全体的に大満足。もちろん仁左衛門が座頭なのだから、面白くないはずはないのだが、期待していた以上に堪能した。
なにより、愛之助の悪役(京極内匠)が良かった。悪いヤツと判っているのに、惚れちゃいそうな、ゾクゾクするような色気を感じた。実は、一幕目では、今ひとつ押しが弱いというか、嫌がるお菊への攻めようが甘くて、悪役としてちょっと物足りなく感じたのだが、なかなかどうして。三幕の殺しの場面なんて、いやらしくてすごく色っぽかった。死んだお菊の顔を覗き込んで、口付けるかってところなんか、凄くドキドキ。
この存在感のまま、四幕の敵討ち(される)ところは、憎たらしい仇ぶり。愛之助は古典的な二枚目はカッコいいのだが、三枚目とか、癖のある役はあんまり良くなくて、得意不得意の差が大きいような気がしていたけど、いい意味で裏切られた。新境地開拓といったところか。
仁左衛門の六助が格好いいのは、予想どおり。実年齢よりかなり若い役を芸で若々しく感じさせるのは勿論なのだが、一瞬、肌艶まで若々しく感じてびっくりした。でもこの舞台、四幕まで主役がでてこないんだよね…。毛谷村だけやるなら、間違いなく六助が主役だけど、通しでやると、仇役の京極内匠のほうが出番も多いし、在感ある。仁左衛門と一応互角に渡り合ったわけで、そういう意味でも、今回の愛之助の健闘には拍手。
あと、子役の子が凄く可愛らしい。化粧のせいもあってか、ちょっと垂れ目で今にも泣きだしそうな顔か何とも愛くるしくて、仕草もかわいいし、客席をつかんでた。途中からは、主役よりも子どもに目が行ってしまうくらい。床に座るところでひっくり返って竹三郎に助けられたり、敵討ちのところでは仁左衛門の手助けで見得をきったりと、役者さん達も眼をかけてあげてる様子が垣間見えて。こんなに印象に残った子役は初めて。
松也の女形は美しく、声もキレイ。ただ、膝を曲げて盗んだ姿が今一つ。ベテランの女形には感じたことないのは姿勢のせいか。いかにも" やってます"という感じで、ちょっと不自然。殺されるところも、海老ぞりは綺麗に決まったのに、その後で横たわるときに膝を立ててしまったのは美しくなかった。身体が堅いのかな?
孝太郎はお園。こういうおきゃんな男勝りの役は似合うので安心して観てられる(苦笑)。六助と判って急に可愛らしくなるところとか、ホント上手いよね。
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