2025年6月16日月曜日

6月16日 文楽鑑賞教室 Dプロ

「五条橋」 希の牛若丸に咲寿の弁慶。どちらも難ありで、全体的にがちゃがちゃした感じ。ツレは碩、薫。 三味線は団吾、友之助、清公、清允、藤之亮。太夫と一緒で、まとまりのない感じ。 人形は和馬の牛若丸に勘介の弁慶。若手の懸命さはいいが、やはりまだまだの感じ。和馬の牛若丸は体の芯が傾いでいる感じだし、動きも少し重い。扇を広げきらないなど小物づかいにも課題が残った。勘介も、人形の重さに負けているのか。薙刀の扱いに苦戦している感じで、もっと刃から遠いところを持つ方が格好いいのでは。 解説は勘次郎。左を玉延、足を簑悠。 「三十三間堂棟由来」 中を靖・清志郎。 千歳の悪いところを真似しているのか、顔で語っている感じ。清志郎はキリッとした演奏。 奥を織・藤蔵。 お柳の嘆きが激しすぎというか、植物なのだからもっと静かな感じでいいのではと思う。藤蔵とのコンビは相乗効果で派手。熱心なファンがいるのは結構なことだが、「たっぷり」の大向こうは演目に合っていない。 人形は一輔のお柳がしっとりと美しい。簑紫郎の平太郎は颯爽とした男前。勘昇のみどり丸は可愛らしい。

2025年6月12日木曜日

0612 イキウメ「ずれる」

会社社長の輝(安井順平)と弟の春(大窪人衛)が暮らす家のリビング。療養施設から戻ったばかりの春は精神的に不安定な様子で、ネットで知り合ったというラディカルな環境活動家、佐久間(盛隆二)を家に引き入れ、何やら企む。優秀な家政婦兼秘書の山鳥(浜田信也)は腹に一物ある不穏な感じ。魂魄のずれを直して不調を治すという伝説の整体師(森下創)も怪しい動きを見せる。はじめは捉えどころのない感じだったが、登場人物の事情がわかってくるに連れ、どんどん引き込まれていった。 魂魄を魂=精神と魄=肉体と捉え、整体師が魂を引っ張ると幽体離脱してしまうという設定が面白い。魂は目に見えないものが見え、動物とも通じ合える。幽体離脱した春が関わると、99%遺伝子が同じという犬が狼に変じたり、豚が猪に変わったりし、野生化した動物が野に放たれる。人間に飼われたままの方が長生きできるという輝に対し、わずかでも自由になれる方がいいという佐久間や春。リタイアした両親が暮らすインドネシアの島がパンデミックに見舞われ、助けを求める電話を冷たく突き放す春を、輝は「何不自由なく育ててもらったくせに」と非難するが、「父親は命令ばかり、母親は禁止ばかりで不自由だった」という春。同じ場所にいても見えているものが違い分かり合えない。出来る秘書山鳥は物腰柔らかだが、父親が輝の会社のために自殺に追い込まれた過去があり、復讐のために生きていることが明かされる。浜田の演技が底知れない不気味さ。ソファにもたれた輝を照らすごく絞った照明が効果的。他にも天井を照らす水槽のような光など、灯りの使い方が印象的だった。 牛舎で活動しようとしていたところを警察に見つかり、幽体離脱したままの春を置いて佐久間が逃げてくる。春の魂を肉体に戻そうと、収容された病院を探すが、結局そのままに。ただ一人常識人だった輝が最後、警察の訪問に力無く答えるラストはちょっと未消化な感じもしたが、ざわざわした感じが余韻として残った。

2025年6月7日土曜日

6月7日 文楽鑑賞教室 Bプロ

「五条橋」
咲寿の牛若丸、靖の弁慶、ツレに小住、碩、薫、三味線は清丈、友之助、清公、清允、藤之亮。 出だしの清丈の三味線がよく響き、華やか。咲寿の牛若丸は爽やか。靖の弁慶は太さはあるが、体の芯がグラグラしている感じ。

人形は玉路の弁慶が力一杯で大きさもあり好印象。簑太郎の牛若丸は、薄衣が顔に被さってしまうなど冴えない。

「三十三間堂棟由来」

中を希・清馗。
噛み合ってない感じ。

奥は呂勢・宗助。 音曲を聴いているという華やかさ、安定感。宗助はミスタッチが多かったか。

柳の葉が降ってくるところで、お柳(勘弥)、平太郎(玉助)の人形と、平太郎母の紋秀の頭に葉が刺さるハプニングにちょっと笑ってしまった。平太郎の左がサッと取り除いていたのはよき働き。みどり丸は簑悠。

2025年6月6日金曜日

6月6日 サファリ・P「悪童日記」

2017年の初演と19年の再演を観て以来だが、骨格部分は変わらないものの再演を重ね進化しており、だいぶ印象が異なった。
まず、出演者が2人増えて5人になり、双子を取り巻く登場人物も増えてシーンがより複雑になった。舞台装置の平台は白っぽいグレーに変わっていたが、出演者が様々に動かして道になったり、瓦礫になったり。(終演後のロビーで、平台のキーホルダーのガチャを売っていたくらい、劇団を象徴する存在)今回舞台後ろのスクリーンにセリフの字幕(日英)やアニメーションのような背景が映し出されたのは、理解の助けにもなったが、見るべきところが増えて疲れる感じも。 双子役は達也ともり裕子。性別も違えば身長差も大きく、外見的には全く似ていない2人だが、シンクロした動きで一体感を見せる。森は短髪で小柄な体つきは少年のよう。
双子以外はそれぞれ複数の役を演じるのだが、モノトーンベースのシンプルな衣装のままで、役によって特徴的な仕草を加えて演じ分ける。圧巻だったのは、おばあちゃん役の佐々木ヤス子で、背中を丸めながら上着の背を引っ張って腰の曲がった様子を表し、鼻を擦る特徴的な動きでクセのある人物を体現。話ぶりも偏屈ババアそのものかと思ったら、兎っ子の母親になると疲れた女にガラリと変わり、また、刑事役では高圧的な感じと変幻自在。兎っ子と女中の2役は芦屋康介で、性的に虐待される若い娘を演じる背の高い男性が妙に艶かしい。司祭役の辻本桂は一見まともそうだが、底知れない雰囲気を醸す。 上演時間は1時間15分ほどだが、濃密な時間だった。

2025年6月5日木曜日

6月5日 文楽鑑賞教室 Aプロ

「五条橋」 芳穂の牛若丸、南都の弁慶、亘、聖、織栄に三味線は団吾、寛太郎、錦吾、燕二郎、清方。 下手側の席だったが、芳穂はともかく、南都の太い声が以外と届かない。三味線含め、全体的にまとまりに欠ける感じ。 人形は勘次郎の牛若丸が軽々としてよき。傘をさっと翻すところなど、小物使いも手慣れた感じ。弁慶は玉翔。 「三十三間堂棟由来」 平太郎住家より木遣り音頭の段の中を睦・勝平、奥を藤・燕三。 藤は声のコントロールが安定していて聞きやすい。三味線の木遣り音頭が軽快。 みどり丸は子役ながら木遣り音頭での舞?など、しどころが多い役。玉延の動きが丁寧で好感が持てる。簑二郎のお柳、玉志の平太郎、簑一郎の平太郎母。進ノ蔵人は休演の文昇に変わり玉勢。

2025年5月31日土曜日

0531 いばらきバレエへの誘い

ドン・キホーテ。ダイジェスト版ながら、踊りの見どころは抑えていて、見応えがあった。

キトリとドルシネア姫は奥村唯。危なげない踊りで、バジル(松田大輝)の頼りなさをうまくカバーしていた。表情の、溌剌としたキトリとしっとりしたドルシネアをしっかり演じ分けていた。3幕のフェッテはダブルを入れつつ勢いに乗ってよかったが、最後にちょっとふらついたのが惜しい。
松田のバジルは線が細く、ちょっと頼りなげ。一幕のリフトはもっと長くと思ったし、フィッシュダイブは手順がこなれていない感じがした。

目を引いたのは、男性群舞の巽誠太郎。ソロが結構あって、回転もジャンプも大胆で魅せた。キトリの友人、松山みさき、我如古あゆり、メルセデスの山崎優子も良かった。

2025年5月24日土曜日

5月24日 糺能

10回目記念で、当地にちなんだ新作を初演。

神社に和歌を奉納する神事から始まり、作品世界は未来へ。
森に住むアオミズク(アイ、茂山逸平)が物語の経緯を紹介。遠国に住む男(ワキ、有松遼一)が和歌の由来を尋ねて下鴨神社を訪れ、女(シテ、林喜右衛門)と出会う。実は女は糺の森の女神で、後シテは神の姿を表しツレを従えて舞う。白い装束は柔らかく、神の恩恵を周囲に振り撒くような感じ。ツレは小梅と彩八子で、赤頭に龍や獅子のような冠を着用。
あいにくの雨だが、空が暮れていく様子には風情が感じられた。終盤は雨音が激しくなり、謡がよく聞こえないところもあったので、やはり晴天がいい。

