2015年12月16日水曜日

燐光群「お召し列車」

五輪の観光客向けに、お召し列車を走らせる企画の選考会を舞台に、同じ名前で運行されていたハンセン病患者移送のための列車について知ることになる。いやらしくなく、歴史に隠されてきた事実を知らせる手法は鮮やか。

途中、福島原発に触れて、アンダーコントロールではない、と言ったり、JR東とその他の対立を揶揄したりと、演出家の思想かちらり。

元ハンセン病患者の渡辺美佐子の凜とした佇まいが素敵だった。

2015年12月12日土曜日

12月12日「十二月大歌舞伎」

「妹背山婦女庭訓」

「杉酒屋」と「道行恋苧環」は七之助が、「三笠山御殿」は玉三郎がお三輪。

七之助は橘姫の児太郎と並ぶと上手く見えたが、やはり玉三郎が出てくると舞台への惹きつけられ方がガラリと変わる。女官たちにいじめられるのはつくづく哀れだし、嫉妬に狂う様は力強く悲しい。観て非常に満足。

松也の求女は美男子だが、何を考えているのか分からん、薄情な感じも。

児太郎の女形は貧相というか、幸薄い感じがするのは何故だろう。

丁稚子太郎の団子はのびのびと楽しそう。
中車が初めての女形で豆腐買いおむら。意地悪婆さんのようで違和感はない。

2015年12月11日金曜日

能法劇団「No Where?能はどこへ」

「言葉なき行為1」

無言劇なのだが、茂山あきらの身体の雄弁なこと。顔の表情だけでなく、身体の動きから、感情の機微が伝わるのだ。深い絶望。
合図として、審判の吹くような笛が使われていたのは、音が強すぎて合わないように感じた。

「北の鏡」

美女のハイディ・S・ダーニングは藤間流の日本舞踊もするそうだが、コンテンポラリーダンサーの印象だった。死神役のミニマムな動きとの対比が面白かった。電子音楽と小鼓、笛の演奏は決して協調しないのだが、不思議なバランス。

「濯ぎ川」

恐妻と姑、2人にこき使われる英国人の夫とのやり取りが日本語と英語のチャンポンで演じられる。狂言のリズムが聴きやすく、素直に笑える。

「ロッカバイ」

繰り返される詩のような朗読と能のような動き。幻想的だがちょっと難解か。

劇団往来「夏のない年」

フランケンシュタイン誕生の舞台裏と、物語の中が交錯する。バイロン卿の要冷蔵は虫酸の走るようなら男を好演。事実上の主役は作者メアリーの瞳梨音で、長い独白を手堅くこなしてた。フランケン=名も無き者の桜花昇ぼるは存在感のある演技で惹きつけられた。

ウーマンリブ「7年ぶりの恋人」

宮藤官九郎の本領であろう公演を初めて見た。小学生でも笑えるであろうコントの数々。私はあまり笑わなかったが、横の席でゲラゲラ笑っている兄さんがいて、後で見たら星野源だった。80年代のアイドルソングのような主題歌がよくできていて、耳に残った。

劇団子供巨人「重力の光」

オープニングとエンディングがダンスで、やっている人たちが楽しそう。勢いがあるな〜という感じ。荒唐無稽な設定で、馬鹿馬鹿しい笑い。下ネタが好きじゃないのであまり笑えなかった。光役の益山寛司は素顔はすごい美形というわけではないのだが、女装してると可愛く見えるから不思議。

2015年12月6日日曜日

関西芸術座「慕情秋桜」

河東けいの演技の説得力がすごい。一言一言のセリフがリアリティを持っている。主役をはじめ、役者さんの演技が安定しているのは歴史ある劇団らしい。

脚本がしっかりしているせいか、演出の力か、東京→京都→舞鶴の移動や時空を超えて中国に場面が移るのも、違和感なく見られたし、内容もかなり詰め込んでいるのだけど、無理なく見られた。

燈座✖️虚空旅団「界境に踊る」

ヘイトスピーチを題材にしたものだが、ヘイトスピーチと人種差別を一緒くたにしているような気がして、違和感を拭えなかった。人種差別はホロコーストや虐殺の要因だけど、ヘイトスピーチは近年の現象ではないのか。「私たちは誰かを殺すの?」という衝撃的なセリフが唐突に感じた。問題意識を感じていることはひしひしと伝わってくるのだが、登場人物がどれも、論理展開が飛躍していて、共感できなかった。

主人公がレズビアンという設定なら、在日であることを隠して生きるコリアンにもっと共感できないのか。最後、主人公がいちばん辛い時に支えてあげず、去ってしまう在日の恋人が冷たくみえた。

中盤からのセリフの応酬は、内容には共感できないものの引き込まれた。役者さんがうまいのか、演出がいいのか。

2015年12月2日水曜日

吉例顔見世興行 夜の部

「信州川中島合戦 輝虎配膳」

勘助母越路の秀太郎が貫禄。妻お勝の時蔵も武家の妻らしい気丈さ。
梅玉の輝虎は、こういうワガママな殿様はお手の物というか。

「口上」

総勢17人だったのに、皆さん割とオーソドックスで、ちょっと巻いて終わった。

「土屋主税」

仁左衛門の大高源吾が格好いい。

亀鶴の其月はすごく嫌な奴なのだが、この人が嫌な奴でないと話が引き立たないからね。

「勧進帳」

海老蔵の弁慶に愛之助の富樫。

海老蔵はなりは立派だし声も悪くないのに、どこか気が抜けたようで緊張感に欠ける。どこか遠くを見る目。 弁慶と富樫のやり取りが最高潮に達するところで客席から笑いが起きるのはそのせいか。

吉例顔見世興行 昼の部

「碁盤太平記」

大石内蔵助に扇雀、主税に壱太郎。
岡兵実は高村逸平太の愛之助は悪役が似合う。かなりオイシイ役ではないか。
りくの孝太郎、母千寿の東蔵は手堅い。

「吉野山」

藤十郎の静御前に橋之助の忠信。
あのお年とは思えない舞ではあるが、動きがやや小ぶりで、声も小さいよう。橋之助が大きく動いてカバーしているようだった。

「河庄」

襲名の演目なのだが、治兵衛って情けなくてちっとも素敵じゃない。そのせいか、孫右衛門の梅玉がとても素敵に見えた。分別があって、大人で。
小春は時蔵。治兵衛への気持ちが残りつつも、おさんのために身を引く心情が切ない。

秀太郎のお庄はいるだけで上方の風情。

太兵衛の愛之助と善六の亀鶴の敵役コンビは息が合っていい。

「土蜘」

仁左衛門の土蜘は格好いい。膝が悪いのか、しゃがんだり立ち上がったりする動きがあるにキレがなかった。

南河内万歳一座「偽世物小屋」

ステージいっぱいにラック掛けの服がずらりと並んで、行列や雑踏を表す。時に、移動して電車になったり、デモの群衆になったり。服を掻き分けて、役者が出たり入ったり。
行列に並んで何かを待っているのだけど、それが何かは分からないのだ。何だかよくわからないまま話が進んでいく。言葉遊びをしているようでもある。
最後、「踊って終わりにするのは嫌だ」と言いながら、無理やり纏めてしまったような。

2015年11月30日月曜日

咲くやこの花コレクション「曽根崎心中」

お初の一輔に徳兵衛の玉佳、床は睦大夫、靖大夫に清キ、清公。
中央公会堂の3階は音響がいいのだが、どこか洋風な響き。ホールに渡した橋のような舞台で、狭いのかやりにくそう。殺しのシーンで回舞台

タクフェス「くちづけ」

知的障がい者の問題に目を向けさせようという試みは積極臭くならず成功していると思う。

マコが可愛く純真な様子が上手くて、その後の展開が泣かせる。うーやんのクセはなんか馴染んでない感じがしたが。

「繁盛記」

仲間由紀恵は好演してたけど、林芙美子はちょっと違うような。声はよく通るし、舞台で演じることはすごくいいと思うけど。

マリインスキーバレエ「白鳥の湖」

オーソドックスな白鳥。
オデットは手足がすらりと美しく、身体の柔軟性がすごい。オディールのハキハキさ踊りのほうが合っている気がした。

4幕で黒鳥が何羽か。ロットバルトの手下とか、不安の象徴とか、諸説あるらしい。

2015年11月22日日曜日

EVKK「黒い湖のほとりで」

ドイツの劇作家デーア・ローアの翻訳劇。

湖のほとりで再会する2組の夫婦。恋人同士だった子供たちが4年前に心中し、その背景を知ろうとしているようなのだが、最後まで分からず。詩のようなセリフは繰り返しが多く、音の雰囲気に浸る感じか。
造船所跡のガランとした会場で、夕刻からの暮れていく自然光を利用したので、後半はほとんど真っ暗。役者たちが、小さい電球を透ける素材の袋に入れたものを衣装につけていて、それがだんだん浮かび上がる。芝居が進むにつれ、袋に入れを破って電球を撒き散らすのは、心情の吐露を表しているのか。ラスト、フロア中に撒き散らされた電球が星屑のようだった。

2015年11月21日土曜日

刈馬演劇設計社「クラッシュ・ワルツ」

緻密な台本とよく練った演出でとても完成度が高いと思った。BGMの「花のワルツ」のたどたどしいピアノも絶妙。いつまでも下手なんだけど、少しずつ上達しているという芝居全体のテーマにぴたりと合っている。
最初からセリフの応酬なのだが、喋っているより黙っている間で引き込む感じ。役者が上手いのだろう。加害者と被害者が逆転したり、傍観者が無作為の罪を感じたり、意図しない風評被害が広がり間接被害の責任は誰にあるのかなど、原発事故とのリンクも嫌味でない。ヒリヒリするような攻防の最後、救いのあるラストでホッとした。少しずつ上達しているし、そうするしかない。「生きてて良かった」のセリフにほろり。


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劇団そとばこまち「生きるんデス」

いろんな意味で学園祭のよう。内輪ネタっぽい笑いとか、バレエとかロックとか好きなもの、得意なもの盛り込んでみました感じとか。演劇部ですって感じの発声やセリフまわしの演技とか。芝居も脚本も粗い印象。DVが自殺にまで追い詰めるような深刻なものに見えないし、幽霊たちの心残りもそれほどの執着だろうか。歴史のある劇団だけあって、セットが立派。お客もついているのだろう。

