2014年12月21日日曜日

12月21日 伊賀越道中双六

敵討ちの原因となる「行家屋敷」から、「誉田家城中」「藤川新関」「岡崎」を経て「敵討」へと、敵討ちの本筋を追った構成。岡崎は44年ぶりとか。去年、文楽で通しで観た折、岡崎の段は歌舞伎ではどうなるかと思っていたので、願ってもない機会。

岡崎では、政右衛門とお谷のやり取りが、文楽よりも丁寧に描かれる。確か、去年の文楽では、政右衛門はタバコを刻むところからの登場だったけど、その前段の志津馬とお袖のくだりや、幸兵衛との師弟関係が明らかになった。お谷は、やっぱり、どうして乳呑み子をかかえて雪の中旅してくるのか分からない(政右衛門の腕を信じているなら、敵討ちを果たして帰ってくるのを待っていればいいので)のだけど、雪の中で凍えたり、癪で苦しんだりする様子が哀れ。子供の 巳之助を殺すのは、会っていきなりでなく、一旦顔を確かめてから、刀でバッサリでなく、小塚で首を突いて、と文楽版との違いもあれど、死んだ子をうっちゃってしまうのは一緒。生身の人が演じると、非道っぷりが際立つなあ。 しかも、幸兵衛は政右衛門や志津馬の正体を知っていて、殺しの意味はないのだから。

最後、無事敵討ちを果たして、めでたし、という感じだったけど、なんだか釈然としない気分が残った。あと、吉右衛門の立ち回り、ちょっと動きが重いのはお歳のせいか。

12月20日 十二月大歌舞伎 昼の部

「義賢最期」

1月の浅草歌舞伎で観たばかりだけれど、歌舞伎座で初の主役なので。

前半、宵待姫(右近)との親子の情や、葵御前との情愛は良かったのだけど、全体的にちょっと忙しないというか、急いでいるのか、タメが足りないように感じたのが残念。セリフのやり取りが畳み掛けるようだったり、後半、手負いの義賢が花道でバッタリ倒れるところや、最期の仏倒れの前など、もっと、たっぷり観たいと思うところが所々あった。タイムテーブルより3分巻いていたのはそのせいか?

宵待姫の右近は、可愛らしい姫君。これまでの、女形としてはちょっと硬いという印象を覆した。小万の梅枝は上々。たおやかな女はこれまでもあったけど、女武者もきりりとして、ハマる。葵御前の笑也は、前半はいいのだが、最後、多田蔵人に手を引かれて落ちのびるくだりが不自然で、コントみたいだったのが惜しい。

進野次郎の道行(薪車)は、芸風変わった?海老蔵風味の大味で、雑っぽい。

細かい点で、物足りなさはあれど、他の演目を見た後では、これが一番歌舞伎らしくて、見応えがあった。


「幻武蔵」

宮本武蔵を獅童が演じる新作。豊臣秀頼の妻だった千姫に取り憑いた亡霊退治に駆り出され…という設定なので、終始客席が暗くて睡魔が襲うorz 現代劇のようなセリフの応酬なのも眠りを誘った。

淀君や秀頼の亡霊に悩まされる千姫の児太郎は品があって可憐。他は、12月の歌舞伎座でこれをやる意味を含めて、納得感のない芝居だった。
宮本武蔵について、決闘の時刻にわざと遅れて相手を平常心でいられなくさせるのは卑怯というセリフには同感だったけど。

「二人椀久」

玉三郎の松山太夫に海老蔵の椀久。
ビジュアルとしては悪くないのに、動くとなよっとした海老蔵がキモチワルイ。気が触れてしまったのだからと思いつつも、椀久ははんなりしてても、なよなよではないよね。

相手はともあれ、玉三郎はさすがの美しさ。相手が仁左衛門だったら、と思わずにいられない。

2014年11月22日土曜日

11月22日 ANAチャリティー大歌舞伎

「彦山権現誓助剣」

愛之助の六助に壱太郎のお園。何年か前の、確か浅草歌舞伎でもこの組み合わせだったけど、前回より良くなったような。実は、六助ってあまり格好良くないなあと思っていたのだが、今年は愛之助の歌舞伎をあまり見られなかったせいか、格好よく見えた。愛之助は歌舞伎がやはりいいよ。弥三松のわがままに振り回されて、困った様子もキュートだし。壱太郎も、勇ましい様子から急にしおらしくなるところとか、かわいいさが増していた。毛谷村だけでなく、杉坂墓所もあったので、話が分かりやすいし。

微塵弾正実は京極内匠は男女蔵で、不足のない悪役っぷり。弥三松役の子役がかわいかった。
一味斎後室お幸の吉弥は全く悪くないのだが、もっときれいどころの役で観たいなあ。


「団子売」

愛之助の杵造と壱太郎のお臼。陽気な舞踊でただ楽しく。

大向こうをかけていたおじさん、やたらに「六代目!」と言うのは聞き苦しい。普通に松嶋屋でいいでしょ。こういう軽い芝居なんだし。「ご両人」も、ここぞという1回でいいのでは。


2014年11月12日水曜日

11月9日 文楽公演 第1部「双蝶々曲輪日記」

大宝寺米屋の段の奥を津駒大夫と寛治。
相変わらず、力ないような風情で座っているのだが、三味線の威力は健在。あの体からどうやって力強い音が出てくるのか不思議だ。
長五郎をいさめるため、大芝居をうつお関。

難波裏喧嘩の段

長吉の小住大夫は抜擢なのだろうか?この場でのセリフは少ないとはいえ、一応主役級。精いっぱい努めている感じが、好印象。

橋本の段を嶋大夫と錦糸。
いつものように、見台に突っ伏すような熱演。

八幡里引窓の段

中を文字久大夫と清友、切を咲大夫と燕三。

11月8日 永楽館歌舞伎 夜の部

「桂川連理柵」

帯屋長右衛門を愛之助、女房おきぬを吉弥。
吉弥のおきぬがいい。ほんと、できた女房で、こんなにいい女房がいるのに出来心で浮気しちゃう長右衛門ってほんと、ダメ男だよなあ…。長右衛門は前半ひたすら耐えているだけなのだが、愛之助の辛抱する姿、よかった。

儀兵衛の千次郎の嫌な奴振り。馬鹿笑いがちょっとくどいように感じたのは、まだ板についていないからなのか。

丁稚長吉とお半を壱太郎。長吉が意外によくて、楽しそうに演じていた。三枚目をちゃんと演じられるのは実力のある証拠。


「口上」

愛之助
第1回は8月で暑く、外の温度計が40度。かつらの油が溶けてしまうので、冷蔵庫で冷やした思い出も。
皿そば、先日41皿食べた。50皿に挑戦したい。できるかなと思っていたが、隣に座っている人(男女蔵)が67皿(?)食べたというのでぜひ。
帯屋は上方の大事な演目。我当の伯父に手取り足取り教えてもらった。我当の伯父は十三世仁左衛門から教えてもらった。こうして伝統を繋げていく。
次は新作で、神の鳥と書いて「こうのとり」と読む。豊岡と言えばコウノトリなので、いつか作りたいと思っていたのがようやく実現した。

男女蔵
永楽館は2回に続いて2度目。出石の人は暖かく、お練りの時にはオメちゃん、オメッティとニックネームで呼んでくれた。
金比羅歌舞伎は2週間あるが、永楽館は5〜6日。来年は2週間、3週間、1ヶ月とやってほしい。

吉弥
上方の大事な演目、帯屋に出られて嬉しい。今回の役は…(と言って、ちょつと言葉に詰まる)今、お半と言いそうになりました(笑)、おきぬはやりがいのある役。話しをもらった時、心配したのは、この座組のなかで一番年上。並んで違和感がないかということ。(「若いよ!」と客席から声がかかる)皆さんどうだったでしょうか(大きな拍手)
「神の鳥」では、傾城柏木の役。大仰なこしらえで登場する。愛之助さんの早変わりや…男女蔵さんも…真ん中にいる(ここでなぜか笑いをこらえる出演者たち)ぜひ楽しんで。
永楽館は客席と一体感のある好きな劇場。一回でも多く出演したいので、愛之助さんよろしく。