5月24日 第五十回記念 テアトル・ノウ

舞囃子「高砂」 味方梓はキリッとした、楷書の舞。目の辺りが父親によく似ている。 舞手にあわせて、大鼓の河村凛太郎、小鼓の吉阪倫平と若手が揃い、フレッシュな感じ。 一調一管「鷺」 片山九郎右衛門の謡、前川光長の太鼓、杉市和の笛。 杉は膝が悪いのか、胡座のような座り方。長袴なのでやりにくそう。 狂言「末広かり」 茂山千三郎の果報者、忠三郎の太郎冠者、山口耕道のすっぱ。 ちょっと硬い感じがして、いまいち面白くなかった。 能「三輪」 味方玄のシテ、宝生欣哉のワキ、アイに千三郎。 白式神神楽の小書というので観に行ったのだが、普通の三輪に精通している訳ではないので、違いがどれだけ分かったか…。後シテが女神とのことで、全身白の装束で舞う様子は清廉で少し柔らかい感じがした。

2025年5月23日金曜日

5月23日 團菊祭五月大歌舞伎 夜の部

「五斗三番叟」

松緑の五斗兵衛が酔っ払って三番叟を踊るというが、あまり三番叟らしくない。雀踊りや武田奴が大勢出てきたり、最後に角樽を馬の頭に見立てて花道を引き上げたりするのが賑々しい?酔っ払っているとはいえ、松緑は相変わらず台詞回しが独特。
黒紋付の若武者、亀井六郎が出てきた時は誰かと思ったら左近。所作がきっぱりしていて、セリフも明瞭。錦戸太郎は亀蔵と分かったが、赤っ面の伊達次郎は誰か分からず、筋書きを見て種之助と知った。萬寿の義経、権十郎の泉三郎。
これといった内容がなく退屈。1時間40分もあってびっくり。

口上は七代目菊五郎が進行。松緑、團十郎、梅玉、玉三郎、楽善の順に述べるが、カメラが入っていたからかおとなしめ。一番長く喋ったのは團十郎で、新菊五郎とは同級生で、運動会では互いの父が巡業中のとき代わりに父と走ったことや、息子たちも同級生なので次世代の團菊までご贔屓にとか。玉三郎がくどいくらい「僭越ながら?私からも」と繰り返していた。

「弁天娘女男白波」
浜松屋見世先から滑川土橋までで、稲瀬川勢揃いを新菊五郎ら子ども世代が演じる趣向。

新菊五郎の弁天小僧はもう慣れたもので、危ういところがなく、全てが板についている感じ。セリフの間合いなど七代目によく似てきた。南郷は初役の松也。意外と言っては失礼ながら、弁天とのバランスがいい。松緑に習ったそうだが、松緑よりいいかも。團十郎の日本駄右衛門はいい意味でなく十二代目そっくり。

稲瀬川勢揃いは、新菊之助の弁天、亀三郎の忠信、梅枝の赤星、眞秀の南郷、新之助の日本駄右衛門。すでにそれぞれの父の色が透けて見えるのが面白い。菊之助は1人だけ大人が混ざってる⁉︎というくらいしっかりしているし、一際小柄な梅枝も柔らかみのある役のらしさをしっかり体現。亀三郎の口跡のよさ。子どもには傘を掲げているのは大変らしく、腕が震えたり、斜めになったりしていたのもご愛嬌。 二幕は極楽寺屋根上の大立ち回りを八代目がたっぷりと。最期の切腹まで、息をつかせぬ展開で手に汗握る。 龕灯返しで山門の場に移り、駄右衛門の捕物を見せた後、舞台がせり上がって滑川土橋の上には七台目菊五郎の青砥左右衛門と早替わりで伊皿子七郎に扮する八代目が登場。二人の菊五郎が並ぶ姿に世代交代の意義が重なり胸熱。山門の駄右衛門と三角形の形で決まるのも華々しくてよかった。
客席の上手後ろに補助椅子を置いて、藤純子、寺島しのぶが観てた。

2025年5月20日火曜日

5月20日 薫風歌舞伎特別公演 第三部

「鯉つかみ」 愛之助の11役早替わりに宙乗り、本水の立ち回りと盛りだくさん。7回目とあって早替わりは鮮やかだったが、11役もこなすと早替わりのための早替わりみたいな感じで、内容が薄いという印象は否めない。 三場の終わりのダンマリに登場した、中車演じる篠村次郎。最後に龍神丸を手に入れるのだが、悪役顔なのでてっきり敵方と思ってしまった。桶を使った立ち回りでミャクミャクを模る場面も。 大詰の本水は鯉の口から水鉄砲のように水を飛ばし、愛之助も盛大に水飛沫を飛ばす。5列目までレインコートが配られ、休憩中に劇場の係が1人1人の着用を確認する徹底ぶり。

5月20日 ロイヤルシネマ「白鳥の湖」

ヤスミン・ナグディとマシュー・ポールのペア。
リアム・スカーレットの振付はゆったりとしたボールドブラを多用し、オケもかなりスローテンポ。ベンノと王子の姉妹のパドトロワなど、主役以外の見せ場も多い。ベンノ役のジョンヒュク・ジュンは、長い手足、高い跳躍で見せる。
ヤスミンの踊りはシャープな印象。オデットよりオディールが生き生きとしていい。3幕のフェッテはトリプルから入り、ダブル、トリプルを多用。マシューは憂いをたたえた悩める王子。3幕の回転がスピーディで目を惹かれた。 ラストは白鳥たちの攻撃でロットバルトが倒れ、湖に身を投げたオデットの亡骸?を王子が抱き上げて幕。王子は後悔を抱えて生きていくということなのだろうか。

2025年5月18日日曜日

5月18日 南座歌舞伎鑑賞教室

歌舞伎のお噺は桂團治郎がナビゲーター役。50分の予定を1時間近く解説に使ったのだが、内容がチグハグな感じで果たして初心者に伝わったのか。吉太朗と千寿が女方の解説をし、観客を舞台に上げて実演も。 落語の「七段目」の抜粋を歌舞伎役者(千蔵、當史弥)を交えて演じるのは個人的には面白かった。千蔵が長いセリフを言うの、初めて聞いたかも。 舞踊「相生獅子」は千寿と吉太朗が姉妹のようで、華やか。後半の獅子の毛振りは、初めてという千寿は毛がもつれるところもあった。

2025年5月16日金曜日

5月16日 薫風歌舞伎 第二部

「千夜一夜譚 荒神之巻」 虎之介演じるアラジンがちっとも魅力的ではないので、終始モヤモヤ。遊郭で放蕩していながら、母親に楽をさせたいとか矛盾しているし、そのために王になるとか意味不明。表情がニヤニヤしているのが不遜な感じで、可愛げがないのだ。ランプを手に入れられる「目が澄んでまっすぐな人」に当てはまると思えない。茉莉花姫が惚れる理由も分からん。謀反疑いをかけられたアラジンを諌めるために母親(扇雀)が自害するのも意味不明だし、それで悔い改めるアラジンも理解不能ーーと書いていてキリがないな。

観てよかったのは澤瀉屋一門の芸達者ぶり。猿弥のランプの精は緩い感じでほっこり。「ぱっぱらぴーのぱ」みたいな呪文も脱力する。笑也の王妃の気高い美しさ。笑三郎の指輪の精のキツい感じもいいスパイスだった。老けたランプの精で鴈治郎が「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン」と笑いを誘う。ラストの紗武利矢王は威厳があってよき。
オープニングとエンディングの音楽が熊川哲也版クレオパトラと思って調べたら元のタイトルが「アラジン」だと知る。

2025年5月11日日曜日

5月11日 文楽公演 第3部

「平家女護島」

勘十郎初役の俊寛というのに、客入りはまばら。入門ということで冊子を配り、幕前に解説の録音が流れるが、あまり効果なさそう…。

床は若・清介。
いつも通りの超低空飛行。清介が荘厳な感じで、悟りを開いた琵琶法師みたい。

人形は一輔の千鳥がかわいい。とにかくかわいい。俊寛が岩場に登って船を見送るのは派手さはなく、深い諦念を感じさせる最後だった。

5月11日 團菊祭五月大歌舞伎 昼の部

「寿式三番叟」

又五郎の翁、雀右衛門の千歳、米吉の附千歳、松也の三番叟で幕開き。面箱があるのに素顔のままで舞う翁。三番叟に移ると、歌昇、萬太郎、右近、種之助がせりあがり五人に。黒、紫、緑、青、黄色と色鮮やかで楽しいが、少々長い。ドヤ顔の歌昇、ちょっとタイミングをずらす右近が目につく。

「勧進帳」

新・菊五郎の冨樫が清廉にして線が太く立派。梅玉の義経、男女蔵、松也、鷹之資、右近の四天王と襲名披露らしい配役だが、団十郎の弁慶が…。取り立てて悪いところがあるわけではないのだが、セリフが上滑りする感じで言葉の意味が響かない。オレ様な感じで義経への敬意が感じられないし、先代に似て見えたのはむしろ悪い意味で。表情が子供っぽいというか、新之助に似て見えた。山伏問答も、互いの緊張感が拮抗していないと迫力に欠けるのだなあ。

「三人吉三」

時蔵のお嬢、彦三郎のお坊、錦之助の和尚はいい配役。夜鷹の莟玉は町娘のよう。

「京鹿子娘道成寺」

新・菊之助、菊五郎に玉三郎が加わり三人花子に。
はじめ、花道のスッポンから菊之助と菊五郎が登場。息のあった踊り。所化とのやりとりは菊五郎1人で、烏帽子をもらって引っ込んだのち、紅白幕が落ちて3人が登場。3人の花子は時に影のように、時に鏡に映った像のように、姉妹のように、親子のように。踊り上手の2人に挟まれた菊之助が小さいながら立派な舞い手。誰よりも背中を反らせ、きっぱりと踊るのが好ましい。菊五郎は円熟味を増し、堂々と。玉三郎は﨟たけた風情があり、さすがの貫禄。鐘をきっと睨むところは、玉三郎は怒り、菊五郎は悲しみがあるように見えた。ただ、動きがミニマムになっていたのは体調が悪かったからか。背を反らすところはほぼ直立で、鞠つきは袖に捌けて菊之助・菊五郎のみに。座って鞨鼓を打つところは膝を曲げた状態をキープできずにドンと音が鳴ったように聞こえたのも心配。

