚。「忠臣蔵縛りだが、私のところは軽く」といいながら、しっかりと聞かせる。ふわっとまとめた髪から簪が落ちそうでハラハラ。

中入りの後は織・清馗の「仮名手本忠臣蔵」三段目。気迫のこもった語りで、客席はシンと聞き入るが、渾身の大笑いで拍手がないのは拍子抜け。語り口が立派なので、「鮒よ、鮒よ…鮒侍め」などはもっと嫌味っぽくてもいいのにと思った。義太夫の前後は幕が下りるのは、区切りがあってよき。

鯉八「めめめ」。惚けた調子で客席の空気が一変。いやらしさと可愛げのバランスが絶妙。

歌春「鍋草履」。芝居話で忠臣蔵かと思いきや、客席の話だった。歌丸門下だそうで、柔らかな語り口は師匠譲り?

ボンボンブラザーズの曲芸はだいぶお年を召しているので、体が対応しきれない感じ。ペーソスも笑いにする芸人の心意気を見た。

伯山「南部坂行きの別れ」。まさに今日にふさわしい、討ち入り当日の話。静かな語り口で、張り扇の音も控えめ。瑤泉院のセリフに品があり、しっとりとして色っぽいのにびっくり。後半の討ち入りの場面は畳み掛けるような勢いがあり、聞き応え十分だった。最初、マクラで客いじりに失敗して(最前列の女性がビミョーな拍手をしていたので、「反応できなくてごめん」みたいなことを言ったら、「話しかけないで」と返された)空気が固まりかけたが、何事もなかったかのように本題に入ったのはさすがだった。

12月14日 大歌舞伎 第二部

「丸橋忠弥」を幕見で

酔っ払いがよく似合う松緑。立ち回りが眼目で、戸板を使う立ち回りがいろいろ。戸板倒してのほか、花道で戸板をT字型に重ねてシーソーのように渡したり、小屋の屋根に立て掛けて登ったり。屋根から縄に飛び降りるなど、体を張った熱演。
左近が捕手で凛々しい姿。

2025年12月13日土曜日

12月13日 劇団☆新感線「爆裂忠臣蔵〜桜吹雪THUNDERSTRUCK〜」

劇団の45周年記念ということで、お祭りムード。盛りだくさんで舞台転換のテンポもいいが、30分休憩を挟んで4時間弱はやはり長い。劇中劇ではマツケンサンバやオペラ座の怪人、セーラームーンのパロディのほか、忠臣蔵の松の廊下では3人の吉良上野介、討ち入りでは熊も入れて7人(しかも虹の7色)に増えて、勢いと笑いが満載。
オリジナルメンバーは歳を重ねて動きが鈍い?と感じるところもあったが(特に古田新太。よぼついた足取りで、途中わざわざ椅子を出して座るシーンも)、主演の小池栄子が出ずっぱり、動きっぱなしで引っ張る。早乙女太一の女方は初めて見たが、裾引きの衣装で立ち回りを演じても着物が乱れないのがさすが。男装ではさらにキレのいい太刀捌きで、一番の見ものと思う一方、早乙女に頼りすぎとも思う。向井理は座付作者と若年寄りの二役。他の出演者と比べて1人だけ頭が小さく、そのせいか意外に所作が決まらない。
殴ったり蹴飛ばしたり、「美少女」を「美が少ない女」といじったりして笑いを取るのはしんどい。
「「わざおぎ(俳優)の極み」がキーワードで、芝居の極意を掴んだという意か。ウソを誠にするのが芝居」とか、幕が開いたら芝居を続けるとか、お上の禁止令に逆らい、芝居にかける役者たちの情熱は今にも通じるのかと思わせる。芝居小屋の息子で人気女方の早乙女に「役者の家に生まれたから芝居をしているのか、自分が楽しいからしているのか」と問う場面は中の人と重なった。

12月13日 文楽鑑賞教室 Aプロ

「万歳」は希、咲寿、亘、聖、織栄に友之助、清公、燕二郎、清方。 希はもう一つ。友之助がシンの三味線は疾走感があるというか、勢いを感じる。
人形は勘市の所作が滑らかで驚いた。そういえば、こんなに動くのは初めて見たかも。

「国性爺合戦」

楼門は織・勝平。
言葉が明瞭で聞き取りやすいが、歌い上げる感じはどうなのか。

甘輝館は藤・宗助。
藤は語る時の口の開け方や顔の傾け方が時折住太夫を思わせる。語りが似ているというわけではないし、真似しているのではないのだろうが、やはり師弟は似るのだと思った。

紅流しより獅子が城は睦・清馗。
睦は語りがしっかりしてきた。三味線がクリアだった。

人形は一輔の錦祥女は柔らかみがある感じ。玉勢の和藤内はきっぱり。簑一郎の老一官、勘弥の妻、甘輝は玉志。

12月13日 文楽鑑賞教室 Bプロ

「万歳」

南都、小住、碩、薫に三味線は団吾、寛太郎、錦吾、清允、藤之亮。
人形は紋吉の太夫、文哉の才蔵。

解説は亘と清公。裏門を題材に娘、婆、武将の語り分けを実演すると、観客からは笑いとともに感心したような声もあがり、それなりに伝わった様子。

「国性爺合戦」

楼門を芳穂・清志郎。
のびのび語っているように見えるのは気のせいか。悪くないのだが、後半意識が…。

甘輝館は呂勢・藤蔵。
このコンビは久しぶり。呂勢は出だしの低音がよく出ていて、ぐっと引き込まれた。官女たちのコミカルなやり取りは笑わせて。2階席だったせいか藤蔵の唸り声も気にならず、心地よく聞けた。

紅流しより獅子が城は靖・勝平。
靖はこの頃の変な力みがなく、聞きやすい浄瑠璃になっていた。

人形は簑紫郎の錦祥女。細やかな動きは華やかだが、Aプロの一輔と比べると硬質な感じもする。甘輝館で出た時に髪が妙に膨らんで見えた。
和藤内は玉佳。なんか楽しそう。大らかさがあって良き。老一官の紋臣は珍しくフケ立役。簑二郎は婆が似合う。甘輝は玉助。

2025年12月7日日曜日

12月7日 京都バレエ団「くるみ割り人形」

ファブリス・ブルジョワ版はフランスの香りがするとか、パリ・オペラ座バレエ団の高い技術、上演は日本では最後などの宣伝文句につられたが、残念ながら期待はずれ。バレエ学校の生徒向けかというくらいあっさりした振付(京都バレエ団向けにアレンジしたせいかもしれないが)で、踊りの見どころは少なかったし、衣装や舞台装置もフランスのエスプリは感じられなかった。冒頭のパーティーの場面はともかく、雪の踊りや花のワルツがチュチュでないのはバレエ作品として物足りない。幕の初めと終わりにナレーションが入ってあらすじを入れるのは大人には余計だし、子ども向けならばもっと観客に語りかけるような感じにするといいと思う。
クララの北野優香は楚々とした雰囲気。あまり踊りの見せ場がなく、印象が薄い。くるみ割り人形・王子の鷲尾佳凛殿パドドゥはリフトが不安定で、何度かバランスを崩してヒヤリとした。鷲尾はソロはのびのびとしてよく、2幕では高いジャンプやキレのある回転で引きつけたが、ちょっと短いか。役名にくるみ割り人形とあるし、ナレーションでも「くるみ割り人形が王子に変わった」と言っていたが、人形はずっと本棚に置かれたままで、変身は描かれなかったのだが…。ねずみ王はダンサーの頭の上にねずみの頭がのる形で首長の別の動物のように見える(ちょっと不気味)。トータルで2時間余という上演時間がせめてもの慰め。

2025年12月2日火曜日

12月2日 吉例顔見世興行 昼の部

「醍醐の花見」 鴈治郎の秀吉はおおらかな殿様。扇雀の北の政所、孝太郎の淀。 松の丸の吉太朗は初めての下げ髪だそう。まつ役の吉弥と並んでの連舞もあり、いい師弟だなあとしみじみ。 加藤清正の虎之介はニヤニヤして軽そうで、太鼓持ちみたいに見える。福岡正徳の鷹之資は安定感がある。 曽呂利新左衛門に進之介。結構セリフや動きのある役だが、つつがなく。年末恒例?の生存確認顔は顔に艶があり若く見えた。 「一条大蔵譚」 幸四郎の大蔵卿は知恵遅れのような阿呆ぶり。本当はまともな人なので、少しやりすぎに感じる。鬼次郎の愛之助、お京の壱太郎は夫婦役が板についている。 常盤御前は七之助。化粧のせいか、冷たそうに見える。 「玉兎」 襲名披露の菊之助。たった一人で南座の舞台をもたせるのだから大人顔負け。月に映るシルエットから、細い手足を綺麗の伸ばした姿勢が美しい。所作が丁寧で、子どもらしい可愛らしさの中にも清々しさがある。 「鷺娘」 映画「国宝」にあやかってかは知らないが、今油の乗っている八代目菊五郎の舞踊を堪能した。 「俊寛」 仁左衛門の俊寛は2年ぶりか。また深化したようで、繊細に描かれる心の動きに感情を揺さぶられた。千鳥を迎える時、我が子を待ち焦がれているような嬉しげな顔。船を見送り、少しずつ声が遠くなっていくと急に寂寥感に襲われ、慌てて追いかけるように花道の海に入っていく。高台に登り、遠くを見送るも、最後は諦観の境地に至る。壮大なドラマ。 莟玉の千鳥は明るく、おきゃんで、少しやぼったい感じが田舎娘らしくていい。成経は隼人、康頼は橘三郎で、歳の差がありすぎと思ったが、だんだん違和感がなくなった。 ダブルキャストで俊寛を演じる勘九郎が基康。急逝した亀蔵に代わり、彦三郎が瀬尾。低音の美声で敵役として不足はないが、亀蔵だったらとつい思ってしまう。「ベリベリとした」声が出せる役者は他にいないし、どこか滑稽みのあるのも唯一無二だった。

2025年12月1日月曜日

12月1日 吉例顔見世興行 夜の部

「寿曽我対面」

顔見世かつ襲名披露興行らしい、華やかな舞台で、梅玉の工藤祐経が要所を締める。扇雀の大磯の虎と並ぶと莟玉の化粧坂少将がひときわ華奢で可憐に見える。愛之助の五郎は手慣れたものだが、もっと漲る力がほしい。孝太郎の十郎の柔らかさ。
梶原平三に松之助。終始うつむいて小さく震えているのが気がかりだが、声はしっかりでている。
鬼王を菊若丸に変えて菊之助が出演。キビキビとした動きが若武者らしく、清々しい。

口上は13人がずらりと並び、最近見ないくらいに豪華。仁左衛門は「音羽屋にとってはもちろん、歌舞伎界にとっても大事な名跡」というところ、「歌舞伎界にとってはもちろん…」と言い出して一瞬言い淀んだが「音羽屋さんにとっては尚のこと大事な…」と続けて事なきを得た。進之介が珍しく口上に列座し、梅幸時代の菊五郎劇団に招かれた縁から、「目に入れても痛くないくらい可愛がっていた八代目をよろしく」とまとめた。亡くなった我當の代わりと言って。七之助は親戚であることには触れず、ナウシカやマハーバーラタで共演したことを述たのは何か含むところがあるのか。勘九郎は親戚に加え、学校の後輩、長十郎が菊之助と同級生でパパ友でもあると紹介して笑いを誘った。

「弁天娘女男白浪」
菊五郎の弁天に、勘九郎の南郷が珍しい組み合わせ。写りの良い2人なので、もっと共演してほしい。菊五郎の弁天は手慣れでいつも通りだが、緋鹿子を仕込むところで店の品の奥の方に押し込んでから引き出すのはこれまでなかったような。橘太郎の番頭に、千次郎が手代役で加わっているのが嬉しい。巳之助が鳶頭で、いなせな江戸の男振り。鷹之資の浜松屋倅、歌六の浜松屋主人、幸四郎の日本駄右衛門。 稲瀬川では愛之助の忠信、七之助の赤星が加わり、同世代の五人男が並ぶ。幸四郎は日本駄右衛門にしては線が細く、愛之助と代わった方がいいのではと思った。 「三人形」 巳之助の奴、隼人の若衆、壱太郎の傾城。

2025年11月30日日曜日

11月30日 松岡玲子バレエ団「白鳥の湖」

小野絢子・奥村康祐ペア観たさに名古屋まで遠征。奥村の王子がキラキラしていて、小野はオデットのみだが、叙情的で手足が語る。2幕の出会いの場面は、警戒するオデットに王子が少しずつ近づいていくのだと思っていたが、結構早い段階でも見つめ合って気持ちを通わせていたのは、互いに一目惚れという演出なのか? これはこれで胸キュンだった。
バレエ団のレベルに合わせて、振付はかなり簡素化されていた。白鳥たちが立っているポーズが膝をつけて後ろ足を曲げていたのは何か理由があるのだろうか? 鳥の脚のように見えなくもないが、あまり美しくないと思った。
オケの演奏も独特で、金管の音が外れるのはともかく、テンポが揺れて違和感があった。あと、4幕で聴きなれない曲で白鳥たちの群舞や、オデットと王子のパドドゥがあったが、緊張感が薄い曲調で、何のために挿入したのか不明。
オディールはバレエ団の御沓紗也。パドドゥでポワントが落ちる場面もあったが、グランフェッテはダブルを入れるなどテクニックはそれなり。ただ、オデットとオディールを別のダンサーにすると、王子が騙されるのがよっぽど馬鹿みたいに見える。4幕は黒鳥が入り、ラストはハッピーエンドバージョン。ロットバルトを倒してめでたしなのは、茶番な感じで好みでない。

2025年11月29日土曜日

11月29日 大槻能楽堂企画公演 元雅の名曲二選

「武悪」

やはり和泉流は苦手だ…。シテの野村万作は主人役で、肝心の武悪を深田博治という配役も影響したか、後半の面白くなるところの前に意識が途切れ、気がついたのは終演直前だった。

「隅田川」

大槻文蔵のシテ。物狂いのところは淡々としているが、目が宙を彷徨っている感じが気が触れている様を表す。最後、作り物から子どもの声がすると一気に感情が揺さぶられた。世阿弥と元政の間で子役を出すか否かで論争があったそうだが、この日の公演を見る限り、出すべきと思う。(だが、歌舞伎は出さなくて問題ないのはなぜだろう) ワキの渡し守は宝生欣哉。ワキツレは宝生尚哉に代わり宝生朝哉。旅人役はアイになりそうなところ、ワキツレが演じるのは滑稽みを排したいからか。。
文蔵は足が悪いのか、船から立ち上がるところでワキが後ろから支えたり、塚の前で跪いた姿勢から立ち上がるときに後見がサポートしたりしていたのが心配。長く座るところで、尻引きも使っていた。
子方は井上正晴。セリフに詰まったり、声が上擦ったりしたところもあったが、涙を誘われた。失敗したと思ってないといいのだけと。

2025年11月22日土曜日

11月22日 大槻能楽堂企画公演 元雅の名曲二選

狂言「泣尼」 尼をシテとする演出で、病気休演の七五三に代わってあきら。逸平の何某、千五郎の僧。 あきらの尼は足元が覚束ない感じで登場し、口調は飄々としている。あらすじには「最初聞き入っていましたが」とあるが、説法が始まるなりうとうとしていたような。千五郎の僧は押し出しが強い。逸平は軽やか。 「弱法師」 友枝昭世の俊徳丸が若々しい。杖をついて、不確かな足取りながら、歳をとって見えないのが不思議。「天王寺の石の鳥居」のところでシテ柱をパシッと打つところでハッとする。心眼で夕日を観て舞う姿から歓喜が押し寄せ、人に突き当たってよろけてひれ伏す姿が哀れ。よくわからないがすごいものを見たと感じた。 宝生常三のワキ、茂のアイ。恥ずかしさのあまり立ち去ろうとする俊徳丸を通俊が引き止め、共に高安に帰るのだが、直接触れたり、手を取るでなく、アイがシテの後ろを支えるようにして橋がかりを去っていく。最後、舞台に残ったワキが留拍子?を打つのはこの能の特徴か。茂は声に重みがあり、位の高い役人という感じがした。 事前のトークで、「異流競演」と言っていたが、地謡は喜多流? シンプルに感じた。

2025年11月13日木曜日

11月12日 地主薫バレエ団「くるみ割り人形」

定番のくるみと侮っていた自分に恥いる気持ち。素晴らしく、1幕の終わり、雪のワルツの後で幕が降りると客席からどよめきが上がった。
筋立てから手を入れていて、ネズミの王様によってくるみ割り人形に変えられたお菓子の国の王子をドロッセルマイヤーとクララが助けるという展開。難度の高い振付が随所に散りばめられていて、主要な役だけでなく、冒頭の子どもたちやねずみ王の手下のねずみたち、雪のワルツ、花のワルツ群舞も見応えがあった。 山本隆之演じるドロッセルマイヤーの重要度が増していて、幕あきから終幕までクララをサポートする。クララとのパドドゥなど踊りでも魅せたが、子どもたちの前で披露する手品が鮮やか。クララ役の奥村唯は少女の純真さに嫌味がなく、瑞々しい。友人たちとの群舞を率いて踊ったり、ドロセルマイヤー、王子とのパドトロワ?など踊りの見せ場もたっぷり。くるみ割り人形の奥村康祐はカクカクした人形振りながら、よく踊り、ネズミの王様・福岡雄大とのバトルはテクニックの競演で迫力がある。王子の姿に戻ってからは、チャーミングなプリンスぶりで、しなやかな跳躍、回転技からはキラキラと光が溢れるよう。ネズミの王様の福岡は力強くキレのある踊りで王の風格。戦いの前、腹筋したり、スクワットしたりして準備に余念がないのも面白い。 特に素晴らしかったのは、金平糖の精(山崎優子)とお菓子の国の王(李帝字)のグランパドドゥで、高身長の李と品のある山崎のコンビネーションがよく、高難度のリフトを次々と繰り出しつつも息を呑むほどの美しさだった。 ディヴェルテスマンはお菓子の踊りになっていて、王子を救ってくれたクララとドロッセルマイヤーをもてなす趣向に。チョコレート、コーヒー、砂糖菓子などが2人の前にに供され、踊りを見ながら口にするという流れは物語としても自然だと思った。スペインがチョコレート、アラブがコーヒー、中国はお茶、ロシアはロシアンクッキーだったか。お茶の精は佐々木嶺と巽誠太郎。コミカルな動きながら高い跳躍などテクニックも高く、面白かったが、辮髪のカツラはちょっと違和感があった。

2025年11月3日月曜日

11月3日 吉例顔見世大歌舞伎 夜の部

「當年祝春駒」 17分の短い一幕。顔見世なので曽我ものは必須なのか。 万太郎の五郎はきっぱり。橋之助の十郎はやわらかみというより、女方みたいに見えた。 玉太郎の化粧坂少将、米吉の大磯の虎、虎之助の朝比奈、歌六の工藤。 「歌舞伎絶対続魂 幕を閉めるな」 三谷かぶきと銘打ち、三谷幸喜の「ショー・マスト・ゴー・オン」を歌舞伎化。 伊勢の歌舞伎小屋を舞台に、「義経千本桜」を上演中の一座の舞台裏で次から次へと騒動が起こり、冒頭から笑いっぱなしの2時間。 狂言作者冬五郎役の幸四郎はコメディに振り切った芝居で、どこか西村雅彦みがあるなと思ったら、初演時にこの役を演じていた。座元藤川平蔵の愛之助、看板役者山本小平次の獅童と、三谷芝居に慣れた3人が笑いをリードする。 親方?役の鴈治郎もいい味。立女方?の竹島いせ菊が弥十郎で、静御前を演じるというので楽しみにしていたのだが、顎が外れそうになっているというちょっとふざけた設定で、ちゃんとした女方の芝居が見られなかったのが残念。莟玉が若手女方で、顎が外れて出られなくなったいせ菊の代役で静になるのだが、大チャンスにニンマリするなんて歌舞伎では見られない。静役は本職らしくしっかり。 染五郎は狂言作者見習いと義経役の役者の2役。見習いの方は頼りない三枚目風の拵えなのはいいとして、義経の扮装をしてもそれを引きずっていたように見えた。白鴎は大物役者役でセリで登場。セリフはすこしぎこちなかったか。最後に声だけ聞こえるのは録音? 千太郎が附け打ちの役で抜擢(チラシにも名前が出ていた!)。千寿も腰元の1人として出演していたが、セリフはなかった。

11月3日 吉例顔見世大歌舞伎 昼の部

「御摂勧進帳」

巳之助の弁慶が立派。終盤の芋洗いのところは馬鹿馬鹿しさに気が緩みそうなところ、堂々として大歌舞伎の格を保っていたのが好もしい。新悟の義経、笠を被って俯いて座る姿勢も凛として手先まで神経が行き届いている感じがした。