壱太郎
帯屋の長吉とお半を演じるに当たり、祖父の藤十郎に教えてもらった。10月は大阪松竹座に出ていたため、一度だけ東京を訪ねて稽古をしてもらった。藤十郎はあまり具体的なことを教えてくれず、抽象的。今回は「こういう役はあまり稽古をしてはだめ」と。長吉のような役は、お客さんに笑ってもらったり、拍手をもらったりして作りあげていくもの。


「神の鳥」

冒頭は寿曽我対面のような、道成寺のようなセットで、真ん中に赤松満祐の男女蔵、上手に傾城柏木の吉弥などが並ぶ。天井からつりさげた籠の中にコウノトリが。

狂言師の右近(愛之助)と左近(壱太郎)がやってきて、舞を披露するなか、早変わりのぶっかえり(?)でコウノトリの精に変身。子どもの吉太郎が加わり、3人の舞に。

最後は暫くのよう。隈どりをした鹿之助に早変わりした愛之助が登場。

踊りあり、早変わりあり、荒事ありの盛りだくさんの舞台で楽しめた。

11月3日 文楽公演 第2部「奥州安達原」

(11月16日の再観劇後加筆)歌舞伎では袖萩祭文を見たことがあったけど、通しで見るといろいろ発見が。ただ、袖萩も傔仗も、恋絹も岩手も死に損?という感じで釈然としない気分…。部分部分は感動的なのだけど、ストーリーに一貫性がないというか、いろいろわけがわからなくてもやもやする。貞任と宗任が主役なのか、敵役なのかも混乱。けどなんか、もう一度見たくなる。


朱雀堤の段

咲穂大夫と清志郎。生駒之助と駆け落ち中の恋絹。おなかに子どもがいるので、この世では生駒之助と添い遂げるが、来世では八重幡姫にお返しするとか、理屈がよくわからん。


環の宮明御殿の段

ひとつの段を4人で語り分けるので、1人あたり15~20分程度?忙しなくて物足りない。もうちょっとじっくり聞いてみたいのだが。

袖萩祭文を呂勢大夫と清治。持病の癪で苦しむ袖萩に自分の着物を脱いで着せかけるお君の健気さが涙を誘う。が、子どもを語る時の声がちょっとかすれ気味で、聞き苦しく感じた。「お前があんまり寒そうで」とか、いろいろ聞かせどころが多いのに。

で、納得できないのが、自害した袖萩と傔仗がずいぶん長いこと生きているのだよ。武士の傔仗はまあ、超人的な力を発揮したのかもしれないが、袖萩なんて、喉をついているのに。いったん舞台をはけてから再登場して、夫である貞任と最後の別れまでしちゃう(そのわりにやり取りはあっさり)なんて。ぶっ飛びすぎていてもうわけがわからない。


道行千里の岩田帯

三輪大夫を筆頭に太夫5人に三味線6人。華やかな舞踊の1幕。生駒之助を遣った勘弥が良かった。物語がかわいそうだったり、むごかったりするので、ちょっと一息。


一つ家の段

中を咲穂大夫と宗助、奥を英大夫と清介。再登場の咲穂大夫。1つの演目でこういう配役はなぜだろう。ちょっと不思議。

安達原の鬼婆伝説がモチーフ。旅人の喉笛にかみついて殺して金銭を奪ったり、腕をちぎったりとスプラッタ満載。ここに訪ねてくる恋絹&生駒之助。苦しむ恋絹のために薬を買いに行くと生駒之助を連れ出すので、ターゲットは生駒之助かと思いきや、一人戻ってきた岩手が恋絹に襲いかかる。誘拐した環の宮の声を回復させるため、胎児の血が必要だとかで、恋絹の腹を割いて血にまみれた胎児を取り出したり(!!)、息つくのを忘れるほどの急展開でついて行くのがやっと。
かと思えば、環の宮は替え玉で、声が出ない病も仮病と分かる。まさかの恋絹は無駄死に?
匣の内侍に化けていた新羅三郎義光が正体を現すとき、女方の人形から立役の人形に持ち替えて、なぜか衣装まで変わっていて、もはや同一人物に見えず…。これ、歌舞伎ならしどころのあるシーンなのではないだろうか。
失敗を悟って自害する岩手。切腹したうえに、刀を加えて谷底に身を投げる。男か。


谷底の段

なぜか、貞任、宗任、義光らが勢ぞろいして、見えを切る。見るには華やかだが、話としては???探していた十握の剣が見つかったからと生駒之助の勘当が解かれるのだけど、それ、恋絹の手柄じゃないのか。

2014年10月31日金曜日

10月18日 十月大歌舞伎 夜の部

「寺子屋」
  
仁左衛門の松王丸に玉三郎の千代、勘九郎の源蔵と七之助の戸浪とあっては、観に行かずにいられようか…というわけで、東京まで遠征。

勘九郎の源蔵は、教えられたことを忠実になぞるのに精いっぱいといった感じ。それが、忠義に苦悩する様子と重なると言えなくもないのだが、やや演技が硬いように感じた。もう2、3回やったら良くなりそう。
七之助の戸浪は、源蔵との絆が感じられていい感じ。
仁左衛門の松王丸は期待通り。玉三郎の千代が、母の悲哀を存分に出していて、夫婦のきずながより伝わったと思う。

ひとつ残念だったのは大向こう。いろは送りの前に「待ってました」はないんじゃないだろうか。


「道行初音旅」

梅玉の忠信に藤十郎の静御前。登場時、一瞬かわいい、と思ってしまったのだが、見続けているとやはりしんどいなあ。セリフを一部忘れたらしく、後見が教えていたのだが、一度では聞き取れなかったようで繰り返していたのが丸々聞こえてしまって。初日ならともかく、残念な感じ。


「鰯売恋曳網」

初めて見る演目だったけど、ほのぼのしていい話や。猿源治の勘九郎も、寺子屋とは打って変わってのびのび演じているようで。こういうコミカルな役は勘三郎の面影を感じるなあ。傾城蛍火の七之助との息もぴったり。弥十郎のなむあみだぶつが、しっかり脇を固める。

蛍火を囲む傾城たちに、巳之助、新悟、児太郎、虎之助、鶴松。巳之助の薄雲が意地悪な女って感じで予想外に良かった。

最後、花道を引っ込むところで観音像に感謝を…と言いながら涙ぐんでいたのは、勘三郎のことを思い出していたのかしら。ハッピーエンドで、幸せな気分で劇場をあとにした。

10月4日 十月花形歌舞伎「GOEMON」

まさかの再演。悪い演目ではないけれど、こんなにたびたび上演するほどでもないと思う。ジャニーズの今井翼がゲストというので、若干不安もあって…。

まず、カルデロン神父役の今井が登場。第一印象は細っ、頭ちっちゃっ。セリフ回しは軽くて、まだ板についていない感じ。苦悩する様子が、なんだか薄っぺらいのだ。あんまり線が細いので、石田局の吉弥が並ぶとどっちが女か分からなくなってしまうのではと危惧したが、そんなことなくて美しいカップルに見えたのは、流石。歌舞伎役者の重厚な演技との釣り合いという意味では、物足りなくもあったけど。

2幕目、今井がすっぽんから現れて、愛之助GOEMONと父子(には見えないけど…)の競演はファンサービス。今井のフラメンコはなかなか見せたが、その前の佐藤浩希に比べると見劣りするか。っていうか、今井のソロがあるのだから、佐藤のソロはいらないのでは?