2025年5月10日土曜日

5月10日 文楽公演 第2部

義経千本桜の伏見稲荷から道行まで。ほぼ4月公演の配役だが、一部違いも。

伏見稲荷の段は睦・勝平。 4月公演とは別配役。こちらの方が落ち着きがあったか。

渡海屋から大物浦は小住・清志郎→芳穂・錦糸→錣・宗介のリレー。
4月と同じ配役だけあって、語りが練られてきた感じ。

知盛は万博で休演の玉男に代わり勘十郎。知盛がポーズを決めるたびに拍手があるのは調子が狂う。最期は後ろ向きに飛び込む形。
和生の典侍局に品格がある。

道行は呂勢、靖、亘、碩、文字栄に清治、清馗、寛太郎、燕二郎、藤乃亮。
弾きだしから華やか。4月とは何が違うのだろう。
人形は簑二郎の静に玉助の忠信。見台抜けはなく、桜の書き割りの後ろから。狐の人形が上手を向く時、葛の葉と同様に右前脚が引っかかる。

5月10日 文楽公演 第1部

「蘆屋道満大内鑑」

賀茂館からの半通しなので、葛の葉子別れに至る物語がよく分かる。

賀茂館の段の口は南都・団吾。 がちゃがちゃした印象。 奥は万博出演の藤・燕三に代わり、靖・燕二郎。
硬さは致し方なく、1日限りの代役としては大健闘では。途中、燕二郎が演奏をブツッと切ったので糸ご切れたのかと思ったら、繰っているだけだった。短い時間なので焦ったのか。靖は喉を絞ったような発声が苦しい。
保名物狂いの口は碩・清公。 のびやかな声が聞きやすい。 奥はは織、織栄に藤蔵、清冘。
織はいつも通り。太夫が2人いるのに語り分けするでなく、保名も葛の葉姫も織が語り、時折織栄。いっそ1人で語っては?と思う。 葛の葉子別れの中は三輪・団七。 切は千歳・富介。さすが切語りの安定感。 信太森二人奴は希、津国、咲寿、聖、薫に清友、清丈、友之助、錦吾、清方。
3枚目の友之助から弾きだしたのでびっくり。野干平を希、与勘平を津国だが、そっくりという設定なのに全然違う、、、。

保名の清十郎はほじめ姿勢が悪くてどうしたものかと思ったが、子別れのあたりからはよかった。玉延の童子がいたいけで可愛らしく、目を引かれた。葛の葉は勘彌。甲斐甲斐しい女房、母親の風情がいい。役者が二役を演じる歌舞伎と違って、文楽は狐と本物の葛の葉が別なのに、機織りを覗くときに障子を閉めたままなのはいかに。動物らしさはちゃっと薄いか。狐の人形で下手向きになる時に左の前足が引っかかってしまうのが気になった。

2025年5月4日日曜日

5月4日 宝塚星組「阿修羅城の瞳」

劇団⭐︎新感線の代表作を小柳奈穂子が宝塚化。3時間あまりの原作を1時間35分にうまくまとめて、テンポよく楽しめた。(というか新感線はちょっと冗長) 病葉出門の礼真琴はトップスターらしく、真ん中に立つ存在感が十分。何より、歌に不安がないのがいい。初め和装は今ひとつかと思ったが、着流しの裾を捲って立ち去る姿や、派手な立ち回りで見せた。(ただ、立ち回りは周りが今ひとつ)闇のつばきは暁千星。綺麗だけれど、宝塚の男役が女を演じる時の常でどこかオカマっぽい。役の重さから娘役よりも男役にという配役なのだろうが、礼よりも背が高いので並んだ時のバランスが今ひとつ。ただ、終盤は気にならなくなって、最後に出門と刺し違える(?)ところは引き込まれた。 出門に執着する敵役、安倍邪空は極美慎。鬼御門を去った出門を恨むのは愛情の裏返しという感じだが、BL味がもっと濃くてもいいかも。 ショーの「エスペラント!」は生田大和の演出。 色とりどりの衣装が華やかで、王道の宝塚レビュー。ここでも歌うまのトップの安定感が抜きん出ている。 娘役トップは置かないつもりなのか、デュエットダンスがなかったのは物足りないが、燕尾服でのソロやタップダンス、男役の群舞など、男役トップの集大成を見せる。 ロケットは新人のお披露目で、タップダンスからの流れがよく揃っていた。

2025年5月3日土曜日

5月3日 第四回 みのり会

和田合戦女舞鶴の市若初陣の段を芳穂と燕二郎が熱演。約1時間が短く感じた。 「ほんのほんの、ほんぼんの子じゃわいなう」の嘆きはいい声で聞かせ、悲壮感も十分、だが、作品としては、人物関係がややこしすぎるし、怒涛のような山場の連続が押し付けがましいというか、こってりしすぎていて聞いて疲れる。 燕二郎は手数の多さに手一杯の様子で、間違えたのが表情に出てしまったところも。

2025年4月29日火曜日

4月29日 文楽公演 第3部

道行初音旅は織、靖、碩、聖、織栄に藤蔵、清志郎、寛太郎、清公、錦吾。
織はいつもよりやや控えめな感じもするが、上を向いて歌い上げる。靖は喉が開いてない感じで、声が前に出ていない。三味線もどこか重く、ウキウキした華やかさはないか。

一方、人形は一輔の静に品があって良き。扇の扱いも優雅で、扇返しや扇投げも綺麗に決まった。勘十郎の狐忠信は念願?の見台抜け(織栄の見台が真ん中から真っ二つ)で登場。(ぼーっとして見逃したので、翌日幕見で確認)

川連法眼館の前は睦・勝平。
出だしはまずまずと思ったが、義経の高音が掠れて聞きづらい。
切は千歳・富助に燕二郎のツレ。狐言葉が控えめで、時々「コンッ」と言うのと、出だしを伸ばすくらい?

狐忠信は登場こそ下手からだが、障子を破ったり、壁から出てきたりも。最後は宙乗りで華々しく幕。

2025年4月28日月曜日

4月28日 文楽公演 第1部

「義経千本桜」

大序は御簾内で織栄→碩→薫→聖、清方→清允→藤之亮→燕二郎のリレー。 織栄が思っていたより調子はずれ。碩の安定感。聖はのびのび。 堀川御所の奥は藤・燕三。 のびのび語る藤に燕三の三味線の的確さ。 アトは亘・友之助。 亘の語りは力んだ感じがなくなってだいぶいい。友之助の表情に気合いがみなぎる。 伏見稲荷の段は希・団七。 力みすぎなのか、声の調子が合っていない感じ。 渡海屋・大物浦の口は小住・清馗。 のびのびとしたいい声で語ってよき。三味線がもっと良ければ。 中は芳穂・錦糸。 ちゃんとしてる。 切は錣・宗助。 時代ものの切場はちょっと辛い。 人形は一輔の静に品があってよき。勘十郎の狐忠信は当たり役。弁慶の玉佳はどこか愛嬌がある。 玉男の知盛。最後は沖の岩場まで船で乗り付け、頂上から飛び込まず後方へ沈んでいく演出。典侍局 の和生は抑制された演技。

2025年4月27日日曜日

4月27日 深川秀夫バレエの世界

冒頭、スクリーンに往年の深川が踊る映像が流れ、故人の功績を改めて認識。バリシニコフと競ったというコンクールの模様など、高いジャンプや回転のキレの良さに驚く。 「ディ・フィーダー」 ジュニア向けに振り付けた白鳥に憧れるカルガモの踊りとのこと。黒地にカラフルな羽飾りをつけた総勢25人の女子ダンサーが美しく青きドナウの調べに乗って踊る。「白鳥の湖」を思わせる振り付けがあるなど、楽しいのだが、途中、「ギャッギャッ」という鳴き声をあげる場面は急な大音量にギョッとした。もうちょっと控えめでもいいのでは。 「ラフマニノフ・コンチェルト」 女性ダンサーばかり18人が様々にフォーメーションを変えつつ踊る。 「光の中で」 佐久間奈緒。スポットライトの中、舞台の準備をしているかのような女性ダンサーのソロ。 「レ・ゼトワールド」 女性8人の華麗な踊り。 「新たなる道へ」 田舎風の衣装の女性たちが、新天地へ向かうという説明だが、最後、舞台下手へ行きかけて引き返すのは元の世界に戻るように見えた。 「顔のない女」 青山季可と4人の女性ダンサー。ストーリー性の濃い作品で、仮面をつけた女はアンティークのフランス人形のような、美しくも少し衰えた感じが切ない。 「ソワレ・ド・バレエ」 中村祥子、米沢唯、池田理沙子、厚地康雄、中家正博、奥村康祐という錚々たるダンサーに、関西の上山榛名、春木友里沙、水城卓哉、今井大輔の5組のパドドゥに女性ダンサーの群舞。
中村祥子の風格ある優雅さ。真ん中にいる存在感が違う。米沢唯も気品ある踊りで存在感を発揮。池田理沙子はフレッシュな踊りでちょっと若く見える。そして奥村康祐のパートナーシップよ。これという見せ場がないのは残念ながら、アイコンタクトや微笑みの優しさにうっとり。