「道行雪故郷」

清元による梅川忠兵衛。雀右衛門の梅川は幸薄い感じが良き。忠兵衛の扇雀も悪くない、というか、この人は立役のほうが似合うと思う。孫右衛門は出て来ず、通りがかった万才(錦之助)が一差し舞うのははなむけか。

「鳥獣戯画絵巻」

鳥獣戯画を題材に、猿や蛙、狐や兎が戯れる楽しい舞踊。新作かと思いきや、河竹黙阿弥作で、振付の二世藤間勘斎とは二世松緑だった。
猿(巳之助、虎之介)と蛙(橋之助)相撲をとると、何故か猿が二連敗。腹いせにか、猿僧正(松緑)が弓矢で蛙の親玉夫婦(芝翫・萬寿)を射殺すという謎展開は??だが、振付は動物の特徴を捉えて面白く、大勢出てくるので華やか。
しかし、同じ役で並んで踊ると踊りの良し悪しがよく分かる。女狐の時蔵、新悟、米吉、左近が並ぶと、米吉がちょっと浮いて見えるのは何が違うのか。
作者の鳥羽僧正の菊五郎が冒頭と最後に出て来たのも嬉しい。

「御所五郎蔵」

愛之助の五郎蔵に松緑の土右衛門が好配役。何度も勤めている愛之助の五郎蔵は危なげなく格好いいし、松緑の土右衛門はセリフの癖が抑えられ、いい憎まれ役。傾城皐月の時蔵は古風な美人で、五郎蔵のために心ならずも愛想尽かしする苦悩をよく描く。逢州の米吉は綺麗だが、もう少し風格が欲しいか。
五郎蔵の子分に一際小柄で子どもみたいなのがいると思ったら左近。(愛三郎よりも小さい)ただ、姿勢が良く、キリッとしているので見劣りはしなかった。セリフも太い声でしっかり。むしろ隣の染五郎が猫背気味で格好悪かった。
復讐に燃える五郎蔵が、皐月と誤って逢州を殺してしまうのは何度見ても理不尽だし、壁から出て来た土右衛門と闘い出したところで幕切れなのはモヤモヤする。

2025年11月2日日曜日

11月2日 ロミオとジュリエット

キミホ・ハルバート振付はコンテよりのロミジュリ。冒頭、プロローグ的にキャピュレット家の様子や  恋するも振られるロミオが描かれ、本編は死屍累々の如く横たわる群衆からのスタートが不穏な空気を醸す。
休憩を含め2時間ほどなのでストーリーはサクサク進むも、要所要所はしっかり描く感じ。一目惚れのシーンは、踊るジュリエットな目を奪われ、見つめ続けるロミオの視線がジュリエットの気を引く。視線だけで芝居をしてしまう奥村康祐の役者ぶりよ…。バルコニーのパドドゥや寝室のパドドゥはやや短めながら、幸福感にあふれ美しい。駆け寄ったジュリエットが背中からロミオの肩にのるリフトが素敵だった。一番印象的なのは、秘密結婚式で、長いヴェールの端をロミオが手にして、ふわりと浮かせた下をジュリエットが駆け寄るとそのまま花嫁のヴェールになる演出。墓場のシーンはジュリエットの亡骸を抱いたロミオが毒を煽った後、短いパドドゥがあったのだが、これはどういう意味なのだろう?瀕死の状態で愛を交わしたのか、それともジュリエットの妄想か。
奥村康祐のロミオはこれぞというロミオだが、もうちょっと少年ぽさがあってもよかったかも。芝居の手振りばかりだったのも気になった。今ひとつ、物語に入り込めなかったのは、時間が短かったのと、マキューシオ殺害の描かれ方に違和感があったから。ティボルトとの諍いの早い段階で胸を刺されたのに、その後も長い時間闘いを続けるので、十分止める時間があったのにロミオが放置していたように見え、マキューシオが殺されて逆上するのが不自然に思えた。 キホミはジュリエットには歳がいきすぎているかと思ったが、小柄なのと初々しい演技で違和感はなかった。ティボルトの吉崎裕哉はシャープな踊り。細身の身体つきのせいか爬虫類を思わせ、危険な感じがする。マキューシオの上野天志は振付も兼ねる。ロミオ、ベンヴォーリオの菊地研とともに、男性ダンサーの躍動感のある踊りが楽しかった。
アートダンスカナガワの主催なので、子どもたちや、アマチュアダンサーが多数出演して、アンサンブルが厚く、情景描写として面白かった。ロミオが追放され、パリスとの結婚を強いられたジュリエットが神父に助けを求めに行くところで、波のようなアンサンブルがジュリエットを巻き込んで神父のもとへ連れて行ったり。両家の争いを仲良く遊んでいた子どもたちを引き裂くことで表すなど、制約のある中で工夫されていた。

2025年10月25日土曜日

10月25日 霜乃会 第七回本公演「演継豊浄瑠璃宗」

文楽劇場小ホールでの公演だからか、文楽応援!の構成で、各芸能が文楽ゆかりの演目でリレー。茶道の松井宗豊の司会で(名前がタイトルに入っていると今気づいた)、演目が終わるごとにトークを挟む。中でも能「碇潜」から義太夫「知盛幽霊」の流れが良き。

南龍は講談「浄瑠璃物語」で浄瑠璃の歴史を紐解く。引きの芸に磨きがかかって、とても聞きやすい。ネタおろしなのでところどころ言葉に溜まったのは仕方ないか。

紋四郎の落語「寝床」は枕なしで入ったのがよかったのか。物語の前提が観客に共有されていたのか疑問。さらさらと進み過ぎた感もあり。

幸太は浪曲「安珍清姫」。お家騒動の件から入り、清姫が一方的に横恋慕しているので、ただ女の嫉妬が恐ろしく、とばっちりを受けた安珍が気の毒。

能「碇潜」は今村哲朗のシテの知盛、林本大がツレの二位尼。ほか子方も。今村の知盛は面越しにも声が大きく、迫力がある。長刀を振り回す舞も勇壮で迫力があった。扇を落とすアクシデントがあり、すこしもたついたのは不慣れな会場だからか。 素浄瑠璃「知盛幽霊の段」は碩・燕二郎。フェニーチェで2回公演しているせいか、だいぶ落ち着いていたように感じた。

2025年10月24日金曜日

10月24日 坊ん倶楽 vol.19

開口一番は喬龍の「つる」 話の運びはすこしガチャガチャしているが、明るいキャラクターに好感が持てる。 吉坊「花筏」 相撲取りの話は吉坊のキャラにはあまり似合わないかも。 対談はゲストの上方唄松浪流の松浪千尋による唄とおしゃべりも楽し。 トリは吉坊ネタ下ろしの「稽古屋」 踊りの師匠の手振りはさすがの美しさ。こなれてきたらもっとよくなりそう。

2025年10月22日水曜日

10月22日 ワカテdeワカル フェニーチェ文楽 vol.6 第一部

木ノ下裕一のトーク。千本桜の知盛、妹背山のお三輪は本筋の物語からすると異物。異物の視点が入ることで物語に深みが出たり、違う価値観が提示されたりする。特にお三輪は朝廷の権力闘争に巻き込まれた庶民であり、犠牲になるのはいつも弱いものであることが描かれていると。 「知盛幽霊」は碩・燕二郎。筒いっぱいの熱演に好感が持てる。 人形は簑紫郎で、手足を大きく使った動きに力漲る。 「道行恋苧環」は靖のお三輪、碩の求馬、聖の橘姫に清公、燕二郎、清方。 お三輪の出が調子はずれでのけぞる。どうしちゃったの?アフタートークによると求馬が難しい(セリフが少ない中で品を出し、人物像を描かないといけない)のだそうで、碩もこれといった感じでなく。聖は若手らしい素直な発声が良いが、高音部で調子が外れるなど、お姫様らしさにはまだ遠い。 人形は勘次郎のお三輪は勝気な娘の可愛らしさがあって上々。橘姫の玉延は人形を持て余している感じか。おっとりした感じなど姫らしさを表現するところまでは至らず。簑太郎の求女も。3人が同じ振り付けでキャラクターを見せるところも、あまり違いがはっきりしなかった。 アフタートークは靖、簑紫郎と木ノ下。 知盛幽霊は短いけれど、節や謡がかりなどしどころがあり、太夫としては美味しい場面だとか。 道行恋苧環で一番難しいのは求馬ということで一致していた。

2025年10月18日土曜日

10月18日 新国立劇場バレエ団「シンデレラ」

小野絢子・井澤駿ペアは破綻なく、王道な感じ。小野のシンデレラは逆境に挫けない明るさがあり、芯の強い女性という感じ。井上は一眼でシンデレラに心奪われた様子がよくわかった。
今日の私的メインは奥村康祐の義理の姉。我が道をゆく傍若無人ぶりで周囲は迷惑するが、悪気はないので憎めない。当たり役の安定感で、細かな芝居で笑いをとる。前回より妹を気遣う感じがあった。義理の姉②は小野寺雄。わがままな姉に振り回されるちょっとかわいそうな感じがかわいい。
道化の山田裕貴は力強い跳躍と回転。
四季の精は春夏秋冬の歯並びでなく、いつも冬がセンターにいるのはなぜだろう。
王子の友人?1人だけテンポがずれていた。

2025年10月16日木曜日

10月16日 蝠聚会

「桂川連理柵 六角堂の段」 清丈・団吾。 清丈の長吉がノリノリで面白く、笑いを誘う。 「義経千本桜 渡海屋の段(口)」 宗助・清馗。 宗助の銀平が大きくて立派。 「近頃河原の達引 堀川猿廻しの段(奥)」 清介・清公、清方のツレ。 清介の語りは案外平坦。清公は三味線の聞かせどころを頑張った。清方は音のコントロールがきかず、耳に障るところもあった。 カーテンコールで清公がアンケートの質問に答える。が、開催日は平日の昼間だし、チケット購入方法はアナログのままだそう。各人が感想を述べ、宗助は稽古場が混んでいて小劇場の楽屋で稽古していたため、広い会場には発声が十分でなかったなど。清公は堀川猿廻しの全段に取り組みたいと決意表明。

2025年10月12日日曜日

10月12日 錦秋十月大歌舞伎 Bプロ 第二部

仁左衛門権太の初日。木の実から小金吾討死、すし屋まで。 立ったり座ったりはすこししんどそうで、木の実の最後、善太郎の夏幹を背負って花道を引っ込んだが、すし屋の出が下手袖からだったのは歩く距離を短くするためか。ならずものなのに憎めない愛嬌は変わらずで、小せんとイチャイチャして「瑞々しいなあ」と言った李、すし屋で母親に甘えるところとか。嘘泣きで目を濡らすため、舌を伸ばすのは松緑はやっていなかった。最期、梶原方に妻子を引き渡すとき、松明の煙が目に染みると言って涙を誤魔化したり、陣羽織を頭から被って姿を見ないようにしたり。心情描写が細やかで、涙を誘う。 小金吾は左近。第一部の静御前との振れ幅に驚くが、凛々しい若武者ぶり。討死の立ち回りで、顔を伏せてグルグル回った後にふらついたのは芝居かな。 弥左衛門女房お米は梅花。初めから権太かわいいで甘々のお袋さん。弥左衛門の歌六に安定感がある。 運びがスムーズだとは思ったが、Aプロに比べて20分以上短かったのに驚いた。

10月12日 錦秋十月大歌舞伎 Bプロ 第一部

「鳥居前」 右近の狐忠信はドヤってる。左近の静御前が楚々としていい。 歌昇の義経はニンではない感じ。 滑稽役は笹目忠六で橘太郎。見慣れた型だった。 「渡海屋」「大物浦」 巳之助の知盛がとても良い。体格は取り立てていいわけではないが、骨太で重厚感がある。

2025年10月11日土曜日

10月11日 十月大歌舞伎 Aプロ 第二部

木の実から小金吾討死、すし屋。

松緑の権太は江戸前のちゃきっとした兄ちゃん(チャキチャキではない)。太ももまで着物を捲り上げ、どっかと座る姿は様になる。いつものごとく口跡がわるく、仁左衛門のような可愛げがないのでただの荒くれ者といった感じなのだが、手負いになってからはよかった。良かれと思ってしたことが伝わらずに報われない哀れ。家族に囲まれるなか、母親が頬を寄せて泣き咽ぶ悲しさがひしひしと伝わった。彼の持ち味は不器用そうなところなのかもしれない(紀尾井町の坊なのに…)仁左衛門と型が違うところも多く、泣き真似のとき舌は出さないとか笛は母親が吹くとか。
新吾の小金吾は若武者の一本気な感じがいいが、どこかなよっとして見える。魁春の園生の前は姿勢がお婆さん。ビブラートのかかった発声が歌右衛門を思わせる。
左近のお里は期待通りの可愛さ。維盛に妻子がいると知って身を引くも、出家するのについて行きたいと縋るのが痛いけ。弥左衛門女房の名はおくらで、斎入。クールな感じがするのは江戸風なのか。弥左衛門は橘太郎。ちょっと小ぶりな感じもするが、きっちりした親父さんという感じ。維盛は萬寿。弥助から弥左衛門への変わり身が自然で、お里への気遣いも感じられた。
種之助の小せんが若々しく献身的ないい女房。花道の「瑞々しいなぁ」はなかったが、瑞々しい。

10月11日 十月大歌舞伎 Aプロ 第一部

「鳥居前」

團子の忠信は溌剌とした動きがいい。吉野山、四の切と違って、筋熊の勇壮な出立ち。時折セリフに力が入りすぎているように感じたのと、長い手足が型に収まりきらないように見えたのがマイナスか。
笑也の静御前は俯いてやつれたよう。同行を許されず、しょんぼりした引込みが悲しげ。
巳之助の義経に品がある。 滑稽役の鵜目鷹六は青虎。初めから静を狙って近づいていく。

「渡海屋」「大物浦」

隼人初役の知盛は仁左衛門に習ったそうで、時折面影を感じるも、全体的に軽い。若さゆえだろうが、風格がないというか。一方動きは機敏で、瀕死のはずなのに、薙刀を勢いよく振るい風を切る音が聞こえそう。
安徳帝は巳之助長男の守田緒兜が初お目見え。寝ているところを弁慶が跨ごうとする場面はなく、出陣前に呼び出されて登場。巳之助はなんで義経で共演するのかと思ったが、同じ場面に出ていることが多いし、最後は義経に抱かれて引っ込むので納得。

2025年10月4日土曜日

10月4日 永楽館歌舞伎

「寿曽我対面」

千寿の大磯の虎、りき弥の化粧坂少将と、上方歌舞伎塾出身者が大役に抜擢されて胸熱。千寿はセリフがよく、押し出しもいいのだが、終始うつむき加減なのが気になった。りき弥はきれいだけど、声にもう少し力が欲しいのと、顔が小さいせいか衣装に負けているように見えた。
福之助、歌之助兄弟の曽我兄弟は兄弟が逆転。2人とも芝居が小さいというか、もっと内からみなぎるものが欲しい。壱太郎の舞鶴は妙に軽く、世話焼きおばちゃんみたいと思った。
愛之助初役の工藤祐経は座頭の貫禄。最後に出てくる彦三郎の鬼王新左衛門はご馳走?

口上は初登場の彦三郎が、先月共演した壱太郎に「大喜利のようにやって」と言われたそうで、客席降りして今日誕生日の人にかわらけの破片(サイン入り)をプレゼントするサービスっぷり。福之助は意外に安全運転で、クラファンへの協力を呼びかけ。歌之助は来年も出たいとアピール。壱太郎はいつも通り、コウノトリのこうちゃんぬいぐるみなど宣伝。

「神の鳥」
15回記念でご当地ものをするのはいいが、対面と絵面が似ていると思う。初演時にコウノトリの子を演じた吉太朗が花魁役で、愛之助演じる鹿之介の間夫という成長ぶりに驚く。
父コウノトリの吹き替えが、顔を隠しつつ演じていて上手いなと思ったら、最後は顔を出して千寿だったのでびっくり。

2025年10月1日水曜日

10月1日 錦秋十月大歌舞伎 Aプロ 第三部

義経千本桜の通しで、團子初役の狐忠信で吉野山から河連法眼館を観劇。

吉野山は新吾の静御前と長身コンビ。長い手足が映えるけど、日本舞踊の動きには持て余してるように見えるところも。ただ團子は所作が丁寧だし、伸び代に期待が持てる。
早見藤太は猿弥で、安定の面白さ。
清元のタテが右近兄弟。右近は高音域が不安定というか、声がひっくり返りそうでヒヤヒヤする。

川連法眼は團子の狐忠信に泣かされた。こんなに可哀想と思ったのは初めて。声がいいし、何よりセリフがいい。狐忠信の出から最後の宙乗りまでケレンも軽やかにこなしていて、四代目や三代目猿之助を彷彿とさせるところも。
市川右近が駿河太郎で出ていたののは嬉しかったが、武士にしてはちょっと姿勢が悪く見えたのが残念。

2025年9月24日水曜日

9月24日 秀山祭九月大歌舞伎 Aプロ 昼の部

仁左衛門の菅丞相をしっかり観たくて再見。体調不良で21日の公演を休んだので心配したが、おおむね元気そうで安心した。(所々、呼吸が苦しそうなところもあったが、演技と見えなくもなく)
1階席で観ると表情の細かな変化にも気づく。筆法伝授で勘当は別と言い放つときに滲む苦悩、道明寺では木像のときは顔つきからして違う。本物の菅丞相になると感情を抑えつつも血が通ったように見えるのだから不思議だ。苅屋姫との別れも、鏡越し、池に映る姿を見つつ、直には目を合わさないよう律していても、見てしまうと愛しさが溢れて。悲しみの深さがひしひしと伝わる。(花道での天神の見栄で「待ってました」の掛け声はどうかと思うが)左近の苅屋姫も大健闘で、菅丞相から目を離さず、着物の袂に縋り付く様がひたむきでいたいけ。

加茂堤は歌昇の桜丸、新吾の八重。身長差はあまり気にならなかったけど、やんちゃな桜丸。親王と苅屋姫が牛車にこもって「たまらん」と言うのがちょっとゲスっぽい。斉世親王の米吉はこの中では古典らしさが足りないかも。
筆法伝授は橘太郎の希世が絶妙なコミカルさ。吉弥の局水無瀬、雀右衛門の御台所と適材適所。 道明寺は歌六の土師兵衛が、賀の祝の好々爺ぶりと打って変わって、極低音の声で極悪人だとわかる。
竹本は葵太夫が伝授場と道明寺の切を掛け持ち。道明寺は4組のリレーだったが、最初の樹太夫が若手ながら浄瑠璃らしい語りで良かった。

2025年9月21日日曜日

0921 貞松・浜田バレエ団「海賊」

所要のため一幕の途中から鑑賞。 メドーラの名村空は大輪の花のような華やかさがあり、ヒロインの風格がある踊り。比べるとギュリナーラの井上ひなたは硬いか。コンラッドの水城卓哉は颯爽として格好いいが、海賊というより王子が似合う。アリの幸村恢麟は小柄ながらキレの良い回転が目を惹く。ジャンプはちょっと低いか。 改めて全幕で見ると、違和感を覚えるところが多々。トルコを悪役に仕立てるところやギリシャの娘たちの露出の多い衣装など、ステレオタイプというか、西欧人の偏見が強というか。今の時代に合わなくなっているのではと感じた。物語も薄っぺらい。

2025年9月20日土曜日

9月20日 爽秋文楽公演Cプロ

「曽根崎心中」 生玉社前は靖・団七。 靖は比較的悪い癖が抑えられていて、まずまず。三味線によって変わるものだ。団七はミスタッチもあったが、さすがの貫禄。 天満屋は錣・宗助。 力みがなく、聞きやすい浄瑠璃でホッとする。「死ぬる覚悟」のくだりは音楽だったのだと再認識した。 天神森は織のお初、小住の徳兵衛、聖、織栄、文字栄に藤蔵、清馗、寛太郎、清允。 人形は一輔のお初が可憐でたおやか。玉助の徳兵衛は人形遣いが表に出る癖がいつもよりは控えめ。最期、帯で互いを結びつけるところ、布が余って垂れ下がっていたのはちょっと格好悪い。 玉佳の九平次は出てくるところで人形使遣い自身も千鳥足。

2025年9月15日月曜日

9月15日 秀山祭九月大歌舞伎 夜の部 Aプロ

「車引」

染五郎の梅王丸、左近の桜丸と若手の組み合わせがいいと思ったが、染五郎が意外によくない。源蔵よりは年齢的にも合っていると思いきや、太い声に暗い響きがあるのが悪役じみて聞こえ、梅王という陽のキャラに見えないのだ。彼の声はむしろ松王丸向きで、松王丸の幸四郎と並ぶとどっちが悪者か分からなくなる。
桜丸の左近は苅屋姫に続いて好演。柔らかい雰囲気がとても役らしい。
時平は白鴎。牛車に乗り込むところから電動の台に乗っていた感じで、姿を現すのも椅子に座ったまま台ごとせり上がっていた様子。足が相当悪いのか。口跡もモゴモゴしていて、舌を染める食紅が唇の下に垂れていた。

