2011年12月18日日曜日
12月17日 「欲望という名の電車」
ステラの神野三鈴、ミッチの小林正寛も、役柄に合っていて、よかった。ちょっと物足りなく感じたのが、スタンレーの宅間孝之。スタンレーの割に何だか常識的なことを言っているように見えてしまい、もっとワイルドというか、パワーを感じさせる人がよかったな。
小曽根真の生ピアノもよかった。場面転換のたびに、短い演奏が挟まって。時間が長くなったのは、このせいかもしれないけど。
2011年12月17日土曜日
12月17日 木下歌舞伎「夏祭浪花鑑」
役者は7人で、うち男1人。一人何役もやってた。衣装は変形の甚平みたいなののまま、登場時に名前を書いた紙を掲げたり、名札を下げることで対応してた。まあ、登場人物が多いので、こうでもしないと誰が誰やらわからなくなっちゃうのだろう。着替え等に時間がかからず、話の流れが途切れないのはよかった。
女性が素顔のまま三婦や団七を演るのだが、思ったより違和感がない。台詞は歌舞伎風に喋るところが多くあって、なかなか上手く真似してるなあと驚いた。歌舞伎のパロディという感じだ。ただ、女性の声のせいか、叫ぶような台詞はちょっと耳障りに感じた。殺しの場面とか。
役者のプロフィールによると、ダンサーが多く、そのせいか、所々、バレエ風の振りが。団七が走るのにバットマンって…。殺しのBGMに白鳥の湖も大袈裟すぎだし、合ってない。いっそ、もうバレエにしちゃったほうが、それなりに見られるのかも。まあ、ベジャールの「KABUKI」みたいのもあるけど。本水の代わりに、黒衣に飲み込まれていく演出は面白かった。
ツケは効果的に使ってた。見栄のようなことをしていたのだか、歌舞伎役者のようには決まらないところ、ツケ打ちが入ると、ピッと締まるのだ。
全体として、チープで、客席との距離感の近さなど、学園祭のよう。これが好きな人にはたまらないのかもしれないが、私は戸惑った。会場に入るとき、お祭り騒ぎの舞台の上を通らないと客席に行かれないしかけなのだが、いきなりすぎて、ノリについていけない。(というか、付き合いたくない)
舞台は横一本の花道みたいで、後ろの低くなっているところで、小道具を出したり、役者が扮装を変えたり。文楽の舞台裏のような感じ?
2011年12月12日月曜日
12月10日 音楽舞踏劇 ピアフ
ジャン・コクトーが語り部となって、ピアフの幼少期から最初の結婚(?)、出産、浮気、子どもの死…、歌手としてデビューする前なのかなあ。でも、ピアフって子どものころから歌ってたんじゃないの?というか、あまり知られていない、歌手ピアフになる前の話でこんなに長い時間使うのってどうなの?しかも、それで、ピアフの人となりが伝わってこないという…。コクトーのセリフで「これでピアフがわかったでしょう?」とうようなの(正確には忘れたけど)があったけど、思わず「全然…」とつぶやいてしまったよ。愛されたくて、たくさんの男と関係をもったというようなことらしいのだが、やむにやまれない様子とか、切実さが感じられなくて、ただ、ふわふわと漂っているよう。子どもを亡くした悲しみみたいなものも軽かったようだし。
不安の中、迎えた2幕は、予想を裏切って悪くなかった。安寿ミラの歌は素敵だったし、マルセル役の藤野暢央のダンスもよかった。ボクシングの試合の様子を踊りで表現していたのが、斬新で、でも迫力があって。
途中、マレーネ・デートリッヒが登場したのだが、ストーリーの上で必要?2人の関係がほとんど描かれてなかったので、ちょっと意味不明に。いや、マルセルが死んで悲嘆にくれるピアフを慰めるシーンとかはあったけど、別にマレーネと紹介しなくても成り立つように思ったので。というか、マレーネらしさが感じられなかったのだよ。
ただ、愛の賛歌がなかったのは不満。べただけど、ピアフと言えばこの歌は外せないでしょう?
全体として、踊りは見ごたえがあったけど、ストーリーとしてみると不満が残った。ピアフの歌の部分や、大成してからの苦悩みたいなものが十分に描かれていると思えなかったから。
安寿ミラの踊りは、ちょっとガニ股気味なのが気になった。最初のほうは、子どもらしさを出すためにわざとやっているかと思ったのだが、最後までこの調子。男役の名残?
