「神霊矢口渡」
梅枝初役のお舟。一目惚れするところの純朴な可愛らしさ。太鼓を打つところは、激しさもあり、海老反りなど所作が美しい。すこし前に見た壱太郎と比べると、地に足のついた、現実感のある娘に見えた。
「本朝白雪姫」
玉三郎の白雪姫と、児太郎の母は逆にすべきと誰かが言っていたが、むしろこの配役が正解ど思う。娘の若さや美しさに嫉妬する年増の役を玉三郎がやったら、生々しくて笑えないし、現実離れした白雪姫の美しさは若手には表現しきれないと思う。
玉三郎の白雪姫は、おっとりとした、現実離れした美しさ。カマトトともいえる可憐さを、堂々と演じられる役者は他にはいないと思う。
児太郎は若さが失われる恐れや、娘への嫉妬をヒステリックに表現して笑いを誘う。継母ではなくて、実の母という設定だが、それほど活かされているようには思えなかった。単に継母のほうがスッキリする。梅枝の鏡の精はクールな様子。王子様のキスはなくて、みんなで毒リンゴを食べて吐き出したら白雪姫も生き返る。
7人の小人たちが子役で、子どもたちに囲まれた玉様が楽しそう。
2019年12月27日金曜日
2019年12月25日水曜日
12月25日 十二月大歌舞伎 昼の部
「たぬき」
大佛次郎作の新歌舞伎。急死して葬式まで出した男が、実は生きていて、新たな人生を生き直す。落語のような筋だが、あまり面白くない。
中車演じる金次郎は、家付きの妻と折り合いが悪く、妾(児太郎)と暮らそうとするものの、妾には愛人がいることが分かり、金だけ取って姿をくらます。だったら、もう関係のないところで生きてりゃいいものを、わざわざ馴染みのちゃやに繰り出したり、妾や本妻の住むあたりに繰り出したりと、何をしたいのやら。最後、子どもに正体を見破られ、家に帰る決心をするというのも、すんなり受け入れられるとも思えず。
児太郎は蓮っ葉な言葉遣いが福助を彷彿とさせるが、たまに男がみえてしまった。
「保名」
玉三郎の一人舞台。歌舞伎座のあの空間を一人で支配できるのはさすが。所作の一つ一つが美しく、着物の裾の捌きかたまで計算され尽くして美学を感じた。
清元の国栄太夫が美声。
「阿古屋」
児太郎の阿古屋は初々しさが残るというか、若い印象。三曲の演奏は拙いところもあり、懸命さが感じられた。
大佛次郎作の新歌舞伎。急死して葬式まで出した男が、実は生きていて、新たな人生を生き直す。落語のような筋だが、あまり面白くない。
中車演じる金次郎は、家付きの妻と折り合いが悪く、妾(児太郎)と暮らそうとするものの、妾には愛人がいることが分かり、金だけ取って姿をくらます。だったら、もう関係のないところで生きてりゃいいものを、わざわざ馴染みのちゃやに繰り出したり、妾や本妻の住むあたりに繰り出したりと、何をしたいのやら。最後、子どもに正体を見破られ、家に帰る決心をするというのも、すんなり受け入れられるとも思えず。
児太郎は蓮っ葉な言葉遣いが福助を彷彿とさせるが、たまに男がみえてしまった。
「保名」
玉三郎の一人舞台。歌舞伎座のあの空間を一人で支配できるのはさすが。所作の一つ一つが美しく、着物の裾の捌きかたまで計算され尽くして美学を感じた。
清元の国栄太夫が美声。
「阿古屋」
児太郎の阿古屋は初々しさが残るというか、若い印象。三曲の演奏は拙いところもあり、懸命さが感じられた。
12月24日 新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」
序幕は尾上右近の口上から。腐海や王蟲といった基本ワードが説明されるが、ナウシカを知らない人にどこまで通じるのかとも思った。
暗転から花道に菊之助のナウシカが登場。テトとの出会いはユパを介さず、いきなり「怖くない」の名シーン。茶色がかったボブヘアにナチュラル風メイクなのだが、歌舞伎なのでそれなりにしっかり化粧してるし、少し若作りしているような違和感を感じる。菊之助はプログラムで、ナウシカのことを「おぼこい」と評していたので、ああいう拵えになるのだろうが、一見平凡で内奥に力を秘めている主人公というのは歌舞伎にはあまりなく、正直魅力を感じづらい。
一方の七之助のクシャナは、美貌といい、威厳といい、文句なし。セリフもキレが良く「小気味いい!」。クシャナの登場シーンでは煌びやかな音楽が流れ、格好良さを最後まで貫いた。
もう1人のはまり役はクロトワの片岡亀蔵。叩き上げのしたたかさを持ちつつ、憎めないキャラを体現。クシャナに間者であることを見破られ、「俺ぁ尻尾を出しちまうぜ」と弁天小僧のセリフになるところが見せ場。
ユパの松也は若すぎる感もあったが、まずまずの健闘。
昼の部で、メーヴェの宙乗り(暗転中にすでに空中にいて、花道上を前方から後方へ。ナウシカ菊之助は手を振る程度)や、本水の立ち回り(土鬼の王蟲生成施設)はあったものの、王蟲は基本書割りで、立体像もレリーフのような感じで、空中戦は基本、登場人物が遠くを見ながら口頭で説明するだけなので、いまいち迫力に欠ける。
夜の部は種之助演じる道化が狂言回し。歌舞伎の三枚目っぽく、観客の導き役として十分の働き。
四場が盛りだくさんで、勢揃いから始まり、人物相関図をおさらい。
クシャナの七之助がやはりはまり役。敵対する第三皇子が蟲に滅ぼされ、クロトワを膝枕しながらの子守唄が圧巻。
五場はナウシカの舞。菊之助は左手の怪我を感じさせず、笠や振り鼓を使って踊りきった。
ネットでも話題になっていたが、庭の主の芝のぶが素晴らしい。ヤマトタケルのような耳の横で髪を束ねる出で立ち、低めの声で、得体の知れぬ神秘的な存在を描出し、ナウシカの母に扮して惑わすところとの声の切りかえが凄い。そういえば、昼の部でナウシカ母の回想シーンを演じていたのも芝のぶだった。