「賀の祝」

時蔵の桜丸の哀れさに涙。身じろぎすらせず、一点を見つめる様子に死への決意がくっきりと現れる。壱太郎の八重は上方らしいおっとりした風情があり、悲しみがより増す。又五郎の白太夫は人が良さそう。
新悟の千代、種之助の春はBプロと同じで、松王丸が歌昇、梅王丸が橋之助に替わる。こちらの2人の方が血気あふれる若者らしいか。

「寺子屋」

松緑の松王丸にこれほど泣かされるとは。ちょっと不器用な感じがいいのか。「逃げ隠れもせずに」や「笑いましたか」「健気なやつや九つで」のセリフが胸を打つ。萬寿の千代ともいいバランスで、思わず涙に暮れるところで涙を誘われた。
幸四郎の源蔵は特にいいとは思わないのだが、過不足ないというのは重要なのだと。染五郎の源蔵との違いをいろいろ考えてしまった。
園生の前の東蔵は足元がかなり覚束なくて心配。

9月15日 秀山祭九月大歌舞伎 昼の部 Aプロ

幕見で筆法伝授から。

幸四郎の源蔵に時蔵の戸浪がよき。時蔵は昨日の夜の部も良かったけど、相方が安定している余計な気を取られないのでよさに集中できる。粗末な着物に豪華な打ち掛けというチグハグな衣装でも主君への恩義をしっかり持った、芯のある人物像がくっきり。
幸四郎は筆法の写しを書くところ、本当に筆書きしていた。
仁左衛門の菅丞相は余計なものが削ぎ落とされた境地に達した感あり。これを観てしまうと、他の菅丞相は見られないなぁ。

道明寺は左近の苅谷姫が大健闘。可憐で健気で。女方の発声にも不安定さがなくなった。立田の前の孝太郎、はじめ苅谷姫との関係が分からなくなって戸惑った。歳が離れすぎているので、どう見ても母か叔母…。
仁左衛門の菅丞相は、木人形と本物の演じ分けが見事。人形でもわざとらしくなく、でもちょっとぎこちない動きで。衣装に水が落ちたようなシミがあったのは涙?
宿禰太郎に松緑。苅谷姫の左近と並んでも親子に見えないのがジワる。

2025年9月14日日曜日

9月14日 九月大歌舞伎 Bプロ 夜の部

「車引」

松緑の梅王丸、錦之助の桜丸、芝翫の松王丸。配役を確認していなかったので、しばらく桜丸が誰か分からず…。桜丸は女方が演じるイメージなので、あまりニンではないのでは。

「賀の祝」

菊五郎の桜丸が端正で、切腹の悲壮感がいや増す。米吉の八重も可憐で、いい組み合わせ。白太夫は歌六。最期、突っ伏した桜丸の背に八重が着物の袂をかけるのはどんな意味があるのだろう。

慎吾の千代、種之助の春に、彦三郎の松王丸、萬太郎の梅王丸。松梅のケンカは子どもっぽく微笑ましいくらいだが、加速度に悲劇が展開していく。彦三郎は美声で落ち着いた感じで、血気にはやる萬太郎と好対照。萬太郎と種之助は同じ背格好と思っていたのだが、並ぶと種之助のほうが小柄だった。

「寺子屋」

染五郎の源蔵はやはりまだ早かった。セリフや所作は不足なくやっていたと思うが、板についてない。大きく見せようと気張っているのが余計に上っ面に見え、緊張感が過剰なほど鋭く、苦笑してしまう。時蔵の戸浪は期待通りだったが、だからと言ってカバーできるものではない。
幸四郎の松王丸も、形ばっかりな感じがして。雀右衛門の千代は良かったのだが。

寺入りからで物語がじっくり描かれるのはいいのだが、涎くりまわりのおふざけが過多に感じた。落書きをしたのを仕置きするために線香を持って文机の上に立たせる型は初めてみた。千代が出かけた後、涎くりと荷物持ちが千代と戸浪のやりとりを真似するのも。涎からが男女蔵だから特別だったのか。あまり子供っぽく演じてないので、可愛げがない。


2025年9月13日土曜日

9月13日 TTR能プロジェクト『50回記念』プレミアム公演

「楊貴妃」 大槻文蔵のシテ。宮殿身に立てた作り物の中からまずは声だけ、続いてすだれ?越しに姿を垣間見せる。ゆかしく、優美さが際立つ。後半の舞はさすがの説得力。干之掛、台留の小書がついて、最後は作り物の脇に座って終演。ワキは福王茂十郎、アイは善竹隆平。一般的に能はあの世の霊が現世を訪れるが、これは逆にワキの方士があの世を訪れるのが珍しい。 一調「遊行柳」を浦田保親、 狂言「佐渡狐」 茂山千三郎のシテ、善竹隆司のアド、隆平。   「景清」 シテは友枝昭世、ツレは佐々木多門、宝生欣哉のワキ。 舞台中央に作り物、下を訪ねてくる人がいて、最後、去るのをシテが見送るーーという構成は同じだが、楊貴妃とは全く対照的。貧しい荒屋で、平家の落人という武張った役どころ。戰物語ではキビキビとした動き。 ワキツレの宝生尚哉の発声が子方のようで、元気よすぎで雰囲気をぶち壊す。 色々あったが、総じて人間国宝二人の至芸を堪能した。 公演前の講座によると、恋慕の能ということだが、楊貴妃は玄宗に恋していたのかな。現世への未練はあると思うけど、それは恋慕とは違う気がする。

2025年9月6日土曜日

9月7日 爽秋文楽公演 第2部

「心中天網島」 河庄の切を千歳・富助。いきなり真打登場という感じだが、今ひとつ。語りも三味線も武張った感じで世話ものらしくないというか。後の呂勢・清治に変わって色彩が鮮やかになった感じがした。治兵衛が帰り際に小春を罵るところの情けなぶりが秀逸。 紙屋内の口は亘・団吾。語りだしは悪くなかったのだが、子どもの声が変に鼻にかかってひっくり返った。 奥は藤・燕三。つい意識が遠のいてしまうのは、語りが単調というか、さらさらと流れていってしまうからではないか。燕三の三味線は素晴らしいのに…。 大和屋は芳穂・錦糸。前回は咲だったか。比べると語りが硬いというか、廓の柔らかさがもっとあるといい。 道行あ睦、靖、聖、津国に清友、友之助、燕二郎、藤之亮。 人形は玉男の治兵衛、勘弥の小春はいいいとして、和生の孫右衛門は珍しい配役。 初日なのに客入りが半分くらい。厳しい。

2025年8月31日日曜日

8月31日 空晴「すきだった、うた」

まちの公民館のようなところにサークル活動をしているらしい男女が集まる。ステージでは文化祭の舞台稽古が行われ、慌ただしい様子で人々が入れ替わり立ち替わり。空晴らしい、誤解や早とちりですれ違うもどかしさ?が焦ったいというか。舞台奥の、通路ではない狭い隙間を通って出入りするなど、無用な手間に見えて初めモヤモヤしたのだが、後半はテンポ良く笑いも。劇団員が岡部尚子、上瀧昇一郎の2人だけになり、後はゲスト参加の浅野彰一、木内義一、クスミヒデオ、初登場という日詰千栄が安定感のあるうまさでで場を引き締めた。「空晴流ミュージカル」という触れ込みだったが、歌は最後クスミのギター弾き語りだけだった。

8月31日 中之島文楽2025 曽根崎心中

「曽根崎心中」を講談、現代アート、文楽のコラボで。

第一部の講談は旭堂南海。観音巡りから生玉社前までをコンパクトに語る。徳兵衛を巡る金の流れがすっきりと分かりやすい。

第二部は文楽で、天満屋を織・藤蔵。なんか集中できなくて、「死ぬる覚悟が……」のくだりを聞き逃した。幕前のトークで織が映画「国宝」に触れて、義兄弟とモノマネしただの、「私のところ来てくれたら」(=教えてあげたのに)言っていたので、どんなもんかと思っていたのだが。トークで語った(本イキではないそう)様子だと、映画よりはサラッとした感じ。トークでは天満屋の段は4世織太夫が複曲したもので、師匠から直伝の、一門にとって大切なものとも話していたが、アゴを使うのはそのせい?ガウガウ言ってて、聞き苦しい。

天神森の段は藤、芳穂、咲寿に燕三、勝平、清馗。特筆するほど良くもないが、悪くもない。というか、舞台がガチャガチャしていて床に集中できなかった。

現代美術の谷原菜摘子のイラストは去年よりはおどろおどろしさはマイルドになっていたが、やはり異様な感じ。アニメーションはスクリーン裏から投影していたようで、人形が影になることはなかったのは進歩。だが、後ろのスクリーンの明るさに比べて舞台が暗く、沈んだ感じ。さらに今年は人形のアップの映像も多用されたので、視線が逸らされるというか、舞台上の視覚情報が過多で生の舞台に集中できなかった。(せっかくの一輔&玉男だったのに……)背景もアニメーションで、天満屋の壁や天井が極彩色にらなってたり、天神森の木がジャングルの植物のようだったり。背景に合わせて、大道具の木(お初の打ち掛けをかけるところ)も熱帯植物のようになっていて違和感があった。

国宝効果もあって、2階席まで大入り。

2025年8月30日土曜日

8月30日 第3回 和のいずみ

箏曲の片岡リサプロデュースによる文楽と箏のコラボ。 オープニングは東住吉高校生徒による長唄「越後獅子」。 三味線20人くらい、唄10人くらいの大編成ながらよく揃っていたが\、会場のせいか楽器のせいか音が薄っぺらく聞こえた。唄の発声が唱歌というか洋楽ぽく、邦楽を習得するのは簡単ではないのだと思った。 楽器紹介コーナーで長唄、地歌、義太夫三味線の違いを紹介。富介が駒の違いによる音の違いなどを実演。
地唄三味線・唄の「鶴の声」、浄瑠璃歌謡曲「朝顔の歌」。浄瑠璃歌謡曲は大正〜昭和期のソプラノ歌手が考案したものだそうで、箏の演奏とソプラノ歌唱を合わせるのが面白かった。

「マザーズ」は山根明季子作曲の新作を片岡と寛太郎が合奏。同じ旋律を繰り返すボカロの歌?に合わせて琴と義太夫三味線が同じ音、旋律を少しずつ違う弾き方で重ねていく感じで、現代音楽らしい面白さ。ただ、義太夫三味線らしさが引き出されているという感じはあまりなく、他の楽器でもよかったのではと思う。 最後は「阿古屋琴責の段」を特別編成で。呂勢の語りに富介、寛太郎、三曲は燕二郎、人形は勘十郎、簑紫郎、勘昇。三曲のうち琴は片岡が演奏したのだが、三味線の音に掻き消されがち。観客は片岡のファンが多いらしく文楽には馴染みがないようで、琴、三味線、胡弓の演奏に関心しきり(特に人形の動きについて)なのはいいのだが、演奏が終わるたびに結構長々と拍手が起こって語りが聞こえなかった。呂勢の語りの華やかさ、手堅い演奏で聞き応えがあっただけに残念。

2025年8月24日日曜日

8月24日 上方歌舞伎会

「傾城反魂香」 又平の當吉郎は純朴そうな感じが役にあっている。セリフはもうひとつだが、拙いのが返って胸を打つのか、苗字を許されないと絶望して慟哭するところなどジーンときた。おとくは千寿。アイラインが細いせいかちょっと冷たそうに見えるのだが、情のある女房。手水鉢を絵が抜けたことを知らせる所や、最後の花道で又平にもっと堂々と歩いてと指導?するところで声を出さず、口パクだったのはこう言う演出だったろうか。(口パクでも十分伝わったが) 千太郎の修理之助はスラリとした長身。竹之助の下女おなべは、又平に着物を着付けてやるところの手際の良さ。 冒頭の百姓はりき弥、愛三郎、佑次郎、當史弥。普段女方のりき弥と當史弥はどうなることかと思ったが、意外にも普通の百姓の兄ちゃんという感じ。鴈大の土佐将監、松十郎の雅楽之助。 「太刀盗人」 千次郎のすっぱはキリッとした化粧が男前。やはりうまい。翫政の田舎者とのやり取りも息が合って軽妙。松四郎の目代、愛治郎の従者。 終演後は仁左衛門ら指導陣が挨拶。「情熱は100%だが、出来栄えは100%でない者も」と仁左衛門。鴈治郎に振る時に「翫雀さん」と言いかけ、一通り挨拶が終わったところで「自己紹介を忘れてました。片岡仁左衛門です」とのたまうお茶目ぶり。出演者の挨拶が終わったところで、少し言い淀んでから「上方歌舞伎会存続のために、一人でも多くを誘ってきてほしい」と切実な訴え。稽古の合間に出演者自身がチケットを売らなければならない状況で、予算が厳しく、演目が限られる歯痒さもあるそう。

2025年8月17日日曜日

8月17日 三谷文楽「人形ぎらい」

人形がスケボーに乗るのが躍動感があってすごかった。地面を蹴る仕草がリアルだし、壁を登ったり、ボードを回転させたりと技も繰り出し。が、いちばん面白かったのがここで、物語としては盛り上がりに欠け、どこかで見たような話だった(と思うのは私が色々見過ぎでいるせい?)
いわゆるバックステージもの?で、陀羅助や源太などの首のキャラクターが芝居を演じる役者のような感じ。悪役ばかりやらさせる陀羅助がぼやいて主役をやりたいと近松に訴えたり、陀羅助、源太、老女の間で恋愛のもつれがあったり。面白そうな設定だが、もう一つ突っ込みが足りない。モリエールの「人間嫌い」の要素があまりないのも、期待はずれだった。詞章もこなれていない感じで、セリフ劇としてはともかく、音曲としては物足りない。「ルッキズム」がキーワードのようになっていて頻出するのだが、太夫にカタカナ語を言わせるのは前作でもあったし。舞台装置はさらにシンプルになっていて、屋台のような大道具がない黒バックに地味な着物(世話ものだから)の人形という、全体的に舞台が暗くて見えにくかったのもマイナスポイント。白い幕をカーテンのように左右に動かすことで場面転換や人形の出入りに活用していたのは「決闘高田馬場」で使っていた手法はテンポアップに繋がった。
人形遣いがメインだと思えば楽しめるかも。実際、陀羅助が人形遣いによって動かされていることに気付いて黒衣の一輔らと顔を見合わせたり、もう動けないという源太を玉佳ら人形遣いが何とか動かそうとしたり、果ては人形に「もう放っておいてくれ」と言われた人形遣いが人形を置き去りにして去ろうとしたり…とメタ的なやり取りがあって、人形遣いが小芝居する場面がチラホラ。一輔はオーバーめの仕草で笑いをとっていたが、玉佳のぎこちなさも微笑ましい。陀羅助はスケボーのほかは、通天閣をよじ登り、降りるときは面倒臭いからとスカイダイビングもこなし、「人間にできることで人形にできないことはない」を体現していた。
床は両脇の高い位置にあり、千歳・清介→睦・清丈→呂勢・清志郎→靖・清公、清允→千歳、睦・清介→呂勢、靖・清志郎。袖からスライドで出てくるのは前回と同じ。前回よりも一人で語り分けるところが多く、靖はお福が地団駄踏んだりするところなどよかった。劇中劇の「槍の権左」は初め千歳が通常通り、2回目は呂勢が源太の顔が変わって自信なさげ(←うまかった!)と演じ分けていたのが面白かった。最後は両床みたいになって、上手の源太&姐さん、下手の陀羅助&お福の掛け合いみたいだった。

2025年8月16日土曜日

8月16日 歌舞伎「刀剣乱舞 東鑑雪魔縁」

前作よりもキャラクターが深掘りされた感じで、見応えがあった。面白かった。鎌倉時代の源実朝暗殺を題材に、源氏ゆかりの髭切・膝丸兄弟(莟玉、吉太朗)が大活躍。政を疎かにしていると思われていた実朝(歌昇)が暗殺されることに躊躇いを感じている膝丸が実朝の本心聞いて葛藤し、さらに羅刹微塵(松也)によって暗殺者の公卿(鷹之資)が殺されたため、歴史が変わらないよう自らの手で実朝を殺めるという辛い決断を迫られる。兄弟のわちゃわちゃした感じもあり、人気キャラが存分に楽しめたのでは。
意外にも良かったのが、歌昇演じる陸奥守吉行。オープニングの流し目からして、キャラクターになり切った感じ。土佐弁のセリフもよく、颯爽とした好青年。左近の加州清光はビジュアルが凛としたクールビューティ。ツンとした感じなのに、客席いじりの手慣れた感じはゲームやアニメのキャラクターなのかな。
三日月宗近の松也は悪役の羅刹微塵と二役。早替わりも見せる。小烏丸の雪之丞は二役の北条政子で見せた。鬼丸国綱の獅童はいつも通りの安定感。 最後は刀剣男士たちの舞踊「舞競花刀剣男士」。髭切・膝丸による三番叟に始まり、春夏秋冬を踊りで描く。

2025年8月10日日曜日

8月10日 能狂言「日出処の天子」

野村萬斎演出・主演の意欲作。…なのだが、うーん。一番のネックは萬斎が厩戸王子のニンではないことだろう。ちょっと陰のある雰囲気は山岸涼子の絵の雰囲気と共通するところもあるかと思ったが、華奢で中世的な雰囲気とは程遠い。クライマックスの毛子とのやりとりで「そなたも私を抱いたではないか」とか生々しいセリフが続くところなぞ、なんとも気持ち悪くて、いたたまれない気持ちになった。毛子が好きという気持ちが嘘っぽいというか、日本のアイドルタレントが演じるBLドラマみたい。ラストの妃(配役では子となっていたが、膳美郎女?、鵜澤光)を抱いた厩戸の後ろで地謡が心情を語るところは、自分でセリフを語るよりも寂寥感、やるせなさが鮮明になり、心に響いた。能狂言なのだから、下手にセリフを喋るより、能の仕組みを使う方が効果的だと思う。
蘇我毛子役の福王和幸は原作そのままの雰囲気で適役だが、10年前だったらもっと似合っただろう。現代劇風のセリフを謡のように話すので、他人事のように聞こえる。 舞台中央に木枠に障子紙を貼ったようなセットがあり、衝立のようになったり、六角柱のように囲って部屋のようになったり。アニメーションのような映像を映すのは今ひとつだったが、ラブシーンを後ろから影絵のように映すのは悪くなかった。(多分、役者の陰でなく、人形か何かだったのも変に生々しくなくてよき)
意外にも、大槻文蔵が間人媛で出演。一場、ニ場の冒頭で、厩戸との確執を吐露することで、この物語が母子関係から始まっていることが鮮明になった。
戸自古は大槻裕一。ニ場のみの登場で毛子との関係が十分に描かれないまま、布都姫の手紙に嫉妬して毛子を陥れる激しさのみ描かれる。布都姫は膳美郎女と同じく鵜澤光。唯一の女性キャストで、面をかけていても体つきや声が男性とは違い特別な存在感があった。
泊瀬部大王は茂山逸平。俗物的なコミックリリーフという感じで、シリアスな物語の中でホッとする存在だった。

2025年8月4日月曜日

8月4日 あべの歌舞伎晴の会「夏祭浪花鑑」

10回目の晴の会はザ・上方歌舞伎な演目。松十郎の団七、千寿のお辰、千次郎の義平次という盤石の配役に、千寿は婆というオリジナルキャラ、千次郎は徳兵衛と亀屋東斎までこなすマルチぶり。
松十郎の団七は過去にも演じている(上方歌舞伎会や「おちょやん」の劇中劇でも)だけあって、危なげなくセリフも所作も堂々としている。男前なのだけど、ちょっと頼りないというか、不器用な感じが団七らしい。義平次とのやりとりは千次郎と息があって、間が心地いい。千寿は序幕は仲買のおくら婆で登場。二幕目のお辰は打って変わってきりりと美しく、色気があるのだけど粋で嫌らしくない。緩急のあるセリフもいい。千次郎は東斎、徳兵衛、義平次を次々に演じ分ける大活躍。驚いたのは二幕の終わり、殺された義平次が泥に沈んだと思ったら、次の瞬間徳兵衛が出てきて雪駄を拾っているのだから! 非人姿の徳兵衛の鬘、後頭部が固まったような不思議な髪型は何だろう。東斎のざんぎり髪とも違うし。 3人以外の面々もそれぞれ役にあって好演。初登場の竹之助は三婦女房おつぎがとてもらしくてよき。三婦を訪ねてきたお辰に悋気するところが丁度いいかわいらしさ。三婦がこっぱの権らをやっつけるところを、頼もしそうに見ている表情もよかった。そして、席が下手側だったので気づいたのだが、磯之丞身の振りを巡ってお辰と三婦がやりとりをしているときに鉄弓の仕込みをしているのね。準備が終わるとさりげなく後ろに下がっているのも素晴らしい。磯之丞の翫政はぼんぼんの色気。琴浦のりき弥とは身長差があるけれど、段差を使ったり、どちらかがかがんだりしてバランスをとっていた。りき弥の琴浦はいつも通りだが、途中、神輿の担ぎ手として出てきた時は珍しい男装(手拭いを頭に巻いた法被姿)も見られて得した気分。(カーテンコールではまた琴浦に戻っていた)お梶の當史弥のいいおかみさんぶり。子役との接し方もお母さんらしく。佑次郎のこっぱの権・愛治郎のなまこの八のチンピラコンビもいい風情。愛治郎は神輿の担ぎ手で誰よりも足を高く上げていたのも印象的。當吉郎の三婦はセリフがちょっともっちゃりしているが、気のいい親父という風情。 オール上方の夏祭、大阪の空気が満ちていて、とてもとても満足。 千秋楽だからか客席も豪華(?)で、壱太郎、山村友五郎、侃のほか、能楽の大倉源次郎、元OSKの桜花昇ぼるの姿も 会場では気づかなかったが、帰りに地下鉄に向かう通路で片岡進之介も見かけた。