2011年12月10日土曜日
12月10日 ザ・ロッキー・ホラーショー
岡本健一、ローリーは悪くはなかったが、特に驚きはなかったかな。二人ともにギターソロがあるのはオリジナルの演出なのかな。
マジェンダ役のグリフィス・ちか(なんて名前だ!と思ったら本名らしい。旦那様が外国の人なのね)が歌、演技とも魅せる。開演前に客席で売り子をしていて、「盛り上げるのうまいなぁ…」と思っていたらキャストでした( ̄□ ̄;)!!いきなりソロで歌いだしたからびっくりしたよ。
2011年12月4日日曜日
12月3日 平成中村座十二月大歌舞伎 夜の部
扇雀の葛の葉。女房のほうはいいのだが、姫があんまり姫っぽくないような…。なんか、年増っぽくて、姫のかわいらしさがいまいち。狐ぶりもなんだかなあ…。狐って、もっとしなやかで動きが軽やかだと思うのだけど。最後、狐の姿ですっぽんから現れたとき、花の下に▼の赤い印があって、一瞬鼻血かと思ってびっくりした。狐の象徴?なんか合ってない感じがするんだけど。
松也の保名は美し。姿を消した葛の葉を思って泣き崩れるところなど、すごく引き付けられた。女形もいいけど、こういう優男の二枚目もいいな。十種香の勝頼なんかも似合いそうだ。
「積恋雪関扉」
勘太郎の関守、菊之助の墨染、七之助の小野小町姫。踊り上手の3人なので、舞踊劇だけど最後まで飽きずに見られた。ちょうど七三の花道横の席だったので、ほぼ真上を見上げるような形で目のやり場に困ったよ。何度か役者さんと目が合った気がするけど、目をそらすのも変だし。足を踏みならしたり、道具を振り回したりすると、ちょっと怖かった。
関守はほぼ出ずっぱりで踊りっぱなしだったのに比べ、墨染の出番が少なく、少し物足りなく感じたかも。菊之助の踊りをもっと見たかったなあ。
「松浦の太鼓」
勘三郎の松浦鎮信は、筋書きにもあったように「機嫌のいいお殿様」。我が儘放題なのがかわいらしい。ときどきセリフがもたつくようなところがあったのは、病気の後遺症なのかな。ちょっと心配。
菊之助が立ち役の大高源吾。姿はすっきりして美しいし、声も凛としていいのだけど、やっぱりこの人は女形で観たいなあ。
最後に、舞台後方の扉が開いて、外が見えたのだけど、これって必要?スカイツリーはライトアップしてるわけでもなし、それに、近すぎて、足元のほうしか見えないし。中村座名物なのかもしれないけど、今回は半年以上もやるんだし、演目によってはやめたほうがいいんじゃないかなあ…
2011年11月23日水曜日
11月19日 吉例顔見世大歌舞伎 昼の部
三津五郎の又平と時蔵のおとく。今までみたなかで一番よかったかも。
又平のどもりがくど過ぎず、むしろしゃべれないの?というくらい言葉少なに感じた。名字を許され、着物を貰って喜ぶところが可愛くて、好感をもった。最後までうんざりすることなく見られたのは初めてかも…。
時蔵のおとくもよかった。又平の絵が手水鉢を通り抜けたのを知らせるところとかも、やりすぎでなく、ちょうどいい感じだった。
「道行初音旅」
松緑が忠信、菊之助の静御前で、七世梅幸と二世松緑の追善に2人の孫が踊るという趣向。踊りの名手の2人なので、美しい舞踊を堪能。
「魚屋宗五郎」
菊五郎の宗五郎はさすが。断っていたお酒を飲んで、だんだん酔っ払っていく様とか、やめられなくなって強引に飲みつくしてしまう様子とか、魅せる。
女房のおはまの時蔵との息もぴったり。ただ、芝居はいいのだが、こういう、地味な拵えは、魅力ダウンで残念…。
菊之助のおなぎは美し。松緑の三吉はちょっと出過ぎ?
2011年11月13日日曜日
11月13日 平成中村座十一月大歌舞伎 夜の部
仁左衛門の十兵衛に勘三郎の平作。中村屋はあまり好きではないが、仁左衛門と組んだときは結構よかったので観てみたのだが…。平作が老いぼれのよぼよぼなのはいいのだが、ちょっとばかみたい?
孝太郎のお米はよかったのかな。観ながら、秀太郎さんなら…と想像しちゃったけど。
「弁天娘女男白波」
七之助の弁天は何回目だろう…。こなれてきたかと思いきや、「知らざあ言って…」などの決め台詞がいちいち力みすぎに感じた。しゃべらないでポーズ取ってるだけならきれいなんだけどなあ。
勘太郎の南郷はちょっと悪っぽさが足りない感じ。
橋之助が日本駄衛門、忠信利平が弥十郎だったのだが、以前弥十郎が日本駄衛門をやったときのイメージが強すぎたのか、違和感を感じてしまった。
10月15日 芸術祭十月花形歌舞伎 昼の部
愛之助の義賢は2回目。前回は戸板倒しとか、仏倒しとか、大技にばかり目が行っていたけれど、今回は話もよく理解でき、より深く味わえた。
主役の愛之助はもちろん、葵御前の春猿や小万の笑三郎も好演。再び悪役の薪車(進野次郎)もよかった。
「京人形」
右近の左甚五郎に笑也の京人形はらしい配役。笑三郎の女房おとくがよかった。
人形に魂が入って動き出す…というストーリーは芝居らしくていいのだけれど、姫をかくまったり、追手と闘ったりってくだり、要るかなあ。
「江戸っ子繁盛記」
一心太助の歌舞伎版ということだが、ほとんどただの時代劇。
萬屋錦之介の当たり役だったそうだが、獅童の太助はいまいち頼りないというか、いまいちカッコよさに酔えない感じ。
女房お仲の亀次郎はよかった。立役より、こういう、おきゃんな女形のほうが好きだ。
悪役の鳥居甲斐守が愛之助だったが、もっと悪~くやってほしかった。せっかく悪役も素敵にできるのに、ちょっと物足りなかった。
2011年10月10日月曜日
10月8日 芸術祭十月花形歌舞伎 夜の部
猿之助四十八選の一つ。亀治郎の猿之助襲名発表後、初めての芝居なので、観に行ってみた。
猿之助歌舞伎らしい、スペクタクルな、大がかりな舞台で、亀治郎は3役をこなして、出ずっぱりの大活躍。…だけどさあ。熱演過ぎて、何だか2幕目でおなかいっぱいな感じ。判官とお駒は3幕の早変わりなどあるから、兼ねる意味があるけど、浪七は別の人でもいいのでは?
笑也の照手姫は、可憐で美しい。これで50過ぎって、だれかが言っていたけど奇跡的。
獅童がやった橋蔵って、この役いるの?ちょっと頭の足りない役なのだけど、新撰組!の捨助だっけ?を誇張した感じで、歌舞伎らしくないというか、浮いている感じがした。引っ込みのところで、細マッチョの音楽を流したり、受けを狙っているのだろうけど、滑っちゃった感じ?