巨神兵と墓の主の対決シーンは赤獅子、白獅子の石橋風。それぞれ手下を引き連れて、視覚的にも見せた。
暗転から花道に菊之助のナウシカが登場。テトとの出会いはユパを介さず、いきなり「怖くない」の名シーン。茶色がかったボブヘアにナチュラル風メイクなのだが、歌舞伎なのでそれなりにしっかり化粧してるし、少し若作りしているような違和感を感じる。菊之助はプログラムで、ナウシカのことを「おぼこい」と評していたので、ああいう拵えになるのだろうが、一見平凡で内奥に力を秘めている主人公というのは歌舞伎にはあまりなく、正直魅力を感じづらい。
一方の七之助のクシャナは、美貌といい、威厳といい、文句なし。セリフもキレが良く「小気味いい!」。クシャナの登場シーンでは煌びやかな音楽が流れ、格好良さを最後まで貫いた。
もう1人のはまり役はクロトワの片岡亀蔵。叩き上げのしたたかさを持ちつつ、憎めないキャラを体現。クシャナに間者であることを見破られ、「俺ぁ尻尾を出しちまうぜ」と弁天小僧のセリフになるところが見せ場。
ユパの松也は若すぎる感もあったが、まずまずの健闘。
昼の部で、メーヴェの宙乗り(暗転中にすでに空中にいて、花道上を前方から後方へ。ナウシカ菊之助は手を振る程度)や、本水の立ち回り(土鬼の王蟲生成施設)はあったものの、王蟲は基本書割りで、立体像もレリーフのような感じで、空中戦は基本、登場人物が遠くを見ながら口頭で説明するだけなので、いまいち迫力に欠ける。
夜の部は種之助演じる道化が狂言回し。歌舞伎の三枚目っぽく、観客の導き役として十分の働き。
四場が盛りだくさんで、勢揃いから始まり、人物相関図をおさらい。
クシャナの七之助がやはりはまり役。敵対する第三皇子が蟲に滅ぼされ、クロトワを膝枕しながらの子守唄が圧巻。
五場はナウシカの舞。菊之助は左手の怪我を感じさせず、笠や振り鼓を使って踊りきった。
ネットでも話題になっていたが、庭の主の芝のぶが素晴らしい。ヤマトタケルのような耳の横で髪を束ねる出で立ち、低めの声で、得体の知れぬ神秘的な存在を描出し、ナウシカの母に扮して惑わすところとの声の切りかえが凄い。そういえば、昼の部でナウシカ母の回想シーンを演じていたのも芝のぶだった。
巨神兵と墓の主の対決シーンは赤獅子、白獅子の石橋風。それぞれ手下を引き連れて、視覚的にも見せた。
2019年12月24日火曜日
2019年12月23日月曜日
1222 Zzsystem 「蒲田行進曲」
はじめはイジメみたいな言動に引いてしまったが、最後には持っていかれてしまった。情けなく、自虐的で、裏目裏目に行動する安は哀れだけど、本人は絶望してない。長橋遼也は絶妙に演じていた。
銀四郎は、メチャクチャなことを言うけれど、どこかに愛嬌がないと人はついてこない。今時、アニキが黒といったら白いものも黒、みたいな価値観は流行らないけれど、つかの描いた世界はそうだからなあ…。佐々木誠はハンサムだけど、単なる嫌な奴に留まってしまった感。だから、前半観ているのがきつかったのだと思う。
銀四郎のライバル橘役の萬谷真之は劇中劇坂本龍馬を演じている時はすごく格好よかったのに、カーテンコールでは案外小柄でびつくりした。
銀四郎は、メチャクチャなことを言うけれど、どこかに愛嬌がないと人はついてこない。今時、アニキが黒といったら白いものも黒、みたいな価値観は流行らないけれど、つかの描いた世界はそうだからなあ…。佐々木誠はハンサムだけど、単なる嫌な奴に留まってしまった感。だから、前半観ているのがきつかったのだと思う。
銀四郎のライバル橘役の萬谷真之は劇中劇坂本龍馬を演じている時はすごく格好よかったのに、カーテンコールでは案外小柄でびつくりした。
1222 東京バレエ団×京都市交響楽団「くるみ割り人形」
王道のくるみを期待したのだが、ある意味期待通りであり、ある意味期待はずれだった。色々突っ込みどころがあったのが期待はずれなところで、期待通りだったのはダンサーのテクニックの確かさ。
マーシャ(カッコ書きでクララとある)の川島麻実子は、細っそり楚々とした美人だが、少女らしくはない。くるみ割り人形・王子(柄本弾)のパドドゥは、テクニックは申し分ないのだが、くるみというより、ジゼルを見ているような気分だった。
マーシャの母親が女王陛下のように高貴だったり、役作りであれ?と思うところが散見され、少年たちを女性ダンサーが演じていたのも物足りない。
ドロッセルマイヤーがあちこちから出現したり、空っぽの箱の中から踊る人形を出したりと手品師のよう。黄色のタキシード?も不思議感を高める。
くるみ割人形は早々に王子の姿をあらわすのだが、ネズミの王様に倒されそうになってマーシャのスリッパに助けられる。人形のままなら、人形に変えられていて力が出なかったという言い訳がたつけど…。
人形の国では、ビビットなピンクを基調とした背景に対して花のワルツの衣装が青みがかったペールグレーで色彩がなく、幸福感に欠けたのが惜しい。
くるみらしさ、ファンタジーとか、メルヘン感という点では、貞松浜田バレエ団に軍配を上げたいと思った。
満足度が高かったのは、主役2人の踊り。特に柄本は回転の軸が安定していて、美しい跳躍。リフトで、川島の足の間に片手を入れて真上に掲げるのはええ!?と思ったけど、尾骶骨を支えているのかしら。
マーシャ(カッコ書きでクララとある)の川島麻実子は、細っそり楚々とした美人だが、少女らしくはない。くるみ割り人形・王子(柄本弾)のパドドゥは、テクニックは申し分ないのだが、くるみというより、ジゼルを見ているような気分だった。
マーシャの母親が女王陛下のように高貴だったり、役作りであれ?と思うところが散見され、少年たちを女性ダンサーが演じていたのも物足りない。