前回同様、客席を走り回ったり、2回の宙乗りがあったりと、傾いた芝居で、楽しめた。けど、昼夜同じ演目ではなく、どちらかは古典が見たかったなあ…。

2014年9月15日月曜日

9月15日 文楽「不破留寿之太夫」

シェークスピアを題材にした新作。ダジャレを駆使した、テンポのいいセリフの応酬が楽しかった。ホラをふくファルスに「さあ、さあ」と詰め寄る後ろで、テニスラケットを持った人形がラリーをし、「錦織」と言ったのは、床本にはなかったのでアドリブか?「前代未聞のダイエット」かと思ったら「大越冬」とか。

太夫は英大夫、呂勢大夫、咲甫大夫、靖大夫に、三味線の清治、藤蔵、清志郎、龍爾、清公。9人がずらりと並ぶのは圧巻だったが、いつもより床が高かったのは何でだろう。床に近い席だったので、姿が良く見えず、龍爾がなにやら胡弓のようなのを演奏しているのに、楽器が見えないので凄く気になった(あとで調べたら、三味線を胡弓のように弾いていたらしい)。英国民謡の「グリーンスリーブス」を取り入れるなどメロディのある曲だったり、太鼓や笛でサンバのようなリズムを奏でたりと、普段と違う音楽も面白かった。

舞台も、華やかな桜の木や、ストロボの演出など、視覚にも新しい。何より、コミカルな表情のファルスの人形が愛嬌があって可愛かった。他の人形は新たに作ったものではないみたいだけど、髪型やメーク、衣装がちょっと洋風。

9月15日 「白鳥の湖」

マルセロ・ゴメスのスワンに圧倒された。出てきた瞬間から目が離せない。ジャンプひとつ、ポーズひとつとっても美しい。冒頭のシルエットからして違うのだから。動きのメリハリがきいていて緩急が鮮やかなのは、ポーズでぎりぎりまで止まっているから。どうやったら自分が一番綺麗に見えるのか、知り尽くしているのだろうな。
2幕の王子との出会いのシーンでは、饒舌な瞳にクラクラ。絶えず王子を見つめる目が力強い。ほかのダンサーも王子を見ていたのだろうけど、ここまでの目力は感じなかった。踊りも素晴らしく、手足の隅々まで隙がなくて、神々しいほど。

3幕のストレンジャーでも、魅力は十分。女王の手に口付けするシーンでは、肩まで舐め上げて、首すじにまで唇を寄せるのを許してしまう。ほかのダンサーは肘のあたりまでで振り払っていたのに。

4幕は、これまで観た時より何だか短く感じた。もっと観ていたくて。

カーテンコールでは、舞台の中ほどて王子のクリストファーとしばらく見つめあってから、前方に。感極まった様子て抱き合うのにもジーンときた。素晴らしい踊りをありがとう。

2014年9月14日日曜日

9月14日 「白鳥の湖」

ザ・スワンはジョナサン・オリビエ。前回の来日時にも観たと思うのだが、私には合わないようだ。背中が固いのか、アチチュードなど身体を反らすところで、もうちょっとと思うところが多かった。細い垂れ目というのも、私のスワンのイメージとずれるんだよな…。

王子のサイモン・ウィリアムスもマッチョな身体つきがらしくない。

ただ、やはり、白鳥の群舞は素晴らしい。ステージを埋め尽くすダンサーの力強い跳躍の迫力たるや。人間の身体能力の凄さに胸が震える。

今回は女性陣が美人ぞろいで、迫力があった。ガールフレンドはまあ・・だけど、役にははまってたし。

夜の部を続けて観たところ、スワンのクリス・トレンフィールドが素晴らしい。シュッとした顔なので、白鳥というより丹頂鶴を連想してしまったのだが、上半身の動きが滑らかで、大きく見えた。ストレンジャーはあまり似合ってなかったけど、踊りのキレがいいのでだんだん違和感を感じなくなってきた。4幕で、スワンの背中の傷に羽根がくっついていた。偶然なのだろうけど、本当の傷口みたいに見えた。

王子のクリストファー・マーニーも、繊細な雰囲気がぴったり。確か、前回も来ていたのでは。

それにしても、このカンパニーのすごいところは、脇役に人たちも1人で何役もやるし、昼と夜で違う役だったりもする。同じ場面に違う役で出て、こんがらがったりしないのかしら。

スタオベは夜のほうが多かったような。私も同意。

2014年9月13日土曜日

9月13日「炎立つ」

平安末期の時代ものなのだが、ギリシャ劇を思わせる、現代風の演出。階段状のシンプルなセットで、視覚に訴えるのではなく、語りで伝える。キヨヒラ役の愛之助のセリフは耳に心地よいのだけど、イエヒラ役の三宅が聞き苦しい。力一杯演じているし、未成熟な粗削りな様の演出なのかも知れないが、発声など舞台での立ち居振る舞いが身についていないように感じた。

途中、歌が入ったり、舞台の隅で生演奏があったりと、ミュージカルのような一面も。巫女役の新妻の歌は、高音がきれいで、声の太さもあり、神秘的な雰囲気がででいた。

平幹二朗はさすがの存在感なのだけど、あんなお化けみたいなメイクはいらないのでは。

戦乱からの復興と、震災からの復興を重ね合わせたとのことだが、私にはピンとこなかった。ウクライナやパレスチナ、イラクで起こっていることのほうが、よっぽど近いと思うのだけど。
キヨヒラの願いは、戦のない、平和な世界。これって、東北の被災者の願いとはちょっとずれているきがするのだが。

2014年8月20日水曜日

8月9日16日 三谷文楽「其礼成心中」

気軽に見られる上質なコメディ。冒頭、曽根崎心中ばりに自分たちの世界に浸っている男女が「ちょい待ち!」というおっさんのだみ声で遮られるおかしさ。呂勢大夫の語りが客席をがっちりつかむ。再見なので、前回ほどは笑えなかったけれど、やはり面白い。

この芝居の見どころは人形の動き。「曽根崎心中」や「心中天網島」の名シーンの一部はもちろん、地団駄を踏むおふくちゃんや、水中で泳ぐ半兵衛・おかつなど普段では見られないようなコミカルな動きが楽しい。人形遣いは「人間にできる動きはすべてできる」と言ったそうだが、ある意味それ以上。初見らしいお客さんが、「3人でどうやって動かしてるんだろう」と言っていたけど、
人形が自ら動いているようななめらかさは三人遣いのミラクルだよなあ。

今回は英語の字幕が付いて、ふむふむと思うところも。「曽根崎の母」を「Oprah of Sonezaki」としたり、日本語で「お父さん、お母さん」というところが「Mother&Father」になっていたり。

義太夫や三味線がマイク越しだったので、音が少々聞きづらかったのが残念。



2014年8月3日日曜日

8月3日 夏休み文楽特別講演 名作劇場

「平家女護島」

鬼界が島の段

千歳大夫と清介。

冒頭、三味線なしでアカペラのように語りが始まる。
歌舞伎では何度も見ているが、文楽では初めて。でもやはり、この話、私好きじゃないわ。
途中、意識が途切れた…。


「鑓の権三重帷子」

浜の宮馬場の段

松香大夫、始大夫、希大夫、南都大夫、津国大夫と喜一郎。

モテ男、権三はお雪のこと、本気ではないのか?祝言を催促されながら、どこか逃げ腰。


浅香市之進留守宅の段

津駒大夫と寛治。

おさゐが怖い。13歳の娘の夫候補に、「娘の代わりに自分が結婚しようか」なんて、冗談にならないんですけど。お菊と結婚するなら真の台子を伝授しようと言われ、あっさり承諾してしまう権三もたいだいだ。関係をもったお雪という女が居ながら、一回りも離れた子どもとの結婚を承諾してしまうって…・。


数寄屋の段

呂勢大夫と藤蔵。

嫉妬に狂うおさゐの語りがすごい。三味線も激しくあて、目ではなく、耳が離せない。
こういう場にお雪のくれた帯を締めていく権三もたいがいだが、嫉妬に狂って帯を解いてしまうおさゐもたいがいだ。
2本の帯を拾った伴之丞が不義密通の証拠を得たと逃げ去る。その前に、「蛙の鳴き声が止んだ」と外を見たときに、四斗樽に気付かなかったのか。さらに、市之進の男が立たないので、一緒に討たれてほしいという理屈もよくわからない。いっそ、不義になっちゃえばとすら思う。