2025年4月26日土曜日

4月26日 文楽公演 第2部

「義経千本桜」

椎木の段の前は咲寿・団吾。
織の預かりとなり、師匠に借りたという肩衣で登場。落ち着いた語りぶりだったが、まだまだ若手から抜けられない感じも。団吾はいつも通り。

後は三輪・清友。
どうということもなく。小仙は権太が悪いことをしていると分かっていながらなぜ見逃すのかと思うなど。歌舞伎と違って善太の一文笛を吹く場面がないのは、この後に生きないと思った。

小金吾討ち死には、津国、南都、薫、文字栄に清丈。 床が揃ってないというか、それぞれ役に合っていない感じでガチャガチャしている。 すしやの前は呂勢・清治。 安定感のある語りでホッとする。お里や権太、母、維盛、弥左衛門らの人物造形が明確で、物語がくっきり。原作通り、弥左衛門が元盗賊の設定で、「親の因果が子に報い」の因果関係がはっきりする。 三味線はかつてのような精彩はもはや望めないのか。 切は若・清介。 うーん。安定の慎重運転で、速度遅すぎませんか? 急に別の物語世界に移行したみたい。 取り巻きが「待ってました」の声かけもいかがなものか。 人形は玉勢の小金吾が大立ち回りを力強く。権太は玉助で、人形より人形遣いが前へ出て感じる。玉也の弥左衛門に深みがある。

2025年4月17日木曜日

4月17日 マスタークラス

望海風斗演じるマリア・カラス。 引退後のカラスを演じるには少し若すぎる感もあるが、生徒に対峙する様子には威厳があり、皮肉っぽい物言いなど大プリマの貫禄は十分。歌唱シーンはないとのことだが、発声の見本を示したり、歌曲の一部を口ずさんだりする時は、歌のうまさが生きた。眼目は夫やオナシスとの会話を一人芝居で演じるところ。特に、横暴なオナシスのセリフは元男役トップの本領を発揮した。一人芝居から往年のマリア・カラスの音源に移行するところがスムーズで、ドラマの世界観が広がる。一方、女のセリフは甲高い声で甘えたような口調になるのは興醒め。ちょっとおどけたようなところは、黒柳徹子を想起させるところも。 マリア・カラスとオナシスの関係はなんとなく知っていたけれど、歌手活動をやめさせたり、子ども以外は愛さないと言ったり、こんな横暴な男のどこに惹かれたのか、さっぱりわからん。

2025年4月13日日曜日

5月13日 四月大歌舞伎

「毛谷村」のみを幕見で。新国立劇場から駆けつけたので、杉坂墓所には間に合わず、舞台転換後の毛谷村から。
仁左衛門の六助のチャーミングさ、凛々しさに感服。子ども相手の優しいおじさんから、騙されたと知った怒りへの変化率が凄まじい。弥三松をあやすところは少し短めで、「お獅子パクパク」がなかったのが残念。
孝太郎お園も女武者の凛々しさから、許嫁と知ってからの可愛さへのギャップが大きいが、ちょっとシナシナしすぎかもと思った。
歌六の弾正は憎々しい敵役で、仁左衛門に対峙するのに十分な貫禄。弥三松は秀之助。回を重ねているので落ち着いている。
斧右衛門が誰かと思ったら歌昇でびっくりした。



5月13日 新国立劇場バレエ団「ジゼル」

池田理沙子・奥村康祐ペアはこの1回のみ。

1幕のジゼルは純朴な村娘。恥じらいながらもアルブレヒトの熱演なアプローチにぽーっとなった初心な少女そのもの。狂乱のシーンはちょっと物足りないか。
奥村のアルブレヒトは少年のようで、無邪気に可愛い女の子に好き好きと言っていたらとんでもないことになってしまい、慌てている風。バチルドの手にキスしながらも、ジゼルを気にしている様子があり、このアルブレヒトなら、心から後悔していそうだし、許せるかもと思わせる。
木下嘉人のヒラリオンは説得力あり。心からジゼルを愛しているのに、むくつけきルックス故にジゼルには伝わらず、やることなすこと裏目に出てしまう残念なひと。 ペザントは東真帆と石山蓮。2人ともロールデビューだそうで、フレッシュな踊り。

2幕の池田ジゼルは人ならぬもの感が薄く、1幕に比べ凡庸な印象。右足を上げるバランスでもたついたり、リフトでぐらつくなど、ミスも気になった。奥村のアルブレヒトは後悔の念がひしひしと伝わる。感情を優先するあまりバランスを崩すようなところもあり、テクニックより役を生きている感じがした。
ミルタは山本涼杏。初役のせいか、まだこなれてない感じで、もっと音をはみ出すくらいの大きさが欲しいと思った。回を重ねて威厳が増すのを期待したい。モイナとズルマは東真帆と飯野萌子。東はペザントと2役。下手前方の席だったので、ミルタを先頭に襲いかかるウィリー軍団が迫って来るようで怖かった。

2025年4月12日土曜日

4月12日 新国立劇場バレエ団「ジゼル」

米沢唯が全幕復帰。1幕は華奢で儚い少女。ほんとに体が弱そうで、心臓発作で苦しむところなどリアルな演技だった。2幕は軽さというより浮遊感があり、人ならぬものの感じがすごい。墓から出てすぐの回転など、何かに操られているよう。
井澤駿のアルブレヒトは軽薄な感じ。バチルドの前では知らんふり。ジゼルが死んだ時も、悲しみよりもヒラリオンへの怒りが強い。
ヒラリオンは中家正博。悪い人ではないのに、浮かばれない悲哀がある。2幕の冒頭、舞台中央で佇む姿にも誠意が感じられる。 ペザントは飯野萌子と山田悠貴。山田の跳躍が高くキレがある。村人たちを率いて踊るのが勢いがあってワクワクする。
ミルタの根岸祐衣は登場時のパドブレの細かさと速さが異世界の雰囲気を醸し出す。ちょっと厳ついくらい威厳があり、不思議な力を秘めていそうで恐ろしい。
モイナの東真帆は滑らかなライン。ズルマの直塚美穂はシャープな踊りゆえか生命力が感じられ、生身の強い女みたい。ヒラリオンを引っ立てて崖から突き落とすところなど、喧嘩強そう。

カーテンコールは満場の拍手。米沢は涙ぐんでいるように見えた。


2025年4月6日日曜日

4月6日 四国こんぴら歌舞伎大芝居 第一部

「毛谷村」 萬太郎の六助はキビキビして気持ちいいが、ちょっと奴さんぽいかも。時蔵のお園は1月の国立劇場でも好演だったが、女武道の凛々しさと可愛らしさの入り混じる様子が良い。微塵弾正は錦之助。出番が短く、もっと憎々しさが欲しかった。 吉弥が一味斎後室お幸で、キリリとして武家の品格を感じる。弥三松は夏幹。可愛らしく、セリフもしっかり言えていたが、何もないところは集中力が途切れてしまうよう。試合の検分役の侍に千次郎、杣に當吉郎など、上方の役者が出てい流のが嬉しい。 「魚屋宗五郎」 獅童の宗五郎はのびのびやっていて、楽しそう。剃り跡?の水色が鮮やかすぎる感じでちょっと違和感。 コントのようになりそうなところ、時蔵のおはまがしっかり歌舞伎にしている感じ。宗五郎と取っ組み合うところも、きちんと形が決まっているのがさすがだ。おなぎの吉太朗がしっかり努める。宗五郎に絡まれて戸惑うところとか。 精四郎の三吉、父太兵衛の権十郎。丁稚与吉を陽喜。お兄ちゃんだけあってセリフもしっかり。 にの3という良席で、芝居小屋を堪能したが、後ろの席の人が足を伸ばして座っていて正面を向いて正座ができないのは辛かった。

2025年4月5日土曜日

4月5日 林喜右衛門襲名披露能

たくさんの花束、盛装した観客、そして何より出演者が大勢で、華々しい襲名披露。

舞囃子「高砂」は観世三郎太。手足が長いせいか、静止している間が長く感じる。 蓮吟「日蝕詣」

能「卒都婆小町」
宗一郎改め喜右衛門のシテ。襲名にあたって観世宗家が上演を許したそうだが、40代で老女ものはやはり映らないというか。一度之次第の小書きで、小町が橋がかりを歩いてくるところから始まるのだが、舞台にたどり着くまでの長いこと。その後、ワキの福王茂十郎、ワキツレ知登が登場して卒都婆問答になる。問答はどうということもなかったが、深草少将の霊が乗り移ってからは表情がグッと増した感じがした。ひとしきり、恨みつらみを述べたのち、小町が出家すると言って終わるのは唐突な感じだけれど、不思議な爽快感がある。
裏千家業躰・林松響階会長の金澤宗達氏の挨拶を挟んで、
狂言「末広かり」は千五郎の主人、千之丞の太郎冠者、忠三郎のすっぱ。千五郎の大物感、千之丞の軽妙さ、忠三郎は策士な感じ? 主人が怒って、飛び上がって勢いよく座り込むところに迫力がある。忠三郎の装束がタイガースカラーに見えた。
仕舞「老松」山本章弘、「通盛」上野朝義、「西行桜」大槻文蔵、「二人静 キリ」吉井基晴・上田貴弘、「山姥」大西礼久。 一調「張良」有松遼一・前川光範。「笠之段」藤井完治・大倉源次郎。 小舞「子の日」茂山七五三。 仕舞「嵐山」片山信吾、「屋島」浦田保浩、「誓願寺 キリ」井上裕久、「網之段」杉浦豊彦、「野守」大江伸行。
仕舞、一調がこんなに並ぶと壮観。

