2018年11月29日木曜日

1126 青年団「ソウル市民1919」

前作から10年後、三一運動の日の日本人商家を描く。10年前よりどことなく不穏な空気なのは、戦争の影が近づいているからか。内地から出戻ってきた妹や何をするでなく日々を過ごす書生ら、棘のある言葉が行き交う。差別意識も色濃く、併合された朝鮮への無邪気な悪意とでも言おうか。朝鮮は望んで日本になったのだから、民族自決は関係ないと信じて疑わない様子に朝鮮人使用人の不満が鬱積する。気弱な相撲取りや怪しげな興行師の役割がよく分からなかった。
「ソウル市民」と続けて見たので、同一の役を演じる人がいる一方、全く違う役の人がいて戸惑った。

2018年11月23日金曜日

1122 青年団「ソウル市民」

日韓併合を控えた1909年のソウル。日本人の商家の居間を舞台に、家族や来客、使用人らのとりとめのない会話から無意識の差別が浮かび上がる。文具店主の弟役の太田宏、年かさの女中鈴木役の工藤公美らが醸す、そこはかとない嫌らしさがいかにもありそう。途中何度か舞台上が無人になり、放り出されたような気分。駆け落ちした長男と女中の行方を捜しに行ったところで唐突に暗転し、幕。手品師はどこへ行ったのかとか、次女の文通相手は?とか、様々な疑問を放り出したまま。確かに誰かと話したくなる芝居だ。

2018年11月22日木曜日

1120 宝塚花組「蘭陵王」

専科の凪七瑠海を迎え、美しすぎる蘭陵王を説得力をもって演じた。少年時代から、成人しての変化。さすが専科というべきか。他の花組生は若手中心ということもあってか、学芸会のようないたたまれなさが踊りにも芝居にもあったのだが、凪七がいるととたんにプロの世界になった。娘役の音くり寿が間者として潜り込み、次第に蘭陵王に惹かれる洛妃を好演。蘭陵王の兄の王子、高緯を演じた瀬戸かずやは残念なおかまみたいだった(たぶん台本通りなのだろうが…)。蘭陵王の生い立ち、王位争いに巻き込まれ国を捨てていくという本筋のストーリーはよくできていたが、高緯とその取り巻きのお笑いパートが蛇足というか、違った風だったらもっとよかったのにと思った。東儀秀樹作曲のフィナーレの曲は格好よく、演奏もよくあっていた。本編とはかかわりがなかったのは残念だが、あのストーリーでは生かしきれなかったのかとも思う。

11月17日 大槻文蔵裕一の会

「鷹姫」 野村萬斎の演出の妙はよく分からなかったが、終始薄暗い舞台に凛と立つ鷹姫の気高い美しさ。姫を取り囲むように立つ灰色の面を被った地謡?は岩なのだそう。ワキのような役割が萬斎演じる空賦麟なのだろうか。 「石橋~師資十二段之式~」 文蔵の白獅子に裕一の赤獅子。2人並ぶと文蔵の所作の美しさに目を惹かれる。どこがどう違うのかはよくわからないのだが。

2018年11月17日土曜日

1116 浪漫活劇「るろうに剣心」

男性キャストを交えてのるろ剣は殺陣の迫力や芝居のリアルさが増したように思うが、漫画っぽさでは宝塚版のほうが勝るか。 早霧せいなの剣心は女性が演じているという不自然さがなく、役が手に入っている様子。歌は各段に上手くなったような。歌で勝負できるほどではないものの、音程が外れることはなく、安心して聞けた。宝塚トップのときのような突出したカリスマ性は薄くなっていたのは男性キャストとならんだせいか。 加納惣三郎のニヒルな格好良さ、男性群舞の鮮やかさという、宝塚版で良かったところがなくなっていたのは残念。加納役は松岡充より望海風斗のほうがよかった。神谷薫役の上白石萌歌は若いせいか、キャストの中で埋もれてしまった感じ。トップ娘役のような存在感を求めるのは無理というものか。斎藤一役の廣瀬友祐は背が高く、クールな様子が格好良く、低い声も存在感があった。剣心の陰役の松岡広大が高い運動能力で、躍動感のある殺陣を披露。

2018年11月16日金曜日

1115 藤間勘十郎舞踊公演

勘十郎による解説に続いて、井上安寿子との「二人静」。能がオリジナルの静かな舞に加え、安寿子は京舞なので、抑制された動きが多い。勘十郎と並ぶと、華奢さが強調されるというか、勘十郎の身体的な大きさが目立つ。2人で並んで舞うと、異形のものと可憐な菜摘女という風情で、ある種物語の世界観が出ているのかも。 続いて、若柳吉蔵との「茨木童子」。芝居気が十分に生かされ、勘十郎の茨木童子は登場から怪しげな雰囲気。吉蔵の渡辺綱はキリリとした武者らしさ。間狂言でガラリと雰囲気を変え、勘十郎の都の者、吉蔵の陰陽師がコミカルに。最後の立ち回りは迫力があった。