三郎をやった薪車が先月に続いてよかった。次郎役の猿弥はすっかり悪役が板についた感じだけど、薪車もなかなか。赤面の小悪党ぶりが、小憎らしくはまっていた。
遊行上人の愛之助は、不可もなく。
最後まで観て、猿之助歌舞伎は私はあんまり好きではないわ、と再認識した。見せどころいっぱいだし、大がかりな仕掛けで楽しませるけど、私には too much。ちょっと食傷気味。
9月25日 松竹大歌舞伎 西コース
愛之助が曽我五郎。すっきりした二枚目で見せどころもたっぷり。
けど、舞踊は難しいなあ。
「義経千本桜」
茶店とすし屋。たしか、前回の巡業公演もそうだった。
仁左衛門のいがみの権太に秀太郎の小せん、維盛、孝太郎のお里に愛之助の小金吾…と松嶋屋一門で固めているので、バランスがよくて、息もぴったり。
それにしても、仁左衛門の権太は何度見てもいいなあ…。小せんと子供を身代わりに差し出すところなど、心情が伝わってきて、泣かされる。小せんとのやり取りも、心の声が聞こえてくるようで。
維盛の登場のシーンでは、寿司桶をふつうに持っているところが、他と違う。他の家では、さぞ重いもののようによろよろと登場し、そのあと、お里がひょいと持ち上げて、笑いどころになっているのだけど、よく考えてみたら、商いの帰りなのだから、寿司桶の中身は空。いくら非力なお殿様だからって、空の寿司桶なら持てるはずで、リアルなのはこちらのほうかも。
愛之助の小金吾ははまり役というか、もはや安定感を感じるほど。ファンとしては、いい意味での裏切りを期待したい気もするけど。
意外によかったのが、薪車の景時。こういう、重厚感を要求される役も悪くない。
2011年7月18日月曜日
TAIJI
サイパンに行く飛行機のなかで暴れて拘束され、自殺を図ったというニュースは耳にしていたが、また復活してくると、どこかで思っていた。なぜあんなことをしたのか、何があったのか。詳しいことは分からないけれど、破滅的にしか生きられなかった人なのかなあと思う。
せっかく手に入れかけた成功を、直前で手放してしまったり、自分の身体をわざと痛め付けているかのように振る舞ったり。Yoshikiもたいがい破滅的だが、どこか演じているようで、ほんとうに破滅することはなかった。少なくとも、これまでのところは。破滅的に生きて、本当に死んでしまうなんて、寂しすぎる。
私はTAIJIのベースが大好きだし、Xの楽曲はTAIJIのベースでないと魅力がないくらいに思ってる。だから、去年の日産スタジアムのライブは、全体としてはひどかったけど、TAIJIの演奏を聴けたことは本当によかったと思う。でも、あれが最後かと思うと、物足りない。あんなに才能があって、格好いいミュージシャンが、十分に力を発揮できないなんて、悲しい。その責任の一端(大半?)が本人にあるとしても。
今時、夭逝するロックミュージシャンなんて、伝説にもならない。けれど、そんな風にしか生きられないから、こんな結末を招いてしまったのかもしれない。
2011年7月17日日曜日
7月16日 七月大歌舞伎 夜の部
愛之助の梅王丸、孝太郎の桜丸に進之助の松王丸。役の格は松王丸のほうが上なんだろうけど、見せ場は梅王丸のほうが多くて、嬉しい。こういう、時代物の、THE歌舞伎って感じの荒事をちゃんと魅せるって、案外難しいのではないだろうか?型どおりにやれば、カタチになっちゃうものに、気持ちを感じさせるって、なかなかないような気がする(って褒めすぎ?)
まあ、最前列で、すぐ目の前だったから、いろいろよく見えて感動しただけかもしれないけど。これまで、車引は何度も観たけど、正直、あまりいいと思ったことがなかったので、今回は出色だった。
松王丸の進之助、なんだか力が入りすぎてないか?手足がフルフルしてたり、ちょっと幼く見える。顔が全体的に真ん中に寄ってるので、子どもっぽい顔に見えるせいかな。
「伊勢音頭恋寝刃」
通しで観るのは初めて。万次郎の人のよい(けど間抜けな)若旦那ぶりで、話の筋がより分かりやすくなった。
万次郎と万野を演じた秀太郎が、正反対の二役を好演。はんなりした万次郎のかわいらしさと、万野の憎たらしいほどの意地悪ぶりが、一人の役者から出てくるって、凄い!
仁左衛門の貢は、期待を裏切らない格好よさ。前半で万次郎を助ける頼もしさが見られて、余計に男振りが印象づけられたように思う。
凄惨な殺しの場面も、息を呑む美しさで…(最近、殺しばかり観ているような…)
お鹿の弥十郎が!!なんだろう、健気?大きい身体でなんとか可愛らしく見せようとしていじらしいのだが、やっぱりかわいくないのが(だって、あのガタイだよ?)可哀想で思わず笑ってしまう。お鹿って、結構しどころがあるというか、印象に残る得な役だと思うけど、ここまでのものはなかなかないでしょう。
愛之助の林平は、ニンに合って、いい感じ。家来ながら、秀太郎の万次郎を諭すところは、義父子の関係を垣間見るようで、思わずニンマリしちゃった。
時蔵のお紺は、さすがの美しさなのだが、前半の万次郎の件が加わった分、印象が薄くなってしまったのが残念。
梅枝はお岸でも好演。同年代の役者のなかでは、女形として危なげがない(って、変な言い種だけど、ちゃんと女に見えるという意味で)。顔もうりざねがおでキレイだし。
7月16日 七月大歌舞伎 昼の部
浅山鉄山(愛之助)の悪っぷりがイイ。無理やりお菊に言い寄るところとか、お菊をいびりたおして、意地悪そうにほくそ笑む表情とか、堪らない。
縄で縛って吊るしたり、竹で叩いたり、水攻めにかけたりと、まんまSMやん(笑)。こういうシーンに興奮するって、どういう心理なんだろう…(?д?)