能「石橋」は観世清和のシテ、喜右衛門、彩八子、小梅のツレ。子方は赤い鬘に鼻から下を覆うマスク。親獅子の白頭に対し、赤頭の子獅子3頭のところ、所作台から子獅子を蹴落とすくだりで喜右衛門も一緒に蹴落としているように見えるなど、親2頭、子2頭に感じるところも。。喜右衛門は卒都婆小町と打って変わってキビキビとした所作に勢いがあり、喰らいつく娘たちの懸命さも相まって、とても見応えあり。

2025年3月22日土曜日

3月22日 三月大歌舞伎 夜の部 Bプロ

五・六段目は勘九郎の勘平。セリフ回しや表情など、勘三郎を彷彿とさせる。千崎と不破が訪ねてきたところでは、自分から刀を抜いて身だしなみを整える。七之助のおかるは玉三郎を思わせるところが。梅花のおかやは情のあるおっかさんで、いろいろ分かっている感じがした。
定九郎は隼人。影のある悪人らしさ、声の凄みがあり、役らしい。やることが多くてちょっと段取りめいたところもあったが。
判人源六は松之助で、上方言葉のもっちゃりした感じがよき。一文字屋お才が魁春で、江戸弁だったように思うが、不思議と違和感はなく。

七段目は仁左衛門の由良之助が絶品。先日初役の愛之助を見た時は悪くないと思ったが、やはり役者が違う。酔態の柔らかみ、家老としての器の大きさ。帰る力弥を呼び止めて「祇園町を出てから急げ」というところの間の絶妙さ。おかるとのやりとりの洒脱さ、軽妙さなどなど。これぞ大歌舞伎の由良之助。
七之助のおかるはすでに遊女のあしらいを身につけている感じ。松也の平右衛門とはちょっと恋人っぽい。与一兵衛と勘平が死んだと聞かされたくだりで本当に泣いたようで、終盤は目元の化粧が滲んでいた。松也の平右衛門は足軽にしては軽妙さがないかも。スッキリと格好いい。

十一段目は小林平八郎の萬太郎、竹森喜多八の橋之助が役替わり。萬太郎は松緑に比べると凄みが足りないのは経験値の差。橋之助は若手浪士で最初にセリフを言う場面が多いせいか、声が印象に残った。菊五郎の服部が出てくると一際大きな拍手。仁左衛門の由良之助とのやりとりは、大物同士の大らかさで、これぞ大歌舞伎。

3月22日 三月大歌舞伎 昼の部 Bプロ

大序から三段目。芝翫の師直は重みがあり、嫌味ったらしく憎たらしく、これぞという師直。顔世御前に言い寄るところなど、時蔵のクールビューティぶりと好対照。菊之助の判官は貴公子然としていて、直にいびられても静かな怒りというか、堪忍袋に溜まっていく感じがなくて、刃傷に至るほどのエネルギーが感じられない。抱き止められた幕切れも、無念さが薄い。
若狭之助の右近もなんか違う。型通りに踊っているみたいで、マンガっぽいというか師直への怒りがあまり感じられない。長袴の裾捌きは鮮やかだったが。
伴内は橘太郎。軽妙洒脱でスッキリした三枚目。本蔵からの賄賂を受け取るところのやりとりは、先日の松之助とは違うバージョン。手下らに本蔵を襲わせる合図が咳払いだったり、「何もかも打ち捨てて襲え」と言ったら刀からなにから放り出したり。

四段目は松緑の由良之助の駆けつけるところが、本当に走ってきたみたいだったが、セリフが今ひとつなので緊張感が途切れる。菊之助の判官は意外にも勘平腹切りのほうが良かった。 石堂は弥十郎。扇の要を外した。

道行は愛之助の勘平、萬寿のおかる。愛之助勘平は優男。金と力はなかりけりといった感じ。萬寿は姉さん女房。伴内は亀蔵。滑稽みが薄いか。

2025年3月20日木曜日

3月20日 三月大歌舞伎 Aプロ 夜の部

五段目、六段目は菊之助の勘平。運やら思慮深さやら、色々足りない色男という感じが勘平らしい。不破らが訪ねてきたところで、刀を腰に差す表紙に鍔から出たのを見て身だしなみを整える。腹を切ってからは、なぜか爽やかというか清々しい感じがした。
時蔵のお軽は六段目では腰元の行儀良さ、七段目では女房らしさがある。いざ出発しようとして勘平に呼び止められ抱き合うところは気持ちが高まる。吉弥のおかやは娘可愛い情のある母親。あまり物事を分かっていなくてうろうろする感じ。
一文字屋お才は萬寿、判人は橘太郎。江戸弁のチャキチャキした口調がテンポいい。
斧定九郎は右近。粋で格好良すぎ。浪人で山賊まがいのことをしているやさぐれ感が必要では。「五十両」のセリフも凄みがない。

七段目は愛之助初役の由良之助。キリッとしたところはできる家老らしくてよいが、酔態の柔らかみは今ひとつ。酔っ払っている感じがなくて、作り阿呆のようにふざけているみたい。
左近の力弥は花見を出てくる時全く上体がブレないのがさすが。セリフはもう一つだが、所作の美しさは抜きん出ている。   

おかるは遊女の格好だけれど、女房の心を感じる。かんざしを落とすところは誤って2階の畳に落ちてしまったのを、すかさず舞台袖から投げ込まれた。巳之助の平右衛門とのジャラジャラは楽しそうだが、仲のいい兄妹。

巳之助の平右衛門がとても良き。格好いいし、セリフも良い。十一段目の最後、花道を引っ込むところは三津五郎に似て見えた。
 
十一段目はやはり蛇足だと思うが、今回は最後に菊五郎が出てきて豪華な感じ。馬に乗って鳥屋から出てきたのでびっくりした。袴と足が不自然な感じだったので、本当には跨っていないのかも。
松緑が小林平八郎で竹森喜多八の坂東亀蔵と大立ち回り。



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3月20日 三月大歌舞伎 Aプロ 昼の部

開演10分前から口上人形による配役紹介。菊五郎から始まり、夜の部の役も全て述べる。全部は聞き取れなかったけど、千寿や愛三郎、芝のぶの名前もあったような。仁左衛門の名前で一際大きく長い拍手。

大序は俯いて静止している役者たちが、竹本が名前を挙げるに従って息を吹き込まれたように動き出す。松緑の師直はすでに憎らしげ。ただ、セリフを喋ると軽くなるようで、三段目の鮒侍のくだりなど意地悪なのだが町人ぽいというか、品格が薄いと感じた。 
三段目の伴内は松之助。もっちゃりとした上方の伴内で、進物の場で右足を出したら本蔵を討てと家来らに。

松也の若狭之助は血気あふれる青年らしい。勘九郎の判官はいびり倒されてだんだん怒りを蓄積していく様が鮮やかで、刃傷に及んだところの緊張感もよき。ただ、本蔵らに抱き止められた無念さを示す仕草が、幕が閉まる直前、キュンポーズみたいになっていた。

四段目は通さん場ではないものの、緊張感ある静けさみなぎる。勘九郎の判官は気品を保って最期を迎える。莟玉の力弥は初々しい少年らしさ。仁左衛門の由良助が出るとさすがの貫禄で舞台が一気に引き締まる。梅玉の石堂は扇の要を外さずに判官の遺体の上に置いていた。

城明け渡しは、敵討にと迅る若い家臣らを由良助が止めたり、九太夫(片岡亀蔵)が金欲しさから不忠ぶりを滲ませたりと、色々あり。「ハッタと睨んで」だけの文楽とはだいぶ違う。

道行は隼人の勘平、七之助のおかる、巳之助の伴内。七之助おかるはアイメイクがシャープなせいか、クールに見える。隼人は優柔不断な色男。巳之助の伴内が滑稽みといい、身のこなしといい、とても良い。

2025年3月18日火曜日

3月17日 三月花形歌舞伎 松プロ

 口上は虎之助。ペラペラとよく喋り、落語家のよう。遅れて入ってきた客をいじるなど、感じ良くない。

「妹背山婦女庭訓」三笠山御殿

お三輪を米吉。娘らしい可愛らしさで、官女らにいじめられるところは消え入りそうな声で哀れ。疑着の相の迫力は薄かったか。鱶七の福之助はやや線が細い感じもあるが、堂々としていて良い。橘姫の吉太朗はもはや安定感さえある。いじめ官女に千次郎、翫政ら。壱太郎が豆腐買いで盛り上げる。

「於染久松色讀賣」

壱太郎が5役を早替わり。そつなくこなしていたが、今一つ響かないのは何故だろう。


2025年3月16日日曜日

3月16日 文楽京都公演 Aプロ

解説は睦太夫。テンション低く、あらすじを読み上げるようでやる気を感じられないのだが。 

「二人三番叟」

靖、碩に団吾、友之助、燕二郎、藤之亮。
三味線、人形、鳴り物のリズムがバラバラで、気持ち悪い。辛うじて2枚目が繋ぎ止めていたように感じた。 人形は紋吉と玉誉。 

「絵本太功記」

夕顔棚を睦・団七。
時代もののせいか、ちゃんと聞けた。

尼崎の前半を千歳・富助。
なぜだか初菊と十次郎が互いを思いやるやり取りが耳に留まった。さつきもいい。切語りが前半なのはいいが、30分ほどで交代したのはいかに?