2015年11月20日金曜日

OSK Revue in Kyoto

和物の「浪花今昔門出賑」と洋物「Stormy Weather」のレビュー2本立てで、新トップ高世麻央のお披露目。 高世はちょっと天海祐希に似てる?歌がうまいのかな。ちょっと痩せすぎな感じで、見栄えのする2番手の桐生麻耶のほうに目が行ってしまう。男前。和物の途中で洋装に早変わりし、マイケル・ジャクソン風の踊りが挟まったのが?? 悠浦あやとが麗しい。笑顔が素敵。洋物のほうで、女装で極楽鳥を演じたのがきれいだった。 楊琳は彫りが深く、きりっとした顔だち。ダンスのキレが良くて、群舞でも際立って見える。 全体的に宝塚の縮小版という感じで、小ぶりな大階段とか、トップの羽の大きさとか、スケール負けする。 いい点は劇場が狭いぶん役者さんとの距離が近いのと、娘役が大人の魅力。

2015年11月13日金曜日

劇団太陽族「劇論〜どこから来てどこへ行くのか〜」

天照大神の神話から、ギリシャ悲劇、ハムレット、歌舞伎、チェーホフ、アングラ、ミュージカル…と演劇の歴史を追いながら、テンポよく楽しく見られた。まだ来ないオーなのか、Rなのか、待っているのはだれなのか。シールズのデモの様子を取り入れるなど、時代性も。最後、葬式から、再び冒頭に戻るあたりがやや増長か。

宝塚歌劇 月組公演「舞音」

舞台中央の背後に白い大判の薄布が架かっている。これが最後、川の流れのようになる。シンプルなセットですっきり見せる。 冒頭、白い薄衣の女性の群舞がきれい。マノンの真珠をふんだんにあしらったドレスなど、衣装がいい。 ストーリーも時間にちょうどいい内容で、過不足なく。愛を求めながら男を翻弄するマノンの振る舞いがやや分かりにくいが、最後に、不幸な生い立ちから人を信じられなくなっていたと分かり納得。 トップの龍真咲は一人で視線を集めてしまうという感じではないのだが、歌は聞かせる。 レビューは踊りがよかった。途中、アフリカン風のところは、踊りは見応えあったが、宝塚には似合わないような。

2015年11月10日火曜日

松竹新喜劇 夜の部

「愛の設計図」 愛というのは恋愛ではなくて、師弟愛というか。高学歴のエリートを叩き上げの現場監督がいびり倒すが、実は愛の鞭だったというベタな話。扇治郎がエリートらしくはないのだが、実際には多いタイプか。 「お種と仙太郎」 天外の嫁いびりがいや〜な感じで、でも悲惨ではなくて面白い。扇治郎はあほ坊ぶりがハマってる。女優さんが可愛らしい健気な若妻を好演。

松竹新喜劇 昼の部

「はっぴとズボン」

ドタバタコメディだが、いまいち笑えず。芸舞妓が多すぎる気がした。


「はるかなり道頓堀」

人気役者とお茶子の許されぬ恋。人気役者役の扇治郎はそれらしい風情に欠けたが、息子菊次郎役はしっくりきた。
天外と。は上手い。思わずホロリときた。


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11月8日 永楽館歌舞伎 昼の部

「青雲の座 出石の桂小五郎」

上演前、大向こうさんが来て、開演7分くらいで1階の桟敷席から壱太郎が出てくるから一緒に声かけをとの案内がある。客席の通路を両花道のように使うなど、客席を巻き込んだ演出が随所に。

冒頭、昭和の映画音楽のような仰々しい音とともにタイトルバック、古い白黒チャンバラ映画がかかる。一抹の不安。新作でも、基本は三味線音楽がいい。

桂小五郎の愛之助。磯松とは離れてしまったので仕方ないにしても、出石で女房をもち、城崎温泉の宿の娘にまで手を出すダメ男。逃げの小五郎とかで、都合が悪くなるとすぐに逃げるし。

磯松の壱太郎は期待どおりの美しさ。
吉弥が至近距離でも美しい。老け役もちゃんとこなすのに、年上女房とはいえ、若い役も十分綺麗なのがすごい。史実では14歳でさすがにそれは…と思ったそうだが、十分やれそう。
鴈治郎が町奉行の堀田半左衛門役で華を添える。主役はいまいちだが、こういう役はしっかりと脇を固める。

磯松と長州に帰るにあたって、新しい名前を…と言ったところで、客席から「ノリカ」と声が。それだけでも興ざめなこと甚だしいのに、無視して芝居が進むとさらに「ノリカでいいじゃん」。全然面白くないし、客席は白けた。

「口上」
愛之助を真ん中に、上手に向かって壱太郎、鴈治郎、下手側に寿治郎、吉也。
愛之助は永楽館の初回を振り返ったり、8回目を迎えたことへの感慨など、無難に。壱太郎は恒例の豊岡親善大使ぶりでご当地キャラに加えて新製品のコウノトリ米をPR。鴈治郎は永楽館は2回目以来6年ぶり。出石では壱太郎のほうが有名で「壱太郎のお父さん」と呼ばれるが「鴈治郎です」吉弥は小五郎の女房は史実では14歳なのでどうしようかと思ったが、台本を見たら年増の役。それでも愛之助の釣り合うよう、少しでも綺麗に。寿治郎は吉也の兄役だが、本当は自分が下(⁈)

「蜘蛛絲 梓弦」

小姓、座頭、傾城、蜘蛛と早替り。狭い舞台なので後見もやりにくそうだが、2階席から手際のよさがよく見えた。蜘蛛の糸の仕掛けを手渡したり、広げた糸を片付けたりと鮮やか。
愛之助はサッと目つきが変わって蜘蛛の怪しさを出すのがいい。


2015年11月7日土曜日

「ブロッケンの妖怪」

竹中直人と生瀬勝久の企画。気楽に笑えた。ホラーコメディということだが、ホラー色はあまり感ず。 4年ごとに遭遇するもう一つの世界の詰”自分”との2役の演じ分けが面白い。 ダンサーの大貫勇輔は身体能力の高さでありえないような動き。 初舞台という佐々木希。顔ちっちゃくて綺麗。演技は予想通りつたないが、そういう役どころでもあり。 高橋惠子は美しく、凛とした声が舞台を引き締める。

2015年11月3日火曜日

「No.9 不滅の旋律」

冒頭、真っ暗ななか地鳴りのような重低音が響き、不安な気持ちに。難聴になったベートーベンの感覚を疑似体験しているのか。

稲垣吾郎のベートーベンは気難しい性格をよく表していたが、発声がやや聞き取りにくい。初舞台という大島優子は意外に舞台映えした。ベートーベンの父の田山涼成が上手い。

途中、「たった1枚の譜面で人々を感動させることができる」みたいなセリフがあるのだが、違和感を覚えた。普通のひとは曲を聴いてはじめて感動するのであって、譜面では感動できないよ。

3台のピアノが奏でるメロディはときにユニゾンで、ときに重厚なハーモニーで、ときにばらばらの旋律で、多彩な音色で舞台を彩る。
最後、生の合唱が圧巻。強引に感動の渦に巻き込まれた。

トリコA「つきのないよる」

よく分からなかった。途中、2役なのか、同一人物なのか分からなくて混乱したのが一因。主人公の彼女が、被害者の妹?そんな偶然あり?どんな展開が?と戸惑って、話の展開についていけなかったのだ。見終わってモヤモヤした感じが残った。観客の気持ちをざわつかせるのが目的なら成功だ。

殺人犯の女は不気味でイラっとする、というのは上手いのだろう。
最初戸惑っていた主人公は次第に殺人犯の女に取り込まれてしまったの?そこがよく分からなかった。彼女より殺人犯を選ぶ心の動きが唐突に感じた。子供がいるフリしてるうちに情が移ったとでもいうのか。
殺人犯と母親、父親の関係もよく分かんない。妹たちよりいい子だったから?なんで?

舞台には3脚のテーブルと丸椅子がいくつか。それを倒したり重ねたりして、場面転換するのは面白い。コントラバスとアコーディオンの生演奏もよかった。

11月1日 錦秋文楽公演 第2部

「玉藻前曦袂」 清水寺の段 薄雲皇子に津国大夫、犬淵源蔵に南都大夫。 采女之助の文字栄大夫は声が二枚目に似合わないのでは。桂姫の希大夫は美声がよく合う。三味線は寛太郎1人で奮闘。 道春館の段 中を芳穂大夫と清馗、奥を千歳大夫と富助。 悲劇なのだが、話の辻褄が合わなくていまいち入り込めず。桂姫の首を差し出せと言われて、娘2人は同じように可愛いから双六で負けた方にするとか訳がわからん。桂姫の亡骸を前に涙にくれているところに、帝からのお召しがあるのは唐突だし、それに応えていそいそと着替えてでてくる初花姫と萩の方もよく分からん。語る千歳大夫の熱演ぶりには圧倒された。 神泉苑の段 口を咲寿大夫と錦吾、奥を咲甫大夫と錦糸。 初花姫が九尾の狐に食われてしまう重要な場面?咲甫大夫はチャリ場よりこういうシリアスな場面のほうがいい気がする。 勘十郎の狐は怪しさたっぷり。早変わりも見事。玉藻前は一瞬で狐面から女の顔に変わる特別な首。 廊下の段 始大夫と清志郎。 雅な御殿で皇后や女御自ら玉藻前を殺害しようとする不自然さ。 訴訟の段 睦大夫と喜一郎。 平安調の御殿に傾城がいる不思議。 化粧殺生石 勘十郎の一人舞台。全く違うキャラクターを次々と演じ分ける。早変わりも、ススキの裏から出てきたり、岩を使ったり、岩に引っ込んだと見せかけて下手から出てきたりといろいろ工夫されていて面白い。 床は咲甫大夫はじめ5人の太夫と藤蔵をはじめとする5人の三味線で華やか。

2015年10月31日土曜日

Kバレエカンパニー「白鳥の湖」

2幕、中村祥子のオデットが現れるだけで空気が変わる。圧巻。腕の動きが表現豊かで、悲愴さが際立つ。気品と繊細さ、空気を纏ったような柔らな動き。これまでオデットはあまり好きではなかったのに、すごくよかった。意外にもオディールよりも。

白鳥の衣装がチュチュなのはオデットだけで、他は羽を束ねたような、やや長めのスカートなのは、オデットを際立せるためか。群舞がジゼルみたいだった。

オディールの曲がいつもとちょっと違ってちょっと肩すかしだったせいか、3幕は期待したほどでなく。後方の席の人が終始鼻をすすり続けていたので集中できなかったせいもある。他の人は気にならないの?咳は止めることができないけど、鼻をすするのは意識的なのだから余計に気になる。誰だか特定できたらティッシュをあげたのだが。