惜しむらくは、苛められるお菊があんまり憐れっぽくないんだな。美しさのせい?でも、他の役者もあんまり想像できない。誰なら、いいんだろう。
「素襖落」
さすが、三津五郎!踊りで魅せる…なのだが、途中、意識が…(スミマセン)
巳之助が次郎冠者で共演してたけど、どこかぎこちない感じ。三郎吾をやった萬太郎がのびのびした踊りでよかった。姫御寮の梅枝は完成度高し。
「江戸唄情節」(タイトル覚えにくいよ。三味線やくざでいいじゃん)
ええ話や〜。
冒頭、「芸のためには、やくざから完全に足を洗え。そのためにはやくざと関わりのある女とも別れなさい」「芸をとるか、女をとるかだ」と諭すおふさ(秀太郎)の格好よさ。
弥市とお米がじゃらじゃらするのもイイし(美男美女だからね)、何より江戸言葉で啖呵をきる弥市が格好いい。(最初でてきたときは、一瞬違和感があったのだけど、たぶん、大阪の劇場で仁左衛門なのに…という戸惑いのせい)
後半は、美しい夫婦愛にうっとり。
三味線のシーンは、中盤、床に臥せるお米の傍らで爪弾くところがあって、これだけ!?と思ったら、終盤、たくさん聞かせてくれました。三味線のことはよく判らないけど、そりゃまあ、プロには比べようもないけど、長いソロはあるし、大変なことをやってるというのはよくわかる。弥市のセリフに「役者に合わせるんじゃなく、役者を乗せるつもりで弾く」というのがあったけど、音楽が良くないと、役者も活きない。もっと音楽にも関心を払おうと思ったり。
劇中劇で連獅子を踊ったのだが、三津五郎より愛之助のほうが、動きが大きくて、キレがあるように感じた。毛振りも勢いがあって、迫力たっぷり。回数も多く廻してたような。
ひとつだけ、ツッコミを入れたいのは、親分に言われて江戸を離れるとき、どうして博打なんかやってスッちゃうのよ!やむ無く小田原に落ち延びて…って、最初から上方に行っていれば、みんなハッピーだったのに(まあ、そうだったら芝居にならないのだが)。上方まで行かれないにしても、もうちょっとやむを得ない理由にならないものか。お金を盗まれるとか、病で動けなくなるとか…
2011年7月14日木曜日
7月13日 マニュエル・ルグリの新しき世界Ⅱ
以前、wowowで観たときはあまり感銘を受けなかったのだけれど、生で見てみるとなかなかよかった。でも、コンテンポラリーの作品って、テーマとかストーリーとかがよくわからなくって、苦手だ。
「海賊」
全くセットのない、さらの舞台でどうよ?と思ったけど(公演というより、発表会とかコンクールのよう)デニス・チェリチェヴィチコのジャンプが凄かった。
「マノン」
こちらはさすがに、天蓋付きのベッドとか、書き物机とかのセットがあって、それなり。フリーデマン・フォーゲルがさわやかで好印象。
「アレポ」
う~ん…、やっぱり、ベジャールの作品って苦手だわ。ミハイル・ソスノフスキーは後のロットバルトのほうがよかった。
「ラ・シルフィード」
木本全優というダンサー。ウィーン国立の準ソリストとかで、今回は、震災の影響で来られなくなったダンサーの代役というか、抜擢なんだろうな。踊りは、一生懸命な感じで好印象だったけど、日本人にキルトは難しいよ。
「白鳥の湖」
黒鳥のパ・ド・ドゥだったのだが、オディール(リュミドラ・コノヴァロワ)と王子(ドミトリー・グダノフ)よりも、ロットバルトのソスノフスキーがよかった。
「ファンシー・グッズ」
マノンのフォーゲルが再び登場。ジャズナンバーにのって、時にコミカルな振付が楽しかった。
「オネーギン」
ルグリ&マリア・アイシュヴァルトの恋愛劇。作品としては素晴らしいのだろうけど、公演の最後が、男が振られて立ち去るシーンってどうなの?
本当は、オレリー・デュポンが見たくて買ったチケットだったので、これがデュポンだったら…と思わずにいられなかった。
2011年6月20日月曜日
6月18日 六月大歌舞伎 昼の部
前にも見たことあるはずなのだが、これってこんなにいい芝居だったっけ?と再認識。
愛之助の重保がはまり役。主君を手に掛けてしまい、それを口にすることのできない苦悩が痛いほど伝わってきた。主役のはずの頼家(染五郎)よりも出番は多いし、見せどころも多いような…。
以前見たときは、頼家、いい年してなに青臭いことぬかしてんだと鼻白んだけど、染五郎の頼家にはあまり違和感を感じなかった。役者の年齢なのかなあ…(前回は確か梅玉だった)。
孝太郎の小周防。こういうかわいらしく、いじらしい役はうまいよね。なんでこんなに可憐になるのかと。音羽の梅枝とは実年齢では逆なのだが、かわいらしい女性に見えるのが驚き。
御台所の時蔵はさすがの気品。全体的に配役がしっくりきていて、物語のよさがよく伝わってきたように思う。
「梶原平三誉石切」
梶原景時は吉右衛門だったのだが、何だか動きやセリフにキレがなくて残念。
歌六+芝雀の親娘がよかった。
「連獅子」
昼の部の目玉(笑)。仁左衛門が折々に気遣うように千之助を見守っている様子が物語と重なって、気持ちが伝わってくる気がした。踊り自体はたぶん、それほどでもないのだろうけど。
毛振が短かったような気がしたのは気のせい?
2011年6月4日土曜日
6月4日 六月大歌舞伎 夜の部
助蔵(愛之助)とおえん(孝太郎)が吹雪の中、山小屋に辿りつく。元の兄貴分である直助(染五郎)の元女房だったおえんを寝取ったことを悔い、弱気になる助蔵。そんななか、偶然にも直助が山小屋に迷い込む。3年ぶりの再会に驚き、直助に詫びる助蔵とおえん。直助は好きな女の好きにさせてやると言って、2人を許すそぶりを見せるが、咳込んだ助蔵の看病をするおえんの様子を見て(口移しで薬を飲ませる! 色っぽいシーンなのに見ていてとっても恥ずかしかった…)、やはり許せないので、吹雪の中、2人に出ていくよう言い出す。せめて夜明けまで待ってほしいと泣きつく2人を許せず、直助が刀に手をかけると、助蔵、おえんはそれぞれ、自分だけは助けてほしいとエゴをむき出しにして……というストーリー。登場人物の感情がくるくる変わっていく様はまるで現代劇のよう。だが、何だかすとんと胸に落ちなかったのは何でだろう?3日目だったので、まだ芝居がこなれていなかったのかな?