2025年8月3日日曜日

8月3日 京都バレエ団特別公演「アーティスト・スペシャル・ガラ」

「ラ・バヤデール」から2幕の結婚式の場面。ガムザッティを谷桃子バレエ団の光永百花、ソロルを鷲尾佳凛。光永は育ちの良さそうな感じ。鷲尾はサポートがあまり得意でないのか、腰を支えて回転の補助をするところで腰が弾けているように見えた。ソロの踊りはのびのびとしていた。黄金の像はリトル・ドレの役名で金子稔。金色がギラギラしていないせいか、人間らしい踊りに見えた。コールドはバレエ団の団員ら。
「ボレロ」は西島数博。素肌に黒のタキシード?を羽織り、さらにゼブラ柄の薄手のコートという不思議な衣装。自身で振り付けたという踊りは、身体の周りで腕をひらひらさせていて、ボレロのリズムをあまり感じない。暗転する度に証明が変わってスポットライトから範囲が広がっていく。最期は舞台前方から西島の影を舞台後ろに映す演出。 今日の眼目、「ロミオとジュリエット」よりパドドゥはゲスト出演のマチュー・ガニオ。ジュリエット役のエロイーズ・ブルドンも長身でほっそりしたタイプで、ある意味理想的なペア。寝室のパドドゥは、悲しみよりは若い2人の愛に溢れる。

「セーラーダンス」は男性ダンサーばかり6人がテクニックを競い合うよう。 「ロマンシング・フィールド」は堀内充振り付け。男女5組が軽やかに舞う。
「RENCONTRE(出逢い)」はファブリス・ブルジョワ振り付けの新作で10分ほどの小品。ガニオとブルトンが優雅さ。出逢いというタイトルだが、再会のように感じた。

2025年8月2日土曜日

8月2日 横浜バレエフェスティバル 2025 in鎌倉 Aプロ

第1部はジュニアダンサーのバリエーションと若手?による眠りの妖精の踊り。リラの精のバーンズ慈花が他のダンサーより頭一つ長身で、大人と子どもが踊っているよう。なぜか優雅の精が2人。

第2部よりプロのガラ。
「pqehension Bloom」より抜粋を高瀬譜希子。たっぷり生地を使ったローブのようなドレスを、時にたくしあげたり、頭から被ったりと、ドレスのあしらいも振り付けの一部になっていた。

「コッペリア」よりスワニルダのバリエーションを中島耀。少女らしいかわいらしさ。

「眠れる森の美女」のグランパドドゥを影山茉以と奥村康祐。奥村はthe王子といった佇まいで、サポートも完璧。フィッシュダイブに安定感があるし、リフトは優しい。影山も踊りやすそうで、オーロラの幸福感がたっぷり。カーテンコールでカーテンの切れ目が分からずまごつくも、王子の気品を保ったまま姫をエスコートする様子にほっこり。

「DUST-ダスト-」よりパドドゥを高橋絵里奈とジェームズ・ストリーター。第一次世界大戦についての考察だそうで、蛍の光?の音楽に合わせた踊りは庶民の抗いや苦悩を描くよう。仰向けに四つん這いになったストリーターの上に高橋が馬乗りになって動くのは昆虫のように見えた。最後は疲れ打ちひしがれた様子。

第3部
「Ki22」タランテラよりパドドゥを秋山瑛と二山治雄。小柄な二山と華奢な秋山のペアは少年少女のカップルのようで、初々しい駆け引きがチャーミング。とはいえ、踊りはらかなり高難度。

「Core Meu」よりCorriを小池ミモザ。裾の長いブルーのドレスは後ろがより長い。裾を捌きつつの踊りは、高瀬と被るところも。

「ジゼル」2幕よりグランパドドゥを加瀬栞とロレンツォ・ロセッロ。加瀬はテクニックがしっかりしていて、リフトは軽やか。ロセッロは体格が良く、雄々しいアルブレヒト。

「ロミオとジュリエット」より死のパドドゥを津川友利江。シェイクスピアの物語を翻案したプレルジョカージュの振り付けだそうで、ロミオはホームレスの設定でボロボロの衣装。仮死状態のジュリエットを放り投げたりひっくり返したりと、結構乱暴な扱いで、赤いドレスを剥ぎ取り、白い下着姿にした後でナイフ(剃刀?)で腹を切って自害する。ジュリエットをわざわざ白衣にするのだから、血糊でも使うのかと思ったらさにあらず。一方、ロミオの遺体の下で目覚めたジュリエットもアグレッシブで、椅子に腰掛けさせたロミオの体にダイブしては転げ落ち、最期はロミオの腹の上に乗って手首を掻き切る激しさ。

2025年7月31日木曜日

7月31日 文楽公演 第1部 

「西遊記<完結篇>」

またか、という感じだが、今回は沙悟淨との出会いから天竺で経典を手に入れるまでと、まさに物語が完結した。

流沙川の段は希・友之助、清方のツレ。詞章が現代語のこともあり、淡々と物語が進む。新作だから仕方ないのか、三味線は皆、譜面台を見ていた。火焔山より芭蕉洞の段は三輪・団七、最後の祇園精舎の段は津国、咲寿、薫、聖に団吾、錦吾、清方。

人形ほ玉佳の悟空の奮闘ぶりが微笑ましい。悟空と合わせた茶色の着物(紋付きかは不明)で宙乗りも。扇で吹き飛ばされる時は遠見でちっちゃい悟空がくるくる回る。
猪八戒がサングラス、沙悟淨が首掛けファン、悟空がハンディファンを身につけたり、羅刹女がハートペンライトを思っていたりと遊びを入れて客席が盛り上がる。 クライマックスの戦いは、虻に化けた悟空に牛魔王が雀に化けて対抗したと思ったら、猪やら虎やら様々な動物化けあう展開。勝負がつかない中、猪八戒と沙悟浄が応援にかけつけて勝利するのだが、1対3はフェアじゃないよなあとか、何日もかかるという芭蕉洞にどうやって来たの?という疑問が。
流沙川と火焔山の間に解説。

2025年7月22日火曜日

7月22日 文楽公演 第3部

Welcome to BUNRAKU として司会と刀剣乱舞の小狐丸の人形が登場。声優の近藤隆の喋りにあわせ、玉彦の主遣いでさまざまなポーズを決め、写真撮影に応じるサービスも、人形の動きがややぎこちなく感じた。近藤は休憩の案内や終演後のアナウンスもあり。 「伊勢音頭恋寝刃」 古市油屋の段を錣・宗助。 水気が滴るような語りはこの物語には合っていないのでは。 奥庭十人切りは芳穂・錦糸。 演奏は申し分ないのだが、だからこそ余計に物語の理不尽さに胸が悪くなる。人形だと殺しの美学というよりは、殺伐としてしまうのも一因か。 人形は一輔のお紺、簑二郎の万野、勘十郎の貢。 「小鍛冶」 織の稲荷明神、休演の睦に代わって亘の宗近、織栄の道成、文字栄。三味線は藤蔵、清志郎、寛太郎、燕二郎、藤之亮。 力づくでねじ伏せるような語りと三味線。 玉助の老翁実は稲荷明神、紋臣の小鍛冶、簑太郎の道成。

2025年7月21日月曜日

7月21日 七月大歌舞伎 夜の部

「熊谷陣屋」

仁左衛門の熊谷は重厚にして繊細で見応えたっぷり。数珠を手に花道を出てくるときの表情が全てを物語っている。意を決して数珠を袂にしまう仕草に、一人息子を手にかけた苦しみがひしとつたわる。戦地まで押しかけてきた女房を嗜める言葉の裏、真実を隠しつつ藤の局に敦盛の首を打った模様を語る戦語り、息つく暇もないほどの緊張感。「十六年は一昔」の言葉に込められた思いの深さ。花道で笠を被ってうずくまり、立ち上がって歩き出すも笠で両耳をしっかと覆う。深い悲しみ、無念さが強く伝わった。

孝太郎の相模は階段を上るときぴょこぴょこしたり、座って向きを変える時の裾のあしらいがモタモタしたり。壱太郎の藤の局は芝居がくさい。弥陀六の歌六が手堅い。

「口上」

仁左衛門が取りまとめ。途中、名前を言い淀んだり、「立派な八代目に」というべきところ六代目と言い間違えたりもあったが、不足なく。菊五郎は女方をはじめ、岳父播磨屋の当たり役にも挑む、歌舞伎界を支える存在と。菊之助は芸筋がよく、踊りもしっかりしているとベタ褒め。 扇雀、孝太郎、歌六、鴈治郎、弥十郎、錦之助と続く。菊之助が子どもらしくないとか、しっかりしているとか口々にほめそやし、錦之助に至っては、「いずれ『国宝』に」とまで言っていて、プレッシャーにならないかと心配なくらい。 「土蜘蛛」 音羽屋新古演劇十種の一つだが、菊五郎で観たいのはこれではない感じ。 菊之助が侍女胡蝶で、能がかりの舞をしっかりと。ただ、発声はちょっと辛そう。 保昌の弥十郎は大柄な身体が立派で、映える。頼光の時蔵は気品があり、佇まいが美しい。 番卒太郎、次郎、藤内に鴈治郎、扇雀、彦三郎は珍しい組み合わせ。 一般の子役がとてもうまくてびっくりした。太刀持ちはセリフがしっかり。小姓はもっと小さいが、所作がちゃんとしていた。

2025年7月19日土曜日

7月19日 文楽公演 第2部

「一谷嫩軍記」

熊谷桜を靖・勝平。
靖はまた悪い癖がでて声のコントロールが効いていない感じ。特に相模や藤の局の高音域が辛い。

熊谷陣屋の切は千歳・富助。今、一番充実した語りだと感じる。人物の語り分けが的確で、敦盛の最期(嘘だけど)を緩急のある語りで聞かせる。 後は藤・燕三。藤の語りはちょっと物足りない感じもあるが、「持ったる首が揺るぐのを頷くように思われて」が沁みた。「十六年もひと昔」をさらりと語るのも良かった。燕三の柔らかい音色が切々と響く。 人形は玉志の熊谷が体の芯が傾いでいるのが気になった。玉也の弥陀六が手堅い。一輔の義経は役不足と言うと何だけど、もっと色々観たかった。 「桂川連理柵」 六角堂はお絹の睦が療養のため休演し、長吉の咲寿が繰り上げで代役。長吉には碩が入り、儀兵衛は南都、三味線は清馗。 咲寿は落ち着いた語りで悪くない。碩は戯けた語りが少し硬いが、急な代役としては立派。 帯屋の切は若・清介。相変わらず。お取り巻きの「待ってました」の掛け声に加え、盆が回るなり退席するのはいただけない(しかも、道行で戻ってきた)。 後は呂勢・清治。パッと色彩が戻ったよう。 道行朧の桂川は希、小住、碩、聖、薫に清友、清丈、清公、清允。 人形は玉男の長右衛門に和生のお絹、玉助の儀兵衛、簑紫郎の長吉、勘弥のお半。

2025年7月13日日曜日

7月13日 未来につなぐ、能楽の世界

野村萬斎プロデュースの万博イベント。「鬼」を切り口に、「翁」「野守」「道成寺」「土蜘蛛」「菌」「紅葉狩」「船弁慶」のダイジェストで春夏秋冬を描く趣向。「菌」を鬼とするのはちょっと無理がある気もするが。
翁は金剛永謹、道成寺は大槻文蔵と福王茂十郎という豪華配役は勿体無いくらいだが、映像の効果もあって初めて見る人にも満足感があったのでは。(というか、映像がないとしょぼくなっていたと思う…)舞台後ろの縦長のスクリーンを上げ下げして幕のように使い、道成寺では鐘の映像を映した幕の後ろから鬼が登場した。 一番の見ものは大槻文蔵の「道成寺」だったと思うが、鐘入りの後、鬼と化してからの舞を5分ほどだが、ミニマムながらキレのある動きが美しい。おそらく今後道成寺を演じることはないだろうから、観られたのは幸いだった。 「菌」では子どもたちが小さいきのこで登場し、微笑ましい。「紅葉狩」は前シテと後シテを別の人にしたことで、展開がスムーズに。「船弁慶」の義経は福王登一郎か。知盛の他に4人の武者の亡霊が現れ、舞台下に広がって立ち回り。わずか1時間弱の舞台に主演者多すぎでは。
最後は鬼の面を被った萬斎が現れ、「外身は鬼だが、中身は人」と言って素顔を現す。公演を振り返りつつのトークが少々長いうえ、誰をターゲットにしているのか(子ども向け?)よく分からなかった。これを機会に能楽堂を足を運んで、ということか。 14日19時の部を再見。 演出がちょっと変わっていたようで、開演前には鬼の面をかけた萬斎が客席を歩き回り、写真撮影や握手に応じていた。 「翁」は天下泰平を願う一節だけで、同時に「野守」の鬼たちも舞台下や客席後方に登場。「道成寺」では炎をイメージした赤いライトが過剰に感じた。

2025年7月12日土曜日

7月12日 七月大歌舞伎 昼の部

「新版歌祭文」

お染の扇雀がぶりっ子するのは想定していたが、つられたのか壱太郎のお光までもがブリブリしていてげんなり。純朴な村娘のはずが、年増が若作りしているみたい。あざとさが目につき可愛くないのは勿体無い。鏡越しにお染を突くところも、男に媚びてるみたい。
お染の花道の出で、お付きの女中が「お嬢様、今日もお美しい」とか、「立てば芍薬、座れば牡丹…」と褒めちぎるのはデフォルトだっけ?(無理筋の設定を観客に知らしめるようで…) 駕籠かきで千次郎都、翫政はいいのだが、花道で裸になる(肉襦袢は着ているが)のは必要?なんか目のやり場に困る。

「羽根の禿」

新・菊之助は踊りがしっかりして危なげないのだが、可愛さの演技はまだぎこちない。大人びた表情なので、少女の可愛らしさとは違う感じ。左足の足袋のこはぜが外れていて、どうするのかとハラハラしていたら、途中後見がさっと直してくれてほっとした。

「うかれ坊主」

所作は軽妙だけど、何故か戯けた感じでなくて、新・菊五郎にはやっぱり似合わないと思う。多分この人は基本的に陰キャなので、おどけていてもどこか楽しそうでないのだろう。

「髪結新三」 有名な話なのにちゃんと観るのは初めてかも。菊五郎の新三は悪の中に影を感じさせる格好良さ。ただ、大家に言いくるめられ、さらにおかみの告げ口で家賃まで取られる踏んだり蹴ったりは本来はクスリと笑わせる場面だが、今ひとつ笑いが少ない。菊五郎の新三に愛嬌がないからか。 勝奴の菊次がよき。錦之助の弥太五郎は男前なのに新三にやり込められてしまう情けなさが絶妙。 新三と弥太五郎の立ち回りを中断し、「本日はこれ切り」で幕。

2025年7月7日月曜日

7月7日 ロベルト・ボッレ・アンド・フレンズ

大阪・関西万博のシャインハットでの特別公演。 無料公演ながら、12作品を上演し、ボッレはこのうち5作品に出演するという奮闘ぶりでタイトルに偽りなし。上半身裸の衣装が多く、ギリシャ彫刻のような身体美を見せつけるよう。コンテ作品ばかりだったが、バラエティに富んだ構成で見応えたっぷりだった。事前の案内には1時間と書いてあったけど、1時間45分くらいあった。 「カラバッジョ」 メリッサ・ハミルトンとボッレ。ボッレは上半身裸でギリシャ彫刻のような身体美を見せつけ、ハミルトンもミニマムな衣装でしなやかな体のラインがよく見える。アクロバティックなリフトもあってスリリング。 「エスメラルダ」 坂本莉穂と清田元海。プロが踊るエスメラルダを観たのは初めてかも。坂本は軸がしっかりしている感じ。タンバリンを鳴らすところは音楽とずれてしまうところもあったが。清田はジャンプに迫力があった。 「ムーンライト」 ボッレとトゥーン・ラウバッハ。ドビュッシーの「月の光」が流れるなか、月の映像を円形の会場の壁に映す。男性ダンサーのパドドゥはどこか官能的。ラウバッハはボッレに比べると細身なので、2人が並んだバランスが良い。 「ドンキホーテ」 菅井円加とアダムザン・バフティヤール。菅井のキトリは期待を裏切らない。フェッテはダブルが中心だったけど、ポワントワークで遊びを入れるなど、余裕たっぷりで相手を挑発するような視線にどきりとする。 「イン・ユア・ブラックアイズ」 ボッレのソロ。 「タリスマン」 タチアナ・メルニクと清田。床が滑るのか、メルニクがポワントで体勢を崩してハラハラするところも。 「デジタル・シルク」 ラウバッハ自作のソロ。ゆったりしたスーツに革靴という衣装で、ロボットダンスを思わせるハードな振り付け。しなやかで強靭に動く様はゴム人形のよう。終わったあと客席からどよめきが漏れるほど、圧巻の身体能力だった。 「Take me with you」 ハミルトンとボッレ。白シャツに黒の短パンという衣装で、ももを叩いたり指を鳴らしたりしながら登場。 「シェヘラアード」 菅井とアダムザン。 「スプリング・ウォーター」 メルニクとボッレ。ギリシャ神話のようなヒラヒラした衣装。 「Sphere」 ボッレのソロ。宇宙のような映像が投影されるなか、直径3メートルほどの惑星のような球体と戯れるように踊る。最後は球体を抱え、アトラス神のように。 カーテンコール(カーテンはないが)は「イマジン」が流れる中、さまざまな国の言葉で「peace」「平和」の文字が映し出され、レインボーカラーの旗を手にした出演者が並ぶとスタンディングオベーション。とてもいい公演だったけど、運営のグダグダぶりに振り回されたり、舞台が狭いので通常なら斜めの対角線上をシェネで移動するところ、弧を描くようなラインを取ったり、男性ダンサーは数歩戻ってからジャンプしたりと、踊りにくそうなところもあった。

7月4日 素浄瑠璃の会

「毛谷村の段」を靖・燕二郎。
気迫のこもった語り・演奏だったが、靖の汁気がいつも以上に多くて見るのが辛く、肝心の斧右衛門の嘆き聞き逃してしまった…。

「上田村の段」は呂勢・燕三。
落ち着いた演奏でいいなと思っていたが、アフタートークでは2人とも不満そう。呂勢はパンフレットのコメントにもあったが、詞ばかりで紡ぐ物語に苦戦したようで、峯田さんの「できなかったの?」の問いにも言葉少な。島師匠や清治師匠のモノマネをしながら、叱られた言葉が脳内再生される様子を話していた。燕三は思い入れが強すぎて突っ走ってしまったそう。
聴いた感想としては、語り分け、引き分けが明瞭で、物語りの解像度が高かったのだが、泣かなかったのは何かが足りなかったのかも。

2025年6月29日日曜日

6月29日 継ぐこと・伝えること66 義太夫節

碩・寛太郎で「玉藻前㬢袂 道春館の段」

1時間余、筒いっぱいの熱演で、義太夫節を聴いてるという充実感。碩は後室、姫、金藤治の語り分けもしっかりしてるし、立ち回りの畳み掛けるような語り、金藤次のモドリも情感たっぷりで聞き応えアリ。後室の語りにもう少し柔らかさがほしかったのと、娘2人がほとんど一緒だったのが課題か。
寛太郎はキッパリした演奏で、叩きバチなどの激しいところは目が覚めるよう。

演奏前のトークで、碩が京都市の芸術文化特別奨励制度に選ばれた(2回目の申請で)ことから、積極的に会を開いたり、古い肩衣を修繕に出して職人とも関係を作ったりしているそう。玉藻前は淡路でも上演されているし、かつては素人もよく稽古していた曲なのに文楽ではしばらくかかっていないこと、前回は師匠の千歳が語ったことなどからの選曲。寛太郎も師匠の宗助が千歳と2度ほど勤めたことがあり、教えてもらったそうだ。