4幕で一部の白鳥の衣装が薄いブラウンになったのはどういう意図か。
最後は湖に飛び込んで自害し、オデットが人に戻ってめでたし、という私の嫌いなパターン。

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10月31日 錦秋文楽公演 第1部

「碁太平記白石噺」 田植の段 口を小住大夫と清公、奥を松香大夫と清友。 小住大夫が1人で語るのを見るのは初めてか。発生がちゃんとできていて、安心して聞いていられる。 松香大夫、侍を待と読み間違えそうになったような。 浅草雷門の段 口を希大夫と龍爾、奥を咲甫大夫(津駒大夫の代役)と寛治。 希大夫の声は伸びやかでいいな。大道芸人?のコミカルな場面なので、楽しくていい。 咲甫大夫はこの頃チャリ場が多い気がするが(今日は代役だったけど)、だからいいってもんでもないようだ。寛治はいつものように、人形のようにちょこんと座っているようなのに三味線は過不足のない音に聞こえる。余計な力が入ってないということだろうか。 新吉原揚屋の段 英大夫と清介。 口上で「ただいまの切」と言ったように聞こえたのは気のせいかな。 前の場と打って変わってシリアス。父親の仇を、といって終わってしまうのはちょっと物足りない。 「桜鍔恨鮫鞘」 鰻谷の段(しか残ってないそう) 中を靖大夫と清丈、奥(チラシには前とあるが)を呂勢大夫と清治、切を咲大夫と燕三。 今日改めて思ったのは、呂勢大夫は声が多彩だ。お妻とお半の母と娘の涙ながらの会話が哀しいのはもちろん、弥兵衛のいやらしさ、八郎兵衛のやや頼りない男ぶりが、それぞれ際立っている。 咲大夫は期待を裏切らない安定感。 簑助のお妻が凄い。顔を背けてじっと座っているだけなのに、ちゃんと気持ちが感じられる。和夫の八郎兵衛も情感があってよかった。 「団子売」 三輪大夫、芳穂大夫、咲寿大夫と団七、団吾、龍爾、清允。咲若大夫が休場だったので、三味線が多いというアンバランス。 10分ほどでちょっと短いバージョン?

「大逆走」

不思議な芝居だ。意味はよく分からないのだが、見終わると面白かった。
工事現場の従業員、盗まれた募金箱、駅のホームに立ち続ける少女、ハムレットの芝居なんかが脈絡なく出てくる。コンテンポラリーダンスや歌舞伎の立ち回り(中村いてうが監修だそう)が入ることで一体化するのか。色々な形の大きな枠組みが、工事現場になったり、店になったり、車や駅のホーム、電車になったりするのも面白かった。

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劇団ひまわり「雪の女王」

BSPという、イケメン男性ユニットとのコラボということだが、うまく混ざっていなくて、バラバラのパフォーマンスが交互に出てきた感じ。子役のエレンとアンナは正統派の芝居と歌で好感が持てるが、これだけでは子供向けにとどまり、エンターテイメントとしては物足りないかも。BSPのアクションは派手だし、見応えはある。立ち回りの場面では客席まで揺れるほど。ただ、二つの要素が一つに見えなかった。
雪の女王は元宝塚の日向薫。音程がやや不安定か。

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2015年10月28日水曜日

大阪平成中村座 夜の部

「俊寛」 橋之助の俊寛。やはりこの芝居は好きではないと再認識したのだが、義太夫が聞きやすかったのか話の筋は今まで見たなかで一番よく分かった気がする。 この人に共感できないのは、自分の選択で島に残ったくせに、あんなに嘆き悲しむのは往生際が悪いように感じるから。島での生活は今からは想像できないくらい悲惨なんだと言い聞かせて、何とか心情を慮ったけど。 成経は国生。白塗りの二枚目はまだ板につかない感じかな。 千鳥は新悟。背が高く、手足が長すぎるせいか、可憐な感じがしない。普段の女形はいいのになんでだろう。 亀蔵の瀬尾に扇雀の基康。 「盲目物語」 弥市と秀吉を勘九郎。勘三郎の当たり役だそうだが、さぞ愛嬌のある弥市だったのだろう。弥市という人物は冷静に考えるとかなりキモイので、役者の愛嬌がないとなかなか難しいように思う。勘九郎は悪くはなかったけど、魅力には欠けたように思う。 扇雀のお市に七之助のお茶々。 お市と弥市が琴と三味線で合奏するところ、三味線の音がぷつぷつしてて下手に聞こえた。ソロで弾いているときはそうでもないのに。 最後、スクリーン越しにライトアップした大阪城。幻想的なイメージとあいまってよかった。

2015年10月27日火曜日

大阪平成中村座 昼の部

「女暫」 舞台上に一同勢ぞろいで華やか。パロディで笑いもあるので、男の暫よりも好きかも。 七之助の巴御前はちょっと力みすぎの感もあるが、凛々しさと可愛さがある。発声の仕方など、玉三郎を彷彿とさせるところも。 舞台番の勘九郎、勘三郎によく似た口調や仕草。 「三升猿曲舞」 勘三郎ほどの軽快さは望むべくもないが、力の抜けた楽しい踊り。舞台後が開いて大阪城が見える趣向。 「狐狸狐狸ばなし」 狐と狸の化かしあい。何でだろう、七之助のおきわがあんまり可愛らしくない。 扇雀の伊之助はきもさが絶妙。重善の橋之助は色男がよく似合う。 亀蔵が珍しく女形でおそね。といっても男の声のままだし、所作も女っぽくはない。

2015年10月25日日曜日

劇団伽羅倶梨「プラシーボ」

よくできた、完成度の高い芝居だった。ドタバタ劇で笑えて、ちょっとほっこりして、新喜劇みたい。あまり広い劇場ではないけれど、満席だったのは、支持しているお客さんがあるのだろう。

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劇団しし座「映写機はカタカタと音をたてて」

何がいいたいのかよく分からない芝居だった。青春の苦い思い出?自主映画の撮影を巡って揉めるのだが、主人公がなにに拘っているのか分からない。都合のいいハッピーエンドに納得できないのはいいとして、友人が勝手に撮影した、宝は実は「人を大事に」みたいな教訓だったてのじゃダメなの?そんなんで、その先36年もフィルムを放置する?まして、撮影直後に友人が死んでしまったら、代わりに編集するなり、思い出を偲んで見直したりしないのか。何で遺族に渡さずに主人公がフィルムを持っているかも釈然としない。
途中、乱入してきた同窓会と先生の一団もよく分からないし。もっと言ってしまえば、セールスマンもだ。

2015年10月24日土曜日

劇団こまつ座「十一ぴきのネコ」

言葉遊びの音感の楽しさと、覚えやすい音楽で耳に楽しいミュージカル。子どもの観客が多くて、予想外の場面で笑いがあったり、不規則発言があったり。 冒頭、ネコのキャストたちが客席をうろうろ。劇場の人が携帯電話のスイッチオフをお願いしたところで鳴り響く電子音。仕込みかってタイミングだった。 楽園を求めて進んでいるはずネコたちは、困難に直面したり、リーダーが不在にになったりするたびに揺れ動き、保守的になる。そのたびにリーダーのにゃん太郎が皆を説得して、前に進める。けれどその様子は一歩間違えると口の上手い扇動家。それがショッキングなラストにつながるのか。

劇団犯罪友の会「ひまわりとブルース」

ラブストーリーだそうだけど、ラブを感じられたのは母かなあ。小学生の娘と夫に捨てていかれたと思いたくないので、「出稼ぎに行っている」ことにして頑張ってきたというのうは分からなくもない。ただ、もう一方の、広告代理店の先輩(女)と後輩(男)の関係がよく分からず。母役と父役の役者さんは上手かったのだが、ほか3人のせりふ回しがぎこちないというか、躊躇があるというか。 冒頭のルポライター(志望?)の青年がなんだか、行っちゃってる人の演出なのか、演技がつたないのかよく分からないのだけど。 もと貴族令嬢の先輩もエキセントリックになり切れていない感じ。 女子高生は、「ウザい」とか「チョイ悪おやじ」とか、今っぽい言い回しが続出するので、時代感覚が混乱する。終演後のコメントによると昭和39年ごろの設定だそうだが、だったら、古風な言い回しのほうが時代感はでるように思う。

2015年10月20日火曜日

にっぽん文楽in難波宮

正直、いろいろ残念な公演だった。場所も悪かったのだろう。太夫三味線の音が拡散してしまうようで、客先に届く音が貧弱。本来の豊かな音は影もない。阪神高速の側で騒音がひどく、しかもNHKの建物の壁に反響してしまうので、やむなくマイクを使ったと言っていた。マイクのせいなのか、生音でもそもそも屋外では音が拡散してしまうのかわからないけど。文楽は人形を見るものと思っているひとならいいのかしら。
これを見て、文楽っていいな、また来たいな、と思う人がいるのだろうか。

食べたり飲んだりしながらというのも、客席が明らかに集中していないなか、演者たちはどんな気持ちなのか。子供連れが何組かあって、喋ったり泣いたり。夏休みの公演ではそれほど気にならなかったのに。手を抜いていたのではないのだろうが、観る側の態度が悪いと、雑に見えてしまう。

野外で、日差しが強く、暑いのと、日焼けが心配なのも困った。

ツボったのは清丈の自虐ネタ。三味線の地味さやプライベートの非リア充ぶりで笑いを取っていた。いつも思うのだが、三味線さんは喋りが上手い。

2015年10月19日月曜日

演劇集団キャラメルボックス「君をおくる」「水平線の歩き方」

60分の小品の2本立てなのだけど、どちらも見応え十分。ちょっとほろりときて、見終わったあとはすがすがしい感じが残るのがこの劇団のよさなのかな。 「君をおくる」 後で振り返ると、海外赴任で何年も帰ってこないからって離婚しなくてはならない理由がよくわからないのだが(だって、子供ができたと思っていたときは待つつもりだったのだし、事情が変わったのなら海外赴任の予定を変更してくれるくらいの柔軟性を今の企業は持っていると思う)、観ている間は引っ越しの手伝いで勘違いが勘違いを生んでおかしいことになってしまう可笑しさあり、じんわりくるいいセリフありで、内容の濃い1時間だった。 「水平線の歩き方」 水平線までの距離はたった4キロ余り。水平線の向こうにあるという死者の国はそんなに遠くはないのかも。 1人の男の成功と挫折を描いて、再生への希望まで、たった1時間でここまでのものを表現するってすごい。