愛之助の助蔵、病み上がりで体調がすぐれないという役柄も影響しているのかもしれないが、なんとも情けない。一方、おえんは「隠れて会うからよけい燃える」というようなことを言って(正確なセリフは忘れた)、助蔵にしなだれかかったり、直助に命乞いをするときに手を取って自分の胸元に差し入れたり…とやたら色気を振りまくのだが…。見ているほうが恥ずかしくなっちゃうのは何でだろう。
「夏祭浪花鑑」
吉右衛門の団七に仁左衛門の徳兵衛という、超豪華なキャスティング。仁左衛門がやたら格好よかったのだが、一方、団七は…。動きにキレがないというか、全体的にもっさりした感じがした。
磯之丞の錦之助は、女にだらしなく、頼りない若侍(?)ははまり役(失礼!)。福助のお辰は悪くないはずなのに、いまいち期待外れだったかも。期待値が高すぎたのかな?段四郎の義平次は、憎たらしいオヤジっぷりが凄かった。
イヤホンガイドで、「祭は狂気をはらんでいる」という解説があったのだが、リオのカーニバルを例に挙げるのはいかに?神田祭とかだんじり祭りで十分でしょう。
「色彩間苅豆」
かさねの舞踊版。時蔵のかさねに染五郎の与右衛門という、美男美女で見た目に楽しい(←これ大事)。あざができて醜くなるのが恐ろしいのは、前半の美しさとのギャップがあってこそ。
2011年5月24日火曜日
5月24日 前進座創立八十周年記念公演
いわゆる人情話なのだが、何か薄い。話の内容も、芝居も。所々、笑いを狙ったセリフややりとりがあるのだが、吉本新喜劇を思わせ、ちっとも笑えない。白塗りの役者は出てくるけど、歌舞伎ではなく、女優もでる現代劇だからかなぁ。なんか話に入り込めずに、白けてしまった。
放蕩息子が初めて自分の手で物を売って、働くことの意義を知り改心する…というお決まりのストーリーなのだが、市価の半額でもふつうには売れずに、意地悪な伯父に虐げられていると泣き言を言って、人情長屋の人達に助けてもらって完売ってなに?
商売の工夫がまるでないし、事業の継続性(ってほど大げさなものではないが)もゼロじゃん。しかも、最後に貧しい母子に会って、自分の境遇を反省するって、安っ。帰り際に売上金全額を置いていってしまうのだが、母は受取を拒否。でも、たまたま通りかかった大家に、滞納している家賃として取り上げられてしまったのを苦に自殺を図るってさあ、、、。幼い息子を残して死んでしまっちゃあだめでしょう?
「秋葉権現廻船噺」
時代物の歌舞伎らしい作品。前進座発足のころ上演されたきりだったのを、数十年ぶりに復活したのだとか。お家騒動の勧善懲悪もので、わかりやすい筋立てで楽しめた。まあ、ところどころ突っ込みどころは満載なのだが、歌舞伎だからね。
白波五人男でおなじみの日本駄右衛門が完全な悪役として君臨。
月本家の跡継ぎ、始之助役の高橋祐一郎が、姿よし(2階席から見た限りでは)、声よし、で注目だった。あんまりさわやか過ぎて、家の決めた許嫁を嫌がって、傾城にうつつを抜かしているという風には見えなかったけど…。
違和感があったのが、牙のお才。はじめ、日本駄右衛門の手下として登場するが、実は月本家の家臣、玉島逸当の弟、幸兵衛の妻だった…というのは、よくあるパターンだが、陥れた相手が義理の兄だったって気付けよ。いくら何年か、夫婦離れ離れになってたとしてもさ。
初めて前進座の歌舞伎を見たのだが、見終わって、贔屓の役者が出ていないと歌舞伎ってあまり面白くないのだなあということが分かった(苦笑)。初見でも、ハッとするようなカッコイイ役者さんとか、綺麗な役者さんがいればまた話は別かもしれないが。そういう意味で、今回、またぜひ見たいという気持ちにはなれなかった。残念だけど。
2011年5月21日土曜日
5月21日 英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ「眠りの森の美女」
ツァオ・チーの王子が見たかったのに、見せ場が少なくてちょっと物足りない。生で初めて観たけど、ジャンプは高いし、足はよく開いてるし、迫力があった。もっとたっぷり観たいなあ。
オーロラ姫の佐久間奈緒も初見だったが、いつも眉間を寄せて悲壮な様子に見えて、オーロラの幸福感が感じられなかったのが、残念。
よかったのが、リラの精のジャオ・レイ。高潔で威厳のある雰囲気が素敵だった。この役はあまり踊らなかったので、次回はもっと踊りを見てみたい。オーロラなんかもよさそう。ガラポスは代役だったようで、マリオン・テイトという人。パンフレットに名前が見当たらないので、まだソリストとかいうポジションではないのかな?でも、芸達者で見ごたえあり。このカンパニーのガラポスはあまり誇張されすぎていないのもいい。
3幕で、長靴をはいた猫や青い鳥の他に、赤ずきんと狼が踊るのがピーター・ライト流?猫もかぶり物をしていたり、かぶりもの好きなのかな。真夏の世の夢でもロバがかぶってたし。こういう演出は子ども向けにはいいのかも。
2011年5月18日水曜日
映画「小さな村の小さなダンサー」試写会&トークショー
今回の来日公演で踊る「眠りの森の美女」は伝統的な演出や衣装、振付と、オーロラ姫が目覚めたあとにもパ・ド・トゥがあるところが見どころ、だとか。土曜日の公演が楽しみww
映画自体は2回目だったけど、改めて楽しめた。ヒューストン・バレエ団の振付は近代的にアレンジされたもので、あまり好みではなかったのだけど、改めて踊りを見て技術力の高さに感動。ジャンプが高くて美しい。