後を靖・勝平。
45分ほどのクライマックスを熱演。錦糸と素浄瑠璃で語った時より力が入っているように感じた。見台に乗り出すような姿勢も含め。現れ出でたる武智光秀のところで、「靖太夫、勝平、玉男」の掛け声があったが、キレが悪く間も悪い。

人形は簑二郎の操が簑助を彷彿とさせる細やかな動き。だがこの役にはうるさいかも。一輔の十次郎は爽やかな若武者ぶりがいいが、手負になって戦況を語るところは活発に動きすぎではと思った。

3月16日 文楽公演 Bプロ

解説は織太夫。
人形浄瑠璃の発祥は京都とか、ご当地ネタはよいけれどちょっと説明不足では。文楽の発祥は大阪とも言っているので、義太夫節以前の古浄瑠璃があったことを知らない観客は混乱する。

「近頃河原の達引」

四条河原の段は睦、咲寿、織栄、碩に清丈。
伝兵衛の睦は掠れ声が辛い。男性キャラでこれではしんどい。咲寿は官左衛門にしてはりっぱすぎ。織栄は若手らしく元気良い語りでいいのだが、全体としてうーん…。碩が出てきて聞きやすさにホッとする。

堀川猿回しの前は織・藤蔵に友之助のツレ。
稽古娘と与次郎母の浄瑠璃稽古の場面もはっきり語り分けていた。娘がちょっと子ども過ぎという感じがしなくもないが。織自身が基本格好いい人なので、与次郎が猿回しにしては男前な口調。

後は呂勢・燕三に燕二郎のツレ。 
浄瑠璃の楽しさを堪能。与次郎に3枚目のおかしみがあり、チャリ場がちゃんと面白いからこそ、悲劇が引き立つ。与次郎、おしゅん、伝兵衛、母との四者四様の引き細々。三味線も鮮やか。ツレに燕二郎の師弟共演も嬉しい。

人形は紋秀の官左衛門の形の良さが目を引いた。伝兵衛に金を要求する時に右手を差し出す様や、立ち回りの極まりの姿勢が良い。 和生のおしゅん、伝兵衛の玉佳、玉也の与次郎と配役もよく、充実の舞台だった。

3月15日 新国立劇場バレエ団「バレエ・コフレ」ソワレ

「火の鳥」

小野絢子の火の鳥は野生味と気高さを併せ持ち、神秘的な存在。イワン王子の奥村康祐は少年らしい好奇心で火の鳥を捕らえた感じ。逃げようとする火の鳥と王子の間に通じ合うものがあるようで、パドドゥがどこか官能的。魔王カスチャイの小柴富久修は背中の曲がった老人のようで、あまり強そうではない。
魔物たちが未知の民族舞踊のような衣装、踊り。卵を割ったら魔王が死ぬとか、シュール。

「精確さによる目眩くスリル」

米沢唯、直塚美穂、根岸祐衣、速水渉吾、渡邊峻郁によるパドサンク。早いテンポで踊れる人たちがこれでもかと踊りまくるスリリングさよ。そして、同じ振りをしていても米沢のしなやかさが際立つ。直塚は力強さ、根岸は端正な印象。男性陣は力強い跳躍で、速水のポーズの美しさ、渡邊のスピード感が圧巻。
拍手が鳴り止まず、幕が降りた後も再度カーテンコールした。

「エチュード」

プリンシパルが揃うとこうも変わるのか。プリマの木村優里に華があり、ステージを支配するような威厳も感じる。福岡雄大、井澤駿の風格は言わずもがな。

5月15日 新国立劇場バレエ団「バレエ・コフレ」マチネ

「火の鳥」 
池田理沙子の火の鳥はテクニックに不足はないが、人外のものの感じは出ていたがどこか小動物のようで、少し物足りない。
魔王カスチュイの中家正博は不気味さあふれる怪演。カーテンコールで火の鳥にちょっかいを出してやり込められる一芝居も。

「精確さによる目眩くスリル」
花形悠月、山本涼杏、東真帆、森本亮介、上中佑樹。
速く、精確に高度なテクニックが次々と繰り広げられ、息つく暇もないほど。スリリング。

「エチュード」
基本のバーレッスンから始まり、流石日本のトッププロなのでよく揃っていて美しいのだが、凝ったことをしているわけではないのでだんだん退屈になってきた。
プリマの柴山沙穂に華がないのも辛い。プリンシパル役の若手2人、永井駿介、山田悠貴は頑張っていたが。

2025年3月8日土曜日

3月8日 素浄瑠璃の会

 芳穂・錦糸で「奥州安達原」の袖萩祭文。

芳穂は語りわけもしっかり。情感もよく、1時間あまりの長い段だが、意識が途切れることなく集中して聞けた。お君がちょっと可愛くなかったが。錦糸の三味線は的確。

2025年3月1日土曜日

3月1日 フェニーチェ文楽「魂がゆくえ」

第一部
鼎談は木ノ下雄一を聞き手に、錣、勘十郎。「合邦」について、錣は、玉手はずっと本心。俊徳丸への恋も、継母としての思いも、我が身を犠牲にして病を治すのも。我をだしてはだめ。全て床本に書いてあるので、そのまま演じるだけと。手負いになると力を抜ける(=楽)と先輩方は言っていたとか。 勘十郎は俊徳丸がいるかどうか分からないまま庵室を訪れる。父母との会話の中で気づく瞬間がある。恋か母心か、日によってバランスが変わると。
床と手摺りで玉手の捉え方が違うようだけど、上演して齟齬はないのだろうかと思うなど。

「摂州合邦辻」
合邦庵室の弾を錣・宗助。情感あふれる語り。
人形は勘十郎の玉手、玉志の合邦、簑一郎の女房。
紋臣の俊徳丸はニンでないのか、今一つ。紋吉の浅香姫、簑太郎の入平。


第二部の鼎談は木ノ下、勘十郎に呂勢。
語る時はどのくらい感情移入するかとの問いに、「人によって異なる」とはぐらかす呂勢。「嫗山姥」はストーリーがなくいい曲なので語っていても楽しいと。

「嫗山姥」
呂勢・藤蔵に清允のツレ。
人形は勘十郎の八重桐、勘次郎の澤瀉姫、簑紫郎の時行。紋秀の藤浪、勘介の太田太郎。
時蔵襲名の時が面白かったので期待していたのだが、それほどでもなく。 

2025年2月23日日曜日

0223 貞松・浜田バレエ団「ラ・バヤデール」

60周年記念の新制作。振付の貞松正一郎は幻の場面で終わらせず、最後の崩壊まで描くことにこだわったそう。

ニキヤ役の名村空の慎ましい雰囲気に対し、ガムザッティの井上ひなたは華があ李、とても役に合っていた。ソロルの水城卓哉は優柔不断なキャラを見事に表現していた。

ラジャの川村康二はひょろりとした姿が少し頼りない感じ。ハイ・ブラーミンの武藤天華、マグタヴェヤの幸村恢麟はステレオタイプなルックスのままなのはどうだろう。新制作なので少し配慮が欲しかった。ブロンズアイドルの小森慶介はキレのあるジャンプや回転で見せた。

2025年2月16日日曜日

2月16日 文楽公演 第2部

「妹背山婦女庭訓」

猿沢池の段を亘・寛太郎。
女の声ががちゃがちゃしているほかは、板についてきた感じ。寛太郎はきっちり、楷書の演奏。

鹿殺しは御簾内で薫・清方。
語り出しは悪くなかったが、だんだん2制御が聞かなくなる感じ。

掛乞の段は小住・清丈。
落ち着きがあって良い語り。

万歳の段は芳穂・錦糸に清允のツレ。
こうやって聞いてくると、芳穂ってうまい。音楽性もあるし。錦糸はなんか不機嫌そうだったが的確な音。

芝六忠義は千歳・富助。
これぞ切場の語り。子どもの声が可愛くないのは相変わらずだが、三作と杉松の語り分けもしっかり。

人形は玉助の芝六が豪胆。三作は玉彦で、万歳の踊りを頑張っていた。お梶の清十郎が母親の悲しみをくっきり描く。

2月16日 文楽公演 第1部

「妹背山婦女庭訓」

小松原の段 
三輪、咲寿、南都、文字栄、津国に団吾。
咲寿はいつもより落ち着いた声でよく響いていたが、雛鳥ならもっと可憐さがほしい。

太宰館の段は希・団七。
よく声が出ていたし、入鹿の大笑いはゆったりと時間をかけて大きさを出そうとしていたが、拍手がない。どこか空虚な感じがするからか。団七は大笑いの終盤、抑えた掛け声がよき。

妹山背山の段は若、藤に清志郎、清介の背山に、呂勢、錣に清治、藤蔵の妹山。
清志郎の弾き出しの力強さ、これぞ背山という重厚感。藤はやたら顎を使った語り?対して妹山の柔らかさ、華やかさが際立つ。清治の三味線、呂勢の語りの音楽性に聞き惚れる。
若の大判事は慎重な語りのせいで小物に感じる。顎を使った分骨太感がある久我之助のほうが大物な感じ。錣は情があるのはいいのだがウェットな感じが定高ではないかも。

人形は勘彌の久我之助が凛々しくて良き。玉佳の入鹿が公家悪の禍々しさ。

2025年2月15日土曜日

2月15日 踊れ、その身体がドラマになるまで〜矢上惠子メモリアルガラ2025 in TOKYO〜

矢上恵子作品をたっぷり、しかも新国立劇場バレエ団のダンサーが踊るという、とても見応えのある公演。

「Witz」
福田圭吾の太ももの筋肉がすごい。筋が見えるほど。キレのある動きを存分に見せる。
 
「Multiplex Personality(多重人格)」
井本聖那須を中心に、4つの人格を井後麻友美、石川真理子、佐々木夢奈、杉前玲美。
井本と4人が入れ替わりながらユニゾンで踊り、異なる人格を表現。佐々木は少しカウントが早い?と思うところがあった。