美女音楽劇 人魚姫

寺山修二原作の人形劇を人の役者が演じるという一風変わった芝居。 衣装や舞台装置が美しくて、幻想の世界に誘われる。 人魚姫の青野紗穂は可憐。歌声は初めのころは低音が多くて魅力が十分に出ていなかったが、後半の高音域の声はのびやかで力もある。 船長ジークフリードは元宝塚の悠未ひろ。颯爽とした王子のような凛々しさと、優しいようで、でも人魚姫の思いに気づかないのかつれない仕打ちをする鈍感さが憎たらしい。 終演後にアフタートーク。最後、人魚姫が泡になった後に響く電子音は原子力発電所の警報音なのだそう。この世の中はもう安全なところではないのだよという意味なのだとか。

清流劇場「こわれがめ」

冒頭、芝居のとっかかりとなる女中役が、素人っぽいというかセリフも歌もぎこちなくて、この先の作品に不安を覚えた。これ以外の役者さんはみなさん達者で杞憂に終わったのだけど。 シーソーをモチーフにしたステージで、左右に傾くなか、役者が滑ったり、転んだりするハプニングも。

伏兵コード「遠浅」

脚本家の実体験に基づいているそうで、主人公は同じ名前の真理。 今と昔の2人の真理がいて、回想シーンを織り交ぜながら進む演出が面白い。 お父さんはむちゃくちゃなんだけど、まあ、こういう人は世間にまったくいないかというとそうでもなくて。 全体的に気がめいるような話で、薄暗いステージとあいまって、どんよりした気分が残った。

TOP HAT

やはり本場の踊りは凄いわ、の一言に尽きる。歌ももちろんこなすし、踊りのレベルが高い。日本でこれだけ歌って踊れる人がどれだけいるのか。 タップが中心なのだけど、主役のロジャー役アラン・バーキットの踊りが軽やかで、ジャンプも高い。歌も、甘い感じの伸びる声で聞かせる。 ヒロインのシャーロット・グーチも歌声が美しい。 カーテンコールで、キャストが客席通路に下りてきて歌って踊るサービス。

RENT

日本語版は多分初めて。歌詞がところどころゾワッとしたが、全体としては悪くなかった。歌手として活動している人が多いので、歌には問題なし。ちょっとダンスが物足りないか。特に感じたのが、ミミのジェニファー。歌はすごくいいのに、登場シーンのポールを使ってのダンスが振り切れていない感じで残念。あと、エンジェルの平間があんまりかわいくなかった。ソロの踊りもイマイチ弾けかたが足りない。 ロジャーのケミストリー堂珍や、コリンズのスクープオンサムバディTAKEなど、歌唱力のあるひとが揃っていたので、コーラスなんかはすごく良かった。もちろん楽曲のもつ力が大きいのだけど。 家に帰ってオリジナルのCDが聞きたいと思ったのは、ステージとして成功だったのか、どうなのか。

歌舞伎NEXT 阿弖流為

阿弖流為の染五郎は予想通りで特に驚きはなかったが、明るくおおらかなヒーロー坂上田村麻呂を勘九郎が好演。こういう二枚目の役ってあまりなかったように思うのだが、魅力的な人物だった。立烏帽子の七之助は凛々しく美しい。スカート状の衣装を翻しての立ち回りも魅せた。3人がほぼ出ずっぱりで、走り回り、アクションもたっぷりというのがいのうえ流なのかな。「義はいいが大儀となると胡散臭い」とか、守るために団結して戦わなければならないとか、今の世相に通じるようなセリフが随所にあった。 御霊御前の萬次郎の冷酷な悪っぷりがよかったなあ。

宝塚花組 新源氏物語

明日海りおは苦悩する美男子、光源氏にはあっている。それに、平安の装束は体の華奢さが隠れるのでいいかも。 けどなあ…、やっぱり歌が私は苦手だ。ぞわっとするのだ。 1時間あまりで源氏物語を、しかも宇治十帖までやってしまうので、ハイライトシーンを細切れで見せられているよう。情緒を感じる暇もない。もうちょっと一つ一つのシーンをじっくり見たく、物足りなさを感じる。 レビューは「メロディア」。ラテン調の歌がなんだかぞわぞわする。スパンコールを全身につけたスーツとかって、素敵には思えないのだが… 一番手、二番手よりも、三番手の柚香光に目が行った。後で調べたら、六条の御息所と柏木の2役だったそうな。

9月26日 文楽地方公演 昼の部

津駒大夫が休演で、代役が呂勢大夫といううれしいサプライズ。たっぷり聞けて、河内長野まで遠征した甲斐があった。 咲寿大夫の解説でスタート。団子売の歌詞に色っぽい意味が隠されているとか、笑いをとりつつ。 「団子売」 お臼の呂勢大夫に杵造の咲甫大夫、希大夫。三味線は清治、清四郎、清公、燕二郎。 美声の大夫3人に4台の三味線が華やか。 「心中天網島」 天満屋紙屋内の段 口は松香大夫と團吾、奥が呂勢大夫と清介。 急きょ代役の呂勢大夫は床本に挟んだ手書きの台本のようなものを見ながらの語り。 声の張りがなかったり、途中ちょっと早口になるようなところもあったりで、探り探り語っている感じ。 後で知ったが、当日の朝、急に代役が決まったとかで、ほぼぶっつけ本番だったのかと思えば凄いことだ。 小春を思って治兵衛に身請けするよう話すおさん。身請けしたあとは「子どもの乳母か飯炊きか」とかって、あんまり理不尽なのでできた女房なのか怖いのかよくわかんないけど、呂勢大夫が語るのを聞いていると、切なくて涙ぐみそう。 大和屋の段 切は咲大夫と燕三。 さすがの安定感。 道行名残りの橋づくし 呂勢大夫の小春に芳穂大夫の治兵衛、咲寿大夫、三味線は宗助、清馗、寛太郎。 紙屋内の段とはうって変わって張りのある美声が響く。

2015年10月9日金曜日

9月5日 もとの黙阿弥

井上ひさし原作で期待したが、なんだかもやもや。 いや、面白かったんだよ。場面場面では。 愛之助が劇中劇で素人っぽく見栄をしたり、セリフの間もよかったし、波乃久里子は流石のうまさだし。 けど、劇中劇の話が意味がわからんとか、最後に正気を失ってしまった女中も??この芝居で言わんとするところがつかめなかった。

2015年9月8日火曜日

8月22日 内子座文楽 午後の部

初めての内子座は、風情のある芝居小屋でいい雰囲気。1階席は冷房が利きすぎていたようだが、2階はそれほどでなく快適。 太夫の声や三味線の音がよく聞こえるし、普段は見られない足遣いの様子が見えるのも面白かった。 町の様子もいいね。途中すれ違った中学生から「こんにちは」と声をかけられたり。 「義経千本桜 すしやの段」 前が津駒大夫と宗助、中が英大夫と清介、後が咲甫大夫と清志郎。 津駒、英はまあ期待通りだったのだけれど、咲甫はなんか最近いまひとつに感じることがおおい。 人形は権太が玉男だったのだが、大ぶりな動きがなんだかちぐはぐに見えた。 「道行初音旅」 静御前が咲大夫、忠信が呂勢大夫、ツレが希大夫。三味線は清治、藤蔵、清馗、清公。 咲大夫と呂勢大夫もどちらも好きな太夫なのに、声の相性が悪いのか、耳に心地よくない。聞いているうちにだんだん慣れてはきたけれど。 帰りの駅で、清治夫婦や咲大夫がいてびっくり。

2015年7月26日日曜日

7月26日 歌舞伎鑑賞教室

「歌舞伎の見方」

萬太郎が実演を交えて、歌舞伎独特の演出や表現を解説。ツケに合わせて、侍と娘の走り方の違いや、見栄をする様子、黒御簾音楽についてなど。大太鼓で雨や水、合戦の様を表現するのが面白かった。竹本について、「三味線の伴奏に合わせて…」と言うので、歌舞伎ではそうなのかと思ったり。


「義経千本桜」

渡海屋から大物浦。菊之助、梅枝とも好演だったが、ともに大物浦のほうが良かったか。菊之助の銀平はシュッとしていて骨太さに欠けるし、梅枝のお柳は夫自慢のくだりを引っ張りきれずやや冗長に感じた。

典侍の局は気品があり、知盛の敗北を知った絶望や安徳天皇に自害を勧める無念さが胸に迫る。残念だったのは、せっかくの熱演の隣で安徳天皇が眠っちゃいそうになっていたこと。自分のセリフになると上手にしゃべっていたけど、閉じそうになるまぶたをなんとか開こうと頑張ってるので、ハラハラした。客席からは笑いも出てて、雰囲気台無し。

菊之助の知盛は、白装束の立派さはさることながら、手負いの鬼気迫る様がすごい。下瞼に赤くラインを入れていたので、目が血走っているように見えた。最期は、碇を投げて綱が引ききってから身を投げるまでの間がちょっと長すぎ?と思ったけど、気迫は十分。立派な知盛だった。

…が。同世代で知盛を演じられる役者は他にもいると思う。逆に、同世代で立女形をやれるのは菊之助だけなのだから、ぜひとも、女形で活躍していって欲しいと改めて思った。

2015年7月24日金曜日

7月20日 夏休み文楽特別公演 第3部

「生写朝顔話」 嶋田宿笑い薬の段 中は芳穂大夫と清丈、次は文字久大夫と藤蔵。 見どころは笑い薬のせいで笑いが止まらなくなる祐仙。勘十郎がこれでもか、とばかりに全身で笑い転げる。 宿屋の段 切は咲大夫と燕三に琴の清公。 盲目の朝顔を遣う紋壽が素晴らしい。最前列だったので、琴を奏でるところが間近に見られて、細かい動きに感じ入った。 でもさ、目の見えない朝顔はともかく、阿曽次郎は恋人の姿を見てもわからんのか。 続く大井川の段で朝顔の目が見えるようになったところで幕。2人の再会を見届けられないので、なんかもやもやが残った。

7月20日 夏休み文楽特別講演 第2部

「生写朝顔話」 宇治川蛍狩の段 三輪大夫や南都大夫、始大夫などによる掛け合いで三味線は喜一郎。 人形は一輔の深雪に玉男の阿曽次郎。深雪が一目惚れしちゃう二枚目なのに、 なんだかぬぼーっとした男に見える。 真葛が原茶店の段は松香大夫と清友、岡崎隠れ家の段は靖大夫と清馗、千歳大夫と富助。 阿曽次郎は深雪の縁談の相手なのに、偽物が現れて会えないって…。 三枚目の祐仙は勘十郎の得意とするところ。 明石浦船別れの段 津駒大夫と寛治、琴に燕二郎。 寛治は相変わらず、力が入っていないようなのに音がちゃんとしているのが不思議だ。 津駒大夫は汗だくの熱演。 恋人の小舟に乗り移っちゃう深雪。そのまま駆け落ちしようとかって、まったく無茶だ。 薬売りの段 咲甫大夫と錦糸。 咲甫大夫はこの頃こういうチャリ場が多いような。 浜松小屋の段 呂勢大夫と清治。 深雪と浅香のくどきがいいのはもちろんなのだが、輪抜吉兵衛のようなならず者のどすの利いた声もよかった。 骨太な時代物なんかも聞いてみたいと思わせる。 人形は朝顔が蓑助になり、たっぷり魅せた。

