2019年12月25日水曜日

12月24日 新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」

序幕は尾上右近の口上から。腐海や王蟲といった基本ワードが説明されるが、ナウシカを知らない人にどこまで通じるのかとも思った。
暗転から花道に菊之助のナウシカが登場。テトとの出会いはユパを介さず、いきなり「怖くない」の名シーン。茶色がかったボブヘアにナチュラル風メイクなのだが、歌舞伎なのでそれなりにしっかり化粧してるし、少し若作りしているような違和感を感じる。菊之助はプログラムで、ナウシカのことを「おぼこい」と評していたので、ああいう拵えになるのだろうが、一見平凡で内奥に力を秘めている主人公というのは歌舞伎にはあまりなく、正直魅力を感じづらい。
一方の七之助のクシャナは、美貌といい、威厳といい、文句なし。セリフもキレが良く「小気味いい!」。クシャナの登場シーンでは煌びやかな音楽が流れ、格好良さを最後まで貫いた。
もう1人のはまり役はクロトワの片岡亀蔵。叩き上げのしたたかさを持ちつつ、憎めないキャラを体現。クシャナに間者であることを見破られ、「俺ぁ尻尾を出しちまうぜ」と弁天小僧のセリフになるところが見せ場。
ユパの松也は若すぎる感もあったが、まずまずの健闘。
昼の部で、メーヴェの宙乗り(暗転中にすでに空中にいて、花道上を前方から後方へ。ナウシカ菊之助は手を振る程度)や、本水の立ち回り(土鬼の王蟲生成施設)はあったものの、王蟲は基本書割りで、立体像もレリーフのような感じで、空中戦は基本、登場人物が遠くを見ながら口頭で説明するだけなので、いまいち迫力に欠ける。

夜の部は種之助演じる道化が狂言回し。歌舞伎の三枚目っぽく、観客の導き役として十分の働き。
四場が盛りだくさんで、勢揃いから始まり、人物相関図をおさらい。
クシャナの七之助がやはりはまり役。敵対する第三皇子が蟲に滅ぼされ、クロトワを膝枕しながらの子守唄が圧巻。
五場はナウシカの舞。菊之助は左手の怪我を感じさせず、笠や振り鼓を使って踊りきった。
ネットでも話題になっていたが、庭の主の芝のぶが素晴らしい。ヤマトタケルのような耳の横で髪を束ねる出で立ち、低めの声で、得体の知れぬ神秘的な存在を描出し、ナウシカの母に扮して惑わすところとの声の切りかえが凄い。そういえば、昼の部でナウシカ母の回想シーンを演じていたのも芝のぶだった。
巨神兵と墓の主の対決シーンは赤獅子、白獅子の石橋風。それぞれ手下を引き連れて、視覚的にも見せた。

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