2025年6月22日日曜日

6月22日 文楽若手会

「妹背山婦女庭訓」 道行恋苧環は咲寿のお三輪、碩の橘姫、薫の求女、織栄に燕二郎、清允、清方、藤之亮。 碩以外は音の調子に難ありで、お三輪が可愛くなくて、調子っぱずれな語り。三味線は途中走って崩れそうになるも踏ん張った。燕二郎はお三輪の登場の華やかな手が冴えてた。 鱶七支社の段は亘・錦吾。 亘は荒武者のような太い声はよく合っている。 姫戻りは清・清允。 素直な発声に好感が持てる。 金殿は小住・清公。 意地悪な官女が憎たらしくてよき。清公は精一杯という感じでこれもまた好感度高し。 人形は和馬の橘姫は師匠譲りの端正さが感じられるもの、拙さが目立つ。玉路も同様。紋吉のお三輪は比べてまし。 「新版歌祭文」 野崎村の前を靖・寛太郎。 靖、変な力みがなくて久しぶりに真っ当な語りで安心して聞けた。三味線のおかげ? 後は希・友之助に藤之亮のツレ。 希は大きく語ろうと気張っている感じがする。

2025年6月21日土曜日

6月21日 六月大歌舞伎 昼の部

「元祿花見踊」

右近の出雲阿国は立女形の貫禄が少々鼻につく。隼人の名古屋山三は男前。 ほか、元禄の女に廣松、莟玉、玉太郎、笑野、緑、りき弥、元禄の男に男寅、歌之助、左近、菊市郎、蝶紫、蔦之助。
左近は化粧の鼻筋立てすぎでは。途中まで誰だか気づかなかった。

「車引」

菊之助の梅王丸。大人に混じると小ささが目立つが、手足をいっぱいに広げての力演。足の親指を立てるのは苦手なのか、角度が甘かったり、全部の指が立っていたり。太い声を出そうとしているのは伝わるが、無理をしているようでところどころ声が掠れるのは本人も悔しかろう。隈取りの顔が吉右衛門に似てた。吉太郎の桜丸は柔らかい風情がよき。鷹之資の松王丸はさすが型がきれい。杉王丸の種太郎、種之助と勘違いしていたので、ちっこいのが出てきてびっくり。子どもらしい頑是なさが杉王のキャラに合っていて好演。

「寺子屋」

寺入りからなので、時蔵の千代の造形がくっきりする。寺子屋を後にしようとするところ、すがる小太郎を嗜めていったん戸外に出た後で「扇を落としていませんか」と戻るやり方は初めてみた。我が子との別れを惜しむのを強調する狙いだろうが、ちょっとくどく感じた。
愛之助の源蔵は3回目だそうで、ちょっと手を抜いてません? さらさらと過ぎていく感じがした。戸波は雀右衛門で、姉さん女房ぽく脇をしっかり固める。
菊之助の松王丸も情が薄く感じた。前回はもっと迫ってくるものがあった。

「お祭り」
仁左衛門の鳶頭は若々しく颯爽として格好いい。芸者が孝太郎なので、あまりイチャイチャせず。若い衆や芸者を加えて、ただ座ってニコニコしてても華やか。 鳶の者に彦三郎、亀蔵、隼人、歌之助、手古舞に壱太郎、種之助、米吉、児太郎が花を添える。 児太郎が誰よりもガタイがよいのはいかがなものか。

2025年6月18日水曜日

6月18日 文楽鑑賞教室 Cプロ

「五条橋」
睦の牛若丸、亘の弁慶、薫、織栄。主役2人は一番良かったかも。なんやかやいって睦はキャリアがあるので、貴公子然とした牛若丸をちゃんと語っていたし、亘の弁慶がちょうどいい太さ。
人形は玉彦の弁慶がよき。弁慶らしい堂々とした動き、首をばーったりと回すなど、首の使い方が効いていた。牛若丸は玉誉。滑るように歩くので、浮いているみたい。

解説は簑太郎、清之助(左は失念)

「三十三間堂棟由来」

中は小住・清丈。
4組の中ではピカイチの安定感。

奥は芳穂・錦糸。
抑えているのか声の抑揚にムラがある感じで、聞きづらい。錦糸はいつも通り。

人形は紋臣のお柳が楚々としてよき。玉佳の平太郎は颯爽として朗らか。帰宅するところなど、鼻歌歌ってそう。玉路のみどり丸はちょっと元気ないかも。

2025年6月17日火曜日

6月17日 映画「国宝」

約3時間ながら、目まぐるしい展開で飽きさせないが、原作の長編小説の要素を詰め込んだため少々駆け足な感じも。
吉沢悠は思ったよりは悪くなかったが、セリフより顔で芝居をしている。曽根崎心中の代役で稽古をつけられている時、「お初になり切れないから水臭い芝居になるんや」みたいなことを言われるのだが、何かに憑かれたような表情にハッとしたが、声色は気持ち悪いままだった。

田中泯の女方は柔らかな話しかたが大成駒を思わせ、大物らしい凄みも。踊りは日本舞踊ではなく、舞踏を感じた。

半半コンビの曽根崎心中は化粧が剥がれかけてぐしゃぐしゃ。グロテスクさを見せたかったのか知らんが、舞台に上がる以上、ああいう姿は見せないのではと思った。

2025年6月16日月曜日

6月16日 文楽鑑賞教室 Dプロ

「五条橋」 希の牛若丸に咲寿の弁慶。どちらも難ありで、全体的にがちゃがちゃした感じ。ツレは碩、薫。 三味線は団吾、友之助、清公、清允、藤之亮。太夫と一緒で、まとまりのない感じ。 人形は和馬の牛若丸に勘介の弁慶。若手の懸命さはいいが、やはりまだまだの感じ。和馬の牛若丸は体の芯が傾いでいる感じだし、動きも少し重い。扇を広げきらないなど小物づかいにも課題が残った。勘介も、人形の重さに負けているのか。薙刀の扱いに苦戦している感じで、もっと刃から遠いところを持つ方が格好いいのでは。 解説は勘次郎。左を玉延、足を簑悠。 「三十三間堂棟由来」 中を靖・清志郎。 千歳の悪いところを真似しているのか、顔で語っている感じ。清志郎はキリッとした演奏。 奥を織・藤蔵。 お柳の嘆きが激しすぎというか、植物なのだからもっと静かな感じでいいのではと思う。藤蔵とのコンビは相乗効果で派手。熱心なファンがいるのは結構なことだが、「たっぷり」の大向こうは演目に合っていない。 人形は一輔のお柳がしっとりと美しい。簑紫郎の平太郎は颯爽とした男前。勘昇のみどり丸は可愛らしい。

2025年6月15日日曜日

6月15日 七月大歌舞伎 夜の部

菊五郎・菊之助襲名披露の「連獅子」のみ幕見で。

菊之助の踊りがキビキビとして、おおらかに構える親獅子に懸命に向かっていく風情が好ましい。菊五郎が一人で踊るところをじっと見つめ続けている様は、役を離れて父への尊敬が垣間みえるよう。小柄な体で精一杯の動くので、つい子獅子ばかりに目がいってしまう。転がされるところで斜めになってしまったり、花道の出入りの勢いが物足りなかったり(だって小さいから)もあったが、子獅子の健気さがいや増した。
菊五郎の親獅子は抑えめな感じながら、子獅子が崖を這い上がってくるところの眼差しは慈愛に満ちていた。
宗論は獅童と愛之助。この並びだと愛之助が上手く見える。獅童は少し砕けすぎな感じ。

前日に幕見で見た口上は、松緑、仁左衛門、梅玉、團十郎。口々に菊之助をべた褒め。

6月15日 新国立劇場バレエ団「不思議の国のアリス」

米沢唯のアリスは軽やか。
奥村康佑の白ウサギがウサギらしい仕草、足捌きで、表情豊か。跳ねるようなジャンプがウサギらしい。基本慌てて困っているのだが、アリスを助けたお礼にキスされて照れる表情が何ともキュート。カーテンコールでも頭を掻く仕草で沸かせた。
木村優里のハートの女王が期待以上で、突き抜けた演技がとてもエキセントリックな女王らしい。長い腕を活かした首切りのポーズや少し首を傾けた威圧的な態度、タルトアダージョもやりすぎなくらいコミカルで笑わせた。トランプの男性は速水省吾ら。女王に怯えて先を譲り合う芝居は昨日のほうが役者が上か。
マッドハッターのスティーブ・マッケイは流石の存在感。軽やかなタップでリズムを自在に操る。

2025年6月14日土曜日

6月14日 新国立劇場バレエ団「不思議の国のアリス」

高田茜のアリスは1幕目、表情が硬くやつれた様に見えたが、2幕間からは柔らかな表情。踊りの表現がとても豊かで、1幕は表情を補って溌剌としていた。柔らかいポールドブラ、ジャンプの軽やかさが目を惹く。井澤駿とのパートナーシップは不慣れなためか、回転で回りきれないところも。
ルイスキャロル/白ウサギは中島瑞稀。なのだが、雰囲気が違って分からなかった。ウサギの仕草や表情の付け方に奥村康佑みを感じた。
目当ての1つだった福田圭吾のマッドハッターはタップが重たげ。リズムに合っていないわけではないのだが、軽快さに欠けるというか、自由自在にこなせていないというか。バレエダンサーにタップは難しいのだな。
ハートの女王、柴山沙帆はもっと吹っ切れた演技が欲しい。タルトアダージョのダイヤの5に奥村康佑がご馳走。踊っていない時も細かい芝居で楽しませてくれた。(渡邊峻郁もいたと後で知った)

2025年6月12日木曜日

0612 イキウメ「ずれる」

会社社長の輝(安井順平)と弟の春(大窪人衛)が暮らす家のリビング。療養施設から戻ったばかりの春は精神的に不安定な様子で、ネットで知り合ったというラディカルな環境活動家、佐久間(盛隆二)を家に引き入れ、何やら企む。優秀な家政婦兼秘書の山鳥(浜田信也)は腹に一物ある不穏な感じ。魂魄のずれを直して不調を治すという伝説の整体師(森下創)も怪しい動きを見せる。はじめは捉えどころのない感じだったが、登場人物の事情がわかってくるに連れ、どんどん引き込まれていった。 魂魄を魂=精神と魄=肉体と捉え、整体師が魂を引っ張ると幽体離脱してしまうという設定が面白い。魂は目に見えないものが見え、動物とも通じ合える。幽体離脱した春が関わると、99%遺伝子が同じという犬が狼に変じたり、豚が猪に変わったりし、野生化した動物が野に放たれる。人間に飼われたままの方が長生きできるという輝に対し、わずかでも自由になれる方がいいという佐久間や春。リタイアした両親が暮らすインドネシアの島がパンデミックに見舞われ、助けを求める電話を冷たく突き放す春を、輝は「何不自由なく育ててもらったくせに」と非難するが、「父親は命令ばかり、母親は禁止ばかりで不自由だった」という春。同じ場所にいても見えているものが違い分かり合えない。出来る秘書山鳥は物腰柔らかだが、父親が輝の会社のために自殺に追い込まれた過去があり、復讐のために生きていることが明かされる。浜田の演技が底知れない不気味さ。ソファにもたれた輝を照らすごく絞った照明が効果的。他にも天井を照らす水槽のような光など、灯りの使い方が印象的だった。 牛舎で活動しようとしていたところを警察に見つかり、幽体離脱したままの春を置いて佐久間が逃げてくる。春の魂を肉体に戻そうと、収容された病院を探すが、結局そのままに。ただ一人常識人だった輝が最後、警察の訪問に力無く答えるラストはちょっと未消化な感じもしたが、ざわざわした感じが余韻として残った。

2025年6月7日土曜日

6月7日 文楽鑑賞教室 Bプロ

「五条橋」
咲寿の牛若丸、靖の弁慶、ツレに小住、碩、薫、三味線は清丈、友之助、清公、清允、藤之亮。 出だしの清丈の三味線がよく響き、華やか。咲寿の牛若丸は爽やか。靖の弁慶は太さはあるが、体の芯がグラグラしている感じ。

人形は玉路の弁慶が力一杯で大きさもあり好印象。簑太郎の牛若丸は、薄衣が顔に被さってしまうなど冴えない。

「三十三間堂棟由来」

中を希・清馗。
噛み合ってない感じ。

奥は呂勢・宗助。 音曲を聴いているという華やかさ、安定感。宗助はミスタッチが多かったか。

柳の葉が降ってくるところで、お柳(勘弥)、平太郎(玉助)の人形と、平太郎母の紋秀の頭に葉が刺さるハプニングにちょっと笑ってしまった。平太郎の左がサッと取り除いていたのはよき働き。みどり丸は簑悠。

2025年6月6日金曜日

6月6日 サファリ・P「悪童日記」

2017年の初演と19年の再演を観て以来だが、骨格部分は変わらないものの再演を重ね進化しており、だいぶ印象が異なった。
まず、出演者が2人増えて5人になり、双子を取り巻く登場人物も増えてシーンがより複雑になった。舞台装置の平台は白っぽいグレーに変わっていたが、出演者が様々に動かして道になったり、瓦礫になったり。(終演後のロビーで、平台のキーホルダーのガチャを売っていたくらい、劇団を象徴する存在)今回舞台後ろのスクリーンにセリフの字幕(日英)やアニメーションのような背景が映し出されたのは、理解の助けにもなったが、見るべきところが増えて疲れる感じも。 双子役は達也ともり裕子。性別も違えば身長差も大きく、外見的には全く似ていない2人だが、シンクロした動きで一体感を見せる。森は短髪で小柄な体つきは少年のよう。
双子以外はそれぞれ複数の役を演じるのだが、モノトーンベースのシンプルな衣装のままで、役によって特徴的な仕草を加えて演じ分ける。圧巻だったのは、おばあちゃん役の佐々木ヤス子で、背中を丸めながら上着の背を引っ張って腰の曲がった様子を表し、鼻を擦る特徴的な動きでクセのある人物を体現。話ぶりも偏屈ババアそのものかと思ったら、兎っ子の母親になると疲れた女にガラリと変わり、また、刑事役では高圧的な感じと変幻自在。兎っ子と女中の2役は芦屋康介で、性的に虐待される若い娘を演じる背の高い男性が妙に艶かしい。司祭役の辻本桂は一見まともそうだが、底知れない雰囲気を醸す。 上演時間は1時間15分ほどだが、濃密な時間だった。

2025年6月5日木曜日

6月5日 文楽鑑賞教室 Aプロ

「五条橋」 芳穂の牛若丸、南都の弁慶、亘、聖、織栄に三味線は団吾、寛太郎、錦吾、燕二郎、清方。 下手側の席だったが、芳穂はともかく、南都の太い声が以外と届かない。三味線含め、全体的にまとまりに欠ける感じ。 人形は勘次郎の牛若丸が軽々としてよき。傘をさっと翻すところなど、小物使いも手慣れた感じ。弁慶は玉翔。 「三十三間堂棟由来」 平太郎住家より木遣り音頭の段の中を睦・勝平、奥を藤・燕三。 藤は声のコントロールが安定していて聞きやすい。三味線の木遣り音頭が軽快。 みどり丸は子役ながら木遣り音頭での舞?など、しどころが多い役。玉延の動きが丁寧で好感が持てる。簑二郎のお柳、玉志の平太郎、簑一郎の平太郎母。進ノ蔵人は休演の文昇に変わり玉勢。

2025年5月31日土曜日

0531 いばらきバレエへの誘い

ドン・キホーテ。ダイジェスト版ながら、踊りの見どころは抑えていて、見応えがあった。

キトリとドルシネア姫は奥村唯。危なげない踊りで、バジル(松田大輝)の頼りなさをうまくカバーしていた。表情の、溌剌としたキトリとしっとりしたドルシネアをしっかり演じ分けていた。3幕のフェッテはダブルを入れつつ勢いに乗ってよかったが、最後にちょっとふらついたのが惜しい。
松田のバジルは線が細く、ちょっと頼りなげ。一幕のリフトはもっと長くと思ったし、フィッシュダイブは手順がこなれていない感じがした。

目を引いたのは、男性群舞の巽誠太郎。ソロが結構あって、回転もジャンプも大胆で魅せた。キトリの友人、松山みさき、我如古あゆり、メルセデスの山崎優子も良かった。

2025年5月24日土曜日

5月24日 糺能

10回目記念で、当地にちなんだ新作を初演。

神社に和歌を奉納する神事から始まり、作品世界は未来へ。
森に住むアオミズク(アイ、茂山逸平)が物語の経緯を紹介。遠国に住む男(ワキ、有松遼一)が和歌の由来を尋ねて下鴨神社を訪れ、女(シテ、林喜右衛門)と出会う。実は女は糺の森の女神で、後シテは神の姿を表しツレを従えて舞う。白い装束は柔らかく、神の恩恵を周囲に振り撒くような感じ。ツレは小梅と彩八子で、赤頭に龍や獅子のような冠を着用。
あいにくの雨だが、空が暮れていく様子には風情が感じられた。終盤は雨音が激しくなり、謡がよく聞こえないところもあったので、やはり晴天がいい。

5月24日 第五十回記念 テアトル・ノウ

舞囃子「高砂」 味方梓はキリッとした、楷書の舞。目の辺りが父親によく似ている。 舞手にあわせて、大鼓の河村凛太郎、小鼓の吉阪倫平と若手が揃い、フレッシュな感じ。 一調一管「鷺」 片山九郎右衛門の謡、前川光長の太鼓、杉市和の笛。 杉は膝が悪いのか、胡座のような座り方。長袴なのでやりにくそう。 狂言「末広かり」 茂山千三郎の果報者、忠三郎の太郎冠者、山口耕道のすっぱ。 ちょっと硬い感じがして、いまいち面白くなかった。 能「三輪」 味方玄のシテ、宝生欣哉のワキ、アイに千三郎。 白式神神楽の小書というので観に行ったのだが、普通の三輪に精通している訳ではないので、違いがどれだけ分かったか…。後シテが女神とのことで、全身白の装束で舞う様子は清廉で少し柔らかい感じがした。

2025年5月23日金曜日

5月23日 團菊祭五月大歌舞伎 夜の部

「五斗三番叟」

松緑の五斗兵衛が酔っ払って三番叟を踊るというが、あまり三番叟らしくない。雀踊りや武田奴が大勢出てきたり、最後に角樽を馬の頭に見立てて花道を引き上げたりするのが賑々しい?酔っ払っているとはいえ、松緑は相変わらず台詞回しが独特。
黒紋付の若武者、亀井六郎が出てきた時は誰かと思ったら左近。所作がきっぱりしていて、セリフも明瞭。錦戸太郎は亀蔵と分かったが、赤っ面の伊達次郎は誰か分からず、筋書きを見て種之助と知った。萬寿の義経、権十郎の泉三郎。
これといった内容がなく退屈。1時間40分もあってびっくり。

口上は七代目菊五郎が進行。松緑、團十郎、梅玉、玉三郎、楽善の順に述べるが、カメラが入っていたからかおとなしめ。一番長く喋ったのは團十郎で、新菊五郎とは同級生で、運動会では互いの父が巡業中のとき代わりに父と走ったことや、息子たちも同級生なので次世代の團菊までご贔屓にとか。玉三郎がくどいくらい「僭越ながら?私からも」と繰り返していた。

「弁天娘女男白波」
浜松屋見世先から滑川土橋までで、稲瀬川勢揃いを新菊五郎ら子ども世代が演じる趣向。

新菊五郎の弁天小僧はもう慣れたもので、危ういところがなく、全てが板についている感じ。セリフの間合いなど七代目によく似てきた。南郷は初役の松也。意外と言っては失礼ながら、弁天とのバランスがいい。松緑に習ったそうだが、松緑よりいいかも。團十郎の日本駄右衛門はいい意味でなく十二代目そっくり。

稲瀬川勢揃いは、新菊之助の弁天、亀三郎の忠信、梅枝の赤星、眞秀の南郷、新之助の日本駄右衛門。すでにそれぞれの父の色が透けて見えるのが面白い。菊之助は1人だけ大人が混ざってる⁉︎というくらいしっかりしているし、一際小柄な梅枝も柔らかみのある役のらしさをしっかり体現。亀三郎の口跡のよさ。子どもには傘を掲げているのは大変らしく、腕が震えたり、斜めになったりしていたのもご愛嬌。 二幕は極楽寺屋根上の大立ち回りを八代目がたっぷりと。最期の切腹まで、息をつかせぬ展開で手に汗握る。 龕灯返しで山門の場に移り、駄右衛門の捕物を見せた後、舞台がせり上がって滑川土橋の上には七台目菊五郎の青砥左右衛門と早替わりで伊皿子七郎に扮する八代目が登場。二人の菊五郎が並ぶ姿に世代交代の意義が重なり胸熱。山門の駄右衛門と三角形の形で決まるのも華々しくてよかった。
客席の上手後ろに補助椅子を置いて、藤純子、寺島しのぶが観てた。