2015年7月19日日曜日

7月18日 松竹大歌舞伎 中央コース

「河内山」 橋之助の河内山はすきっとしてハマってる。横顔がいいのと、坊主頭が似合うのがいい。口跡は、仁左衛門のがよかったなぁと思ってしまったが。 浪路の芝のぶが可愛い。出番が少ないが、もっと見たい。 「藤娘」 児太郎はきれいだけど、媚を売ったように見えるのは姿勢が悪いからか。猫背っぽいのか、首を傾げる仕草が安っぽくてがっかり。 国生の「芝翫奴」は観ずに退席した。

2015年7月18日土曜日

7月12日 七月大歌舞伎 夜の部

「絵本合法衢」 もうこれは仁左衛門祭り。大学之助と太平次というタイプの違う悪役ではじめから終わりまで悪徳の限りを尽くす仁左衛門を堪能。極悪非道っぷりが、いっそすがすがしい。 うんざりお松の時蔵、太平次女房の秀太郎など、周りの役者さんも達者な人ばかりで大満足。 米吉・隼人の若手2人も、若々しく美しい。 番頭伝吉の松之助がセリフに詰まってプロンプの助けを借りる場面も。最近、セリフがスムースに出ないことがたびたびあるような気がする。心配。

2015年7月8日水曜日

7月5日 七月大歌舞伎 昼の部

「御存鈴ヶ森」 孝太郎の白井権八に錦之助の幡隋院長兵衛。立ち回りが延々と続き、これは立ち回りを楽しむ芝居なのかと。 「雷船頭」 時蔵の女船頭が色っぽい。雷様もコミカルで楽しい。 「ぢいさんばあさん」 この芝居は何度か見ているけれど、涙ぐんでしまったのは初めて。仁左衛門の伊織と時蔵のるんの夫婦が互いを思う気持ちが伝わってきて。 2人でじゃらじゃらするのも微笑ましい、おしどり夫婦ぶり。年老いてからの、37年ぶりの再会には万感の思いがあるはず。 歌六の下嶋は嫌な奴っぷりがすごくて、憎たらしいほど。 若夫婦の隼人と米吉も初々しくていい風情。

2015年6月26日金曜日

6月14日 中之島文楽

第一部は葛西聖司アナの司会で羽野晶紀と英大夫の対談。 葛西アナがうまくリードしていて、文楽をよく知らない人にも、そこそこ知っている人にも面白かったのでは。 第二部「夏祭浪花鑑」 長町裏の段のみの上演。 英大夫の団七に三輪大夫の義平次、三味線は清介。 人形は幸助の団七に玉佳の義平治。 立ち回りがバッタバッタ。幸助は人形に振り回されている感が。玉佳が人形以上に顔で演じていて悪い顔。思わず笑ってしまう。 第三部「本朝廿四孝」 呂勢大夫と藤蔵。このコンビはがっぷり四つという感じで聞きごたえがあるなあ。 「翼がほしい~」の下りは「待ってました!」という気分。もうね、ここだけでも聞きたいくらい。 ツレ三味線に清志郎、琴に清公。 人形の勘十郎はもう慣れたもの。

6月14日 文楽鑑賞教室 午後の部

「五条橋」 靖大夫の牛若丸に始大夫の弁慶。人形は紋秀と文哉。 (日が経ってしまったのであまり覚えていない…) 「曽根崎心中」 生玉社前の段は睦大夫と喜一郎。 天満屋の段は呂勢大夫と錦糸。 初めて見る組み合わせ。普通、大夫と三味線は横並びで同じ方向を向いているものだけど、呂勢大夫がやや下手側、錦糸が後ろを向いていて、ほとんど背中合わせのよう。何かあったのだろうか。 呂勢大夫の語りは期待通りで聞き惚れる。 人形は幸助の徳兵衛と一輔のお初の初役コンビ。若々しくてよろしいのでは。 「天神森の段」 芳穂大夫のお初に靖大夫の徳兵衛。

2015年6月13日土曜日

6月13日 六月花形歌舞伎

またまたの鯉つかみだが、新演出で楽しめた。12役の早替わりで、愛之助祭りといった感じ。立役の幾つかはあまり代わり映えしなかったけど、女方もあり、2階席での早替わりありと、いろいろ趣向を凝らしていて飽きさせなかった。何度か見ている私はある程度予想できてしまったので驚きは少なかったけど、隣に座っていた女性グループがいちいち驚いていたので、見慣れない人には新鮮だったのかも。

5月の明治座で、黒縁メガネのような隈取りが謎だったけど、今回判明。早替わりのため、隈取りがマスクになっていたのね。

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6月8日 文楽鑑賞教室

「曽根崎心中」

咲甫大夫の語りが、なんというか、鼻に付くというか、いやらしいというか。聞いていて心地よくない。上手ぶってるってこういうことだろうか。

千歳大夫はさすがだが、途中意識が飛んでしまった…。

勘十郎のお初はしっとりとした色気。

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2015年6月7日日曜日

6月7日 六月大歌舞伎 昼の部

「天保遊侠録」

橋之助の小吉に国生の庄之助は、去年の松竹座と同じ組み合わせ。国生は前より板についてきたか。

松之助の唐津藤兵衛、所々セリフがででこないのか、ことばに詰まるところがあってハラハラ。

青果ものはやっぱり苦手だ。


「新薄雪物語」

花見

菊五郎の奴妻平は、奴というには動作が重い。籬の時蔵とのやりとりは洒脱だったけど。
最後の立ち回りは見応えあったけど、妻平はあまり動かなくてもいいからね。

薄雪姫の梅枝は、終始表情が固くて、恋する乙女らしくない。左衛門の錦之助は、ハンサムなのに残念な感じ。

仁左衛門の秋月大膳は気持ちいいほどの大悪人ぶり。


詮議

伊賀守の幸四郎、陰腹切ってるわけでもないのに、生気がない様子。ほとんどじっと座っているだけに見えた。園部兵衛の仁左衛門が、左衛門をたしなめたりいろいろしているのとの対比で、よけい存在感が薄い感じ。

薄雪姫は児太郎。悪くないけど、昨日米吉を観た後では物足りない。

葛城民部の菊五郎は年相応で、安定感があった。

6月6日 六月大歌舞伎 夜の部

「新薄雪物語」

広間・合腹

米吉の薄雪姫が可憐で愛らしい。
自分を逃しては父上に迷惑がかかると躊躇する薄雪に、ならば勘当すると詰め寄る園部兵衛(仁左衛門)の親心が泣かせる。魁春の梅の方も気品のなかに情があって、胸に響く。意外にもいい夫婦。

合腹は仁左衛門、幸四郎、魁春の3人で、重量級の存在感。三人笑いのところなど、会場が息を呑んで静まり返っていた。この醍醐味が花形とは違うところ。

幸四郎の伊賀守は花道の出からよろよろしていて、陰腹を切っている風情がよくわかる。扉を開けようとして、刀に引っかかるほど真に迫っていた(偶然?)。

正宗内

吉右衛門の団九郎は、おかしみというか愛敬があって憎めない小悪党。ただ、最後の立ち回り、捕手たちが車座になった肩の上に乗りキメるべきところで、よろけて落ちそうになり、慌てて支えられるなど、危なっかしい場面も。片腕を吊っているとはいえ、お歳を感じずにいられない。

「夕顔棚」

爺の左團次がいい風情。枯れたなかにも茶目っ気があって、チャーミング。婆の菊五郎と仲睦まじい夫婦ぶりで、ほのぼの。

里の女・梅枝と里の男・巳之助は、ちょっとバランスが悪く感じた。梅枝が大きくて。しなやかな指先なんかきれいなのに。


2015年6月5日金曜日

6月2日 劇団☆新感線35周年「五右衛門vs轟天」

「オールスターチャンピオンまつり」と銘打っただけあって、盛りだくさんのごちゃ混ぜで、休む間もないほど。休憩挟んで3時間余りの時間が短く感じた。

生バンドを入れたロックミュージックも、クイーンのボヘミアンラプソディー風やX風の曲など、パロディ満載で面白かった。

5月30日 Kバレエカンパニー「海賊」

メドーラの中村祥子が期待通り素晴らしかった。出てきた瞬間から胸が締め付けられるような。。オーラというか、まとう風情が違うのだ。

男性のメインはコンラッド(スチュアート・キャシディ)かと思っていたら、踊りの見せ場はあまりなく、踊りの主役はアリの池本祥真。ジャンプも高いし、回転のキレもよくて、十分魅せた。

海賊を通しで観たのは、たぶん初めてなのだけど、ばかばかしくも単純なストーリーで、肩ひじ張らずに楽しめる。

2015年5月24日日曜日

5月23日「黒蜥蜴」

美輪サマの舞台は一度観てみたい、と思っていたけど、できれば30年前に観たかった。

セリフの美しさは十分健在だけど、黒蜥蜴はほっそりしていてほしかったし、動きもやや緩慢。年齢のことを思えば奇跡的ではあるのだけれど。

芝居としては、明智小五郎役の木村彰吾が今ひとつ。セリフの美しさを楽しむ芝居だと思うのだけど、彼が話すたびに水を差されたよう。セリフが上手くないのか、容姿がインテリっぽくないのか、黒蜥蜴と互角に渡り合える説得力がない。

愛人役の中島歩は、黒蜥蜴に相手にされない、子犬のような風情がいい。花子とアンの龍一はちっともいいと思わなかったけど。

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2015年5月23日土曜日

5月17日「アマテラス」

随所に玉三郎の美意識が感じられる舞台だった。登場するだけで舞台を支配する気品のある佇まい。セリフがなくても、身振りや表情が雄弁。

途中、話の筋を見失ったけど(スサノオが何やってるのか分からなくて。)ストーリーよりは鼓童のパフォーマンスを楽しむものなのだろうし。打楽器のパワーって言語を超える。