ドロッセルマイヤーがあちこちから出現したり、空っぽの箱の中から踊る人形を出したりと手品師のよう。黄色のタキシード?も不思議感を高める。
くるみ割人形は早々に王子の姿をあらわすのだが、ネズミの王様に倒されそうになってマーシャのスリッパに助けられる。人形のままなら、人形に変えられていて力が出なかったという言い訳がたつけど…。
人形の国では、ビビットなピンクを基調とした背景に対して花のワルツの衣装が青みがかったペールグレーで色彩がなく、幸福感に欠けたのが惜しい。
くるみらしさ、ファンタジーとか、メルヘン感という点では、貞松浜田バレエ団に軍配を上げたいと思った。
満足度が高かったのは、主役2人の踊り。特に柄本は回転の軸が安定していて、美しい跳躍。リフトで、川島の足の間に片手を入れて真上に掲げるのはええ!?と思ったけど、尾骶骨を支えているのかしら。
2019年12月22日日曜日
1221 地点「正面に気をつけろ」
ブレヒトの「ファッツァー」の翻案だそうで、写真で見た地点のファッツァーと似た演出のよう。
舞台上の照明には小さな日の丸が無数に飾ってあり、「耐え難きを耐え」とか、君が代とか、日本に置き換えている。役者たちは皆死んだ者で、ピストル自殺のように指をこめかみに突きつける仕草を繰り返す。客席との間に川のような溝があり、役者がこちらへ踏み出すと入店時のチャイムのような音が鳴る。だるまさんがころんだや、指名されたものが会話をつなぐゲームをしているようにセリフが展開。「支配する者、される者」や戦争の悲惨さを訴える反戦のメッセージ、津波や地震による被害など、地点にしては主張が明快に感じた。
ドラム、ギター、ベースの生演奏は迫力があり、ライブのよう。
舞台上の照明には小さな日の丸が無数に飾ってあり、「耐え難きを耐え」とか、君が代とか、日本に置き換えている。役者たちは皆死んだ者で、ピストル自殺のように指をこめかみに突きつける仕草を繰り返す。客席との間に川のような溝があり、役者がこちらへ踏み出すと入店時のチャイムのような音が鳴る。だるまさんがころんだや、指名されたものが会話をつなぐゲームをしているようにセリフが展開。「支配する者、される者」や戦争の悲惨さを訴える反戦のメッセージ、津波や地震による被害など、地点にしては主張が明快に感じた。
ドラム、ギター、ベースの生演奏は迫力があり、ライブのよう。
2019年12月21日土曜日
1220 Z system 「広島に原爆を落とす日」
膨大なセリフが会場に充満するような、熱量の高い舞台だった。
うえだひろしのディープ山崎は期待とは違ったけれど、達者な役者らしくセリフに力があり、観客の耳に届く。夏枝への熱い想い、プライドと卑屈さが交錯する複雑な人物像を魅力的に造形した。夏枝役の笠松遥未は清廉な印象で、セリフが明瞭。ディープの熱と対象に、静かな語りが際立った。白い衣装がよく似合い、痩せ過ぎていないのもいい。
土人のくだりとか、男尊女卑的セリフとか、時代とはいえ、そのまま上演されると引っかかってしまう。
うえだひろしのディープ山崎は期待とは違ったけれど、達者な役者らしくセリフに力があり、観客の耳に届く。夏枝への熱い想い、プライドと卑屈さが交錯する複雑な人物像を魅力的に造形した。夏枝役の笠松遥未は清廉な印象で、セリフが明瞭。ディープの熱と対象に、静かな語りが際立った。白い衣装がよく似合い、痩せ過ぎていないのもいい。
土人のくだりとか、男尊女卑的セリフとか、時代とはいえ、そのまま上演されると引っかかってしまう。
1221 貞松浜田バレエ団「くるみ割り人形 お菓子の国バージョン」
初のお菓子の国。お菓子の国でイチゴやオレンジ、ぶどうなどのフルーツが出てきたり、各国のダンスがチョコレート(スペイン)、コーヒー(アラビア)、お茶(中国)となっていたりと、カラフルでキュート。花のワルツは花の王と女王を中心に、色調の異なるピンクの衣装のダンサーたちのダンスが幸福感満載。
貞松バレエ団の見どころである雪のワルツはちょつと控えめながら、スピード感のある群舞で、多彩なフォーメーションが美しい。
クララの上山榛名はピュアな感じで役に無理がない。大技はあまりなかったようだけど、ミスのない端的な踊り。くるみ割り人形の水城卓哉はクララを高く掲げたまま舞台を横切ったりと、負荷の高そうなリフトを多くこなしていた。金平糖のグランパドドゥのソロでは、息切れしたのか回転でふらついたところもあったが、誠実な踊りで好感が持てた。
貞松バレエ団の見どころである雪のワルツはちょつと控えめながら、スピード感のある群舞で、多彩なフォーメーションが美しい。
クララの上山榛名はピュアな感じで役に無理がない。大技はあまりなかったようだけど、ミスのない端的な踊り。くるみ割り人形の水城卓哉はクララを高く掲げたまま舞台を横切ったりと、負荷の高そうなリフトを多くこなしていた。金平糖のグランパドドゥのソロでは、息切れしたのか回転でふらついたところもあったが、誠実な踊りで好感が持てた。
1220 トリコ・A「ここからは遠い国」
現代演劇レトロスペクティブで、岩崎正裕脚本、太陽族で1996年に初演した作品。地下鉄サリン事件の翌年だったら、もっと生々しかったのだろうが、30年以上経った今ではもはや遠い。
暗転して始まった舞台は、ボソボソと話すセリフが聞きとりづらく、集中力を要求される。中央に砂が盛られた、抽象的な装置で、後方の壁の向こう側が透けて見え、家族が料理をしたり、傘をさして出かけるのが見える。暗転が多用され、家族とのやりとりと並行して死んだはずの母親が出てきたり、仲間の男が現れたり、主人公の夢か、過去の現実か、混沌とした感じ。
公安の男の高杉征司が不気味な雰囲気。