2025年5月20日火曜日

5月20日 薫風歌舞伎特別公演 第三部

「鯉つかみ」 愛之助の11役早替わりに宙乗り、本水の立ち回りと盛りだくさん。7回目とあって早替わりは鮮やかだったが、11役もこなすと早替わりのための早替わりみたいな感じで、内容が薄いという印象は否めない。 三場の終わりのダンマリに登場した、中車演じる篠村次郎。最後に龍神丸を手に入れるのだが、悪役顔なのでてっきり敵方と思ってしまった。桶を使った立ち回りでミャクミャクを模る場面も。 大詰の本水は鯉の口から水鉄砲のように水を飛ばし、愛之助も盛大に水飛沫を飛ばす。5列目までレインコートが配られ、休憩中に劇場の係が1人1人の着用を確認する徹底ぶり。

5月20日 ロイヤルシネマ「白鳥の湖」

ヤスミン・ナグディとマシュー・ポールのペア。
リアム・スカーレットの振付はゆったりとしたボールドブラを多用し、オケもかなりスローテンポ。ベンノと王子の姉妹のパドトロワなど、主役以外の見せ場も多い。ベンノ役のジョンヒュク・ジュンは、長い手足、高い跳躍で見せる。
ヤスミンの踊りはシャープな印象。オデットよりオディールが生き生きとしていい。3幕のフェッテはトリプルから入り、ダブル、トリプルを多用。マシューは憂いをたたえた悩める王子。3幕の回転がスピーディで目を惹かれた。 ラストは白鳥たちの攻撃でロットバルトが倒れ、湖に身を投げたオデットの亡骸?を王子が抱き上げて幕。王子は後悔を抱えて生きていくということなのだろうか。

2025年5月18日日曜日

5月18日 南座歌舞伎鑑賞教室

歌舞伎のお噺は桂團治郎がナビゲーター役。50分の予定を1時間近く解説に使ったのだが、内容がチグハグな感じで果たして初心者に伝わったのか。吉太朗と千寿が女方の解説をし、観客を舞台に上げて実演も。 落語の「七段目」の抜粋を歌舞伎役者(千蔵、當史弥)を交えて演じるのは個人的には面白かった。千蔵が長いセリフを言うの、初めて聞いたかも。 舞踊「相生獅子」は千寿と吉太朗が姉妹のようで、華やか。後半の獅子の毛振りは、初めてという千寿は毛がもつれるところもあった。

2025年5月16日金曜日

5月16日 薫風歌舞伎 第二部

「千夜一夜譚 荒神之巻」 虎之介演じるアラジンがちっとも魅力的ではないので、終始モヤモヤ。遊郭で放蕩していながら、母親に楽をさせたいとか矛盾しているし、そのために王になるとか意味不明。表情がニヤニヤしているのが不遜な感じで、可愛げがないのだ。ランプを手に入れられる「目が澄んでまっすぐな人」に当てはまると思えない。茉莉花姫が惚れる理由も分からん。謀反疑いをかけられたアラジンを諌めるために母親(扇雀)が自害するのも意味不明だし、それで悔い改めるアラジンも理解不能ーーと書いていてキリがないな。

観てよかったのは澤瀉屋一門の芸達者ぶり。猿弥のランプの精は緩い感じでほっこり。「ぱっぱらぴーのぱ」みたいな呪文も脱力する。笑也の王妃の気高い美しさ。笑三郎の指輪の精のキツい感じもいいスパイスだった。老けたランプの精で鴈治郎が「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」と笑いを誘う。ラストの紗武利矢王は威厳があってよき。
オープニングとエンディングの音楽が熊川哲也版クレオパトラと思って調べたら元のタイトルが「アラジン」だと知る。

2025年5月11日日曜日

5月11日 文楽公演 第3部

「平家女護島」

勘十郎初役の俊寛というのに、客入りはまばら。入門ということで冊子を配り、幕前に解説の録音が流れるが、あまり効果なさそう…。

床は若・清介。
いつも通りの超低空飛行。清介が荘厳な感じで、悟りを開いた琵琶法師みたい。

人形は一輔の千鳥がかわいい。とにかくかわいい。俊寛が岩場に登って船を見送るのは派手さはなく、深い諦念を感じさせる最後だった。

5月11日 團菊祭五月大歌舞伎 昼の部

「寿式三番叟」

又五郎の翁、雀右衛門の千歳、米吉の附千歳、松也の三番叟で幕開き。面箱があるのに素顔のままで舞う翁。三番叟に移ると、歌昇、萬太郎、右近、種之助がせりあがり五人に。黒、紫、緑、青、黄色と色鮮やかで楽しいが、少々長い。ドヤ顔の歌昇、ちょっとタイミングをずらす右近が目につく。

「勧進帳」

新・菊五郎の冨樫が清廉にして線が太く立派。梅玉の義経、男女蔵、松也、鷹之資、右近の四天王と襲名披露らしい配役だが、団十郎の弁慶が…。取り立てて悪いところがあるわけではないのだが、セリフが上滑りする感じで言葉の意味が響かない。オレ様な感じで義経への敬意が感じられないし、先代に似て見えたのはむしろ悪い意味で。表情が子供っぽいというか、新之助に似て見えた。山伏問答も、互いの緊張感が拮抗していないと迫力に欠けるのだなあ。

「三人吉三」

時蔵のお嬢、彦三郎のお坊、錦之助の和尚はいい配役。夜鷹の莟玉は町娘のよう。

「京鹿子娘道成寺」

新・菊之助、菊五郎に玉三郎が加わり三人花子に。
はじめ、花道のスッポンから菊之助と菊五郎が登場。息のあった踊り。所化とのやりとりは菊五郎1人で、烏帽子をもらって引っ込んだのち、紅白幕が落ちて3人が登場。3人の花子は時に影のように、時に鏡に映った像のように、姉妹のように、親子のように。踊り上手の2人に挟まれた菊之助が小さいながら立派な舞い手。誰よりも背中を反らせ、きっぱりと踊るのが好ましい。菊五郎は円熟味を増し、堂々と。玉三郎は﨟たけた風情があり、さすがの貫禄。鐘をきっと睨むところは、玉三郎は怒り、菊五郎は悲しみがあるように見えた。ただ、動きがミニマムになっていたのは体調が悪かったからか。背を反らすところはほぼ直立で、鞠つきは袖に捌けて菊之助・菊五郎のみに。座って鞨鼓を打つところは膝を曲げた状態をキープできずにドンと音が鳴ったように聞こえたのも心配。

2025年5月10日土曜日

5月10日 文楽公演 第2部

義経千本桜の伏見稲荷から道行まで。ほぼ4月公演の配役だが、一部違いも。

伏見稲荷の段は睦・勝平。 4月公演とは別配役。こちらの方が落ち着きがあったか。

渡海屋から大物浦は小住・清志郎→芳穂・錦糸→錣・宗介のリレー。
4月と同じ配役だけあって、語りが練られてきた感じ。

知盛は万博で休演の玉男に代わり勘十郎。知盛がポーズを決めるたびに拍手があるのは調子が狂う。最期は後ろ向きに飛び込む形。
和生の典侍局に品格がある。

道行は呂勢、靖、亘、碩、文字栄に清治、清馗、寛太郎、燕二郎、藤乃亮。
弾きだしから華やか。4月とは何が違うのだろう。
人形は簑二郎の静に玉助の忠信。見台抜けはなく、桜の書き割りの後ろから。狐の人形が上手を向く時、葛の葉と同様に右前脚が引っかかる。

5月10日 文楽公演 第1部

「蘆屋道満大内鑑」

賀茂館からの半通しなので、葛の葉子別れに至る物語がよく分かる。

賀茂館の段の口は南都・団吾。 がちゃがちゃした印象。 奥は万博出演の藤・燕三に代わり、靖・燕二郎。
硬さは致し方なく、1日限りの代役としては大健闘では。途中、燕二郎が演奏をブツッと切ったので糸ご切れたのかと思ったら、繰っているだけだった。短い時間なので焦ったのか。靖は喉を絞ったような発声が苦しい。
保名物狂いの口は碩・清公。 のびやかな声が聞きやすい。 奥はは織、織栄に藤蔵、清冘。
織はいつも通り。太夫が2人いるのに語り分けするでなく、保名も葛の葉姫も織が語り、時折織栄。いっそ1人で語っては?と思う。 葛の葉子別れの中は三輪・団七。 切は千歳・富介。さすが切語りの安定感。 信太森二人奴は希、津国、咲寿、聖、薫に清友、清丈、友之助、錦吾、清方。
3枚目の友之助から弾きだしたのでびっくり。野干平を希、与勘平を津国だが、そっくりという設定なのに全然違う、、、。

保名の清十郎はほじめ姿勢が悪くてどうしたものかと思ったが、子別れのあたりからはよかった。玉延の童子がいたいけで可愛らしく、目を引かれた。葛の葉は勘彌。甲斐甲斐しい女房、母親の風情がいい。役者が二役を演じる歌舞伎と違って、文楽は狐と本物の葛の葉が別なのに、機織りを覗くときに障子を閉めたままなのはいかに。動物らしさはちゃっと薄いか。狐の人形で下手向きになる時に左の前足が引っかかってしまうのが気になった。

2025年5月4日日曜日

5月4日 宝塚星組「阿修羅城の瞳」

劇団⭐︎新感線の代表作を小柳奈穂子が宝塚化。3時間あまりの原作を1時間35分にうまくまとめて、テンポよく楽しめた。(というか新感線はちょっと冗長) 病葉出門の礼真琴はトップスターらしく、真ん中に立つ存在感が十分。何より、歌に不安がないのがいい。初め和装は今ひとつかと思ったが、着流しの裾を捲って立ち去る姿や、派手な立ち回りで見せた。(ただ、立ち回りは周りが今ひとつ)闇のつばきは暁千星。綺麗だけれど、宝塚の男役が女を演じる時の常でどこかオカマっぽい。役の重さから娘役よりも男役にという配役なのだろうが、礼よりも背が高いので並んだ時のバランスが今ひとつ。ただ、終盤は気にならなくなって、最後に出門と刺し違える(?)ところは引き込まれた。 出門に執着する敵役、安倍邪空は極美慎。鬼御門を去った出門を恨むのは愛情の裏返しという感じだが、BL味がもっと濃くてもいいかも。 ショーの「エスペラント!」は生田大和の演出。 色とりどりの衣装が華やかで、王道の宝塚レビュー。ここでも歌うまのトップの安定感が抜きん出ている。 娘役トップは置かないつもりなのか、デュエットダンスがなかったのは物足りないが、燕尾服でのソロやタップダンス、男役の群舞など、男役トップの集大成を見せる。 ロケットは新人のお披露目で、タップダンスからの流れがよく揃っていた。

2025年5月3日土曜日

5月3日 第四回 みのり会

和田合戦女舞鶴の市若初陣の段を芳穂と燕二郎が熱演。約1時間が短く感じた。 「ほんのほんの、ほんぼんの子じゃわいなう」の嘆きはいい声で聞かせ、悲壮感も十分、だが、作品としては、人物関係がややこしすぎるし、怒涛のような山場の連続が押し付けがましいというか、こってりしすぎていて聞いて疲れる。 燕二郎は手数の多さに手一杯の様子で、間違えたのが表情に出てしまったところも。

2025年4月29日火曜日

4月29日 文楽公演 第3部

道行初音旅は織、靖、碩、聖、織栄に藤蔵、清志郎、寛太郎、清公、錦吾。
織はいつもよりやや控えめな感じもするが、上を向いて歌い上げる。靖は喉が開いてない感じで、声が前に出ていない。三味線もどこか重く、ウキウキした華やかさはないか。

一方、人形は一輔の静に品があって良き。扇の扱いも優雅で、扇返しや扇投げも綺麗に決まった。勘十郎の狐忠信は念願?の見台抜け(織栄の見台が真ん中から真っ二つ)で登場。(ぼーっとして見逃したので、翌日幕見で確認)

川連法眼館の前は睦・勝平。
出だしはまずまずと思ったが、義経の高音が掠れて聞きづらい。
切は千歳・富助に燕二郎のツレ。狐言葉が控えめで、時々「コンッ」と言うのと、出だしを伸ばすくらい?

狐忠信は登場こそ下手からだが、障子を破ったり、壁から出てきたりも。最後は宙乗りで華々しく幕。

2025年4月28日月曜日

4月28日 文楽公演 第1部

「義経千本桜」

大序は御簾内で織栄→碩→薫→聖、清方→清允→藤之亮→燕二郎のリレー。 織栄が思っていたより調子はずれ。碩の安定感。聖はのびのび。 堀川御所の奥は藤・燕三。 のびのび語る藤に燕三の三味線の的確さ。 アトは亘・友之助。 亘の語りは力んだ感じがなくなってだいぶいい。友之助の表情に気合いがみなぎる。 伏見稲荷の段は希・団七。 力みすぎなのか、声の調子が合っていない感じ。 渡海屋・大物浦の口は小住・清馗。 のびのびとしたいい声で語ってよき。三味線がもっと良ければ。 中は芳穂・錦糸。 ちゃんとしてる。 切は錣・宗助。 時代ものの切場はちょっと辛い。 人形は一輔の静に品があってよき。勘十郎の狐忠信は当たり役。弁慶の玉佳はどこか愛嬌がある。 玉男の知盛。最後は沖の岩場まで船で乗り付け、頂上から飛び込まず後方へ沈んでいく演出。典侍局 の和生は抑制された演技。

2025年4月27日日曜日

4月27日 深川秀夫バレエの世界

冒頭、スクリーンに往年の深川が踊る映像が流れ、故人の功績を改めて認識。バリシニコフと競ったというコンクールの模様など、高いジャンプや回転のキレの良さに驚く。 「ディ・フィーダー」 ジュニア向けに振り付けた白鳥に憧れるカルガモの踊りとのこと。黒地にカラフルな羽飾りをつけた総勢25人の女子ダンサーが美しく青きドナウの調べに乗って踊る。「白鳥の湖」を思わせる振り付けがあるなど、楽しいのだが、途中、「ギャッギャッ」という鳴き声をあげる場面は急な大音量にギョッとした。もうちょっと控えめでもいいのでは。 「ラフマニノフ・コンチェルト」 女性ダンサーばかり18人が様々にフォーメーションを変えつつ踊る。 「光の中で」 佐久間奈緒。スポットライトの中、舞台の準備をしているかのような女性ダンサーのソロ。 「レ・ゼトワールド」 女性8人の華麗な踊り。 「新たなる道へ」 田舎風の衣装の女性たちが、新天地へ向かうという説明だが、最後、舞台下手へ行きかけて引き返すのは元の世界に戻るように見えた。 「顔のない女」 青山季可と4人の女性ダンサー。ストーリー性の濃い作品で、仮面をつけた女はアンティークのフランス人形のような、美しくも少し衰えた感じが切ない。 「ソワレ・ド・バレエ」 中村祥子、米沢唯、池田理沙子、厚地康雄、中家正博、奥村康祐という錚々たるダンサーに、関西の上山榛名、春木友里沙、水城卓哉、今井大輔の5組のパドドゥに女性ダンサーの群舞。
中村祥子の風格ある優雅さ。真ん中にいる存在感が違う。米沢唯も気品ある踊りで存在感を発揮。池田理沙子はフレッシュな踊りでちょっと若く見える。そして奥村康祐のパートナーシップよ。これという見せ場がないのは残念ながら、アイコンタクトや微笑みの優しさにうっとり。

2025年4月26日土曜日

4月26日 文楽公演 第2部

「義経千本桜」

椎木の段の前は咲寿・団吾。
織の預かりとなり、師匠に借りたという肩衣で登場。落ち着いた語りぶりだったが、まだまだ若手から抜けられない感じも。団吾はいつも通り。

後は三輪・清友。
どうということもなく。小仙は権太が悪いことをしていると分かっていながらなぜ見逃すのかと思うなど。歌舞伎と違って善太の一文笛を吹く場面がないのは、この後に生きないと思った。

小金吾討ち死には、津国、南都、薫、文字栄に清丈。 床が揃ってないというか、それぞれ役に合っていない感じでガチャガチャしている。 すしやの前は呂勢・清治。 安定感のある語りでホッとする。お里や権太、母、維盛、弥左衛門らの人物造形が明確で、物語がくっきり。原作通り、弥左衛門が元盗賊の設定で、「親の因果が子に報い」の因果関係がはっきりする。 三味線はかつてのような精彩はもはや望めないのか。 切は若・清介。 うーん。安定の慎重運転で、速度遅すぎませんか? 急に別の物語世界に移行したみたい。 取り巻きが「待ってました」の声かけもいかがなものか。 人形は玉勢の小金吾が大立ち回りを力強く。権太は玉助で、人形より人形遣いが前へ出て感じる。玉也の弥左衛門に深みがある。

2025年4月17日木曜日

4月17日 マスタークラス

望海風斗演じるマリア・カラス。 引退後のカラスを演じるには少し若すぎる感もあるが、生徒に対峙する様子には威厳があり、皮肉っぽい物言いなど大プリマの貫禄は十分。歌唱シーンはないとのことだが、発声の見本を示したり、歌曲の一部を口ずさんだりする時は、歌のうまさが生きた。眼目は夫やオナシスとの会話を一人芝居で演じるところ。特に、横暴なオナシスのセリフは元男役トップの本領を発揮した。一人芝居から往年のマリア・カラスの音源に移行するところがスムーズで、ドラマの世界観が広がる。一方、女のセリフは甲高い声で甘えたような口調になるのは興醒め。ちょっとおどけたようなところは、黒柳徹子を想起させるところも。 マリア・カラスとオナシスの関係はなんとなく知っていたけれど、歌手活動をやめさせたり、子ども以外は愛さないと言ったり、こんな横暴な男のどこに惹かれたのか、さっぱりわからん。

2025年4月13日日曜日

5月13日 四月大歌舞伎

「毛谷村」のみを幕見で。新国立劇場から駆けつけたので、杉坂墓所には間に合わず、舞台転換後の毛谷村から。
仁左衛門の六助のチャーミングさ、凛々しさに感服。子ども相手の優しいおじさんから、騙されたと知った怒りへの変化率が凄まじい。弥三松をあやすところは少し短めで、「お獅子パクパク」がなかったのが残念。
孝太郎お園も女武者の凛々しさから、許嫁と知ってからの可愛さへのギャップが大きいが、ちょっとシナシナしすぎかもと思った。
歌六の弾正は憎々しい敵役で、仁左衛門に対峙するのに十分な貫禄。弥三松は秀之助。回を重ねているので落ち着いている。
斧右衛門が誰かと思ったら歌昇でびっくりした。



5月13日 新国立劇場バレエ団「ジゼル」

池田理沙子・奥村康祐ペアはこの1回のみ。

1幕のジゼルは純朴な村娘。恥じらいながらもアルブレヒトの熱演なアプローチにぽーっとなった初心な少女そのもの。狂乱のシーンはちょっと物足りないか。
奥村のアルブレヒトは少年のようで、無邪気に可愛い女の子に好き好きと言っていたらとんでもないことになってしまい、慌てている風。バチルドの手にキスしながらも、ジゼルを気にしている様子があり、このアルブレヒトなら、心から後悔していそうだし、許せるかもと思わせる。
木下嘉人のヒラリオンは説得力あり。心からジゼルを愛しているのに、むくつけきルックス故にジゼルには伝わらず、やることなすこと裏目に出てしまう残念なひと。 ペザントは東真帆と石山蓮。2人ともロールデビューだそうで、フレッシュな踊り。

2幕の池田ジゼルは人ならぬもの感が薄く、1幕に比べ凡庸な印象。右足を上げるバランスでもたついたり、リフトでぐらつくなど、ミスも気になった。奥村のアルブレヒトは後悔の念がひしひしと伝わる。感情を優先するあまりバランスを崩すようなところもあり、テクニックより役を生きている感じがした。
ミルタは山本涼杏。初役のせいか、まだこなれてない感じで、もっと音をはみ出すくらいの大きさが欲しいと思った。回を重ねて威厳が増すのを期待したい。モイナとズルマは東真帆と飯野萌子。東はペザントと2役。下手前方の席だったので、ミルタを先頭に襲いかかるウィリー軍団が迫って来るようで怖かった。