伏見京橋妻敵討の段

三輪大夫と錦糸ほか。太夫6人と三味線6人でお祭りの華やかさ。

討たれるつもりなのに、夫に子どもの将来を託すおさゐがやはりよくわからん

2014年7月29日火曜日

7月26日 夏休み文楽特別公演 サマーレイトショー


「女殺油地獄」

徳庵堤の段を咲甫大夫と富助。

河内屋内の段の口を芳穂大夫と寛太郎、奥を呂勢大夫と清治。

豊島屋油店の段を咲大夫と燕三の代役で清志郎。

逮夜の段を文字久大夫と清友。

人形は与兵衛を勘十郎、お吉を和生。


咲大夫が今回で語り収めというのが残念。女殺と言えば咲大夫というイメージだったので。今回は芸談を読んでから聞いたので、細かいところにも意識がいって面白かった。

逮夜の段は初めて観たけれど、悪いことをした奴がつかまって、腑に落ちるというか納得感。それにしても与兵衛というのはつくづくどうしようもない奴だよなあ…。殺しが露見してからも、言い訳がましくごちゃごちゃ言っているし。

7月27日 夏休み文楽特別講演 親子劇場

「かみなり太鼓」

冒頭、「暑い暑い~」と咲甫大夫がかなりの大声で、子どもたちにもインパクト十分。口語体だし、話は分かりやすく、笑えるシーンも多くて楽しめた。

太鼓が下手なかみなりさんの音を三味線で表現していたのが面白かった。トロトロ→ドロドロ→ゴロゴロと変化していくの。

最後、かみなりさんが空に帰るところで、宙乗り。ステージを右に左に、結構長時間だったので、人形遣いの幸助は大変そうだ。


この後、解説「ぶんらくってなあに」を芳穂大夫と文哉。太夫の大笑いの実演のあと、客席の皆でやってみるなど、子ども向けに楽しめる工夫が。一方、人形解説は文哉はもうちょっと工夫したほうがいいのではと思った。結構長いので、小さい子どもは退屈していた。


「西遊記」

英大夫が途中、「妖怪ウォッチ」と言ったり、「レリゴー♫」と歌い出したりしたので、びっくり。しかも、義太夫っぽく歌ってて。歌舞伎ではこういうアドリブっぽい遊びもよくあるけど、文楽では珍しいのでは。

ちっちゃい悟空がたくさんでてきて、宙を飛び交った(本当に、ボールのように投げ合っていた)のがかわいい。最後は、竜と悟空が宙乗りで花道上から2階へ。悟空の蓑二郎の腰のあたりに人形を装着し、足は人形遣いのものという工夫で迫力満点。

2014年7月28日月曜日

7月26日 七月大歌舞伎 昼の部

「天保遊侠録」

真山青果ものらしい、セリフの応酬。

勝海舟の父小吉を橋之助。短期なだけど、子煩悩という、江戸っ子らしい男が似合う。その甥、庄之助を国生。女伊達では格好よく見えたけど、役柄のせいかもっさりした印象。

芸者八重次の孝太郎、その妹分の茶良吉を児太郎。小太郎はまだメークが板についていない感じで、動きもちょっとぎこちないか。

芝のぶが女中頭のような役で、セリフや出番が多くてうれしい。


「夫婦狐」

義経千本桜を思わせる、親を偲ぶ狐の舞踊。塚本狐を翫雀、千枝狐を扇雀。踊りを得意にしている家だけあって、安定感のある一幕。

いつも思うのだが、この兄弟、体のサイズが逆だったらいいのに。扇雀は女形にしては大柄だと思うのだけど…。翫雀のメークが、たまごに目鼻を描いたようで、ハンプティダンプティを連想してしまった。


「寺子屋」

仁左衛門の松王丸はやはりいい。重厚な語り口で前半の悪役っぷりから、後半の小太郎を思う情感あふれる演技まで、たっぷりと堪能。時蔵との夫婦もいい組み合わせと思った。

源蔵の橋之助、戸浪の菊之助もいいコンビ。今回の座組みはすごくよかった。

2014年7月24日木曜日

7月20日 七月大歌舞伎 夜の部

「沼津」

藤十郎の十兵衛と翫雀の平作という親子逆転。翫雀の爺さんに違和感がないのに驚く。扇雀のお米も加わり、本当の親子が親子を演じているので、やはりよく似ているし、肉親の情も深いような。

千本松原の場、股五郎の落ち延び先を明かせないと説得するところで、十兵衛が平作の手をとって刀の柄を触らせるのだが、どういう意味なのか。平作はこの後、刀をとって自害するわけで、自殺をそそのかしているように見えるのだが。


「身代座禅」

仁左衛門の右京のかわいらしく、チャーミングなことといったら!期待を裏切らない魅力だ。

奥方玉の井の翫雀も、不細工なんだけどかわいらしい奥方を好演。
千枝、小枝を梅枝と児太郎。やはり年上だけあって梅枝に安定感があるが、児太郎も所作がきれいだった。

太郎冠者の橋之助は過不足なく。軽妙な太郎冠者だった。


「真景累ヶ淵」

豊志賀の時蔵は、年増女がだんだん厄介になって行く様が恐ろしい。菊之助の新吉も、初めのころは献身的に看病しているのに、だんだん豊志賀がうっとおしくなっていくのがよくわかる。

お久の梅枝は可憐な若い女を好演。竹三郎の新吉伯父、勘蔵は、江戸の伯父さんってどうなのと思ったけど、以外にはまっていたのが流石。噺家さん蝶の萬太郎は、ちょっとやかましい感じが残念。もともとは落語の話なので、この役って結構キモだと思うのだが。

ところで、怪談なのに、客席が爆笑してしまうのはなぜなのだろう。くすっとなるくらいは分かるけど、げらげら笑うのってムード台無しだと思うのだが。


「女伊達」

孝太郎の女伊達に萬太郎、国生の男伊達。

国生の背が伸びて、男前になっていたのにびっくり。ちょっと前までぽっちゃりの男の子だったのに。

7月6日 第二回近松文楽(@ルネッサながと)

はるばる行ってきたルネッサながと。会場はちゃんと花道もあり、文楽の場合は舞台の床が下がる構造になっているそうで、人形が目線の高さにあって見やすいのもよかった。

舞台の前に、ドナルド・キーンと鳥越文蔵の対談。近松の作品はとてもよくできていて、アレンジなど手を加える必要はないと。あえて言えば、今は上演されることの少ない、生玉神社の段から通しで上演するほうがいい。近松文楽について、キーンさんははっきりとは言わなかったが、鳥越さんはちょっと否定的な様子で、激しく同意する。生玉神社の段を復活したのは良かったけどね。

その後、靖大夫、清志郎、勘市による解説。鑑賞教室とは違って、多少は文楽を知っている人向けということで、豆知識的な情報も。太夫の床本は師匠や先輩から借りて書き写すのだが、和紙がだんだん少なくなって高くなっているとか、見台を塗りなおすのもお金がかかるとか。太夫がどんなふうに座っているのか、後ろを向いて見せてくれたり。三味線の裏側は猫の皮、表は猫か犬。師匠や先輩は猫皮なので、よく見ると乳首の丸い痕があるのだそう。(舞台上では全く分からなかったが)

「曽根崎心中」

生玉神社の段を睦大夫と宗助。人形は勘十郎の一人遣いで。今回近くで観られたのでよくわかったのだが、一人遣いのときは、右手と左手を交互に遣うのね。

天満屋の段は呂勢大夫と藤蔵。この二人、力が拮抗していていいコンビだな。期待通りの素晴らしい舞台。

天神森の段は呂勢大夫、芳穂大夫、靖大夫に宗助、清志郎、燕二郎。心中も美しくて、堪能。杉本文楽が相当不満だったので、いい口直しができた感じ。

6月28日 シネマ歌舞伎「女殺油地獄」

冒頭に仁左衛門のトークショー。20歳の時にはじめて主役を演じた作品であることや、役の解釈などをお話になった。
与兵衛とういう男はとにかく見栄っ張り。セリフに何度も「男が立たない」とでてくる。けれど、弱い犬ほどなんとやらで、本当は弱い。殺しの場面は最初は怖がっているのだが、だんだん殺しを楽しむようになり、最後、我に返って怖くなる。
与兵衛とお吉の間に恋愛感情があるかのように解釈している作品もあるが、断じて違う。それは今の価値観。当時はご近所が世話を焼くことが当たり前だった。
シネマ歌舞伎は最初反対だった。生の舞台の空気を感じてほしい。ライブだったら、歳をとってからも若い空気を醸し出せるが、映像ではムリ。シワがハッキリ映ってしまう。けれど、お客さんが喜んでくれて、舞台を見に行くきっかけになるならいいかと。
孫の千之助には、自分が初演した20歳になったら演じるよう言っている。その時は自分が徳兵衛、おさわは兄の秀太郎、お吉を孝太郎で。