大学で演劇をやっているという妹たちを通じて、シェイクスピアやチェーホフが引用される。演劇の力をうたっているのだが、演劇で世界は変えられないのではないかなあ。現実を打破したいといいながら、地道に働いたり、政治を志したりすることを馬鹿にする主人公に、演劇がどれほど作用できるのか。最後、妹に作ってもらったタスキをかけて、街頭演説に行くらしき主人公は、なにを語るのか。脳梗塞たか脳溢血だかで倒れて身体が不自由になり、頼みにしていたバイトに逃げられた父親が哀れだが、そうは描いておらず、どこか前向きなラストに救われたような気がした。
暗転して始まった舞台は、ボソボソと話すセリフが聞きとりづらく、集中力を要求される。中央に砂が盛られた、抽象的な装置で、後方の壁の向こう側が透けて見え、家族が料理をしたり、傘をさして出かけるのが見える。暗転が多用され、家族とのやりとりと並行して死んだはずの母親が出てきたり、仲間の男が現れたり、主人公の夢か、過去の現実か、混沌とした感じ。
公安の男の高杉征司が不気味な雰囲気。
大学で演劇をやっているという妹たちを通じて、シェイクスピアやチェーホフが引用される。演劇の力をうたっているのだが、演劇で世界は変えられないのではないかなあ。現実を打破したいといいながら、地道に働いたり、政治を志したりすることを馬鹿にする主人公に、演劇がどれほど作用できるのか。最後、妹に作ってもらったタスキをかけて、街頭演説に行くらしき主人公は、なにを語るのか。脳梗塞たか脳溢血だかで倒れて身体が不自由になり、頼みにしていたバイトに逃げられた父親が哀れだが、そうは描いておらず、どこか前向きなラストに救われたような気がした。
2019年12月19日木曜日
1219 inseparable「変半身」
ゲノム編集が当たり前になった未来の日本の辺境の島が舞台。島では希少なゲノムが採取され、密猟者を取り締まっている。生殖は免許制になっており、自由なセックスは違法になった世界。SFと終末思想が入り混じり、国造りの神話も絡まって混沌とした世界観。本土の会社から派遣された管理職、安蘭けいが鬼教官みたいであり、女王のようであり。大鶴美仁音が若々しく生命力に溢れた島の娘役を好演。
2019年12月16日月曜日
1215 金剛定期能
「大社」
十月に八百万の神が集まる出雲が舞台、ワキ(帝の廷臣)の福王知登が供を連れて参詣する。現れた前シテ(豊嶋弥左衛門)は翁の面をかけ、ツレの宮人は直面。ひとくさり舞ったのち、つくりものに籠る。
アイは千五郎。面をかけてもよく通る声。舞も堂々として立派。
後場は、天女、大神(後シテ)、龍神が次々と舞う。龍神は金色の箱を持って現れ、中から小さい龍神が出てくるのがかわいい。
「腰祈」
腰折かと思ったら、祈だった。
千五郎の伯父、忠三郎の山伏、茂の太郎冠者。
千五郎は腰が曲がった老人の歩みが滑稽で、橋掛りをでてくるところから笑いが起こる。「何じゃ!?」の言い方が千作を彷彿とさせる。
「雪」
静かな舞。少しクリームがかった装束に淡いグレーに見える浅葱の袴、雪の小面は時に微笑み、憂いを帯びて見える。雪の静けさを表現するため、足踏みも音をさせないというのに、後見の足が覚束なくて物音をさせていたのが残念。
十月に八百万の神が集まる出雲が舞台、ワキ(帝の廷臣)の福王知登が供を連れて参詣する。現れた前シテ(豊嶋弥左衛門)は翁の面をかけ、ツレの宮人は直面。ひとくさり舞ったのち、つくりものに籠る。
アイは千五郎。面をかけてもよく通る声。舞も堂々として立派。
後場は、天女、大神(後シテ)、龍神が次々と舞う。龍神は金色の箱を持って現れ、中から小さい龍神が出てくるのがかわいい。
「腰祈」
腰折かと思ったら、祈だった。
千五郎の伯父、忠三郎の山伏、茂の太郎冠者。
千五郎は腰が曲がった老人の歩みが滑稽で、橋掛りをでてくるところから笑いが起こる。「何じゃ!?」の言い方が千作を彷彿とさせる。
「雪」
静かな舞。少しクリームがかった装束に淡いグレーに見える浅葱の袴、雪の小面は時に微笑み、憂いを帯びて見える。雪の静けさを表現するため、足踏みも音をさせないというのに、後見の足が覚束なくて物音をさせていたのが残念。
2019年12月15日日曜日
1214 南船北馬「これからの町」
3年前に行方不明になった妻と暮らしていた部屋をそのままにしている男、妹の荷物を引き取って過去のけじめをつけたい義姉、ほかに彼女のいる男と死に場所を探す若い女、若い女に引き摺られ同居する彼女には家を出られた男、煮え切らない男を見限り再スタートしようとしている女、しょうもない弟に手を焼いている姉。直接関係はなくても、どこかつながっている6人の男女をめぐるやり取りがオムニバスのように連なる。
静かに語られるセリフは自然で、すぐそこにいそうな登場人物たち。だが、今ひとつ入り込めなかった。チャラ男の姉が関係する女たちに予言めいた言葉告げるのが不明だったり、訳知り顔の若い女が不快だったりしたからか。
義姉、史歩役の高橋映美子は憂いを帯びた声がよく、セリフに説得力がある。チャラ男を見限った絢奈役の桂ゆめは凛として美しい。
静かに語られるセリフは自然で、すぐそこにいそうな登場人物たち。だが、今ひとつ入り込めなかった。チャラ男の姉が関係する女たちに予言めいた言葉告げるのが不明だったり、訳知り顔の若い女が不快だったりしたからか。
義姉、史歩役の高橋映美子は憂いを帯びた声がよく、セリフに説得力がある。チャラ男を見限った絢奈役の桂ゆめは凛として美しい。
1214 逸青会
「橋弁慶」
素踊りで鷹之資の義経、菊之丞の弁慶。
菊之丞は槍を振り回しての立ち回り。力強いというより、華麗で流れるよう。弁慶にしては線が細いようにも感じた。
鷹之資は上手いのだが、華がないのは何故かしらと考えた。今どきのイケメンではないけれど、ちょっと痩せたのか顔立ちに精悍さが出てきた。小顔でなく、老け顔だから?
