「義賢最期」
愛之助の義賢はもう4回目だとかで、すっかり当たり役の風情。以前観たときは、立ち回りにばかり目が行っていたのだけれど、宵待姫を逃がそうとする親心や、葵御前に源氏復興を託す気持ち、生まれてくる我が子を一目見たいという思いなど、心情描写がよく伝わってきた。戸板倒しは一瞬板の具合が不安定なようでヒヤヒヤしたけど、何事もなく、仏倒れも圧巻。正月から歌舞伎らしい舞台を堪能した。
折平実は行綱は亀鶴で、愛之助との息があっていて、立ち回りなど見応え十分。
宵待姫の梅丸が、可憐でかわいい。大きな役にちょっと硬くなっていたようだけど、きっとだんだん良くなって行くでしょう。
葵御前は吉弥。最近老け役が多かったせいか、落ち着きすぎか。せっかくの美しさが発揮されていないように感じて、残念。
小万の壱太郎も、眉毛のない役はあまり似合わないような。
九郎助の橘三郎はきっちり演じているのだけど、愛之助と並ぶと、「夏祭」ではあんなに嫌なじじいっぷりだったのに…と、前回との違いに戸惑う。
子役の男の子(たぶん、菊地慶くん)が可愛らしく好演。花道のところで、討手が来るのを見張ったり、九郎助の背中で立ち回りしたり、懸命な感じがよかった。
「上州土産百両首」
オー・ヘンリーの短編を翻案したという人情話。
猿之助演じる主人公の正太郎の幼馴染、牙次郎を巳之助。ちょっと足りない役を意外に好演していた。もどかしい話し方なのだが、嫌味になる一歩手前で踏みとどまっていたように思う。これ見よがしに阿呆を演じると、うんざりさせられることもあるけど。
スリの親分、与一の男女蔵は格好いい親分肌。弟分で、最後まで正太郎の邪魔をする三次を演じた亀鶴がホント、嫌な奴で。殺されて当然な気にさせられるほどの好演。
梅丸が正太郎が勤める料亭の娘、おそで役で、可愛らしい。夜遅くなったから泊まっていって、とか、積極的で。
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