「FROSEN EYES〜凍りついた目〜」
米沢唯と木下嘉人。
心が壊れてしまった少女の米沢は糸の切れた人形のように脱力するのがすごい。パイプ椅子の上で踊っているときにバランスを崩して倒れかけてヒヤッとしたけど、流石の身体能力で持ち直し、大事にはならなかったよう。

「Butterfly」 
福田圭吾のために振り付けた作品だそう。はじめ動体のないロンTのような(肩と腕だけ)衣装から踊るうちにマントのように羽が広がってゆくのが面白い。

「Bourbier(ブルビエール)」
福岡雄大はコンテだと力強く生き生きして見える。身体能力の高さよ!足の甲をつけて座った姿勢から手を使わずに上に伸びるようにぐんっと立ち上がるの、どうやってるんだろう。 

「Cheminer(シュミネ)」
小野絢子を中心に、柴山紗帆、池田理沙子、五月女遥、川口藍、金城帆香、橋本真央。
小野は凛とした風情が作品に彩りを与えてよき。コンテも悪くない。池田はちょっと作品に合っていないような感じがして、振りをこなすだけではダメなのだなと思うなど。 

「Toi Toi」
疾走感、踊りっぱなしで爽快。上演前に矢上の映像が流れ、人となりを見られたのも感慨深い。 

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2025年2月14日金曜日

2月14日 人間を脱出したモノたちへ

コンテンポラリーダンスと人形劇のダブルビル。

「ペトルーシュカとロベルト・モンテネグロ」はバレエ・リュスの再創造とあり、関典子の振付・出演。ピアノで奏でるストラビンスキーの曲に乗って、人間が人形を演じる。タイトルにあるロベルト・モンテネグロの絵をモチーフにした衣装と舞台装置で、90cm四方の黒い箱が人形を飾るケースのよう。

「ペドロ親方の人形芝居」はいいむろなおき演出で、マイムと浄瑠璃人形、オペラ歌手が共演する雑多さ。能勢の鹿角座が協力していて、人形の貸与や指導をしたようだが、素人の遣う人形なので、動きのぎこちなさは否めず。スペイン語オペラで物語が進むのだが、舞台のあちこちで同時に進行するため字幕が追いきれず、話がよくわからなかった。

アフタートークでいいむろが、人形遣いには体の角度など、マイムで気をつけるところを注意したそう。そういうとこらに共通項があるのかも。 

2025年2月11日火曜日

2月11日 立春歌舞伎特別公演 夜の部

「義経千本桜」

怪我で降板の愛之助に代わり、道行は虎之介、四の切は獅童が代演。

獅童は声の調子が悪そうで、狐言葉が辛い。初音のチュジュミとか、タ行の発音が…。体が重そうで、欄干に飛び乗るところなどキレがない。以前演じた時はそんなことなかったと思うのだが。 2階席最前列で休憩明けに係の人が「はしごを架けるけど乗り出さないで」とネタバレ。梯子を登ってきた獅童は降りる時にウインクして、客なら歓声を浴びていた喜ばせていた。

大序からの上演は珍しいが、義経(扇雀)が藤原朝方(青虎)から初音の鼓を渡されるところが描かれると後の話がわかりやすい。堀川御所の場では卿の君の團子の女方が初々しい。姿は可憐だが発声はまだまだか。静御前の笑也が落ち着いた美しさ。だが、正妻と愛妾が仲睦まじくって嘘っぽい。

道行初音旅は虎之助の忠信に壱太郎の静。虎之助は弟感があるので、姉弟のようだった。

2025年2月10日月曜日

2月10日 文楽公演 第3部

妹背山婦女庭訓の通し

杉酒屋は睦・清友。
中音部はいいと思う。

道行恋苧環は呂勢、織、小住、織栄に宗助、清馗、錦吾、藤之亮。
バランスのよい配役。呂勢は声の良さはもちろん、お三輪の町娘らしい勝気な愛らしさを描出。織はもったぶった語りが高貴な姫君らしく、お三輪と好対照だった。小住の求女も含めて、耳に心地よい。宗助を中心に華やかな三味線も聞きよかった。
人形は勘十郎のお三輪がいじらしく可愛らしく、一輔の橘姫は高貴な姫君らしく、こちらも好対照。求女の玉勢も2人の娘どちらにも いい顔をする優柔不断さが秀逸。

鱶七上使の口は御簾内で聖・燕二郎。素直な発声で嫌味がないのがいい。
奥は靖・勝平。
靖はこのところ頑張りが上滑りしているような感じ。入鹿の大笑いはやり過ぎ?とも思ったが、人形を見ながら聞くとスケールの大きさがちょうど良かった。(玉佳の芸のおかげ?)勝平は鋭い掛け声がよき。

姫戻りは碩・友之助。
いい声だし、高音も無理なく出ているが、姫の高貴さが足りないか。町娘ならこれでいいのだが。桃色の裃が場面に合っていた。友之助は淡々と。

金殿は織・燕三。
朗々と歌い上げて、美声自慢。何故かお三輪が可愛くないので可哀想に思えない。いじめの官女は老女のようであまり意地悪な感じでないし。鱶七は堂々として似合ってた。そして燕三の三味線の的確なこと! 語りの不足を補う。

人形は勘十郎、一輔の女方2人が素晴らしい。お三輪は橘姫と恋の鞘当てを演じる可愛らしさ、金殿で虐められる哀れさ、擬着の相への変化、刺されてからの悲喜交々がひしひし。耳では?のところも、視覚では伝わった。玉佳の入鹿が公家悪の大きさ。荒牧弥藤次の紋秀は右に傾いでいるように見えた。


2025年2月9日日曜日

2月9日 東京バレエ団 ベジャールの「くるみ割り人形」

ベジャール版くるみ。猫のフィリップ役のダニール・シムキン目当てだったので怪我で降板は残念だったが、ベジャールらしさが随所に見られて面白かった。

主人公はマーシャならぬピムという男の子(山下湧吾)。飼い猫のフェリックス(宮川新大)、父親的存在のM(柄本弾)、母(政本絵美)を中心に、クリスマスの夢の世界が描かれる。自伝的物語とあって、幼い頃に死に別れた母への思慕や別れの悲しさが描かれる。いい歳した男が母親に甘えたり、パドドゥを踊ったりするのはちょっとマザーコンプレックス的感じがして引いたが、最後の別れが近づくとうるっときた。
Mは時に父親、時にマリウス・プティパ、時にメフィストフェレスのようにと場面ごとに役割も雰囲気も違って、笑っていても何考えているかわからないような不思議な存在。柄本は少し役者不足か。 
同時にあちこちで芝居が進んでいるので、どこを見ていいのか、目が足りない。
花のワルツでプティ・ペール役のジル・ロマンが登場。ちょっとした動きでも惹きつけられるのはさすが。クライマックスで、黒燕尾の男性ダンサーが一斉にジャンプしたのが音楽に合って効いていた。
グランパドドゥは「プティパの振り付けに忠実に」とアナウンスがあったように、振り付け自体は初演時に忠実なのだろうが、パドドゥが終わったところで燕尾服の男たちが現れて女性だけを絶賛。うち1人が女性をエスコートして袖に引っ込み、男性ダンサーが取り残されたり、男性のソロを腕を組んで見ていたりと、笑いの要素も盛り込んでいた。黒のチュチュに男性も黒の上下という衣装はちょっと違和感。 雪のワルツでも何故か少女たちが黒のケープを纏っていた。

2025年2月8日土曜日

2月8日 noism「円環」

「過ぎゆく時の中で」

金森穣演じるゆっくりと歩む男をnoism1の若者たちが次々に追い越してゆく。男が引き留めようとしても止められず、やがて男も一緒に踊り始める。疾走感のある踊り(実際走っている)で、noism1の若いダンサーたちは体にフィットするレオタードなのに対し、金森の衣装は全体にギャザーを施した黒のスーツで、老いを象徴するかのよう。ハットを被っていたこともあって、初め誰だかわからなかったくらい、しょぼくれて見えた。背筋が伸びたまま走る姿勢が美しく、ダンサーの身体性を見た気分。

「にんげんしかく」

近藤良平振付の箱を使った楽しい踊り。大小の段ボールの中にダンサーが隠れていて、箱のキャラクターのようにちょこまかと動く様が微笑ましい。箱を出てからも近藤らしい楽しさが満載で、段ボールを叩いたり擦ったりしてリズムを取るのも面白かった。音楽は色々な曲のオムニバスで、キラークイーンやwhat a wonderful world などのカバー曲ものどかな感じ。

「Suspended Garden−宙吊りの庭」 

井関佐和子、山田勇気に加え、退団した2人noism1のメンバーを加えての新作。天井に斜めに下がった白いパネルがスクリーンになって、赤い花や紅葉などの映像が投影され、季節の移り変わりを示す。赤いドレスの井関と色違いの茶系?のドレスを着せられたトルソーがもう1人のダンサーのように4人のダンサーが戯れる。男性ダンサーがドレスを着たり、トルソーと組んだ井関にひっくり返したドレスを着せ、また戻したりとドレスの使い方も面白かった。40代のnoismは流石に若さのキレはないなと思うなど。

