仁左衛門が大学之助、太平次の悪役2役。時代物の悪役のような大学之助と、世話物の太平次と全く別人のような2人で、どちらも迫力があって悪の権化という感じ。こんなに何人も人が殺される芝居ってほかにないよね。子供も大人も、敵も味方も、次から次へと、しかも、虫でも追い払うようにあっさりと切り捨ててしまうのが、なんともやりきれない。三五大切なんかの、一場面で5人切りとかいう陰惨さとは違って、断続的に続く悪の姿というのは、心にもやもやしたものが残る気がする。
あんなにたくさん殺したのに、最後の敵討されるところはいやにあっさりだし。あれだけの悪事に報いるには、もっと、しっかり殺され(ってのも変な表現だけど)ないと、見ているほうのカタルシスがないような。
最後のシーン、大学之助が着物を肩脱ぐところで、腕が抜けずになんだかもたもた…。えいや、とばかりに、白い襦袢(?)も縫いでしまっていたけど、あれは脱ぎすぎ?黒いメッシュのようなの(鎖帷子?)だけになってしまった姿が、ちょっと締まらない感じだった。仁左衛門でも失敗することあるんだ、という思いと、それでも、ミスと感じさせずに芝居を続けてしまうのはさすがだなあと思った。まだ2日めだから、手順が慣れてなかったのかな。
うんざりお松は時蔵。赤姫の印象が強い役者さんだけど、こういう悪役も素敵だった。悪婆の代表的な役ということだけど、太平次に気に入られたい一心で、と思うといじらしくもある。
愛之助の与兵衛は、なんだか魅力のない役だった(役者のせいというより、台本としてそうなのだろうけど)。敵討をしなければいけないのに、病気になっちゃったりだとか、妻のお亀を守ってやれずに敵のところに妾にやったりだとか、なんとも頼りない男だ。
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