2025年4月12日土曜日

4月12日 新国立劇場バレエ団「ジゼル」

米沢唯が全幕復帰。1幕は華奢で儚い少女。ほんとに体が弱そうで、心臓発作で苦しむところなどリアルな演技だった。2幕は軽さというより浮遊感があり、人ならぬものの感じがすごい。墓から出てすぐの回転など、何かに操られているよう。
井澤駿のアルブレヒトは軽薄な感じ。バチルドの前では知らんふり。ジゼルが死んだ時も、悲しみよりもヒラリオンへの怒りが強い。
ヒラリオンは中家正博。悪い人ではないのに、浮かばれない悲哀がある。2幕の冒頭、舞台中央で佇む姿にも誠意が感じられる。 ペザントは飯野萌子と山田悠貴。山田の跳躍が高くキレがある。村人たちを率いて踊るのが勢いがあってワクワクする。
ミルタの根岸祐衣は登場時のパドブレの細かさと速さが異世界の雰囲気を醸し出す。ちょっと厳ついくらい威厳があり、不思議な力を秘めていそうで恐ろしい。
モイナの東真帆は滑らかなライン。ズルマの直塚美穂はシャープな踊りゆえか生命力が感じられ、生身の強い女みたい。ヒラリオンを引っ立てて崖から突き落とすところなど、喧嘩強そう。

カーテンコールは満場の拍手。米沢は涙ぐんでいるように見えた。


2025年4月6日日曜日

4月6日 四国こんぴら歌舞伎大芝居 第一部

「毛谷村」 萬太郎の六助はキビキビして気持ちいいが、ちょっと奴さんぽいかも。時蔵のお園は1月の国立劇場でも好演だったが、女武道の凛々しさと可愛らしさの入り混じる様子が良い。微塵弾正は錦之助。出番が短く、もっと憎々しさが欲しかった。 吉弥が一味斎後室お幸で、キリリとして武家の品格を感じる。弥三松は夏幹。可愛らしく、セリフもしっかり言えていたが、何もないところは集中力が途切れてしまうよう。試合の検分役の侍に千次郎、杣に當吉郎など、上方の役者が出てい流のが嬉しい。 「魚屋宗五郎」 獅童の宗五郎はのびのびやっていて、楽しそう。剃り跡?の水色が鮮やかすぎる感じでちょっと違和感。 コントのようになりそうなところ、時蔵のおはまがしっかり歌舞伎にしている感じ。宗五郎と取っ組み合うところも、きちんと形が決まっているのがさすがだ。おなぎの吉太朗がしっかり努める。宗五郎に絡まれて戸惑うところとか。 精四郎の三吉、父太兵衛の権十郎。丁稚与吉を陽喜。お兄ちゃんだけあってセリフもしっかり。 にの3という良席で、芝居小屋を堪能したが、後ろの席の人が足を伸ばして座っていて正面を向いて正座ができないのは辛かった。

2025年4月5日土曜日

4月5日 林喜右衛門襲名披露能

たくさんの花束、盛装した観客、そして何より出演者が大勢で、華々しい襲名披露。

舞囃子「高砂」は観世三郎太。手足が長いせいか、静止している間が長く感じる。 蓮吟「日蝕詣」

能「卒都婆小町」
宗一郎改め喜右衛門のシテ。襲名にあたって観世宗家が上演を許したそうだが、40代で老女ものはやはり映らないというか。一度之次第の小書きで、小町が橋がかりを歩いてくるところから始まるのだが、舞台にたどり着くまでの長いこと。その後、ワキの福王茂十郎、ワキツレ知登が登場して卒都婆問答になる。問答はどうということもなかったが、深草少将の霊が乗り移ってからは表情がグッと増した感じがした。ひとしきり、恨みつらみを述べたのち、小町が出家すると言って終わるのは唐突な感じだけれど、不思議な爽快感がある。
裏千家業躰・林松響階会長の金澤宗達氏の挨拶を挟んで、
狂言「末広かり」は千五郎の主人、千之丞の太郎冠者、忠三郎のすっぱ。千五郎の大物感、千之丞の軽妙さ、忠三郎は策士な感じ? 主人が怒って、飛び上がって勢いよく座り込むところに迫力がある。忠三郎の装束がタイガースカラーに見えた。
仕舞「老松」山本章弘、「通盛」上野朝義、「西行桜」大槻文蔵、「二人静 キリ」吉井基晴・上田貴弘、「山姥」大西礼久。 一調「張良」有松遼一・前川光範。「笠之段」藤井完治・大倉源次郎。 小舞「子の日」茂山七五三。 仕舞「嵐山」片山信吾、「屋島」浦田保浩、「誓願寺 キリ」井上裕久、「網之段」杉浦豊彦、「野守」大江伸行。
仕舞、一調がこんなに並ぶと壮観。

能「石橋」は観世清和のシテ、喜右衛門、彩八子、小梅のツレ。子方は赤い鬘に鼻から下を覆うマスク。親獅子の白頭に対し、赤頭の子獅子3頭のところ、所作台から子獅子を蹴落とすくだりで喜右衛門も一緒に蹴落としているように見えるなど、親2頭、子2頭に感じるところも。。喜右衛門は卒都婆小町と打って変わってキビキビとした所作に勢いがあり、喰らいつく娘たちの懸命さも相まって、とても見応えあり。

2025年3月22日土曜日

3月22日 三月大歌舞伎 夜の部 Bプロ

五・六段目は勘九郎の勘平。セリフ回しや表情など、勘三郎を彷彿とさせる。千崎と不破が訪ねてきたところでは、自分から刀を抜いて身だしなみを整える。七之助のおかるは玉三郎を思わせるところが。梅花のおかやは情のあるおっかさんで、いろいろ分かっている感じがした。
定九郎は隼人。影のある悪人らしさ、声の凄みがあり、役らしい。やることが多くてちょっと段取りめいたところもあったが。
判人源六は松之助で、上方言葉のもっちゃりした感じがよき。一文字屋お才が魁春で、江戸弁だったように思うが、不思議と違和感はなく。

七段目は仁左衛門の由良之助が絶品。先日初役の愛之助を見た時は悪くないと思ったが、やはり役者が違う。酔態の柔らかみ、家老としての器の大きさ。帰る力弥を呼び止めて「祇園町を出てから急げ」というところの間の絶妙さ。おかるとのやりとりの洒脱さ、軽妙さなどなど。これぞ大歌舞伎の由良之助。
七之助のおかるはすでに遊女のあしらいを身につけている感じ。松也の平右衛門とはちょっと恋人っぽい。与一兵衛と勘平が死んだと聞かされたくだりで本当に泣いたようで、終盤は目元の化粧が滲んでいた。松也の平右衛門は足軽にしては軽妙さがないかも。スッキリと格好いい。

十一段目は小林平八郎の萬太郎、竹森喜多八の橋之助が役替わり。萬太郎は松緑に比べると凄みが足りないのは経験値の差。橋之助は若手浪士で最初にセリフを言う場面が多いせいか、声が印象に残った。菊五郎の服部が出てくると一際大きな拍手。仁左衛門の由良之助とのやりとりは、大物同士の大らかさで、これぞ大歌舞伎。

3月22日 三月大歌舞伎 昼の部 Bプロ

大序から三段目。芝翫の師直は重みがあり、嫌味ったらしく憎たらしく、これぞという師直。顔世御前に言い寄るところなど、時蔵のクールビューティぶりと好対照。菊之助の判官は貴公子然としていて、直にいびられても静かな怒りというか、堪忍袋に溜まっていく感じがなくて、刃傷に至るほどのエネルギーが感じられない。抱き止められた幕切れも、無念さが薄い。
若狭之助の右近もなんか違う。型通りに踊っているみたいで、マンガっぽいというか師直への怒りがあまり感じられない。長袴の裾捌きは鮮やかだったが。
伴内は橘太郎。軽妙洒脱でスッキリした三枚目。本蔵からの賄賂を受け取るところのやりとりは、先日の松之助とは違うバージョン。手下らに本蔵を襲わせる合図が咳払いだったり、「何もかも打ち捨てて襲え」と言ったら刀からなにから放り出したり。

四段目は松緑の由良之助の駆けつけるところが、本当に走ってきたみたいだったが、セリフが今ひとつなので緊張感が途切れる。菊之助の判官は意外にも勘平腹切りのほうが良かった。 石堂は弥十郎。扇の要を外した。

道行は愛之助の勘平、萬寿のおかる。愛之助勘平は優男。金と力はなかりけりといった感じ。萬寿は姉さん女房。伴内は亀蔵。滑稽みが薄いか。

2025年3月20日木曜日

3月20日 三月大歌舞伎 Aプロ 夜の部

五段目、六段目は菊之助の勘平。運やら思慮深さやら、色々足りない色男という感じが勘平らしい。不破らが訪ねてきたところで、刀を腰に差す表紙に鍔から出たのを見て身だしなみを整える。腹を切ってからは、なぜか爽やかというか清々しい感じがした。
時蔵のお軽は六段目では腰元の行儀良さ、七段目では女房らしさがある。いざ出発しようとして勘平に呼び止められ抱き合うところは気持ちが高まる。吉弥のおかやは娘可愛い情のある母親。あまり物事を分かっていなくてうろうろする感じ。
一文字屋お才は萬寿、判人は橘太郎。江戸弁のチャキチャキした口調がテンポいい。
斧定九郎は右近。粋で格好良すぎ。浪人で山賊まがいのことをしているやさぐれ感が必要では。「五十両」のセリフも凄みがない。

七段目は愛之助初役の由良之助。キリッとしたところはできる家老らしくてよいが、酔態の柔らかみは今ひとつ。酔っ払っている感じがなくて、作り阿呆のようにふざけているみたい。
左近の力弥は花見を出てくる時全く上体がブレないのがさすが。セリフはもう一つだが、所作の美しさは抜きん出ている。   

おかるは遊女の格好だけれど、女房の心を感じる。かんざしを落とすところは誤って2階の畳に落ちてしまったのを、すかさず舞台袖から投げ込まれた。巳之助の平右衛門とのジャラジャラは楽しそうだが、仲のいい兄妹。

巳之助の平右衛門がとても良き。格好いいし、セリフも良い。十一段目の最後、花道を引っ込むところは三津五郎に似て見えた。
 
十一段目はやはり蛇足だと思うが、今回は最後に菊五郎が出てきて豪華な感じ。馬に乗って鳥屋から出てきたのでびっくりした。袴と足が不自然な感じだったので、本当には跨っていないのかも。
松緑が小林平八郎で竹森喜多八の坂東亀蔵と大立ち回り。



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3月20日 三月大歌舞伎 Aプロ 昼の部

開演10分前から口上人形による配役紹介。菊五郎から始まり、夜の部の役も全て述べる。全部は聞き取れなかったけど、千寿や愛三郎、芝のぶの名前もあったような。仁左衛門の名前で一際大きく長い拍手。

大序は俯いて静止している役者たちが、竹本が名前を挙げるに従って息を吹き込まれたように動き出す。松緑の師直はすでに憎らしげ。ただ、セリフを喋ると軽くなるようで、三段目の鮒侍のくだりなど意地悪なのだが町人ぽいというか、品格が薄いと感じた。 
三段目の伴内は松之助。もっちゃりとした上方の伴内で、進物の場で右足を出したら本蔵を討てと家来らに。

松也の若狭之助は血気あふれる青年らしい。勘九郎の判官はいびり倒されてだんだん怒りを蓄積していく様が鮮やかで、刃傷に及んだところの緊張感もよき。ただ、本蔵らに抱き止められた無念さを示す仕草が、幕が閉まる直前、キュンポーズみたいになっていた。

四段目は通さん場ではないものの、緊張感ある静けさみなぎる。勘九郎の判官は気品を保って最期を迎える。莟玉の力弥は初々しい少年らしさ。仁左衛門の由良助が出るとさすがの貫禄で舞台が一気に引き締まる。梅玉の石堂は扇の要を外さずに判官の遺体の上に置いていた。

城明け渡しは、敵討にと迅る若い家臣らを由良助が止めたり、九太夫(片岡亀蔵)が金欲しさから不忠ぶりを滲ませたりと、色々あり。「ハッタと睨んで」だけの文楽とはだいぶ違う。

道行は隼人の勘平、七之助のおかる、巳之助の伴内。七之助おかるはアイメイクがシャープなせいか、クールに見える。隼人は優柔不断な色男。巳之助の伴内が滑稽みといい、身のこなしといい、とても良い。

2025年3月18日火曜日

3月17日 三月花形歌舞伎 松プロ

 口上は虎之助。ペラペラとよく喋り、落語家のよう。遅れて入ってきた客をいじるなど、感じ良くない。

「妹背山婦女庭訓」三笠山御殿

お三輪を米吉。娘らしい可愛らしさで、官女らにいじめられるところは消え入りそうな声で哀れ。疑着の相の迫力は薄かったか。鱶七の福之助はやや線が細い感じもあるが、堂々としていて良い。橘姫の吉太朗はもはや安定感さえある。いじめ官女に千次郎、翫政ら。壱太郎が豆腐買いで盛り上げる。

「於染久松色讀賣」

壱太郎が5役を早替わり。そつなくこなしていたが、今一つ響かないのは何故だろう。


2025年3月16日日曜日

3月16日 文楽京都公演 Aプロ

解説は睦太夫。テンション低く、あらすじを読み上げるようでやる気を感じられないのだが。 

「二人三番叟」

靖、碩に団吾、友之助、燕二郎、藤之亮。
三味線、人形、鳴り物のリズムがバラバラで、気持ち悪い。辛うじて2枚目が繋ぎ止めていたように感じた。 人形は紋吉と玉誉。 

「絵本太功記」

夕顔棚を睦・団七。
時代もののせいか、ちゃんと聞けた。

尼崎の前半を千歳・富助。
なぜだか初菊と十次郎が互いを思いやるやり取りが耳に留まった。さつきもいい。切語りが前半なのはいいが、30分ほどで交代したのはいかに?

後を靖・勝平。
45分ほどのクライマックスを熱演。錦糸と素浄瑠璃で語った時より力が入っているように感じた。見台に乗り出すような姿勢も含め。現れ出でたる武智光秀のところで、「靖太夫、勝平、玉男」の掛け声があったが、キレが悪く間も悪い。

人形は簑二郎の操が簑助を彷彿とさせる細やかな動き。だがこの役にはうるさいかも。一輔の十次郎は爽やかな若武者ぶりがいいが、手負になって戦況を語るところは活発に動きすぎではと思った。

3月16日 文楽公演 Bプロ

解説は織太夫。
人形浄瑠璃の発祥は京都とか、ご当地ネタはよいけれどちょっと説明不足では。文楽の発祥は大阪とも言っているので、義太夫節以前の古浄瑠璃があったことを知らない観客は混乱する。

「近頃河原の達引」

四条河原の段は睦、咲寿、織栄、碩に清丈。
伝兵衛の睦は掠れ声が辛い。男性キャラでこれではしんどい。咲寿は官左衛門にしてはりっぱすぎ。織栄は若手らしく元気良い語りでいいのだが、全体としてうーん…。碩が出てきて聞きやすさにホッとする。

堀川猿回しの前は織・藤蔵に友之助のツレ。
稽古娘と与次郎母の浄瑠璃稽古の場面もはっきり語り分けていた。娘がちょっと子ども過ぎという感じがしなくもないが。織自身が基本格好いい人なので、与次郎が猿回しにしては男前な口調。

後は呂勢・燕三に燕二郎のツレ。 
浄瑠璃の楽しさを堪能。与次郎に3枚目のおかしみがあり、チャリ場がちゃんと面白いからこそ、悲劇が引き立つ。与次郎、おしゅん、伝兵衛、母との四者四様の引き細々。三味線も鮮やか。ツレに燕二郎の師弟共演も嬉しい。

人形は紋秀の官左衛門の形の良さが目を引いた。伝兵衛に金を要求する時に右手を差し出す様や、立ち回りの極まりの姿勢が良い。 和生のおしゅん、伝兵衛の玉佳、玉也の与次郎と配役もよく、充実の舞台だった。

3月15日 新国立劇場バレエ団「バレエ・コフレ」ソワレ

「火の鳥」

小野絢子の火の鳥は野生味と気高さを併せ持ち、神秘的な存在。イワン王子の奥村康祐は少年らしい好奇心で火の鳥を捕らえた感じ。逃げようとする火の鳥と王子の間に通じ合うものがあるようで、パドドゥがどこか官能的。魔王カスチャイの小柴富久修は背中の曲がった老人のようで、あまり強そうではない。
魔物たちが未知の民族舞踊のような衣装、踊り。卵を割ったら魔王が死ぬとか、シュール。

「精確さによる目眩くスリル」

米沢唯、直塚美穂、根岸祐衣、速水渉吾、渡邊峻郁によるパドサンク。早いテンポで踊れる人たちがこれでもかと踊りまくるスリリングさよ。そして、同じ振りをしていても米沢のしなやかさが際立つ。直塚は力強さ、根岸は端正な印象。男性陣は力強い跳躍で、速水のポーズの美しさ、渡邊のスピード感が圧巻。
拍手が鳴り止まず、幕が降りた後も再度カーテンコールした。

「エチュード」

プリンシパルが揃うとこうも変わるのか。プリマの木村優里に華があり、ステージを支配するような威厳も感じる。福岡雄大、井澤駿の風格は言わずもがな。

5月15日 新国立劇場バレエ団「バレエ・コフレ」マチネ

「火の鳥」 
池田理沙子の火の鳥はテクニックに不足はないが、人外のものの感じは出ていたがどこか小動物のようで、少し物足りない。
魔王カスチュイの中家正博は不気味さあふれる怪演。カーテンコールで火の鳥にちょっかいを出してやり込められる一芝居も。

「精確さによる目眩くスリル」
花形悠月、山本涼杏、東真帆、森本亮介、上中佑樹。
速く、精確に高度なテクニックが次々と繰り広げられ、息つく暇もないほど。スリリング。

「エチュード」
基本のバーレッスンから始まり、流石日本のトッププロなのでよく揃っていて美しいのだが、凝ったことをしているわけではないのでだんだん退屈になってきた。
プリマの柴山沙穂に華がないのも辛い。プリンシパル役の若手2人、永井駿介、山田悠貴は頑張っていたが。

2025年3月8日土曜日

3月8日 素浄瑠璃の会

 芳穂・錦糸で「奥州安達原」の袖萩祭文。

芳穂は語りわけもしっかり。情感もよく、1時間あまりの長い段だが、意識が途切れることなく集中して聞けた。お君がちょっと可愛くなかったが。錦糸の三味線は的確。

2025年3月1日土曜日

3月1日 フェニーチェ文楽「魂がゆくえ」

第一部
鼎談は木ノ下雄一を聞き手に、錣、勘十郎。「合邦」について、錣は、玉手はずっと本心。俊徳丸への恋も、継母としての思いも、我が身を犠牲にして病を治すのも。我をだしてはだめ。全て床本に書いてあるので、そのまま演じるだけと。手負いになると力を抜ける(=楽)と先輩方は言っていたとか。 勘十郎は俊徳丸がいるかどうか分からないまま庵室を訪れる。父母との会話の中で気づく瞬間がある。恋か母心か、日によってバランスが変わると。
床と手摺りで玉手の捉え方が違うようだけど、上演して齟齬はないのだろうかと思うなど。

「摂州合邦辻」
合邦庵室の弾を錣・宗助。情感あふれる語り。
人形は勘十郎の玉手、玉志の合邦、簑一郎の女房。
紋臣の俊徳丸はニンでないのか、今一つ。紋吉の浅香姫、簑太郎の入平。


第二部の鼎談は木ノ下、勘十郎に呂勢。
語る時はどのくらい感情移入するかとの問いに、「人によって異なる」とはぐらかす呂勢。「嫗山姥」はストーリーがなくいい曲なので語っていても楽しいと。

「嫗山姥」
呂勢・藤蔵に清允のツレ。
人形は勘十郎の八重桐、勘次郎の澤瀉姫、簑紫郎の時行。紋秀の藤浪、勘介の太田太郎。
時蔵襲名の時が面白かったので期待していたのだが、それほどでもなく。 

2025年2月23日日曜日

0223 貞松・浜田バレエ団「ラ・バヤデール」

60周年記念の新制作。振付の貞松正一郎は幻の場面で終わらせず、最後の崩壊まで描くことにこだわったそう。

ニキヤ役の名村空の慎ましい雰囲気に対し、ガムザッティの井上ひなたは華があ李、とても役に合っていた。ソロルの水城卓哉は優柔不断なキャラを見事に表現していた。

ラジャの川村康二はひょろりとした姿が少し頼りない感じ。ハイ・ブラーミンの武藤天華、マグタヴェヤの幸村恢麟はステレオタイプなルックスのままなのはどうだろう。新制作なので少し配慮が欲しかった。ブロンズアイドルの小森慶介はキレのあるジャンプや回転で見せた。

