野村萬斎演出・主演の意欲作。…なのだが、うーん。一番のネックは萬斎が厩戸王子のニンではないことだろう。ちょっと陰のある雰囲気は山岸涼子の絵の雰囲気と共通するところもあるかと思ったが、華奢で中世的な雰囲気とは程遠い。クライマックスの毛子とのやりとりで「そなたも私を抱いたではないか」とか生々しいセリフが続くところなぞ、なんとも気持ち悪くて、いたたまれない気持ちになった。毛子が好きという気持ちが嘘っぽいというか、日本のアイドルタレントが演じるBLドラマみたい。ラストの妃(配役では子となっていたが、膳美郎女?、鵜澤光)を抱いた厩戸の後ろで地謡が心情を語るところは、自分でセリフを語るよりも寂寥感、やるせなさが鮮明になり、心に響いた。能狂言なのだから、下手にセリフを喋るより、能の仕組みを使う方が効果的だと思う。
蘇我毛子役の福王和幸は原作そのままの雰囲気で適役だが、10年前だったらもっと似合っただろう。現代劇風のセリフを謡のように話すので、他人事のように聞こえる。
舞台中央に木枠に障子紙を貼ったようなセットがあり、衝立のようになったり、六角柱のように囲って部屋のようになったり。アニメーションのような映像を映すのは今ひとつだったが、ラブシーンを後ろから影絵のように映すのは悪くなかった。(多分、役者の陰でなく、人形か何かだったのも変に生々しくなくてよき)
意外にも、大槻文蔵が間人媛で出演。一場、ニ場の冒頭で、厩戸との確執を吐露することで、この物語が母子関係から始まっていることが鮮明になった。
戸自古は大槻裕一。ニ場のみの登場で毛子との関係が十分に描かれないまま、布都姫の手紙に嫉妬して毛子を陥れる激しさのみ描かれる。布都姫は膳美郎女と同じく鵜澤光。唯一の女性キャストで、面をかけていても体つきや声が男性とは違い特別な存在感があった。
泊瀬部大王は茂山逸平。俗物的なコミックリリーフという感じで、シリアスな物語の中でホッとする存在だった。
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