歌舞伎座での舞台をナマでも見ているけれど、シネマ歌舞伎は細かい表情までよく見えるので、また違った面白さ。


第二回 太棹の響

藤蔵の自主公演。文楽に縁のある御霊神社という、場所も素敵。
冒頭に藤蔵と呂勢大夫の対談、藤蔵のオリジナル三味線曲ののち、浄瑠璃「傾城阿波鳴門」というプログラム。

対談では、しゃべりが苦手という藤蔵をフォローするかのように呂勢大夫がしゃべくり倒す。こんなにおしゃべりな人だったとは。昔の太夫の話で、裃の着付けをする時にタイミングが合わないと怒られたり、背が低いので肩衣をかける時に首にあたってしまい、「無礼者!素麺の糸で首くくれ」と言われたり。むかしも、今でいうところの住大夫のような、恐いお師匠さんがいて、舞台にあがるときに楽屋のそばを通らなければならないので、関所のようだったとか。
藤蔵が40年の1月、呂勢大夫が12月生まれで歳が近いので、よく一緒にやっているが、初対面のときはお互い恐いヤツだと思っていた。藤蔵は元ヤンの噂があって、目付きが悪かった。呂勢大夫は太夫のくせに三味線抱えて三白眼で睨んでいたとか。
「傾城阿波鳴門」は大阪では暫くかかっていないが、演るならこの段のみ。最後までやるとがっかりするのだとか。淡路島でよく演るので、あちらの話と思われているが、大阪、玉造の話とも。

オリジナル曲は、震災にあった東北のために作ったのだとか。津波の様子などを表現しているそうで、緩急のある曲に聴きごたえがあった。三味線てこんなに表現の巾があったのね、と改めて思ったり。

浄瑠璃は流石、聞かせる。娘お鶴の健気さ、娘と分かっていても名乗ることのできないお弓の悲哀。短い時間だったけど、堪能しました。

6月29日 松竹大歌舞伎 中央コース(@岸和田)

猿之助(いまだにうっかり、亀治郎と書きそうになった…)、中車の襲名披露。

「太閤三番叟」

太閤秀吉を右近、淀の方を笑三郎、北政所を笑也と澤瀉屋一門の華やかな舞踊。

三番叟の翁を秀吉が勤めるという趣向で、太閤らしい、赤い衣装で登場。最後に立ち回りがあったりと、いつもの三番叟とはちょっと違って面白い。


「口上」

秀太郎が真ん中で仕切り役。芝居に出ないで口上だけに付き合うということもあるのね。
最年長の寿猿さんの話が何かツボにはまったらしく、笑いをこらえる舞台上の皆々。時間が押していたのか、澤瀉屋の人達の口上はあっさりしたものだったけど、温かみがあっていい口上だった。


「一本刀土俵入」

猿之助がお蔦で久しぶりの本格的な女形。やはり彼は女形のほうがいいと思う。中車が駒形茂兵衛で、2人が本格的に共演するのも、これまであまりなかったのでは。

猿之助のお蔦はほろ酔い加減の色気や気風の良さが魅力的。中車の茂兵衛は冒頭、おなかがすいて力が入らないという設定なのだが、ちょっと足りない人のように見えた。競演の人達は「先代の猿之助に似ている」と口ぐちに言っていたけれど、こんなものだったの?

中盤、寿猿と竹三郎の長老2人が昔の色ごとの話をするところが、ほのぼのとおかしい。いい味出してるなあ…。

6月15日 文楽鑑賞教室

「団子売」

始大夫の杵造、希大夫のお臼、ほか若手。

ずいぶん前になってしまったので記憶が…。明るく楽しい舞踊。


解説「文楽へようこそ」

靖大夫、龍爾、蓑紫郎


「卅三間堂棟由来」

鷹狩の段を睦大夫、喜一郎、気遣り音頭の段の中を芳穂大夫、清馗、奥を呂勢大夫と錦糸。

鷹狩の段からの上演なので、話がよりわかりやすかった。柳の精の幻想的な様子や、親子の情あり、で見応えたっぷり。呂勢大夫の美声で聞くと、母子別れの悲哀がしみる。

2014年5月26日月曜日

5月17日 「蒼の乱」

いのうえ歌舞伎と銘打っていて、つけ打ちのような効果音が入ったりしていたが、歌あり踊りありのミュージカル。上演時間が休憩はさんで4時間近いというところは歌舞伎っぽいか。

主演の天海祐希は前半の巫女姿よりも、後半、反乱軍のリーダーとなって戦う姿がりりしく、格好いい。

松山ケンイチは舞台では初見だが、立ち回りも様になっていたし、悪くない。けど、映像のほうがいいかなあ。気持ちばかり先回りしてしまう、ちょっとおバカな役柄のせいかもしれないけど。

早乙女太一の立ち回りは、舞うように華麗で美しい。舞台映えのする役者さんだなあ。

平幹二郎は流石の存在感。舞台に上がるだけで圧倒される。


劇団新感線をナマで見るのは初めてだったけど、古典芸能に親しんでいる身にはちょっとうるさい。脇役陣のお決まりっぽいギャグとかかしましさとか、少しうんざりした。



5月11日 文楽五月公演 第2部

「女殺油地獄」

徳庵堤の段。与平衛の松香大夫、お吉の三輪大夫をはじめ、8人の大夫が入れ替わり立ち替わり。

河内屋内の段は口が芳穂大夫と寛太郎、奥を呂勢大夫と清治。

豊島屋油店の段を咲大夫と燕三。


与平衛を演じる役者によって、若者の狂気が際立つ歌舞伎とはまた違って、文楽は物語の不条理さをより感じる。殺しの場面は意外とあっさり。


「鳴響安宅新関」

勧進帳の文楽版。山伏問答のくだりなど、文字情報でも見られる分、わかりやすかった。富樫と弁慶の息詰まる緊張感は、生身の役者同士のほうが迫力があるかな。最後の飛び六法も。

5月11日 文楽五月公演 第1部

「増補忠臣蔵」

忠臣蔵、加古川本蔵の後日談というか、刃傷事件と山科閑居の段の間の話。

高師直に賄賂を渡した本蔵を非難する若狭之助。結果として、家の大事を守った忠臣ではあるが、当時の価値観からすると卑怯ものでもあるわけで。そこいらへんのもやもやを説明してくれて、山科閑居に至るまでのいきさつがわかりやすくなった。

前を千歳大夫と団七、奥を津駒大夫と寛治。


「恋女房染分手綱」

住大夫の引退狂言。沓掛村の段の前を文字久大夫と藤蔵、切を住大夫と錦糸。

地味な話ではあるのだが、子供、老婆、武士の語り分けなど、聞かせどころがたっぷり。住大夫は声の力強さはなかったが、情のある語りで泣かせる。この語りがもう聞かれなくなるのは寂しいけれど、ここを引き際と定めた気持ちも察せられる。この芸をぜひ引き継いでほしい。


「三十三間堂棟由来」

中を睦大夫と清志郎、切を嶋大夫と富助。

柳の精が出てくる、幻想的なおとぎ話。文楽らしい演出もあって、面白い。

2014年5月11日日曜日

5月10日 酒と涙とジキルとハイド

三谷幸喜、久しぶりの本格コメディとの触れ込みで、大いに笑った。

愛之助演じるジキル博士は、堅物で真面目なんだが、姑息。補助金のために実験が成功したと装うなど、ある研究所の騒動を彷彿とさせる、その件に触れることはないのはちょっと拍子抜け。コメディ俳優としての愛之助は、間が今ひとつ。わざと外しているのかもしれないが、イブが忘れていった本を見たくてウロウロするところとか、もっと溜めたほうが面白いのにな〜と思うところが度々あった。スピーチの練習のくだりなど、滑舌よくしゃべっているのだが、内容が全く頭に入ってこないのは、セリフがいいのか、演技力なのか。

反対に、優香の堂々たるコメディエンヌぶりには驚いた。声もよく出ていたし、セリフの間もよかった。2つの人格の演じ分けも達者。主役はジキル博士ではなく、イブなのではないかと思うほど。