2025年2月1日土曜日

2月1日 第51回バレエ芸術劇場「ドン・キホーテ」

日本バレエ協会関西支部・関西バレエカンパニー公演に新国立劇場バレエ団の奥村康祐がバジル役でゲスト出演。ベテランらしく周囲をサポートし、盛り上げる素晴らしさ。パドドゥの包容力たるや。フィッシュダイブはかなり無理な姿勢に見えたが綺麗にポーズをとっていたし、片手リフトでも立ち位置を調整してバランスを保つなど、キトリ役の佐々木夢奈をよく支えていた。ソロのジャンプや回転もキレがよく、見応えがあった。
キトリの佐々木は音の取り方がちょっと早い?と思うところや、32回フェッテでぐらついたりというところもあったが、奥村のサポートもあって大過なく。目鼻立ちがくっきりして可愛いのでもっと表情に余裕があるとなお良いと思った。
ドン・キホーテは内野晶博。キホーテが夢の中で幻影を見るプロローグなど、タイトルロールをしっかり描く演出。踊りの見せ場はあまりなく、あご髭が短いせいか若く見えた。サンチョ・パンサは末原雅広。お腹の詰め物はちょっとやりすぎに感じた。
1幕でメルセデスの代わりに町の踊り子、2幕で森の女王など、女性パートを増やしていたのは協会公演ゆえか。3幕のグランパドドゥの間にキトリの友人のバリエーションが入るなど、見慣れたドンキとは違うところも。
関西フィルハーモニーの演奏で指揮は冨田実里。冨田の指揮にしては大人しいかったかも。


2025年1月28日火曜日

1月28日 大槻裕一 咲くやこの花賞受賞記念の会

 舞囃子「高砂」と半能「融 舞返之伝」を披露し、間にトーク。

小鼓の大倉源次郎、ワキの福王和幸が、咲くやこの花賞受賞の先輩として出演する贅沢さ。だが、近鉄アート館の黒いステージをそのまま使っての上演。橋がかりや目付柱がないのは致し方ないが、黒の背景では風情がないと感じた。最前列だったので、床の汚れで足袋の裏が真っ黒になっていくのが気になって…。

客席は9割方埋まっている感じだったが、質問コーナーでは誰も手を挙げず。子どもの頃から能面を手づくりし、「能ごっこ」をして遊ぶなどの能オタクぶりにたじろいだか。

2025年1月26日日曜日

1月26日 新春浅草歌舞伎 夜の部

挨拶は橋之助。
ずっと憧れていた浅草歌舞伎、勘九郎、七之助が卒業して、自分の番だと思っていたのに、1年目之正月は父と大阪で悔しい思い。2年目から出演できたが、大きな役は兄さんたちで、自分は1ヶ月が長かった。今年は座頭となり、一ヶ月があっという間。29年前に生まれた時、父が浅草歌舞伎に出ていた。29年後に座頭として出演できて嬉しい。父は30歳で初座頭だったが、自分は1年早い29歳。

解説は鷹之資。

「春調娘七草」

左近の五郎、玉太郎の十郎、鶴松の静御前。
線の細い左近だが、体をいっぱいに使って力漲る立派な五郎。 
鶴松の静は悪くはないが、なんでこの座組で?という疑問を払拭するには至らず。

「絵本太功記 尼崎閑居の場」

橋之助の光秀は線の太い役が似合い、堂々として大きさがある。莟玉の操はしっとり落ち着いた風情。初菊の左近が可愛らしいので、並ぶとちゃんと母と嫁に見える。鶴松の十次郎はちょっと芝居がクサイか。染五郎の久吉はなんか腹に一物ありそう。

「棒しばり」

鷹之資の次郎冠者がキレのある踊り。何より楽しそうに踊っているのがいい。染五郎の太郎冠者は並ぶとやはり見劣りが。橋之助の大名がおおらか。

千秋楽だったので、終演後はカーテンコールを期待する客席の拍手が鳴り止まなかったが、そのまま終わったのは行儀がよろしくて良き。

2025年1月25日土曜日

1月25日 初春歌舞伎公演 第2部

「彦山権現誓助剣」

通しだとお園の活躍が多くて嬉しい。鎖鎌など立ち回りの見せ場も多く、時蔵の女丈夫ぶりが凛々しい。毛谷村で虚無僧姿で出てくるところは、男っぽい所作で声色から違い、許嫁の六助と知ってころっと可愛らしくなる変わり身の早さも微笑ましい。
菊之助の六助は実直な好青年。彦三郎の京極内匠は敵役としては太々しさ足りない感じもしたが、存在感を見せた。

大詰で久吉方の若武者として子供たちが勢揃い。亀三郎、丑之助、眞秀、梅枝、種之助が並んで微笑ましい様子を見せたが、丑之助のうまさが際立った。立っているだけで他の子と違う。

吉弥の一味斎妻お幸、吉太朗の一味斎娘お菊のほか、内匠が母と偽る老婆に當志哉など、上方役者の活躍も嬉しい。折乃助は腰元に続いて、夜鷹の役では「ホワイト案件」「5050」「はい喜んで!」など時事ネタづくし。ギリギリダンスも楽しかった。 吉太朗は大詰で立浪家家臣の1人で萬太郎や竹松、市村光と並んで最後の手拭い撒きまでする異例の活躍だった。

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2025年1月13日月曜日

1月13日 新春特別公演

大阪では19年ぶりという仁左衛門・玉三郎の共演で、3階席までお客でいっぱい。だが、「於染久松色読販」と「神田祭」はコロナ禍以降たびたび観ているのであまり心躍らない。

「於染久松色読販」
玉三郎の土手のお六、仁左衛門の鬼門の喜兵衛は息の合った夫婦ぶり。
嫁菜売り久作を千次郎、髪結亀吉に松十郎。番頭の松之助がいい味。
柳島妙見の場で颯爽と現れて場を納めた錦之助の山家屋清兵衛が格好いい。油屋太郎七に弥十郎。

「神田祭」
仁左衛門の鳶頭に玉三郎の芸者。美男美女がイチャイチャして幸せオーラを振り撒く。玉三郎に疲れがでたのか、少し老けて感じた。

2025年1月5日日曜日

1月5日 初春文楽公演 第1部

「新版歌祭文」 

座間社の段を三輪、津国、文字栄、南都、咲寿、亘に清友。
適材適所な感じ? 咲寿が健闘。

野崎村は中を希・清志郎、前を織・藤蔵、切を若・清介に清方のツレ。野崎村を3つに分けるのはいかがなものかと思う。 
希は頑張っているけれど、何かが足りない感じがする。織は意気揚々だが、娘が可愛くない。若は相変わらずの省エネ運転。おみつが賢しげに聞こえる。

人形は清十郎のおみつが健気。紋臣のお染はお嬢さんらしい可愛さ。文昇の久松は二人が惚れる理由がよく分からん。玉也の久作は適役。


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2025年1月4日土曜日

1月4日 初春文楽公演 第3部

「本朝廿四孝」
道行はともかく、景勝上使からだと話がわかりやすい。客席は半分も埋まっていない感じで、正月なのに客入りが悪いのが何とも…。

道行似合の女夫丸は睦の濡衣、希の勝頼、亘、薫のツレに団七、団吾、錦吾、燕二郎、藤之亮。
珍しい道行だが、あまり華やかな感じがない。

景勝上使は靖・勝平。
珍しい組み合わせだが、あまり相性がよくない?

鉄砲渡しは小住・寛太郎。
安定感。  

十種香は錣・宗助。
艶やか。  

奥庭は芳穂・錦糸に友之助のツレ、清允の琴。
芳穂は期待したほどでなく。「翼が欲しい〜」の件があっさりしてて、他のところとあまり変わらない感じ。もっと盛り上げて欲しい。錦糸の三味線は引き出しがバチっとしてて、びっくり。眉間の皺…。

人形は簑二郎の八重垣姫。下手ではないのに何となくパッとしないのは何故だろうと考えた。人形使いの華って何だろう。奥庭の左は簑紫郎、足は簑悠。激しい動きにも付いていっていて感心。主遣いより目がいってしまう。
勘弥の濡衣はしっとり。玉助の勝頼、玉志の謙信、玉佳の景勝。

2025年1月3日金曜日

1月3日 初春文楽公演 第2部

「仮名手本忠臣蔵」

八段目は呂勢の小浪、靖の戸無瀬、ツレに聖、織栄、三味線は清治、清馗、友之助、清允。
華やかに、なのだが、呂勢が三味線の方を気にして顰め面していたのが気になった。
人形は和生の戸無瀬、簑紫郎の小浪。戸無瀬は人形拵えのせいか、首をすくめているように見える。簑紫郎の小浪がすっとしていたので余計に。

九段目の雪こかしは睦・ 清丈。
よき。

山科閑居の切は千歳・富助。
期待通り。安定感と風格があり、この段にふさわしい。

後は藤・燕三。
意外に良かったのは燕三の功績か。三味線の音色が深みがあって。

人形は玉男の由良之助と一輔のお石の夫婦がよき。雪こかしでちょっとイチャつくところがあるなんて今まで気に留めてもいなかった。

18日再見。
清治は道行の中でも忠臣蔵の道行が一番好きだそうで、三味線の鮮やかな音色に聞き惚れる。呂勢の語りは音楽的でよかったが、靖は顎が出ている感じで発声が今ひとつ。和生の戸無瀬はしっとりと美しく、小浪を気遣う継母の気遣いや情が感じられてよかった。簑紫郎の小浪が瑞々しく、母娘のバランスも良かった。キセルから煙が出る演出など、色々細かい段取りがあるみたい。  
睦の見台が新しくなっていた(虎の模様)。