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2015年5月10日日曜日

5月10日 明治座 五月花形歌舞伎 夜の部

「あんまと泥棒」

あんま秀の市の中車が上手い。まあ、歌舞伎というよりコントなのだけど。泥棒の猿之助と2人きりのセリフ劇なのだが、息の合ったテンポのいい語り口が面白い。

「鯉つかみ」

またかと思ったら、通し狂言になったせいか、前回よりずっと面白い。鯉が恨みを抱くきっかけの出来事などの場面が加わり、話が分かりやすくなったのと、愛之助が6役を演じて早替わりなどの見せ場が増えたせいか。

序幕、大百足の猿弥がいい。
生贄にされる長者の娘を演じたりき彌も可憐だし、秀太郎の瀬織津媛はひめというよりは母のようだったけど、気品が漂う。
愛之助の俵藤太。隈どりが黒縁めがねみたいなのは、何かを表現しているのだろうか。

鮒王の中車も義太夫っぽい風情で、王の品格。

二幕目からは、以前と同じだけど、奪い取られた宝剣を取り戻しに行く場面が新たに加わった?
小桜媛の壱太郎がノリノリ。門之助の呉竹もハマり、密度の濃い芝居に。

大詰めの本水の場面では、ハリキッて水を飛ばしてくれちゃって、ビニールシートが配られなかった私の席にも飛んできた。水がかからないようにと敢えて花道横の席は外したのに(>_<)

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5月10日 明治座五月花形歌舞伎 昼の部

「矢の根」

右近の荒事は期待どおり。おおらかで安定感があって、さすが手馴れたものと思ったら、意外にも初役だそう。

「男の花道」

歌右衛門の猿之助は、人気女形という役どころが雪之丞とカブるが、私はこちらの方が好み。多分、歌右衛門のほうが歳上の設定なので、無理なく感じられるのだろうか。大仰な音楽が多用されないのも良かった。

1幕目の終わり、眼を治療してもらった歌右衛門が、中車演じる玄碩の手をとって感謝するシーン。本当はここで男の友情が芽生えたのだろうけど、男女が見つめあっているようにしか見えなくて、このまま恋が芽生えそう。

2幕目は、敵役の嘉右衛門演じる愛之助の憎らしいこと。悪役はうまいし、演じていて楽しそう。猿弥との掛け合いも息が合ってる。
中車の玄碩は、頑固なわりに浅はかというか、何年も会っていない歌右衛門を呼び出すにしては動機が薄いのでは。怒りのあまり我を忘れたようには見えず、公演中で舞台を抜けられないと指摘されてハッとするのも、白々しいというか、あまりにも間抜け。

劇中劇の「櫓のお七」は人形ぶりをたっぷり観せる。後見役の壱太郎のきりりとした表情が新鮮。客席に紛れ込んだ役者が見物として舞台上の歌右衛門とやりとりする趣向もたのしい。

クライマックス、玄碩の窮地を救うため、ギリギリで駆け込む歌右衛門。感動的な場面なのに、ゲラゲラ笑う客席はどういうこと⁉︎この日の客は、変なところで笑ったり、女の声でフライング気味に大向こうをかけて会場を凍りつかせたりで、興を削がれたのが残念。

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2015年4月30日木曜日

4月26日 中日劇場 夜の部

「新・八犬伝」

悪くはないはずなのだが、昼の部の派手派手しさと比べると見劣りしてしまうのは仕方ない。
特に、1幕が退屈。前回見たときはこれまでではなかったので、キャストのせいか。

梅丸は濱路のほか、大詰めの犬絵新兵衛でも登場。牛若丸のような拵えが凛々しい。

犬山道節の右近が出てくると、場が引き締まってほっとする。

4月26日 中日劇場 四月花形歌舞伎 昼の部

「操り三番叟」

門之助の翁と宗之助の千歳はおごそかな雰囲気だが、右近の三番叟と男女蔵の後見が登場すると華々しい、楽しい風情に。人形ぶりの様子はこれまで見たものと少し違っていたようだけど、これもまたすごい身体能力だと感嘆。


「雪乃丞変化」

大絶賛を聞いて観に行ってみたのだけれど、悪くはないのだが、大衆芸能のような演出が私には合わないみたい。猿之助の女形は好きだし、敵討の筋立ても、立ち回りもあって面白いのに、あの仰々しい音楽が流れると気持ちが醒めてしまう。

あて書きだけあって、役者それぞれが引き立っていて、軽業のお初の米吉が新しい境地を開拓?伝法な姉御を格好良く演じていて、スカッとする。むく犬の源次の萬太郎との掛け合いも楽しい。

雪乃丞の敵、土部三斎(男女蔵)の娘、浪路を演じた梅丸のかわいいこと。

剣術の同門でありながら、雪乃丞に敵対する門倉平馬の巳之助もいい味出している。

愛之助の菊之丞は劇中劇の「関の扉」もよかったし、雪乃丞の事情を知ったうえですべてを受け入れる度量の深さが格好いい。

話題の宙乗りは舞台下手から2階の上手側にむけて劇場を斜めに横切る変則的な形。1階席の後ろのほうだったので、後半が全く見えず、おいてけぼりな感じだったのも不満が残った。

4月 文楽公演 第2部

「絵本太閤記」 

夕顔棚の段を松香大夫と清友。尼崎の段の前を呂勢大夫と清治、後を千歳大夫と富助。

初菊のくどきなど、乙女の切ない心情を語らせたら呂勢大夫と決まってしまったのか。すごくいいのだけど、同じような語りが多いような。短くてもっと聞きたい気分。

千歳大夫は大きな立ち回りなど、派手なシーンがはまる。


「天網島時雨炬燵」

紙屋内の段の中を咲甫大夫と喜一郎、切を嶋大夫と錦糸、奥を英大夫と團七。

嶋大夫と錦糸のコンビがいい。登場時、お痩せになったかと思ったが、語り始めるといつもの力強さが胸に迫る。

和生のおさんは良かったが、治兵衛は…。辛抱立ち役で、じっと動かず耐える風情から男の色気が醸し出される役どころなのに、玉男にはあまり色気を感じられず。


「伊達娘恋緋鹿子」

火の見櫓の段のみで、派手な演出を楽しむ趣向か。

せっかくの見せ場、お七が火の見櫓に登る場面で、梯子がめくれて後ろが見えてしまっていたのが興ざめ。

4月4日 文楽公演 第1部

「靭猿」

咲甫大夫の猿曳、睦大夫の大名、太郎冠者は始大夫。ほか咲寿大夫、小住大夫。

襲名を祝って華やかに。お猿さんがかわいい。


「口上」

真ん中に新・玉男が座り、向かって左に嶋大夫、寛治、右に和生、勘十郎。後ろは一門の人形遣いがずらりと控える。なかなか壮観。

下手の千歳大夫が司会のような形で進み、嶋大夫、寛治が襲名をご披露。初日のせいか、ちょっと噛んだりもしていたけれど、歌舞伎とは違って淡々とした感じ。和生と勘十郎が同期の思い出などを語り、和やかな雰囲気。主役は一言も話さないというのが文楽風らしい。


「一谷嫩軍記」

玉男の襲名公演なのだが、妻相模の和生と藤の局の勘十郎のよさが勝っていた感じで、主役の熊谷がいまいち。

熊谷陣屋の段の切を咲大夫と燕三。後を文字久大夫と清介。

咲大夫の語りは聴き惚れてあっというまに過ぎてしまった感じだったのに、文字久大夫は聞いているのが辛くて、辛くて。声が聞き苦しくて、早く終われと何度も時計を見てしまった。


「卅三間堂棟由来」

中を芳穂大夫と清馗、奥を津駒大夫と寛治。

津駒大夫の語りが切ない。女房お柳を蓑助が遣い、情感たっぷり。

2015年3月9日月曜日

3月8日 三月大歌舞伎 夜の部

「車引」

愛之助の梅王丸、菊之助の桜丸、染五郎の松王丸、3人のバランスがよい。これまで観たものは、梅王丸、桜丸に比べて松王丸が一回り大きい悪役という感じがしたのだが、今回は3人の力が拮抗して、三つ子らしく見えた。愛之助、菊之助の美声が耳に心地よく、梅王丸の力漲る様も良かった。愛之助の荒事はうまい。


「賀の祝」

冒頭の梅王丸、松王丸夫婦の、笑いを含んだゴタゴタから、後半の悲劇へとがらりと変わり、物語りに引き込まれた。

梅王丸、松王丸のは子供のケンカのよう。孝太郎の千代、新吾の春との組み合わせも良かった。

後半、文楽では「桜丸切腹の場」というくらいだから、桜丸の見せ場かと思っていたが、むしろ八重と白太夫のほうがしどころが多いのかも。左團次はさすがの貫禄を見せてくれたが、梅枝も健闘。菊之助は清々しい桜丸で、切腹すら美しく見えた。


「寺子屋」

松緑の源蔵に壱太郎の戸波、染五郎の松王丸に孝太郎の千代。全体を通して、セリフは聞き取りやすく、話の筋もよくわかったのだけど、情が薄いというか。松緑の源蔵は、菅秀才の身代わりが見つかって良かったというばかりで、寺子を手にかける苦悩があまり感じられなかった。染五郎の松王丸も同じく、小太郎でかした、子供のおかげで主君への忠義がたったという気持ちばかりが先に見えて、我が子を先立たせる悲壮感が薄い。まあ、それはそれで一つの形なのかもしれないけど。

涎くりがふざけた罰に線香(?)を持って立たされたり、饅頭を盗み食いするなど、見慣れぬ場面も。

いろは送りで「待ってました」の大向こう。残念。



2015年3月8日日曜日

3月7日 三月大歌舞伎 昼の部

「菅原伝授手習鑑」の通し。

「加茂堤」

菊之助の桜丸に梅枝の八重夫婦が、若々しくてよろし。壱太郎の刈谷姫、萬太郎の斎世親王は更に若く、初々しい。壱太郎のかわいらしいお姫さまぶり。舞台の上が美形揃いで、華やか。斎世と姫が車のなかで何やらやっているとき、当てられた桜丸夫婦のじゃらじゃらぶりも楽しい。まあ、菊之助は男臭さがないので、あまり色っぽくはないのだけど。


「筆法伝授」

仁左衛門の菅丞相はもう、神々しいほど。座っているだけで存在感がすごい。
染五郎の源蔵に梅枝が戸波。染五郎は真面目そうな役がうまくハマる。筆法伝授が、芸の伝承とダブって見えた。

園生の前の魁春、落ち着いた風情の中にも源蔵夫婦への気遣いが感じられジーンときた。



「道明寺」

仁左衛門の菅丞相は期待通り素晴らしいのだが、秀太郎の覚寿がすごくよい。この役がこんなに物語るとは初めて知った。この場を引っ張っているのは菅丞相よりむしろ覚寿なのではないかしらんと、思うほど。

奴宅内の愛之助、褌一丁で笑いを取る。身体を張っての道化役。途中、家来衆に囲まれて背中を向いているとき、肩で息をしていたように見えたけど、そんなに息を切らすような動きだったっけ?