藤井隆は期待どおりの面白さ。飛んだり走ったりと動き回って、一番汗をかいていた。

プール役の迫田孝也。これまであまり意識したことのなかった役者さんだが、狂言回しというか、物語の進行役としていい味出してた。



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2階席から俯瞰で見たせいか、全体が見渡せて、面白かった。次に何が来るか分かっているのに、すごく笑った。前回気になった、愛之助の間も、違和感なく。

カーテンコールの最後に、一人ひとりが一言ずつ。愛之助が「いつか再演を」と言っていたけど、どうだか。どうせなら、別の物語を観たいなあ。

2014年4月23日水曜日

3月23日 新版 天守物語

富姫に元宝塚男役の大空祐飛、亀姫に歌舞伎の中村梅丸、図書之助は現代劇の須賀貴匡。ほか、三上博史や狂言師の茂山逸平、能楽師の梅若六郎玄祥と、いろんなジャンルの役者の競演。どの役もぴたりとはまっていて、けど、異種格闘技のような緊張感がよかった。ただ、「新版」というほどの斬新さがあっただろうか。萬歳ハムレットや蜷川幸雄の舞台でも、古典芸能の役者がスパイスを利かせて効果をあげたという前があるのだし。

富姫の大空は、人ならぬものの妖しい美しさがあってよかった。威厳のある言葉遣いが、時に男っぽいというか、凛々しくて、こういったところは元男役の面目躍如なのか。きれいな声なのに、セリフが走ってしまって内容が聞き取れないところが所どころあったのが残念。

梅丸は相変わらずの可憐さ。元男役とはいえ、女優の隣に並んでもかわいく見えるって凄い。可愛いなりして無邪気でいながら、生首を土産に持ってくるような怪しさもあった。姉と慕う富姫と頬を寄せ合うシーンなんか、倒錯的でドキドキした。これからが楽しみな役者さんだ。

泉鏡花役の三上博史は悪くないのだが、この役必要かなあ?幻想的な世界への案内役みたいな位置づけだったのだけど、天守物語を見に来ている観客にこの手続きは不要では。

全体を通して、能楽師や狂言師の発声の素晴らしさを再認識した。ほかの役者陣とは明らかに違うもの。身のこなしも。この人たちのおかげで、舞台がピリッと締まった。

2014年4月22日火曜日

4月12日 スーパー歌舞伎Ⅱ「空ヲ刻ム者」

澤瀉屋の人たちは芸達者だなあ。特に、美形ぞろいの女形たちが。女盗賊の笑也はこれまでのイメージと違う、凛々しい役。発声のしかたが宝塚の男役っぽい感じもしたけれど、格好いい女傑を好演。
国崩しの悪役、長邦(門之助)の妻、時子を演じた春猿もいい悪女っぷり。最初は美しいお姫様のようで、長邦の妹かと思ったくらいだったけど、だんだんとしたたかになっていく様がいい。
笑三郎はいまいち良さが生かされていないような役で残念だったけど、これは脚本のせいね。

一方、主人公2人は…。悩める仏師、猿之助演じる十和が格好良くないし、全く共感できない。ぼさぼさヘアスタイルやゆで卵のようなメイクはどういう意図でああなったのだろうか。父親に反抗して、仏教にも批判的で、哲学っぽいセリフを口にするのだけど、人を殺したことへの反省や屈託が全くないので、うすっぺらく感じる。で、これまでにないような仏像を彫るのだけど、悟りを開いたわけではなく、単に前例を否定しただけ。そんな人が掘った仏像に力が宿るのに違和感がある。

もう一人の主人公一馬を演じる佐々木蔵之助。初めての歌舞伎で緊張していたのか、あまりの格好悪さにびっくりした。歌舞伎風の見得ができないのはしかたないにしても、時代劇で殺陣の経験はあるだろうに、刀を抜いたり構えたりする姿が何とも不格好。せっかく上背もあるし、歌舞伎のメイクも似合っていたのにもったいない。

現代劇から参加したほかの2人は浅野和之と福士誠治とも、歌舞伎のなかに入ることの違和感はなかった。特に浅野は女形(?)で狂言回しでもある役で存在感があった。一方、福士はあじゃがじをほうふつとさせる、ちょっと足りない弟分の役。こういうキャラクターにする必要性あるのかな。もっと格好いい役でもよかったのでは。

最後の立ち回りなどは派手でさすがスーパー歌舞伎の面目躍如。でも、戸板倒しの2枚同時にってあざとくないか。いろいろ見せ場もあって、飽きずにみられたのだけど、肝心のストーリーに共感できないので、感動がいまいちだったのが残念。あ、十和の師となる仏師、九龍を演じた右近が舞台を締めていたのはさすが。出番はそんなに長くなかったのだけど、存在感が凄い。

4月5日 開場三十周年記念文楽公演 第2部

菅原伝授手習鑑三段目

「車曳の段」
松王丸を英大夫、梅王丸を津駒大夫、桜丸を呂勢大夫、時平を松香大夫。三味線は清治。総勢5人の大夫が語るのだが、舞台に出ている見台は4つ。途中で太夫がいれ変わるのは初めて見た。
梅王と桜丸が息を合わせて語るのが、2人力を合わせて時平に対抗しようとしている風情でいい。
歌舞伎ではよく見る場面だが、人形の見得のほうがダイナミックかな。最後に出てくる時平のおどろおどろしさは歌舞伎のほうが迫力を感じたかも。

「茶筅酒の段」
千歳太夫と團七。
茶筅酒って何かと思ったら、祝いの餅に茶筅で酒を塗ることなのね。
女房3人が集結して、祝いの膳を用意するのだが、八重は家事が苦手なのね。すり鉢を倒したり、大根を上手く切れずに手を怪我したり。笑いの場面なのだが、この後の悲劇を思うと切ない。

「喧嘩の段」
咲甫太夫と喜一郎。
松王と梅王が大げんか。取っ組み合った松王が客席にお尻を向けた状態に。人形のこんな姿初めて見た。

「訴訟の段」
文字久大夫と藤蔵。
父、白太夫に勘当を願う松王丸。理由がよく解らない。親や兄弟に類が及ぶのを防ぐため?

「桜丸切腹の段」
住太夫と錦糸。引退興行だけあって、客席の拍手もひときわ大きい。人形も桜丸の蓑助と八重の文雀が華を添える。
私としては、悪いのは桜丸より、ばっくれて行方知れずになってしまった斎世親王だと思うので、、なんで切腹という気持ちなのだが、物語に引き込む力はさすが。
白太夫の「なんまいだ」はい伊賀越道中双六とかぶる気もしたが、泣かせる。

「天拝山の段」
英太夫と清友。
菅丞相が髪を振り乱したり、顔変わりしたり、火を噴いたり。こんなに激しい人だったっけというくらいの大活躍。

「寺入りの段」
芳穂太夫と清旭。
涎くりは15歳だったとは。このおかしみは歌舞伎のほうがあるかな。
小太郎は菅秀才の身代わりに殺されることを知っていたのか、知らなかったのか。千代が「悪あがきせまいぞ」というのはいい含めているようにも思えるが、立ち去る千代に「わしも行きたい」とすがりつくのは知らなかったようにも。

「寺子屋の段」
嶋太夫と富助。
悲劇の嶋大夫は泣かせる。見台にすがりつくように語る迫力たるや。

2014年4月19日土曜日

4月4日 開場三十周年記念文楽公演 第1部

菅原伝授手習鑑の通し。初めてみる段もあって、物語の背景がよく解った。

初段 「大内の段」
大夫と三味線は御簾の裏で、誰が語っているのか分からないのだけれど、某一人だけは分かってしまった。声が元気良すぎ。張りきっているのだろうけど、力みすぎ。

「加茂堤の段」
桜丸を三輪大夫、八重を芳穂大夫、松王丸を津国大夫、梅王丸を始大夫など。
菅丞相が失脚する原因となる、刈谷姫と斎世親王の逢引のシーン。人目もはばからずラブラブの2人が微笑ましいのだが、書置きを残して逃げてしまうってどうよ。悪いのは桜丸ではなくて、軽率な行動をとってしまう親王なのでは。
勇ましく牛車を引いていく八重は、歌舞伎のほうがおかしみがあるかな。

「筆法伝授の段」
口は靖大夫と龍爾。奥は津駒大夫と寛治。

筆法を伝授されるのは自分だとうぬぼれている左中弁希世がおかしい。愛嬌のある三枚目。
源蔵に筆法は伝授するが、勘当は解かないという菅丞相。腕を認めているなら、許してあげようよ。2人は深く反省しているのだし。

「築地の段」
睦大夫と清志郎。

流罪を言い渡され、自邸で謹慎する菅丞相。梅王丸が塀越しに菅秀才を源蔵夫婦に託すのだが、菅丞相の了承は得ているのだろうか?