「鈍太郎」
逸平の鈍太郎、下京の女に島田洋海、上京の女の子に茂。体調悪く、途中でウトウトしてしまったのもあって、笑えなかった。島田のヤキモチ焼きの本妻を嫌味なく。
「影武者」
信長の影武者に逸平、光秀とお濃に菊之丞。討ち取った武田勝頼の首にビビったり、骸骨の酒器に悲鳴をあげるヘタレっぷりが笑いを誘う。舞の稽古でしっかり見せ、武将たちのあだ名や子供の名前、「~しろ」縛りの謎かけなど知的な遊びゴコロ。影武者の最終試験として、お濃と一晩過ごすニセ信長。殿に甘えるお濃に色気があり、キスシーンやほおを擦りよせたり。
最後は他所へ行っていたはずの信長が急に帰り、慌てる光秀…と思ったら、影武者の仕返しだったというオチ。
素踊りで鷹之資の義経、菊之丞の弁慶。
菊之丞は槍を振り回しての立ち回り。力強いというより、華麗で流れるよう。弁慶にしては線が細いようにも感じた。
鷹之資は上手いのだが、華がないのは何故かしらと考えた。今どきのイケメンではないけれど、ちょっと痩せたのか顔立ちに精悍さが出てきた。小顔でなく、老け顔だから?
「鈍太郎」
逸平の鈍太郎、下京の女に島田洋海、上京の女の子に茂。体調悪く、途中でウトウトしてしまったのもあって、笑えなかった。島田のヤキモチ焼きの本妻を嫌味なく。
「影武者」
信長の影武者に逸平、光秀とお濃に菊之丞。討ち取った武田勝頼の首にビビったり、骸骨の酒器に悲鳴をあげるヘタレっぷりが笑いを誘う。舞の稽古でしっかり見せ、武将たちのあだ名や子供の名前、「~しろ」縛りの謎かけなど知的な遊びゴコロ。影武者の最終試験として、お濃と一晩過ごすニセ信長。殿に甘えるお濃に色気があり、キスシーンやほおを擦りよせたり。
最後は他所へ行っていたはずの信長が急に帰り、慌てる光秀…と思ったら、影武者の仕返しだったというオチ。
2019年12月14日土曜日
1213 燐光群「憲法くん」
1946年5月3日生まれの憲法(かずのり)くんが、リストラされそうになり、存在意義を確かめていく。同性婚や寡婦控除、死刑制度や自衛隊の海外派遣、沖縄の米軍基地、武器輸出といった時事問題を、憲法問題と絡めてショートドラマで次々と見せる。難民の拘留など、憲法問題?というものもあったが、概ね理解できる主張で、ライトに面白く描いたので楽しめた。
史上最悪の総理大臣とか、政権交代して桜を見る会が本来の姿に戻って存続したりと、現政権への批判たっぷり。
理念は最高水準だが、国民の腑に落ちていないので十分に活用されていないというのはまさにその通りで、基本的人権の尊重がうたわれているのに、まだまだ男女差別は根強いし、ちっとも男女平等じゃない。今の憲法は現実にそぐわないとしても、理想に現実を近づける努力をすべきなのだというメッセージを明確に訴えた。
史上最悪の総理大臣とか、政権交代して桜を見る会が本来の姿に戻って存続したりと、現政権への批判たっぷり。
理念は最高水準だが、国民の腑に落ちていないので十分に活用されていないというのはまさにその通りで、基本的人権の尊重がうたわれているのに、まだまだ男女差別は根強いし、ちっとも男女平等じゃない。今の憲法は現実にそぐわないとしても、理想に現実を近づける努力をすべきなのだというメッセージを明確に訴えた。
2019年12月13日金曜日
1212 ジョーン・ジョナス 京都賞受賞記念 パフォーマンス 「Reanimation」
映像とジェイソン・モランのピアノ生演奏、パフォーマンスが融合。
紙衣のような張りのある衣装のジョナスは舞台を移動しながら、絵を描いたり、平台の上で何かを作る様子をプロジェクターを通して見せたり、民族楽器のような楽器を奏でたり。アドリブっぽい動きに見えるが、綿密に打ちあわせられているそう。即興のようなピアノ演奏が、最後ブツリと切れたように感じたが、それも計画内らしい。
紙衣のような張りのある衣装のジョナスは舞台を移動しながら、絵を描いたり、平台の上で何かを作る様子をプロジェクターを通して見せたり、民族楽器のような楽器を奏でたり。アドリブっぽい動きに見えるが、綿密に打ちあわせられているそう。即興のようなピアノ演奏が、最後ブツリと切れたように感じたが、それも計画内らしい。
12月12日 吉例顔見世興行 昼の部
「輝虎配膳」
秀太郎の越路は所作が美しくて品格があり、心情描写が丁寧。配膳係として出てきた輝虎に気づかぬふりでの嫌味、御膳をひっくり返す激しさ、花道の引っ込みで一瞬見せる申し訳なさげな表情…。ところで越路が、もらった着物を古着というところで笑いが起こるのってどういう訳で?