判官代輝国の菊之助、腿の上の方まで見える衣装だったので、ガッチリした太腿に驚いた。膝上までは普通なのに、腿のだけ競輪選手のよう。


2015年2月28日土曜日

2月某日 ボーカロイドオペラ葵上with文楽人形

能などの葵上をボカロにアレンジしたのかと思いきや、登場人物の名を借りての全くの新作。舞台も現代だし。文楽人形のかしらは時代がかっているのに、中途半端な衣装に違和感を覚える。着物ではないけれど、洋服とも言い難い、民族衣装のようなのだが、人形に似合っていない。携帯電話とかPCとか、今っぽいアイテムが出てくるのも変な感じ。

ボカロの歌(?)をちゃんと聞くのは初めてだったので、不思議な感覚。声のような、シンセサイザーのような、独特のグルーブ感は面白い。セリフが歌詞になっているのだが、ところどころ説明的にすぎるのが稚拙に感じた。途中まで、私には合わない世界だなあと思っていたのだけれど、クライマックスの、アオイがミドリに憑依されて、炎に包まれるシーンでは作品の世界に引き込まれた。何なんだろう、あの不思議な感覚は。

パンフレットにもあったように、作りものの歌姫であるボカロと、魂のない人形に命を吹き込む文楽人形というのはたぶん、相性がいいのだろう。ただ、衣装や顔立ち、物語りの設定(現代ではなく、過去にするとか)には改善の余地ありと見た。

2015年2月22日日曜日

2月22日 システィーナ歌舞伎 「ユリシーズ」

ユリシーズで歌舞伎?どんな話になるのかと思ったら、百合若大臣にオデュッセイアの風味をちょこっとまぶした感じで設定に無理はなかったのだが…。

冒頭、海の女神カリュプソの大和悠河と女性ダンサーズの踊り。大和の栗色の巻き毛にブルーのドレスはよく似合って美しいのだけど、なんだかしっくりこない。脚の付け根が見えそうなくらいの深いスリットなのに、セクシーというよりはしたないと感じてしまった。スカートから覗く脚が筋肉質なこととか、足捌きや身のこなしに女性らしいつつましやかさや柔らかさがないせいか。(男役としてなら多分、キビキビした動作になるのだろう)

場面変わって、和の国の朝廷?蒙古討伐を命じられる百合若(愛之助)は、勝利の暁には立花姫(大和)と娶せるとの約束をえる。一目会って恋に落ちる二人。この大和が意外にもよかった。宝塚って基本洋物なので、和物は不得手かと思っていたのだけど、小さい顔に平安風の長い黒髪が似合って、言葉少なに恥じらう様子が可憐なお姫様の風情。対する愛之助は特別良くもないけど、歌舞伎の二枚目らしく、似合いの二人。

戦闘の場面は、キックボードを使ったり、ターレ(!?)を使ったりと工夫してて面白い。蒙古軍大将の海龍王は張春祥。京劇の役者だそうで、日本語がカタコトで少々聞き辛かったけど、まあ、異国の敵なのだし。立ち回りで、長刀を振り回すところなど迫力があった。あと、京劇風の効果音が効いてた。

物語は、百合若を快く思わない家来の別府兄弟が百合若を取り残して帰国。討ち死にしたと嘘をついて、領地を横取りする。

一方、百合若はタコの妖精(愛一郎)に連れられて竜宮城というか、カリュプソの元へ。酒を飲んだり、ダンスをしたりして楽しく過ごす。カリュプソは昔愛したオデュッセイアに似ている百合若を気に入り、ここに留まれば永遠の命と若さを与えるというが、国に残した立花姫が気にかかる百合若は帰るという。カリュプソは意外にもあっさり百合若を解放し、土産に玉手箱を持たせる。(最後まで見てから思うに、このくだり必要か?大和に西洋風のダンスをさせるために作ったのか?)

数年後、百合若の消息を訪ねて秀虎が島にやってくる。百合若には島で出会った鷹姫(吉弥)との間に子までいなしているが、鷹姫は実は鷹の精。国へ帰る百合若と別れるため、鷹の姿に戻る。母と別れたくないと泣く子との別れは、葛の葉風。吉弥の見せ場で泣かせる。

百合若が国に戻ると、立花姫と別府雲足の婚礼の支度で慌ただしい。百合若と見破られないよう、玉手箱を開け、老人の姿になって侵入(…ってこくだり、なくても成立できるよね?)

結婚の祝いの席で、雲足は家来たちに百合若が使っていた弓を引けたら褒美を、というが重くて誰も扱えない。現れた老人(=百合若)にやらせてみると、見事に弓を引き、褒美に立花姫と雲足の首を要求。慌てる雲足らに、百合若は正体を現して立ち回りへ…。とここまではいいのだよ。ヒーローがヒロインを奪還してめでたしというのはよくある話だし、けどこれは…。

雲足に無理やり腕を引かれて現れる立花姫。なぜウエディングドレス?しも超ミニのフリルたっぷり。大和のシャープな容姿には、もっと似あう衣装があるのではない?
と思えば、エンジン音を響かせて、バイクに跨った百合若が革ジャン&ジーンズで登場し、姫を乗せて逃げる。(えええっっっ、、、「卒業」か?)

ラスト、再びバイクに乗って舞台に上がった二人。ハッピーエンドで愛の歌をデュエットするのだけど、二人の愛のレジェンドとか「もう笑うしかなかった。(正直、バイクで出てきたあたりからずっと笑いっぱなしだった。もはやギャグとしか思えない)愛之助の歌声は、低音の響きがよくて、いいなあと思ったけど、曲と歌詞が宝塚調なのが私には無理。踊りも、リフトとか頑張ってたけど、所詮付け焼き刃というか、身長差のせいもあるのか全然素敵じゃない。キメのポーズが、大和が愛之助の肩にもたれかかりながら左足を曲げ、右足を横に流すというワンパターンだったのも興ざめ。足元はワザとらしいくらいのペタンコ靴だし。

ミケランジェロの天井画に囲まれた会場は素敵だし、四方から音に包まれるような音響もよかったのに(波の音など、海の中にいるような気分になった)、最後のシーン、記憶から抹消してしまいたい。

帰宅して三津五郎の訃報を知る。勘三郎が早逝したぶん、三津五郎には長生きしてほしかった。

2015年2月12日木曜日

2月8日 二月大歌舞伎 昼の部

「嫗山姥」

なんだかシュールな話だ。父の敵討ちをし損ねた坂田時行(門之助)が自らの腹を突き、八重桐(扇雀)の腹に宿って生まれ変わり、敵を滅ぼす?⁇八重桐は最後、鬼女になって悪者を蹴散らすとか、ぶっ飛んだ展開にぽかーんとして終わった。

見せ場はその前のしゃべりなのに、もうそれどころじゃないかんじ。


「京人形」

松緑の甚五郎に壱太郎の京人形。京人形がとにかく可愛い。松緑は踊り上手なのだが、イマイチ華やかさが感じられないのはなぜだろう。


「口上」

今月は梅玉が披露役。みなさん卒なく、あまり面白い発言はなかったかな。


「傾城反魂香」

鴈治郎の又平に猿之助のおとく。二人ともはまっていて、とてもよかった。鴈治郎の又平はこれまで観た中で、一番だったかも。どもりが嫌味でなく、情けなさがちょっとユーモラスで。猿之助はこういう世話女房が上手くて、よく似合う。

壱太郎の修理之助は爽やか。

竹三郎の将監北の方。これまで観たものでは印象の薄い役だったけど、又平夫婦への慈愛が感じられてよかった。

2015年2月3日火曜日

2月1日 忠信三変化

能、文楽、落語で佐藤忠信に因んだ物語りを見比べるという企画。同じ人物がここまで変わるとは。講談師の旭堂南による解説もあって分かりやすく、面白かった。

まず、歴史上の忠信というか、「義経記」に描かれる佐藤忠信は、義経が吉野山から逃げのびる際、何もせずに逃げては武士の名折れと志願して1人残り、追手と戦った後、自害したと見せかけて義経一行に合流する。たった一人で何人もの働きをする超人的な人物。

一方、能の「忠信」は、義経の元に付き従っていたいと願っていたのに、周囲に押されて一人残って戦うことになる。追手と戦い、抜け道から逃げのびるという筋。

能楽師の山本章弘が忠信。能の抑えた動きながら、立ち回りが結構派手で面白い。刀を合わせたり、討たれた敵が後ろ向きにばったり倒れたり。

文楽は「義経千本桜」の「河連法眼館 狐忠信の段」の抜粋。忠信の超人性から、これは人間ではなく狐の化けたものという設定で物語りが進む。

上演したのは、狐忠信が本物の忠信ではなく、狐であると露見してから。千歳大夫、宗助の床に、人形は玉佳。能舞台での上演だったので、主遣いが下駄を履けなくて、少々演じづらそう。狐に変化するところも丸見えだったし。途中、仰向けになって手足をバタバタするのはどういう意味だったのだろうか。

落語の「猫の忠信」は、化け猫の話。二親を三味線の皮にされてしまった子猫が親に会いたさに化けて、浄瑠璃のお師匠さんの家に入り込むという。演者は桂宗助。落語なのに、なんだかテンポが悪いというか、繰り返しがくどく感じて、いまいち楽しめず。他の落語家さんだったら楽しめるのか、はてまた、演目自体への相性が悪いのか。

2015年1月20日火曜日

2015年1月18日 壽初春大歌舞伎 夜の部

「将軍江戸を去る」

青果ものは好きではのだけれど、今回は悪くなかった。梅玉の慶喜に弥十郎の伊勢守、橋之助の山岡鉄太郎とベテランの役者ばかりだったので、セリフ回しも落ち着いていたのが良かったのか。前回は花形だったので、セリフの応酬がうるさく感じたのだけど。


「口上」

藤十郎に代わって、仁左衛門が襲名の披露役。歴代の鴈治郎の紹介と、先代、先々代との思い出など、簡潔だけれどいい口上だった。

橋之助、愛之助、竹三郎、弥十郎、梅玉、秀太郎、亀鶴、虎之助、壱太郎、扇雀、藤十郎、鴈治郎と続く。あまり奇をてらった面白いことをいう人はいなかったけど、秀太郎の柔らかい口調が良かった。