二段目
「杖折檻の段」
呂勢大夫と清介。

刈谷姫の可憐さ(まあ、この人の軽率さのせいで、養父の菅丞相は大ピンチなわけだが)。立田前と覚寿という3人の女を語りわけるのは難しそうだ。
呂勢大夫の美声、もっと聞いていたいような。

「東天紅の段」
咲甫大夫と宗助。

夜明け前に鶏を鳴かせて時間を欺き、菅丞相を暗殺しようとする宿彌太郎。立田前に見つかり止められるが、切り捨ててしまう。えっと…妻をそんなにあっさり殺しちゃいますか。しかも、鶏を泣かせるために利用されてしまうなんて、かわいそうすぎ。

「丞相名残の段」
咲大夫と燕三。

歌舞伎でもよく見る段だが、仁左衛門の菅丞相が流す涙に比べると、あっさりした印象。

2014年3月31日月曜日

3月29日 杉本文楽「曽根崎心中」

ヨーロッパで好評を得た新演出、という触れ込みだが、正直、私には合わなかった。というか、暗くて遠くてよく見えなかったので、評価のしようがない。(でも、前のほうの一部の観客にしか伝わらない公演ってどうよ、とも思う)

真黒な背景に、最小限のセット(生玉社の段では鳥居だけとか)というシンプルな舞台で、主遣いも含めて人形は遣いすべて黒子衣装。人形だけにスポットライトを当てる演出だったのだけれど、薄暗くて人形はよく見えないし、見えないはずの人形使いが逆に目につく。普段の文楽を観るときは人形遣いが邪魔になるといういことはないのだけれど、この日は人形よりも目立って見えた。

見せ場とされる、観音廻りは、一人遣いの人形の動きは単調で、正直退屈。会場が広すぎて、人形の細かい動きなんて見えないし。(オペラグラスを使っても、あまりに薄暗いのでよく見えない)エルメスのスカーフを使ったという衣装も、よく見えなかった。背景にCGを使っていたのが工夫なのだろうけど、人形と合っていないというか。むしろ、数シーンだけあった、人形のアップを多用してくれたほうがよかったのでは。

太夫も呂勢大夫、津駒大夫、嶋太夫と、聴かせる人たちばかりだったのに、言葉がちっとも頭に入ってこないのが不思議。全体的に声明っぽく聞こえたのは、今回の演出?観音廻りを復活させるなど、仏教信仰にフォーカスを当てた演出というし。(でもその意図は私には伝わらなかったけど)

冒頭も、会場が真っ暗になり、声明のような音色が流れた。スポットライトに照らされ、舞台上で一人、清治の三味線ソロ。「ジミヘン風」とどこかのインタビューで読んだが、確かに通常の三味線とは違う弾き方なのだろうけど、いいとは思えなかったなあ…。

2014年3月30日日曜日

3月22日 国立劇場3月歌舞伎公演

「菅原伝授手習鑑」

車引の場。萬太郎の梅王丸に隼人の桜丸と、若手が頑張っていたのだが、まだちょっと硬いというか、セリフ廻し、動きともにぎこちないというか、観ていて心地よくないのだ。錦之助が松王丸で出てきたらほっとした。時代物の、型がしっかり出来上がっているものだからこそ余計に、目をつぶってもできるくらい、体に染みついていないといけないのかも。


「處女翫浮名横櫛」

ずっと観たかった切られお富が時蔵とあっては、遠征して観たかいあり。
時蔵のお富は、落ちぶれてからも品を失わなくて、健気な様子も見せるのがいい。浮気がばれて嬲り切りされるところとか、ぞくぞくする。

安蔵の彌十郎がまたよかった。お富に惚れてしまったがゆえに、道を誤っていく男のあわれ。(いや、同情するにはひどいことしすぎなのだけど)

源左衛門の女房お滝を吉弥。江戸の気風のいい女を好演。お富との女の戦いも魅せた。

2014年2月11日火曜日

2014年1月9日 文楽公演第三部

「御所桜堀川夜討」

弁慶上使の段の中を三輪大夫、切りを英大夫。

弁慶のただ一度の恋、という触れ込みだけど、暗がりで顔も覚えてないって…


「本朝廿四考」

十種香の段を嶋大夫。
嶋大夫は好きだけど、蓑作(実は勝頼)との仲立ちを頼む八重垣姫の可愛さは歌舞伎の時蔵のほうがよかった。あのかわいらしさは、男性には醸し出せないのかも。八重垣姫の人形は蓑助で、思いのあまり積極的になってしまう姫のいじらしさがよかったのだけど。

奥庭狐火の段は呂勢大夫。「翼がほしい、羽がほしい、飛んでいきたい、知らせたい」で終わらず、「逢いたい見たい」とたたみかけるのが切ない。呂勢大夫の美声で語られると、ジンとくる。

人形は勘十郎。冒頭、狐の時は白い着物、舞台裏に引っ込んだわずかな時間に紋付袴に着替えていて、文楽でも早変わりがあるのかと驚いた。赤い着物から、狐が憑いてからの白い着物の人形に一瞬で持ちかえたり、狐に囲まれて幻想的な雰囲気になったりと、見ごたえ十分。


2014年2月9日日曜日

2月8日 二月花形歌舞伎 夜の部

「青砥稿花紅彩画」
白浪五人男を通しで。普段は勢揃いでしか観たことのない赤星や忠信のキャラクターが初めて分かって面白かった。

序幕
「初瀬寺花見の場」
弁天小僧の菊之助が男で出てくる。おぼこい姫君を茶屋に連れ込んで手籠めにしてしまうなど、なかなかのワルぶり。

梅枝の千寿姫がいい。八重垣姫もそうだけど、歌舞伎のお姫様って積極的だよなあ…。それを微笑ましく、かわゆらしく演じるのが歌舞伎らしい。

南郷の松緑が奴姿で、姫君との仲を取り持つ。似たようなシーンが新薄雪物語にもなかったか?

腰元ども、ベテランの役者ばかりで華やぎに欠けるというか、無理があるなあ…と思っていたら、1人だけ若やいだ雰囲気。千寿だった。役どころとしては、お姫様を囲む綺麗どころなのだから、千寿くらい若い、華やかな役者でそろえるほうがいいと思うのだが。

「神輿ヶ嶽の場」
赤星、主君のためとはいえ、武士のくせに100両を奪い取ろうとはどういう料簡?

「稲瀬川谷間の場」
赤星の七之助と、忠信の亀三郎が出会う。主君の家に泥を塗ったと自害しようとしていた人が、何で泥棒になってしまうのか?で、千寿姫は死んでしまったの?


