澤瀉屋の人たちは芸達者だなあ。特に、美形ぞろいの女形たちが。女盗賊の笑也はこれまでのイメージと違う、凛々しい役。発声のしかたが宝塚の男役っぽい感じもしたけれど、格好いい女傑を好演。
国崩しの悪役、長邦(門之助)の妻、時子を演じた春猿もいい悪女っぷり。最初は美しいお姫様のようで、長邦の妹かと思ったくらいだったけど、だんだんとしたたかになっていく様がいい。
笑三郎はいまいち良さが生かされていないような役で残念だったけど、これは脚本のせいね。
一方、主人公2人は…。悩める仏師、猿之助演じる十和が格好良くないし、全く共感できない。ぼさぼさヘアスタイルやゆで卵のようなメイクはどういう意図でああなったのだろうか。父親に反抗して、仏教にも批判的で、哲学っぽいセリフを口にするのだけど、人を殺したことへの反省や屈託が全くないので、うすっぺらく感じる。で、これまでにないような仏像を彫るのだけど、悟りを開いたわけではなく、単に前例を否定しただけ。そんな人が掘った仏像に力が宿るのに違和感がある。
もう一人の主人公一馬を演じる佐々木蔵之助。初めての歌舞伎で緊張していたのか、あまりの格好悪さにびっくりした。歌舞伎風の見得ができないのはしかたないにしても、時代劇で殺陣の経験はあるだろうに、刀を抜いたり構えたりする姿が何とも不格好。せっかく上背もあるし、歌舞伎のメイクも似合っていたのにもったいない。
現代劇から参加したほかの2人は浅野和之と福士誠治とも、歌舞伎のなかに入ることの違和感はなかった。特に浅野は女形(?)で狂言回しでもある役で存在感があった。一方、福士はあじゃがじをほうふつとさせる、ちょっと足りない弟分の役。こういうキャラクターにする必要性あるのかな。もっと格好いい役でもよかったのでは。
最後の立ち回りなどは派手でさすがスーパー歌舞伎の面目躍如。でも、戸板倒しの2枚同時にってあざとくないか。いろいろ見せ場もあって、飽きずにみられたのだけど、肝心のストーリーに共感できないので、感動がいまいちだったのが残念。あ、十和の師となる仏師、九龍を演じた右近が舞台を締めていたのはさすが。出番はそんなに長くなかったのだけど、存在感が凄い。
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