「封印切」

仁左衛門の八右衛門の厭らしさ、憎らしさといったら!大阪にこんなおっちゃんいるよなあという。口を開けば憎まれ口ばかりというのが、いっそ痛快なほどで、

忠兵衛の鴈治郎は、情けないけど見栄っ張りな様子が、吉田屋とちがってぴたりとはまる。

井筒やおえんの秀太郎が出ると、上方の風情がぐっと増す。


「棒しばり」

愛之助と壱太郎の息もあい、楽しく、陽気な一幕。曽根松兵衛の亀鶴も、演じている人達が楽しそうなのが何より。

2015年1月19日月曜日

2015年1月18日 「海をゆく者」

アイルランドが舞台で、呑んだくれの男たち5人の芝居。

吉田鋼太郎が観たかったのだけれど、目と足が不自由な兄の役で、下品で乱暴な様子に観ている間中嫌な気分。うまい役者だからこそなのだろうけど、ところ構わず痰をなすりつけたりとか、生理的な嫌悪感を刺激されどおし。あちらの人はこういうのが面白いのかもしれないが、ちっとも笑えない。

弟役の平田満の抑えた演技、死神役の小日向文世のおとなしいのに不気味な様子にはみせられた。浅野和之が道化のような役回りで、ちょっとほっとする。

途中、休憩をはさんだのだけれど、上演時間中ずっと、いびきをかいて寝ている人がいた。つまらなくって寝てしまうならまだしも、客電が落ちてすぐから寝ているってどういうことだろう。

2015年1月17日土曜日

2015年1月17日 初春文楽公演 第1部

「花競四季寿」

太夫5人に三味線5人で、初春らしくにぎにぎしく。呂勢大夫の出演がこれだけとは…と思っていたけど、想像よりは聞きごたえあった。特に「関寺小町」。冒頭、三味線の伴奏もほとんどなく、ピンスポットを浴びて一人で語るところがあったのだが、謡のような、不思議な妖しさのある声音に聴き惚れた。

人形は文雀で、老女の悲哀が切ない。

ほかは、「海女」でタコが出てきたのがユーモラスで面白かった。


「彦山権現誓助剣」

杉坂墓所の段は松香大夫の六助など6人の太夫と三味線は團吾。ちょっと急いているような演奏に感じた。

毛谷村の段は中が咲甫大夫と清介、切が咲大夫と燕三。
咲大夫は流石。悲劇でなくても、やはり聞かせる。

人形は和生のお園がよかった。六助の玉女は、立ち回りなど大きな動きが窮屈そうに見えて私の好みには合わないみたい。母お幸の紋壽が休演で勘弥が代役。


「義経千本桜」

道行初音旅

歌舞伎版とは違ってすごく面白かった。舞踊ものの文楽版ってこれまであまり面白いと思ったことがなかったのだけれど。床が華やかだったのが良かったのか。静御前の津駒大夫と狐忠信の文字久大夫ほか太夫5人と三味線は寛治、藤蔵ほか5人という豪華さ。寛治の力みの全く感じられない、繊細さと、藤蔵の力強さのコントラストが面白い。

人形は静御前の勘十郎と忠信の幸助だったのだが、幸助の忠信がよかった。冒頭、狐で登場しての早変わりあり、狐の面影を感じさせる動きありで目に楽しい。

2015年1月11日日曜日

2015年1月10日 中村鴈治郎襲名披露 壽初春大歌舞伎 昼の部

「寿曽我の対面」

工藤祐経に橋之助、曽我五郎を愛之助、十郎を扇雀。

愛之助の五郎は以前見たときのほうがよかったような。この役は全身から力があふれるような迫力が欲しい。敵討ちをとはやる五郎を十郎が抑えるようすも、型をなぞっているようで。

橋之助の工藤はちょっと大きさが足りないというか。

大磯の虎の吉弥が美しい。化粧坂少将の新悟もよかった。

最後、鬼王新左衛門で進之介が登場。この人っていつも似たような役だ。


「廓文章」

新・鴈治郎の伊左衛門に藤十郎の梅川。

ストーリーなんてないも同然で、役者の魅力で見せる芝居だから、伊左衛門は立っているだけで匂い立つような色香がなくては。残念ながら、鴈治郎にそういうチャーミングさは感じられなかった。藤十郎の梅川と並んでじゃらじゃらするところも、同じ顔が並んでいるのは気持ち悪い。いっそ、壱太郎とのほうがよかったのでは。

吉田屋喜左衛門に梅玉、おきさに秀太郎。秀太郎のおきさが出ると一気に上方の風情が現れてほっとする。梅川の近況を知りたい伊左衛門がなかなか言い出せなくて…というおきさとのやりとりは、これまで見たものよりも短かったようで、物足りない気分。成駒屋の型なのかな。

冒頭、伊左衛門に痛い目を合わせようとする吉田屋の若い衆を橋之助、藤屋の手代を愛之助と襲名興行らしいご馳走も。


「河内山」

河内山宗俊の仁左衛門。口跡がよく、セリフが耳に心地よい。江戸言葉もすてきだ。表情も冗舌で、昼の部ではこの演目が一番の見どころ。

腰元浪路の壱太郎は可憐。だけど、せっかく数馬が逃がそうとしてくれているのに、「殿様の手にかかりたい」ととどまる理由がわからん。殺されてもいいなら手込めにされちゃってもいいんじゃないのと思ってしまう。

出雲守の梅玉ははまり役。浪路に横恋慕して無体を働くいやな奴なのだけど、殿様のような、品のある役はさすがによく似合う。

番頭の松之助が

2015年1月6日 美の饗演2015

能の梅若玄祥とパリ・オペラ座バレエのマチュー・ガニオの競演。

最初、「タイスの瞑想曲」のバレエを上演したあと、能バージョンで玄祥とマチューが競演。

バレエは妹のマリーヌとのパ・ド・トゥ。兄妹だけあって息はぴったり。で、マチューの筋肉のすごいこと。がっしりしているという感じではないのだけど、細かい筋肉がびっしりという感じ。能楽堂だったので、通常のバレエ公演ではありえないくらい近くで見られたのでよく分かった。リフトはただ持ち上げるだけでなく、両手を伸ばした状態から、肩くらいまで下げてまた持ち上げるといった振りもあって、男性ダンサーって力仕事だなあと改めて関心。

能バージョンは玄祥が美しい女性に見えたのがすごかった。素顔からはとても想像できないけど、可憐なのだ。中程で、マチューと並んで手だけの振りを並んで演じる場面があったのだけれど、バレエの動きと能の動きの違いがシンクロしていて美しかった。

このあと、能の「土蜘蛛」。蜘蛛の糸を放つなど派手な動きが多くて楽しかったのに、謡があまりに心地よくて何度か意識を失った…orz。

最後はマチューのソロで「それでも地球は動く」。コンテンポラリーらしい、複雑な動きの連続。つくづくバレエダンサーはアスリートだと思う。能舞台が狭く、天井もあるせいか、ちょっと動きが窮屈そうだったか。

終演後、パンフレットを購入した人にサインをしてくれるサービス。マチューの屈託のない笑顔に好感。

2015年1月4日 初春文楽公演第2部

「日吉丸稚桜」

中を陸大夫と清志郎、奥を千歳大夫と富助。

小田春長から萬代姫を殺すよう命じられた木下藤吉。家臣の堀尾茂助義春は女房お政の父親、五郎助が叔父の敵と知って離縁しようとし、悲嘆に暮れるお政は自害。お政の首を萬代姫の身代わりに…と。なんだか悲劇まで主君のために利用してしまうというちゃっかり具合がなんだかなあ。

千歳大夫の語りはさすがの迫力。


「冥途の飛脚」

淡路町の段を英大夫と團七。
封印切の段を嶋大夫と錦糸。
道行き合かごを三輪大夫、咲甫大夫ほか。

歌舞伎の「封印切」は何度も見ているけれど、だいぶ話が違うので驚く。八右衛門、ええやつやんか。友達思いで、忠兵衛が道を誤らないように根回ししてあげたのに、忠兵衛の変なプライドが破滅に導いてしまう。一方、忠兵衛はほんとどうしようもない。金がないのに梅川に入れあげて店の金に手をつけてしまうのもアホだし、大事な為替を持っていながらふらふらと遊郭に行ってしまうのも浅慮すぎる。極め付けは、薄っぺらいプライドのために自暴自棄になって、為替に手を付けてしまう。はあ…。
同情の余地なんてない、どうしようもない男なのだけど、ことの大小はちがっても、こういうことってあるよなあとも思える。嶋大夫の語りがまたすごくて、説得力があるんだよなあ。

2015年1月8日木曜日

2015年1月2日 新春浅草歌舞伎 第1部

世代交代した浅草は主要メンバー全員が20代のフレッシュな顔ぶれ。
恒例のお年玉は2人で、初日は歌昇と巳之助。幕から現れてすぐ、暫く言葉を呑んだようだったのは、満員の客席に感無量になったのだそう。稽古に熱が入るあまり、浅草公会堂の給湯設備が止まってしまい、水のシャワーを浴びることになったとか。あとは、演目の簡単な紹介で、「独楽売」については「頭をからっぽにして楽しんでください」。仲の好さそうな2人の掛け合いが微笑ましい。


「春調娘七草」

曽我五郎の松也、十郎の隼人と静御前の児太郎。若々しい半面、動きはやや硬いかな。正月らしく、華やか。


「一條大蔵譚」

阿呆だと思われていた大蔵卿が実は作り阿呆だったというのがキモなのに、奥殿からの上演だったので、地に戻った大蔵卿としての登場でギャップの楽しみが半減。本来、阿呆→まとも→阿呆のところ、まとも→阿呆では…。

大蔵卿の歌昇は頑張っているなという感じ。作り阿呆で笑う顔がかわいい。

常磐御前の米吉が美しい。品があって、阿呆の大蔵卿に顔をしかめる様などよかった。

勘解由女房鳴瀬に芝のぶ。この座組みのなかでは最年長ではないかと思うが、安定感のある演技が場を引き締めていたように思う。


「独楽売」

巳之助と種之助が独楽売。陽気で楽しい踊りだけれど、初日のせいか、少々動きが固いか。

舞妓の梅丸はちょっと背が伸びたのか、骨格がしっかりしてきたような。このまま可憐さを保ってほしいのだけど…。

芸者の米吉がこちらも好演。茶屋女房の芝のぶともども、女方が美形揃いで目の保養。