ただ、改めて見ても、リー・ツンシンの最初の結婚はグリーンカード取得のために見えてしまう。中国に残した家族への心配がどうしてもぬぐえなかったり、エリザベスがどうしてもキャリアを諦められなかったりしたことがすれ違いを生んだのだろうという描写はあったけど、愛しているならそういう困難は乗り越えられるのではと思ってしまったのかな。
5月17日 英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団
初見だったのだけど、ストーリー性の強い作品。あらすじを読んでいなければ、何が起こっているのかわからないかも…。愛し合うカップルがいて、横恋慕とか、すったもんだあって、最後はハッピーエンド…という展開は、同時に上演された「真夏の夜の夢」と共通か。
近現代っぽい音楽があんまり好きではないなぁ、と思って後で調べてみたら、ラヴェルの作品だった。ボレロもそうだけど、近現代の作品って、振付も含めて苦手だ。調和が保たれず、不協和音というか、わざとバランスを乱すようなところが。
最後の群舞が圧巻。
「真夏の夜の夢」
吉田都さんの踊りが見たくて。今回はタイターニア役。演劇で何度か見たことのある作品だったので、タイターニアって女性のメーンキャストではないのでは?と思っていたが、バレエでは違うらしい(笑)。ドン・キホーテでもそうだけど、バレエでは主役が変わってしまうようことがよくあるのね。
踊りは、端正で危なげがなく、素晴らしかった。初めて舞台で見たけど、小柄なのに、目を引きつけられる。手足の長さとか、西洋人の中に入ると身体条件は決してよくないのに、他のどのダンサーにも負けていないのはさすが。
パック役のアレクサンダー・キャンベルが、意外にマッチョで、最初違和感を感じたけど、踊りは素晴らしい。ピルエットなんて何回回ったんだろう?こういう道化師的な役は、小柄で細身のダンサーが演じるものだという、勝手な先入観があったのだが(だって、王よりもガタイがいいんだよ?)、踊りの力に説得されたとうか。
ボトム(ロバート・パーカー)がチャーミングな踊り。ロバに変えられたところではポワントで(!!)踊っていて、びっくり。かぶりものして、さらにポワントでって、かなりハードルの高い役だよねえ。
オベロン役のセザール・モラレスは、都さんといいバランス。端正な踊りで好印象。
インドの男の子役の子役、東京バレエ学校の子どもらしいのだが、なんか素人っぽい(笑)大人に手をひかれるまま、右へ左は歩いているだけ、という感じで、歌舞伎の子役のようだった。そういう演出なのかな?
東日本大震災へのチャリティー公演だったので、休憩時間と終演後にダンサーたち(当日出演のなかったツァオ・チーや佐久間奈緒も来ていた!)がロビーで寄付を募っていたのだが、みなさん写真を撮るばっかりで、募金をする人は少数…。傍で見ていて、何だか恥ずかしくていたたまれなくなった。チケットを買うこと自体が支援の一環なのだから、それ以上何かするかどうかは本人の自由だけど、写真を撮るなら、少しでも募金すべきでは?ファンだったら協力しようよ!
2011年5月14日土曜日
映画「ブラック・スワン」
主人公のニーナ(ナタリー・ポートマン)が追い詰められていくシーンがリアルに痛そうで、眼を逸らしたくなったけど、話に引き込まれた。ニーナはテクニックもあり端正に踊るけと、オディールの妖艶さが出せないことに苦しみ…という設定はよく分かるのだけど、最後までその妖艶さが出せたかは疑問。黒鳥に変化してしまうことで、何か吹っ切れたのはわかったけど、妖艶さとは違うような…。
ポートマンの踊りは、予告編で観たより悪くなかった。もちろん、足のアップや引きの映像では代役を使っているのだろうけど、あまり違和感を感じなかった。まあ、最大の見せ場であるはずのオディールの32回転のフェッテがなかったり、踊りそのもので感動するというレベルまでは行っていないけど。
2011年5月11日水曜日
5月9日 サンクトペテルブルグ・バレエ・シアター「白鳥の湖」
ジークフリード王子のオレグ・ヤロムキンは、薔薇色の頬でチャーミング。まさしく王子という風情。こういう王子っていそうでいないかも。
コールドも素晴らしいのだが、女性で2人ほどいた日本人ダンサーのうちの1人がなんだかいっぱいいっぱいという感じで…。違う意味で目が離せなくて困った(苦笑)日本公演だから、普段よりも目立つところで踊らせてもらったのかなあ。結構前の方の席だったので、コールドの人たちも含めて、ダンサーの表情がよく見えたから、余計気になったのかも。
1幕、2幕は全体的にスローペースで、王子やパ・ド・トロワの男性ソロなんかは、ジャンプの滞空時間が相当長くないと、曲にのれなくなってしまうのだが、ちゃんと、テンポに合わせて長く飛んでいたので感心した。
対して3幕はアップテンポ(笑)。前半の遅れを取り戻すかのように、”巻き”で進んでいく。
オディールの悪女っぷりは、さすが。オデットとはまるで別人で、動きもきびきびしてるし、王子を誘惑するところや、嘲笑する表情が魅力的。ただ、見せ場のグラン・フェッテの後で曲を止めて、拍手&お辞儀にしちゃうのはどうよ?テクニック的には、数回ダブルが入ったけど、ほとんどシングルで、「超凄い」というほどではないし(むしろ、あのスローテンポで2幕を踊りきるほうが凄いと思う)、曲の区切りでもなんでもないところで、ぶつっと曲が切れてしまうのは違和感がある。半端なところから曲が再開して、踊りだす王子もなんだかなあ…だったし。
4幕もあっさり目。最後は、ロットバルトを倒して、2人は結ばれ、めでたしめでたし…だったけど、これもなあ…。王子は決定的なミスを犯したのだから、ハッピーエンドはあり得ないでしょう?ロットバルトを倒すんなら、初めからやっとけ、と思ってしまう。