笑いは輝虎が怒って着物を次々脱ぐところでも。まあ、何でこんなに着込んでるの?というのはあるけど、愛之助は前回よりはスムーズに脱いでいたのに笑いから逃れられず気の毒。
直江妻唐衣の壱太郎が凛とした美しさ
隼人の直江はシュッとしてる。雀右衛門は勘助妻お勝。
「戻駕色相肩」
梅玉が浪花の次郎実は石川五右衛門、時蔵が吾妻の与四郎実は真柴久吉。劇中で梅丸改め莟玉の襲名披露口上。莟玉の禿が可憐。
「金閣寺」
壱太郎の雪姫がよかった。おっとりとした品の中に芯の強さがあり、人妻らしい落ち着きが感じられた。三姫とはいっても、他の姫とは違うわけで。義太夫に乗ったセリフが急ぎ過ぎず、耳に心地よかった。引き立てられる直信の芝翫と再会したところでは、アイコンタクトをたっぷりし、夫婦の信頼を見せた。
鴈治郎の松永は不足なく。扇雀の此下東吉は武者姿が桃太郎のよう。直信の芝翫はセリフが煩いかも。藤十郎が慶寿院で、短い出番ながら元気な姿。ただ、助けに来た東吉と座ったまま二階でやり取りするのみで、逃げるところは省略してた。
「仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場」
誰がやってもある程度は面白い出し物だと思っていたのだが、仁左衛門の由良之助は想像を超えていた。遊興に惚けたフリをしているところと、素に返るところの切り替えが丁寧だし、お軽とのやり取りも心理描写が克明。
お軽の孝太郎は、二階の場面のセリフが玉三郎を彷彿とさせ、遊女らしいぼんじゃりとした色気があった。平右衛門とのやり取りはいつものこうたろうだったけど。
残念なのは芝翫の平右衛門。ガチャガチャとがなりたてるように喋るので、セリフがちっともアタマに入ってこない。
千之助の力弥はまだまだかな。身のこなしが武士らしくないというか、腰が座ってない感じがした。染五郎の力弥の方が良かったかも。
進之介が赤垣源蔵で久しぶりに姿を見た気がする。
秀太郎の越路は所作が美しくて品格があり、心情描写が丁寧。配膳係として出てきた輝虎に気づかぬふりでの嫌味、御膳をひっくり返す激しさ、花道の引っ込みで一瞬見せる申し訳なさげな表情…。ところで越路が、もらった着物を古着というところで笑いが起こるのってどういう訳で?
笑いは輝虎が怒って着物を次々脱ぐところでも。まあ、何でこんなに着込んでるの?というのはあるけど、愛之助は前回よりはスムーズに脱いでいたのに笑いから逃れられず気の毒。
直江妻唐衣の壱太郎が凛とした美しさ
隼人の直江はシュッとしてる。雀右衛門は勘助妻お勝。
「戻駕色相肩」
梅玉が浪花の次郎実は石川五右衛門、時蔵が吾妻の与四郎実は真柴久吉。劇中で梅丸改め莟玉の襲名披露口上。莟玉の禿が可憐。
「金閣寺」
壱太郎の雪姫がよかった。おっとりとした品の中に芯の強さがあり、人妻らしい落ち着きが感じられた。三姫とはいっても、他の姫とは違うわけで。義太夫に乗ったセリフが急ぎ過ぎず、耳に心地よかった。引き立てられる直信の芝翫と再会したところでは、アイコンタクトをたっぷりし、夫婦の信頼を見せた。
鴈治郎の松永は不足なく。扇雀の此下東吉は武者姿が桃太郎のよう。直信の芝翫はセリフが煩いかも。藤十郎が慶寿院で、短い出番ながら元気な姿。ただ、助けに来た東吉と座ったまま二階でやり取りするのみで、逃げるところは省略してた。
「仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場」
誰がやってもある程度は面白い出し物だと思っていたのだが、仁左衛門の由良之助は想像を超えていた。遊興に惚けたフリをしているところと、素に返るところの切り替えが丁寧だし、お軽とのやり取りも心理描写が克明。
お軽の孝太郎は、二階の場面のセリフが玉三郎を彷彿とさせ、遊女らしいぼんじゃりとした色気があった。平右衛門とのやり取りはいつものこうたろうだったけど。
残念なのは芝翫の平右衛門。ガチャガチャとがなりたてるように喋るので、セリフがちっともアタマに入ってこない。
千之助の力弥はまだまだかな。身のこなしが武士らしくないというか、腰が座ってない感じがした。染五郎の力弥の方が良かったかも。
進之介が赤垣源蔵で久しぶりに姿を見た気がする。
2019年12月12日木曜日
1211 お寿司 ボロレスコ「菠薐心中(ハローしんじゅう)」
曽根崎心中がモチーフというので興味を持ったのだが、脈絡なく重なる会話や関係性の不明な登場人物に困惑して、作品の意図か全く分からなかった。徳島という社員が、社外の(パンフによると親会社の人)大阪の機嫌を損ねた責任を取らされて首になるのだが、何が原因かは最後まで明かされない。徳島は何も喋らず、動きもぎこちなく、後半は黒衣に操られ、作り物の手や足がぎこちない。人形振りのようなうごきや、上手に座った役者が代わりにセリフをかたるなど、文楽をモチーフにしたのは分かったけれど、不条理劇のようで、訳が分からんかった。