二幕目
「雪の下浜松屋の場」
お馴染みの、女装の弁天小僧。やはり菊之助は美しいなあ。 以前見たときは、男に戻ってからの様子に違和感があったのだが(女が男の振りをしているようで)、今回はしっくりきた。
松緑の南郷との息も合っていてよろし。

「蔵前の場」
初見だったのだが、弁天小僧が実は浜松屋のせがれで、浜松屋のせがれが実は日本駄衛門の子供だったというどんでん返し。

「稲瀬川勢揃の場」
おなじみの勢揃。この衣装が浜松屋で誂えたものだったとは、通しで見なければわからんかった。

大詰
「極楽寺屋根立腹の場」 「山門の場」「滑川土橋の場」
弁天小僧が屋根の上で大立ち回り。型が工夫されていて飽きさせない。
最期に日本駄衛門が出てくるのだが、染五郎の駄衛門は何だかしっくりこない。駄衛門て悪い奴ではあるのだが、手下を束ねるカリスマ性というか、親分(兄貴分)の大きさがあると思うのだけど、染五郎のは悪は感じられるのだが、大きさがいまいちか。

2014年1月27日月曜日

1月26日 初春文楽公演 第1部

「二人禿」

咲甫大夫、芳穂大夫など6人の大夫と三味線で華やか。


「源平布引滝」

歌舞伎で見た「義賢最期」の後日談、九郎助住家の段。
腕だけになっても源氏の白旗を届ける小万の根性(?)、体にくっつけたら一瞬生き返ってしまうなど、凄い話だ。太郎吉に自らを討たせ、手柄を立てさせる瀬尾十郎。一見、孫思いみたいだけど、初対面の孫に尊属殺人させてるんだけど…。

中を睦大夫、次に千歳太夫、切は咲大夫、後に呂勢大夫。

咲大夫の語りはやはり心地いいのだが、気持ち良すぎて睡魔が…。


「傾城恋飛脚」

新口村の段。歌舞伎で見たばかりだったので、その違いが面白い。歌舞伎では雪降りしきる外でいろいろやるのだが、文楽は室内に入ってしまう。歌舞伎は見た目の美しさを、文楽は人々の心情をより重視しているからなのか。

口は御簾の後ろで語り、切りは津駒大夫と嶋太夫。嶋大夫が魂を振り絞るような熱演。

2014年1月26日日曜日

1月25日 初春文楽公演 第2部

「面売り」

松香大夫の面売り、三輪大夫の案山子。

面変えながらの舞踊で、正月らしい華やかさ。


「近頃河原の達引」

四条河原の段は文字久大夫。

憎い恋敵、伝兵衛を亡き者にしようとして返り討ちにあってしまう官左衛門。武士のくせに商人にやられてしまう敵役って…。

堀川猿回しの段の切りを住大夫&錦糸、後を英大夫&清介。

三味線の稽古をするシーンでツレ三味線に龍爾がでてきた。舞台上の2本の三味線の掛け合いが面白い。

おしゅんの兄、与次郎が楽しい。心中から妹を救おうとして、暗がりの中であわてて、間違えて伝兵衛を家の中、妹を外に締め出してしまったり、シリアスな話なのに、そこここで笑い声が。こういう三枚目を玉女が使っていたのも、意外性があったけど、よかった。

住大夫の語りは、力強さが感じられ、さすが、と思ったが、後半、何度か呂律が怪しいところがあって心配になった。あのお歳で驚異的な回復力だとは思うが、やはりまだ病の影響があるのだなあ。とはいえ、致命的なほどではなく、前半がよかっただけに、小さな違和感に気付いたというか。

英大夫、コミカルなシーンを好演。


「壇浦兜軍記」

阿古屋琴責の段。阿古屋に津駒大夫、重忠を千歳大夫、岩永を咲甫大夫。
咲甫大夫は美声を生かした女形の印象だったのだが、太い声で悪役、岩永を好演。

歌舞伎で見るより、話は分かりやすい気がした。

2014年1月7日火曜日

1月2日 新春浅草歌舞伎 第2部

「博打十王」

バカバカしくも、楽しい舞踊劇。


「新口村」

愛之助の忠兵衛に壱太郎の梅川。美しい…。壱太郎はこういう役の方がはまってると思う。

孫右衛門の橘三郎とのやり取りが泣かせる。


「屋敷娘」

壱太郎、米吉、梅丸の若手3人による、華やかな舞踊。綺麗どころが揃って、目に楽しい。初日だったので、米吉の引き抜きがもたついて、蹴つまづくハプニングもあったけど、大過なく。


「石橋」

歌昇、種之助、隼人による獅子の精。前段がなく、いきなり獅子になっていたのもよい。
この中では歌昇がお兄さんなので、終始リードしていたのだけど、羽目板を踏む時など力強く、さすが若さ…と感じた。毛振りなども、技巧よりも勢いで。でも正月に観るには相応しい舞台。

1月2日 新春浅草歌舞伎 第1部

「義賢最期」

愛之助の義賢はもう4回目だとかで、すっかり当たり役の風情。以前観たときは、立ち回りにばかり目が行っていたのだけれど、宵待姫を逃がそうとする親心や、葵御前に源氏復興を託す気持ち、生まれてくる我が子を一目見たいという思いなど、心情描写がよく伝わってきた。戸板倒しは一瞬板の具合が不安定なようでヒヤヒヤしたけど、何事もなく、仏倒れも圧巻。正月から歌舞伎らしい舞台を堪能した。


折平実は行綱は亀鶴で、愛之助との息があっていて、立ち回りなど見応え十分。

宵待姫の梅丸が、可憐でかわいい。大きな役にちょっと硬くなっていたようだけど、きっとだんだん良くなって行くでしょう。

葵御前は吉弥。最近老け役が多かったせいか、落ち着きすぎか。せっかくの美しさが発揮されていないように感じて、残念。

小万の壱太郎も、眉毛のない役はあまり似合わないような。

九郎助の橘三郎はきっちり演じているのだけど、愛之助と並ぶと、「夏祭」ではあんなに嫌なじじいっぷりだったのに…と、前回との違いに戸惑う。

子役の男の子(たぶん、菊地慶くん)が可愛らしく好演。花道のところで、討手が来るのを見張ったり、九郎助の背中で立ち回りしたり、懸命な感じがよかった。


「上州土産百両首」

オー・ヘンリーの短編を翻案したという人情話。

猿之助演じる主人公の正太郎の幼馴染、牙次郎を巳之助。ちょっと足りない役を意外に好演していた。もどかしい話し方なのだが、嫌味になる一歩手前で踏みとどまっていたように思う。これ見よがしに阿呆を演じると、うんざりさせられることもあるけど。

スリの親分、与一の男女蔵は格好いい親分肌。弟分で、最後まで正太郎の邪魔をする三次を演じた亀鶴がホント、嫌な奴で。殺されて当然な気にさせられるほどの好演。

梅丸が正太郎が勤める料亭の娘、おそで役で、可愛らしい。夜遅くなったから泊まっていって、とか、積極的で。

12月8日 吉例顔見世興行 昼の部

「厳島招檜扇」

日招ぎの清盛という副題が付いているように、平清盛の権勢を現した一幕。あまり上演されていないようだが、ストーリーというよりは豪華絢爛な衣装や舞台装置を楽しむものだろう。寿曽我対面みたいな。

清盛を我當。奉納の舞を披露する仏御前、実は九重姫を笑三郎、祇王を壱太郎。

厳島神社の完成を祝って平家一門が集まるなか、奉納の舞を披露する仏御前が突如、清盛に切りかかる、、という肝心のシーンで、なぜか仏御前ではなく祇王を目で追ってしまった私orz…。女二人は同じ目的でその場にいると思っていたので、舞台を降りて行く祇王はどこへ??と思ってしまったのだった。


「道行旅路の嫁入」

戸無瀬を時蔵、小浪を梅枝と、本当の親子による競演。美しい母娘。


「ぢいさんばあさん」

初めてではないはずなのだが、前回が誰だったのか思い出せない…。

伊織を中車、るんを扇雀。中車が小柄なので、るんが大きく見える。
新歌舞伎なので、中車でもあまり無理がない感じか。(逆にいうと、歌舞伎には見えなかったのだけど)
敵役の甚右衛門と右近が好演。ほんと、いやな奴だった(←褒め言葉)。


「二人椀久」

しっとりとした二枚目を愛之助が好演。実はあまり期待していなかったのだが、いい意味で期待を裏切られた。もともとは仁左衛門が演じるはずだった役で、役者不足でも仕方ないのだが、なかなかどうして、色っぽかった。こういう、柔らかい艶は、ある程度年齢を重ねないと出せないものだと思うのだが、いやあ、よかった。恋人の松山太夫を孝太郎。


「義経千本桜」

もう何回目でしょうか。もはや猿之助の襲名披露と言えばこれ、といった風情だ。

特に新しい発見もなかったのだけれど、亀井六郎の松緑と駿河次郎の愛之助が並んで舞台に立つと、同世代が猿之助の襲名を応援しているようでぐっときた。