コレスニコヴァは、踊りはもちろん凄いのだが、むしろ演技派なのだろう。オデットやオディールのセリフが聞こえてくるような熱演は見ごたえがあった。本人もインタビューで、テクニックよりも演技、と言っていたし。
最後にオーケストラ。震災の影響で公演が延期になり、当初予定していた劇場の管弦楽団ではなく、東京のシアター・オーケストラというところだったのだが、う~ん。。。ファンファーレでトランペットが外しちゃったり、ところどころでミスが気になった。
2011年3月7日月曜日
3月6日 絵本合法衢
あんなにたくさん殺したのに、最後の敵討されるところはいやにあっさりだし。あれだけの悪事に報いるには、もっと、しっかり殺され(ってのも変な表現だけど)ないと、見ているほうのカタルシスがないような。
最後のシーン、大学之助が着物を肩脱ぐところで、腕が抜けずになんだかもたもた…。えいや、とばかりに、白い襦袢(?)も縫いでしまっていたけど、あれは脱ぎすぎ?黒いメッシュのようなの(鎖帷子?)だけになってしまった姿が、ちょっと締まらない感じだった。仁左衛門でも失敗することあるんだ、という思いと、それでも、ミスと感じさせずに芝居を続けてしまうのはさすがだなあと思った。まだ2日めだから、手順が慣れてなかったのかな。
うんざりお松は時蔵。赤姫の印象が強い役者さんだけど、こういう悪役も素敵だった。悪婆の代表的な役ということだけど、太平次に気に入られたい一心で、と思うといじらしくもある。
愛之助の与兵衛は、なんだか魅力のない役だった(役者のせいというより、台本としてそうなのだろうけど)。敵討をしなければいけないのに、病気になっちゃったりだとか、妻のお亀を守ってやれずに敵のところに妾にやったりだとか、なんとも頼りない男だ。
2011年2月13日日曜日
2月13日 二月大歌舞伎「盟三五大切」
とはいえ…「三五大切」てこんな話だったっけ…?前に見た時と全然印象が違うんだけど??こんなに陰惨な話をどうして私は、人情話と思っていたのだろうか????
五人殺しの場とか、小万の殺しの場面とか、観たら思い出したけど、タイトルをみただけでは結びつけられなかった…orz。
ともかく!!!今回は源五郎の怨みの深さや執念、冷徹さなんかが物凄く伝わってきて、身震いするほど。仁左衛門の源五郎は、一旦許して帰ったと見せかけて復讐に訪れたり、1年以上も三五郎と小万を追い続けたりと、狂気の様が恐ろしい。そのくせ、小万の生首を胸に抱いて慈しむような表情を見せたり、花道で涙を浮かべたりと、情の深さも見せる。花道横の席だったので、表情がよく見えて、語りかけるように心情が伝わってきた。
なんかでも、この話って、理不尽のオンパレード。皆がやらなくてもいいことをやって不幸になっていくよなぁ…。短気は損気というか、先走らずに周りをよく見ましょうと言いたい!
愛之助は昼とはまた違って、小ずるいけど憎めない、すっきりした色男を好演。江戸弁も違和感はなかったなぁ。出足の、小万といちゃつくところとか、色気も十分(まあ、船上の濡れ場は、もっとやれぃ!と思ったけどww大先輩相手じゃあ、難しいか)
小万の芝雀は、ちょっと幸薄そうな風情が役に合って良かった。隣に座ってた奥様も言ってたけど、孝太郎だったらこうはならなかったかも。
松也の菊乃は昼よりもさらに良し。芝雀よりも全然年下なのに、道理をわきまえた先輩芸者みたいな風情すらあったような。
でもさあ…、あんだけ散々したひとが「さあそうですか」と討ち入に参加してしまうのは腑に落ちない。全てはあんたの思い込みが招いたんでしょうがっ!
2月12日 二月大歌舞伎「彦山権現誓助剣」
なにより、愛之助の悪役(京極内匠)が良かった。悪いヤツと判っているのに、惚れちゃいそうな、ゾクゾクするような色気を感じた。実は、一幕目では、今ひとつ押しが弱いというか、嫌がるお菊への攻めようが甘くて、悪役としてちょっと物足りなく感じたのだが、なかなかどうして。三幕の殺しの場面なんて、いやらしくてすごく色っぽかった。死んだお菊の顔を覗き込んで、口付けるかってところなんか、凄くドキドキ。
この存在感のまま、四幕の敵討ち(される)ところは、憎たらしい仇ぶり。愛之助は古典的な二枚目はカッコいいのだが、三枚目とか、癖のある役はあんまり良くなくて、得意不得意の差が大きいような気がしていたけど、いい意味で裏切られた。新境地開拓といったところか。
仁左衛門の六助が格好いいのは、予想どおり。実年齢よりかなり若い役を芸で若々しく感じさせるのは勿論なのだが、一瞬、肌艶まで若々しく感じてびっくりした。でもこの舞台、四幕まで主役がでてこないんだよね…。毛谷村だけやるなら、間違いなく六助が主役だけど、通しでやると、仇役の京極内匠のほうが出番も多いし、在感ある。仁左衛門と一応互角に渡り合ったわけで、そういう意味でも、今回の愛之助の健闘には拍手。
あと、子役の子が凄く可愛らしい。化粧のせいもあってか、ちょっと垂れ目で今にも泣きだしそうな顔か何とも愛くるしくて、仕草もかわいいし、客席をつかんでた。途中からは、主役よりも子どもに目が行ってしまうくらい。床に座るところでひっくり返って竹三郎に助けられたり、敵討ちのところでは仁左衛門の手助けで見得をきったりと、役者さん達も眼をかけてあげてる様子が垣間見えて。こんなに印象に残った子役は初めて。
松也の女形は美しく、声もキレイ。ただ、膝を曲げて盗んだ姿が今一つ。ベテランの女形には感じたことないのは姿勢のせいか。いかにも" やってます"という感じで、ちょっと不自然。殺されるところも、海老ぞりは綺麗に決まったのに、その後で横たわるときに膝を立ててしまったのは美しくなかった。身体が堅いのかな?