アフタートークで山口茜が聞き出したところによると、「曽根崎心中」の徳兵衛が、人がいい故に不幸を重ねて転落していく様を描いたとか。動ける役者やダンサーを無駄遣いしたのは、スキルのある人だけではない演劇にしたかったということだったが。
アフタートークで山口茜が聞き出したところによると、「曽根崎心中」の徳兵衛が、人がいい故に不幸を重ねて転落していく様を描いたとか。動ける役者やダンサーを無駄遣いしたのは、スキルのある人だけではない演劇にしたかったということだったが。
2019年12月10日火曜日
1209 ミュージカル「ファントム」
クリスティーナは愛希れいか。歌が鍵となる役だが、高音域の発声が宝塚時代より格段に安定していて、聞き入った。登場シーンでは、地声と裏声の切り替えが雑に感じられるところもあったが、レッスンを受けて成長した歌唱との違いを演じ分けていたのだとしたら大したものだ。
エリックの城田優は役の造形に共感できなかった。幼稚というか、適応障害のようで、癇癪を起こすところなど図体の大きい子供が駄々をこねているよう。エリックは世間から隔離されて純粋であっても、歌の指導ができるくらいにはものを知っていて、知性的なはず。クリスティーナへのレッスンでは、片や「バババ~♩」、片や「マママ~♩」と謳っていて、どちらが正解なのか。
エリックの城田優は役の造形に共感できなかった。幼稚というか、適応障害のようで、癇癪を起こすところなど図体の大きい子供が駄々をこねているよう。エリックは世間から隔離されて純粋であっても、歌の指導ができるくらいにはものを知っていて、知性的なはず。クリスティーナへのレッスンでは、片や「バババ~♩」、片や「マママ~♩」と謳っていて、どちらが正解なのか。
2019年12月9日月曜日
12月9日 文楽鑑賞教室 Bプロ
「伊達娘恋緋鹿子 火の見櫓の段」
希のお七に咲寿のお杉、亘の武兵衛、碩の弥作・太左衛門、三味線は団吾、清丈、寛太郎、錦吾、清允。
若手会のようなガチャガチャした印象。希は音程が不安定だし、咲寿は棒読み。三味線も、団吾は一人でロックしてるし、不揃い。
人形は紋秀のお七、勘次郎のお杉、玉彦の武兵衛、玉路の弥作、玉延の太左衛門。紋秀の女形は珍しいが、セリフに合わせて動きすぎでは。他はまるで若手会。最後にお杉らが出てくるのが、ミニ公演と違うところだが、いきなり出られても誰ですか?って感じ。
解説は靖、友之助、玉翔。
靖はお七の「ヤアあの鐘は早や九つ」で娘、婆、武将の語り分け。まばらな拍手に「簡単にできそうに思うかもしれないが、声の高さ、話す速度など決まりがある」と。友之助はいつもの、待ち合わせに駆け寄る男を、イケメン、大男で弾き分け。「プロレスラーや相撲取り、ラグビーワールドカップ選手のような」と例えて、「ワンチーム」と一言。やや受け。忠臣蔵裏門では、太夫、三味線が一緒になって、地の文の勘平の爺バージョン、お軽のセリフの婆バージョンではかしゅをもらっていた。玉翔はやや早口で、ちゃっちゃと済まそうとしてないか?
「平家女護島」
藤・清介。冒頭の謡がかりは少々軽いように思ったが、声はよく出ているし…と思っていたら、千鳥でズッコケた。なんというか、ニューハーフが無理に可愛くしようとしてるみたいで、気持ち悪い。瀬尾の恫喝もちょっと唐突に感じた。
人形は勘十郎の千鳥に期待してたのだが、なんというか、チャキチャキの町娘みたいに垢抜けてて、田舎娘の純朴さが感じられなかった。短い公演で集中力が残ってたので、俊寛の玉男が玉輝に蹴りを入れるところもしっかり見た。
希のお七に咲寿のお杉、亘の武兵衛、碩の弥作・太左衛門、三味線は団吾、清丈、寛太郎、錦吾、清允。
若手会のようなガチャガチャした印象。希は音程が不安定だし、咲寿は棒読み。三味線も、団吾は一人でロックしてるし、不揃い。
人形は紋秀のお七、勘次郎のお杉、玉彦の武兵衛、玉路の弥作、玉延の太左衛門。紋秀の女形は珍しいが、セリフに合わせて動きすぎでは。他はまるで若手会。最後にお杉らが出てくるのが、ミニ公演と違うところだが、いきなり出られても誰ですか?って感じ。
解説は靖、友之助、玉翔。
靖はお七の「ヤアあの鐘は早や九つ」で娘、婆、武将の語り分け。まばらな拍手に「簡単にできそうに思うかもしれないが、声の高さ、話す速度など決まりがある」と。友之助はいつもの、待ち合わせに駆け寄る男を、イケメン、大男で弾き分け。「プロレスラーや相撲取り、ラグビーワールドカップ選手のような」と例えて、「ワンチーム」と一言。やや受け。忠臣蔵裏門では、太夫、三味線が一緒になって、地の文の勘平の爺バージョン、お軽のセリフの婆バージョンではかしゅをもらっていた。玉翔はやや早口で、ちゃっちゃと済まそうとしてないか?