2025年2月16日日曜日

2月16日 文楽公演 第2部

「妹背山婦女庭訓」

猿沢池の段を亘・寛太郎。
女の声ががちゃがちゃしているほかは、板についてきた感じ。寛太郎はきっちり、楷書の演奏。

鹿殺しは御簾内で薫・清方。
語り出しは悪くなかったが、だんだん2制御が聞かなくなる感じ。

掛乞の段は小住・清丈。
落ち着きがあって良い語り。

万歳の段は芳穂・錦糸に清允のツレ。
こうやって聞いてくると、芳穂ってうまい。音楽性もあるし。錦糸はなんか不機嫌そうだったが的確な音。

芝六忠義は千歳・富助。
これぞ切場の語り。子どもの声が可愛くないのは相変わらずだが、三作と杉松の語り分けもしっかり。

人形は玉助の芝六が豪胆。三作は玉彦で、万歳の踊りを頑張っていた。お梶の清十郎が母親の悲しみをくっきり描く。

2月16日 文楽公演 第1部

「妹背山婦女庭訓」

小松原の段 
三輪、咲寿、南都、文字栄、津国に団吾。
咲寿はいつもより落ち着いた声でよく響いていたが、雛鳥ならもっと可憐さがほしい。

太宰館の段は希・団七。
よく声が出ていたし、入鹿の大笑いはゆったりと時間をかけて大きさを出そうとしていたが、拍手がない。どこか空虚な感じがするからか。団七は大笑いの終盤、抑えた掛け声がよき。

妹山背山の段は若、藤に清志郎、清介の背山に、呂勢、錣に清治、藤蔵の妹山。
清志郎の弾き出しの力強さ、これぞ背山という重厚感。藤はやたら顎を使った語り?対して妹山の柔らかさ、華やかさが際立つ。清治の三味線、呂勢の語りの音楽性に聞き惚れる。
若の大判事は慎重な語りのせいで小物に感じる。顎を使った分骨太感がある久我之助のほうが大物な感じ。錣は情があるのはいいのだがウェットな感じが定高ではないかも。

人形は勘彌の久我之助が凛々しくて良き。玉佳の入鹿が公家悪の禍々しさ。

2025年2月15日土曜日

2月15日 踊れ、その身体がドラマになるまで〜矢上惠子メモリアルガラ2025 in TOKYO〜

矢上恵子作品をたっぷり、しかも新国立劇場バレエ団のダンサーが踊るという、とても見応えのある公演。

「Witz」
福田圭吾の太ももの筋肉がすごい。筋が見えるほど。キレのある動きを存分に見せる。
 
「Multiplex Personality(多重人格)」
井本聖那須を中心に、4つの人格を井後麻友美、石川真理子、佐々木夢奈、杉前玲美。
井本と4人が入れ替わりながらユニゾンで踊り、異なる人格を表現。佐々木は少しカウントが早い?と思うところがあった。

「FROSEN EYES〜凍りついた目〜」
米沢唯と木下嘉人。
心が壊れてしまった少女の米沢は糸の切れた人形のように脱力するのがすごい。パイプ椅子の上で踊っているときにバランスを崩して倒れかけてヒヤッとしたけど、流石の身体能力で持ち直し、大事にはならなかったよう。

「Butterfly」 
福田圭吾のために振り付けた作品だそう。はじめ動体のないロンTのような(肩と腕だけ)衣装から踊るうちにマントのように羽が広がってゆくのが面白い。

「Bourbier(ブルビエール)」
福岡雄大はコンテだと力強く生き生きして見える。身体能力の高さよ!足の甲をつけて座った姿勢から手を使わずに上に伸びるようにぐんっと立ち上がるの、どうやってるんだろう。 

「Cheminer(シュミネ)」
小野絢子を中心に、柴山紗帆、池田理沙子、五月女遥、川口藍、金城帆香、橋本真央。
小野は凛とした風情が作品に彩りを与えてよき。コンテも悪くない。池田はちょっと作品に合っていないような感じがして、振りをこなすだけではダメなのだなと思うなど。 

「Toi Toi」
疾走感、踊りっぱなしで爽快。上演前に矢上の映像が流れ、人となりを見られたのも感慨深い。 

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2025年2月14日金曜日

2月14日 人間を脱出したモノたちへ

コンテンポラリーダンスと人形劇のダブルビル。

「ペトルーシュカとロベルト・モンテネグロ」はバレエ・リュスの再創造とあり、関典子の振付・出演。ピアノで奏でるストラビンスキーの曲に乗って、人間が人形を演じる。タイトルにあるロベルト・モンテネグロの絵をモチーフにした衣装と舞台装置で、90cm四方の黒い箱が人形を飾るケースのよう。

「ペドロ親方の人形芝居」はいいむろなおき演出で、マイムと浄瑠璃人形、オペラ歌手が共演する雑多さ。能勢の鹿角座が協力していて、人形の貸与や指導をしたようだが、素人の遣う人形なので、動きのぎこちなさは否めず。スペイン語オペラで物語が進むのだが、舞台のあちこちで同時に進行するため字幕が追いきれず、話がよくわからなかった。

アフタートークでいいむろが、人形遣いには体の角度など、マイムで気をつけるところを注意したそう。そういうとこらに共通項があるのかも。 

2025年2月11日火曜日

2月11日 立春歌舞伎特別公演 夜の部

「義経千本桜」

怪我で降板の愛之助に代わり、道行は虎之介、四の切は獅童が代演。

獅童は声の調子が悪そうで、狐言葉が辛い。初音のチュジュミとか、タ行の発音が…。体が重そうで、欄干に飛び乗るところなどキレがない。以前演じた時はそんなことなかったと思うのだが。 2階席最前列で休憩明けに係の人が「はしごを架けるけど乗り出さないで」とネタバレ。梯子を登ってきた獅童は降りる時にウインクして、客なら歓声を浴びていた喜ばせていた。

大序からの上演は珍しいが、義経(扇雀)が藤原朝方(青虎)から初音の鼓を渡されるところが描かれると後の話がわかりやすい。堀川御所の場では卿の君の團子の女方が初々しい。姿は可憐だが発声はまだまだか。静御前の笑也が落ち着いた美しさ。だが、正妻と愛妾が仲睦まじくって嘘っぽい。

道行初音旅は虎之助の忠信に壱太郎の静。虎之助は弟感があるので、姉弟のようだった。

2025年2月10日月曜日

2月10日 文楽公演 第3部

妹背山婦女庭訓の通し

杉酒屋は睦・清友。
中音部はいいと思う。

道行恋苧環は呂勢、織、小住、織栄に宗助、清馗、錦吾、藤之亮。
バランスのよい配役。呂勢は声の良さはもちろん、お三輪の町娘らしい勝気な愛らしさを描出。織はもったぶった語りが高貴な姫君らしく、お三輪と好対照だった。小住の求女も含めて、耳に心地よい。宗助を中心に華やかな三味線も聞きよかった。
人形は勘十郎のお三輪がいじらしく可愛らしく、一輔の橘姫は高貴な姫君らしく、こちらも好対照。求女の玉勢も2人の娘どちらにも いい顔をする優柔不断さが秀逸。

鱶七上使の口は御簾内で聖・燕二郎。素直な発声で嫌味がないのがいい。
奥は靖・勝平。
靖はこのところ頑張りが上滑りしているような感じ。入鹿の大笑いはやり過ぎ?とも思ったが、人形を見ながら聞くとスケールの大きさがちょうど良かった。(玉佳の芸のおかげ?)勝平は鋭い掛け声がよき。

姫戻りは碩・友之助。
いい声だし、高音も無理なく出ているが、姫の高貴さが足りないか。町娘ならこれでいいのだが。桃色の裃が場面に合っていた。友之助は淡々と。

金殿は織・燕三。
朗々と歌い上げて、美声自慢。何故かお三輪が可愛くないので可哀想に思えない。いじめの官女は老女のようであまり意地悪な感じでないし。鱶七は堂々として似合ってた。そして燕三の三味線の的確なこと! 語りの不足を補う。

人形は勘十郎、一輔の女方2人が素晴らしい。お三輪は橘姫と恋の鞘当てを演じる可愛らしさ、金殿で虐められる哀れさ、擬着の相への変化、刺されてからの悲喜交々がひしひし。耳では?のところも、視覚では伝わった。玉佳の入鹿が公家悪の大きさ。荒牧弥藤次の紋秀は右に傾いでいるように見えた。


2025年2月9日日曜日

2月9日 東京バレエ団 ベジャールの「くるみ割り人形」

ベジャール版くるみ。猫のフィリップ役のダニール・シムキン目当てだったので怪我で降板は残念だったが、ベジャールらしさが随所に見られて面白かった。

主人公はマーシャならぬピムという男の子(山下湧吾)。飼い猫のフェリックス(宮川新大)、父親的存在のM(柄本弾)、母(政本絵美)を中心に、クリスマスの夢の世界が描かれる。自伝的物語とあって、幼い頃に死に別れた母への思慕や別れの悲しさが描かれる。いい歳した男が母親に甘えたり、パドドゥを踊ったりするのはちょっとマザーコンプレックス的感じがして引いたが、最後の別れが近づくとうるっときた。
Mは時に父親、時にマリウス・プティパ、時にメフィストフェレスのようにと場面ごとに役割も雰囲気も違って、笑っていても何考えているかわからないような不思議な存在。柄本は少し役者不足か。 
同時にあちこちで芝居が進んでいるので、どこを見ていいのか、目が足りない。
花のワルツでプティ・ペール役のジル・ロマンが登場。ちょっとした動きでも惹きつけられるのはさすが。クライマックスで、黒燕尾の男性ダンサーが一斉にジャンプしたのが音楽に合って効いていた。
グランパドドゥは「プティパの振り付けに忠実に」とアナウンスがあったように、振り付け自体は初演時に忠実なのだろうが、パドドゥが終わったところで燕尾服の男たちが現れて女性だけを絶賛。うち1人が女性をエスコートして袖に引っ込み、男性ダンサーが取り残されたり、男性のソロを腕を組んで見ていたりと、笑いの要素も盛り込んでいた。黒のチュチュに男性も黒の上下という衣装はちょっと違和感。 雪のワルツでも何故か少女たちが黒のケープを纏っていた。

2025年2月8日土曜日

2月8日 noism「円環」

「過ぎゆく時の中で」

金森穣演じるゆっくりと歩む男をnoism1の若者たちが次々に追い越してゆく。男が引き留めようとしても止められず、やがて男も一緒に踊り始める。疾走感のある踊り(実際走っている)で、noism1の若いダンサーたちは体にフィットするレオタードなのに対し、金森の衣装は全体にギャザーを施した黒のスーツで、老いを象徴するかのよう。ハットを被っていたこともあって、初め誰だかわからなかったくらい、しょぼくれて見えた。背筋が伸びたまま走る姿勢が美しく、ダンサーの身体性を見た気分。

「にんげんしかく」

近藤良平振付の箱を使った楽しい踊り。大小の段ボールの中にダンサーが隠れていて、箱のキャラクターのようにちょこまかと動く様が微笑ましい。箱を出てからも近藤らしい楽しさが満載で、段ボールを叩いたり擦ったりしてリズムを取るのも面白かった。音楽は色々な曲のオムニバスで、キラークイーンやwhat a wonderful world などのカバー曲ものどかな感じ。

「Suspended Garden−宙吊りの庭」 

井関佐和子、山田勇気に加え、退団した2人noism1のメンバーを加えての新作。天井に斜めに下がった白いパネルがスクリーンになって、赤い花や紅葉などの映像が投影され、季節の移り変わりを示す。赤いドレスの井関と色違いの茶系?のドレスを着せられたトルソーがもう1人のダンサーのように4人のダンサーが戯れる。男性ダンサーがドレスを着たり、トルソーと組んだ井関にひっくり返したドレスを着せ、また戻したりとドレスの使い方も面白かった。40代のnoismは流石に若さのキレはないなと思うなど。

2025年2月1日土曜日

2月1日 第51回バレエ芸術劇場「ドン・キホーテ」

日本バレエ協会関西支部・関西バレエカンパニー公演に新国立劇場バレエ団の奥村康祐がバジル役でゲスト出演。ベテランらしく周囲をサポートし、盛り上げる素晴らしさ。パドドゥの包容力たるや。フィッシュダイブはかなり無理な姿勢に見えたが綺麗にポーズをとっていたし、片手リフトでも立ち位置を調整してバランスを保つなど、キトリ役の佐々木夢奈をよく支えていた。ソロのジャンプや回転もキレがよく、見応えがあった。
キトリの佐々木は音の取り方がちょっと早い?と思うところや、32回フェッテでぐらついたりというところもあったが、奥村のサポートもあって大過なく。目鼻立ちがくっきりして可愛いのでもっと表情に余裕があるとなお良いと思った。
ドン・キホーテは内野晶博。キホーテが夢の中で幻影を見るプロローグなど、タイトルロールをしっかり描く演出。踊りの見せ場はあまりなく、あご髭が短いせいか若く見えた。サンチョ・パンサは末原雅広。お腹の詰め物はちょっとやりすぎに感じた。
1幕でメルセデスの代わりに町の踊り子、2幕で森の女王など、女性パートを増やしていたのは協会公演ゆえか。3幕のグランパドドゥの間にキトリの友人のバリエーションが入るなど、見慣れたドンキとは違うところも。
関西フィルハーモニーの演奏で指揮は冨田実里。冨田の指揮にしては大人しいかったかも。


2025年1月28日火曜日

1月28日 大槻裕一 咲くやこの花賞受賞記念の会

 舞囃子「高砂」と半能「融 舞返之伝」を披露し、間にトーク。

小鼓の大倉源次郎、ワキの福王和幸が、咲くやこの花賞受賞の先輩として出演する贅沢さ。だが、近鉄アート館の黒いステージをそのまま使っての上演。橋がかりや目付柱がないのは致し方ないが、黒の背景では風情がないと感じた。最前列だったので、床の汚れで足袋の裏が真っ黒になっていくのが気になって…。

客席は9割方埋まっている感じだったが、質問コーナーでは誰も手を挙げず。子どもの頃から能面を手づくりし、「能ごっこ」をして遊ぶなどの能オタクぶりにたじろいだか。

2025年1月26日日曜日

1月26日 新春浅草歌舞伎 夜の部

挨拶は橋之助。
ずっと憧れていた浅草歌舞伎、勘九郎、七之助が卒業して、自分の番だと思っていたのに、1年目之正月は父と大阪で悔しい思い。2年目から出演できたが、大きな役は兄さんたちで、自分は1ヶ月が長かった。今年は座頭となり、一ヶ月があっという間。29年前に生まれた時、父が浅草歌舞伎に出ていた。29年後に座頭として出演できて嬉しい。父は30歳で初座頭だったが、自分は1年早い29歳。

解説は鷹之資。

「春調娘七草」

左近の五郎、玉太郎の十郎、鶴松の静御前。
線の細い左近だが、体をいっぱいに使って力漲る立派な五郎。 
鶴松の静は悪くはないが、なんでこの座組で?という疑問を払拭するには至らず。

「絵本太功記 尼崎閑居の場」

橋之助の光秀は線の太い役が似合い、堂々として大きさがある。莟玉の操はしっとり落ち着いた風情。初菊の左近が可愛らしいので、並ぶとちゃんと母と嫁に見える。鶴松の十次郎はちょっと芝居がクサイか。染五郎の久吉はなんか腹に一物ありそう。

「棒しばり」

鷹之資の次郎冠者がキレのある踊り。何より楽しそうに踊っているのがいい。染五郎の太郎冠者は並ぶとやはり見劣りが。橋之助の大名がおおらか。

千秋楽だったので、終演後はカーテンコールを期待する客席の拍手が鳴り止まなかったが、そのまま終わったのは行儀がよろしくて良き。

2025年1月25日土曜日

1月25日 初春歌舞伎公演 第2部

「彦山権現誓助剣」

通しだとお園の活躍が多くて嬉しい。鎖鎌など立ち回りの見せ場も多く、時蔵の女丈夫ぶりが凛々しい。毛谷村で虚無僧姿で出てくるところは、男っぽい所作で声色から違い、許嫁の六助と知ってころっと可愛らしくなる変わり身の早さも微笑ましい。
菊之助の六助は実直な好青年。彦三郎の京極内匠は敵役としては太々しさ足りない感じもしたが、存在感を見せた。

大詰で久吉方の若武者として子供たちが勢揃い。亀三郎、丑之助、眞秀、梅枝、種之助が並んで微笑ましい様子を見せたが、丑之助のうまさが際立った。立っているだけで他の子と違う。

吉弥の一味斎妻お幸、吉太朗の一味斎娘お菊のほか、内匠が母と偽る老婆に當志哉など、上方役者の活躍も嬉しい。折乃助は腰元に続いて、夜鷹の役では「ホワイト案件」「5050」「はい喜んで!」など時事ネタづくし。ギリギリダンスも楽しかった。 吉太朗は大詰で立浪家家臣の1人で萬太郎や竹松、市村光と並んで最後の手拭い撒きまでする異例の活躍だった。

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2025年1月13日月曜日

1月13日 新春特別公演

大阪では19年ぶりという仁左衛門・玉三郎の共演で、3階席までお客でいっぱい。だが、「於染久松色読販」と「神田祭」はコロナ禍以降たびたび観ているのであまり心躍らない。

「於染久松色読販」
玉三郎の土手のお六、仁左衛門の鬼門の喜兵衛は息の合った夫婦ぶり。
嫁菜売り久作を千次郎、髪結亀吉に松十郎。番頭の松之助がいい味。
柳島妙見の場で颯爽と現れて場を納めた錦之助の山家屋清兵衛が格好いい。油屋太郎七に弥十郎。

「神田祭」
仁左衛門の鳶頭に玉三郎の芸者。美男美女がイチャイチャして幸せオーラを振り撒く。玉三郎に疲れがでたのか、少し老けて感じた。

2025年1月5日日曜日

1月5日 初春文楽公演 第1部

「新版歌祭文」 

座間社の段を三輪、津国、文字栄、南都、咲寿、亘に清友。
適材適所な感じ? 咲寿が健闘。

野崎村は中を希・清志郎、前を織・藤蔵、切を若・清介に清方のツレ。野崎村を3つに分けるのはいかがなものかと思う。 
希は頑張っているけれど、何かが足りない感じがする。織は意気揚々だが、娘が可愛くない。若は相変わらずの省エネ運転。おみつが賢しげに聞こえる。

人形は清十郎のおみつが健気。紋臣のお染はお嬢さんらしい可愛さ。文昇の久松は二人が惚れる理由がよく分からん。玉也の久作は適役。


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2025年1月4日土曜日

1月4日 初春文楽公演 第3部

「本朝廿四孝」
道行はともかく、景勝上使からだと話がわかりやすい。客席は半分も埋まっていない感じで、正月なのに客入りが悪いのが何とも…。

道行似合の女夫丸は睦の濡衣、希の勝頼、亘、薫のツレに団七、団吾、錦吾、燕二郎、藤之亮。
珍しい道行だが、あまり華やかな感じがない。

景勝上使は靖・勝平。
珍しい組み合わせだが、あまり相性がよくない?

鉄砲渡しは小住・寛太郎。
安定感。  

十種香は錣・宗助。
艶やか。  

奥庭は芳穂・錦糸に友之助のツレ、清允の琴。
芳穂は期待したほどでなく。「翼が欲しい〜」の件があっさりしてて、他のところとあまり変わらない感じ。もっと盛り上げて欲しい。錦糸の三味線は引き出しがバチっとしてて、びっくり。眉間の皺…。

人形は簑二郎の八重垣姫。下手ではないのに何となくパッとしないのは何故だろうと考えた。人形使いの華って何だろう。奥庭の左は簑紫郎、足は簑悠。激しい動きにも付いていっていて感心。主遣いより目がいってしまう。
勘弥の濡衣はしっとり。玉助の勝頼、玉志の謙信、玉佳の景勝。

2025年1月3日金曜日

1月3日 初春文楽公演 第2部

「仮名手本忠臣蔵」

八段目は呂勢の小浪、靖の戸無瀬、ツレに聖、織栄、三味線は清治、清馗、友之助、清允。
華やかに、なのだが、呂勢が三味線の方を気にして顰め面していたのが気になった。
人形は和生の戸無瀬、簑紫郎の小浪。戸無瀬は人形拵えのせいか、首をすくめているように見える。簑紫郎の小浪がすっとしていたので余計に。

九段目の雪こかしは睦・ 清丈。
よき。

山科閑居の切は千歳・富助。
期待通り。安定感と風格があり、この段にふさわしい。

後は藤・燕三。
意外に良かったのは燕三の功績か。三味線の音色が深みがあって。

人形は玉男の由良之助と一輔のお石の夫婦がよき。雪こかしでちょっとイチャつくところがあるなんて今まで気に留めてもいなかった。

18日再見。
清治は道行の中でも忠臣蔵の道行が一番好きだそうで、三味線の鮮やかな音色に聞き惚れる。呂勢の語りは音楽的でよかったが、靖は顎が出ている感じで発声が今ひとつ。和生の戸無瀬はしっとりと美しく、小浪を気遣う継母の気遣いや情が感じられてよかった。簑紫郎の小浪が瑞々しく、母娘のバランスも良かった。キセルから煙が出る演出など、色々細かい段取りがあるみたい。  
睦の見台が新しくなっていた(虎の模様)。