孝太郎はお園。こういうおきゃんな男勝りの役は似合うので安心して観てられる(苦笑)。六助と判って急に可愛らしくなるところとか、ホント上手いよね。
2011年1月24日月曜日
1月23日 「新春浅草歌舞伎」第2部
愛之助の沢市、七之助のお里。あらすじを読んで、以前見たことあるなあと思いだし、調べてみたら、去年2月の歌舞伎座さよなら公演で、三津五郎と福助のコンビで見ていた。改めてみてみて、ある程度年齢のいった人のほうが合う役のような気がした。愛之助の沢市は、外見がなんだか「一休さん」のようで、悪くはないのだが、盲目であることの負い目とか、屈折した感じが弱い感じ。七之助のお里は、クールな顔つきのせいか、いまひとつ情に厚い、よくできた妻という風情に欠ける。いろいろと所作に気を取られていて、気持ちが入りきっていないような…
目が見えるようになってからのやりとりは、かわいらしくてよかったけど。
冷静に考えてみると、ストーリーとしては全く共感できない。最後に沢市の目が見えるようになるのはお約束としても、お里が観音参りしていることを3年も気付かないのは何で?とか、沢市が身を投げてしまうのはあまりに身勝手とか、お里が後を追ってしまうのもなんだかなあ…。それを感動させてしまうのが芝居の魅力ではあるのだけど。
「黒手組曲輪達引」
助六のパロディということだが、助六の衣装からして、あの紫鉢巻がなかったりと、かなり違う印象。亀次郎が3役で、二枚目や三枚目の役もよかった。権九郎の拵えが、香川照之にそっくりでびっくり!出演者の名前を織り交ぜたシャレを言ったり、福山雅治の歌を歌ったりと、笑いをとるところのはじけっぷりが意外だったけどよかった。亀鶴の鳥居新左衛門が、悪そううで格好良かった。
2011年1月17日月曜日
1月16日 ベルリン国立バレエ「シンデレラ」
セミオノワの踊りは、完璧に美しいというか、何ていうんだろう、見ていて不安がないというか、自然で無理がない(ように見える)。2階席から見ても、長い手足が映えて綺麗だった。プロポーションも理想的で、すごく現代的なダンサーだという気がする。
2011年1月15日土曜日
1月15日 ベルリン国立バレエ「シンデレラ」
義理の姉を翻案した「甘いもの好き」と「アル中」の2人のバレリーナは、実は一番の見せどころでは!?確かなテクニックに裏付けされた、コミカルな演技が素晴らしい。前日はマラーホフが甘いもの好きをやってたようで、一度見てみたかったかも。(でも、私が気に入ったのはアル中のほう)
舞踏会のシーンとか、群舞も見ごたえあり。日本人ダンサー(菅野茉里奈、寺井七海、針山愛美、巣山葵)も、頑張ってたね(悪目立ちすることなく、ね…苦笑)
1月15日 新春浅草歌舞伎 第1部
お嬢(七之助)、お坊(亀次郎)、和尚(愛之助)の組み合わせ。
愛之助丈はインフルエンザによる休演明けの舞台だったけど、そんな様子は感じさせなかった(やや顔がほっそりしてたか、という感じ)のはさすが。三人吉三はお坊のほうが格好いいと思っていたけど、役の上では和尚のほうが見せ場も多いし、要の役。大川端でお嬢とお坊を仲介するところはもちろん、おとせと十三郎を手に掛ける場面とか、説得力のある演技。初めて、和尚が格好いいと思ったり。
七之助のお嬢はセリフにやや力みが感じられるかな。ちょっと硬さが残るのが残念。亀次郎のお坊は細目の釣り目で顔が悪人っぽいのはどうなの?そりゃあもちろん、盗賊なんだから善人ではないにせよ、悪役ではないでしょう。セリフもなんだか口の中にこもる感じで、切れがわるい。
あと、観客の笑いどころがずれてるのが、なんだかなあ…。本堂の場でお坊とお嬢が再会を喜ぶところとか、共に死のうとするところとかで笑うのはなんで?シリアスな場面のはずなのに、雰囲気ぶち壊し。
「独楽」
踊りの名手、亀次郎の独り舞台。日本舞踊って、難しいことをやってるんだろうけど、凄そうに見えないのが気の毒。観客が拍手するのは、くるくる回っているところとか、わかりやすいところだけだもんねえ。片足でバランスをとりながら、上体を傾けたりとかって、ほんとは凄く難しいんだろうなあ…と思った。
2011年1月11日火曜日
1月4日 レニングラード国立バレエ「白鳥の湖」
レニングラード国立バレエだけあって、これぞ正統派の白鳥の湖という感じか。どこをとっても素晴らしい。で、チャイコフスキーの音楽ってなんであんなに心を掻き立てるんだろう。
ルジマトフは、登場から苦悩する王子ぶりが印象的。ほとんど踊らず、舞台の上をうろうろしてるだけなのに、あの存在感だもの。でも、白鳥の王子って、踊りの見せ場はあまりなくて、プリマの支え役みたい…。踊り的にはロットバルトとかのほうが魅せるよね?
12月28日 レニングラード国立バレエ「ジゼル」
ジゼルのオクサーナ・シェスタコワはまだ若いのかな?ラインになって移動するときに出遅れたり、墓から出てくるところで躓いたりと、小さなミスがあったり。踊りは可憐でかわいらしい。
ルジマトフのアルベルトは、さすがの存在感。でも王子(アルベルトは王子ではないけど)っていうより魔王?