「平家女護島」
藤・清介。冒頭の謡がかりは少々軽いように思ったが、声はよく出ているし…と思っていたら、千鳥でズッコケた。なんというか、ニューハーフが無理に可愛くしようとしてるみたいで、気持ち悪い。瀬尾の恫喝もちょっと唐突に感じた。
人形は勘十郎の千鳥に期待してたのだが、なんというか、チャキチャキの町娘みたいに垢抜けてて、田舎娘の純朴さが感じられなかった。短い公演で集中力が残ってたので、俊寛の玉男が玉輝に蹴りを入れるところもしっかり見た。
1208 宝生会 月並能
「頼政」
辰巳満次郎のシテ、ワキは殿田謙吉、間は内藤連。
武将らしい格式、重みが感じられ、見応えのある舞台。鬘桶に腰掛けての動きも武張った感じで、立ち上がっての舞から自刃する最期まで武士が立ち現れた。
大倉源次郎の小鼓の所作の美しさ。大鼓とシンメトリーのように動作がそろう。冴えた音色に聞き入った。
辰巳満次郎のシテ、ワキは殿田謙吉、間は内藤連。
武将らしい格式、重みが感じられ、見応えのある舞台。鬘桶に腰掛けての動きも武張った感じで、立ち上がっての舞から自刃する最期まで武士が立ち現れた。
大倉源次郎の小鼓の所作の美しさ。大鼓とシンメトリーのように動作がそろう。冴えた音色に聞き入った。
2019年12月7日土曜日
1207 木ノ下歌舞伎「娘道成寺」
紅白幕を床面に敷いた舞台へ、上手奥からきたまりがゆっくりと歩みを進める。白いワンピースの上に緋色の薄衣をまとい、頭には頭巾。顔の見えないまましばらく頭を傾げたりしていたが、パッと頭巾を払うのが鮮やか。頭巾と思ったものは肩から背中に垂らすデザイン。真ん中分けの前髪で紅白の水引のような髪飾りでまとめた姿は、娘というより稚児のよう。無表情で踊るのは能面のようでも。
鞠つきの代わりにきた自身が鞠のように跳ねたり、静と動、緩急がはっきりしていて、眼が覚めるよう。赤い衣を脱ぎ捨て、下手から上手に駆け抜けるときに赤い布が帯状に舞台を横断したり、鐘入りのようにパッと幕の後ろに飛び込んだり。蛇の狡猾さ、邪念が怖いよう。
パンフレットの木ノ下の解説が親切。
鞠つきの代わりにきた自身が鞠のように跳ねたり、静と動、緩急がはっきりしていて、眼が覚めるよう。赤い衣を脱ぎ捨て、下手から上手に駆け抜けるときに赤い布が帯状に舞台を横断したり、鐘入りのようにパッと幕の後ろに飛び込んだり。蛇の狡猾さ、邪念が怖いよう。
パンフレットの木ノ下の解説が親切。
2019年12月6日金曜日
1206 SENDAI座「十二人の怒れる男」
何度か見ている話なのに、緊張感が途切れることなく2時間引き込まれた。この戯曲を面白くするカギは、息子と容疑者を重ねてしまう3号(渡部ギュウ)と、人種差別発言を繰り返す10号(飯沼由和)で、2人は嫌な奴ぶりを存分な描出した。10号の「あいつらを放っておいたらやられる」というセリフは、トランプ支持者のようで、妙に現代性があった。
2019年12月5日木曜日
1205 いちびり一家+南河内万歳一座「デタラメカニズム」
没落したらしき洋館の中はダンポールがうず高く積まれ、引っ越し業者が荷物を運び出そうとしている。すでに屋敷を出たこの家の長女とその娘2人、長男とその息子2人が現れ、資産を巡って言い争いを始めたところへ、老婦人の最後を看取った家政婦が現れ、金庫の所有を主張する。開かない金庫を巡る思惑が入り乱れ、勝手な主張を繰り広げる登場人物達が、内藤らしいユーモアで描かれる。いちびり一家のミュージカル要素を取り入れ、歌や踊りが楽しい。長女役一家のまとう花柄のワンピースやフリル、金ラメが一昔前のハイソ感を醸し出す。正確に何と言ったかは忘れたが、「末っ子の長男はしょうもない」とは名言?家政婦役の和田亜弓が、歌良し、踊り良し。
2019年12月2日月曜日
12月2日 吉例顔見世興行 夜の部
「堀川波の鼓」
仁左衛門の希望した演目とのことだが、ピンとこなかった。あまりにも現代的すぎるのか、夫の留守中に不義を犯した妻という題材に共感できない。お種の時蔵は酔った勢いで不義を犯してしまう女の様子を上手く表していたが、何食わぬ顔で夫を迎えたり、夫に言いよる妹に逆上したりと、反省しているように見えないし、お腹の子をどうするつもりなの?妹のお藤(壱太郎)もお藤で、姉の命を救うために義兄に離縁を迫るのはいいとして、その前になぜ姉に話さない?
酒に酔った勢いでよろめく人妻に手を出してしまう、一見真面目そうな鼓の師匠というベタな役に梅玉が妙にはまってた。
「釣女」
隼人の主人に愛之助の太郎冠者。梅丸改め莟玉の美女が可憐。醜女の鴈治郎はメイクがちょっとやり過ぎに感じたが、太郎冠者を突いたり、戯れていろいろ仕掛けてたのが、息の合った様子で面白い。4人で舞うところで太郎冠者が「莟玉さんおめでとう」と襲名をお祝い。
「魚屋宗五郎」
芝翫の宗五郎はセリフが一本調子でしんどい。鴈治郎のお殿様が、前幕と打って変わって、大らかでいい。
仁左衛門の希望した演目とのことだが、ピンとこなかった。あまりにも現代的すぎるのか、夫の留守中に不義を犯した妻という題材に共感できない。お種の時蔵は酔った勢いで不義を犯してしまう女の様子を上手く表していたが、何食わぬ顔で夫を迎えたり、夫に言いよる妹に逆上したりと、反省しているように見えないし、お腹の子をどうするつもりなの?妹のお藤(壱太郎)もお藤で、姉の命を救うために義兄に離縁を迫るのはいいとして、その前になぜ姉に話さない?
酒に酔った勢いでよろめく人妻に手を出してしまう、一見真面目そうな鼓の師匠というベタな役に梅玉が妙にはまってた。
「釣女」
隼人の主人に愛之助の太郎冠者。梅丸改め莟玉の美女が可憐。醜女の鴈治郎はメイクがちょっとやり過ぎに感じたが、太郎冠者を突いたり、戯れていろいろ仕掛けてたのが、息の合った様子で面白い。4人で舞うところで太郎冠者が「莟玉さんおめでとう」と襲名をお祝い。
「魚屋宗五郎」
芝翫の宗五郎はセリフが一本調子でしんどい。鴈治郎のお殿様が、前幕と打って変わって、大らかでいい。
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