11月15日 宝塚雪組「ファントム」

歌うまコンビの念願の作品とあって、存分に歌唱力が生かされた。特に、真彩希帆のクリスティーヌの圧倒的な歌声。彼女なくしては成立しない芝居だろう。オペラ座のプリマに抜擢されるのも納得だ。ファントムの望海風斗は1幕はそれほどでもなかったが、2幕の冒頭のソロは聴かせた。そして2人のハーモニーは特別感がある。彩風咲奈の前支配人のキャリエールは髭が良く似合い、落ち着いた風情。ファントムの実の父という設定で、父息子の愛が描かれるのだが、そのせいかファントムが少年らしく、威厳が足りないような。フィリップ伯爵と新支配人ショレは役替わりで、この日は彩凪翔のフィリップ。クリスティーヌとの関係の描かれ方が少々薄く、ファントムとの対決に緊迫感が少ないような。ショレの朝美絢は似合わない老け役だったが、コミカルに演じることで成立させていた。そして、やはり好きではないのだが、カルロッタの舞咲りんがはまり役。オーバーで嫌みな演技がこの役には合っている。

1112 地主薫バレエ団30周年記念公演「眠れる森の美女」

細部まで神経の行き届いた、気合の感じられる舞台だった。群舞の美しさ、衣装、装置も美しい。 オーロラ姫の倉永美沙は確かなテクニックで余裕のある踊り。技を見せつけるという風でなく、無垢で幸福な姫としての喜びにあふれる。デジレ王子の奥村康介とのパートナーシップも息が合って、たまにバランスが崩れそうになってもすぐに立て直していた。

1110 貞松・浜田バレエ団「創作リサイタル30」

「調子のいい舞曲」より
女ばかりの中に黒一点。レッスンのようなお行儀のいい踊り。

「時を生きる」より
ラヴェルのからビートルズにガラリと曲調が変わる。

「クレイジィ・ラヴ」
男女2人ずつ。赤いドレスのおきゃんな女の子とウサギのような白衣の女の子。やんぢゃな男子との駆け引きがほのぼのと笑わせる。

「不安の時代」
冒頭のルンペンが井勝。衣装は昭和風だが踊りには古さは感じられない。はないちもんめや缶蹴り、かごめかごめを思わせる振り付けが楽しく、コンテンポラリーらしい、複雑な動きも。最後は何か希望に向かって手を差し伸べるよう。

「Fashion Nightmare」
前身頃は白のジャケットだが、後ろはなぜかワンピース。と思ったら、後ろは肌色で裸のよう?途中、急に語りだすのが面白い。

「セイラーズ・セイリング」
カラフルなセーラー服で楽し気なのはいいとして、なぜ「アルプス一万尺」の音楽なのか。
「DANCE」
幕間休憩中に1人のダンサーが即興で踊り続ける…と思ったらそのまま幕が上がり、作品へ。観客を舞台上に上がらせ、見よう見まねで踊りだす。最後、1組だけが残るのだが、残された女性はダンサーを差し置いて踊るほどで、少々困っていたような。

2018年11月11日日曜日

1110 逸青会

10回目の記念公演で、ゲストに藤間勘十郎。客席には芸舞妓やOSKの高世真央、楊琳らがいて華やか。
「汐汲」
菊之丞のたおやかな舞姿。指先まできれい。

「御茶の水」
七五三の師匠、逸平の新発意、童司のいちゃ。逸平と童司のカップル?がかわいい。

「煎物」
勘十郎の主人公に菊之丞の太郎冠者。先斗町や上七軒、宮川町、祇園町の流行りを次々と踊る趣向が楽しい。並んで踊ると、勘十郎は押しが強く、菊之丞はしっとり。セリフのうまさは菊之丞か。逸平の煎じ物売が加わり、賑やかさが増す。

「鏡の松」
能舞台で松の番をしている不思議な老人に逸平。舞に来た男(菊之丞()が素性を問うと、舞台の神様であることが分かって…という筋立て。浦島太郎か水戸黄門か、はたまたサンタクロースかと、パロディを盛り込んで笑わせる。能舞台ではありえない、客席降りもあったりして。神様かと思ったら違ったというオチがありそうでと思っていたので、そのまま終わってしまってちょっと拍子抜けだった。

2018年11月10日土曜日

11月9日 神田松之丞漫談漫遊記vol.2

赤穂義士伝から堀部安兵衛にちなんで「安兵衛駆け付け」「安兵衛婿入り」「荒川十太夫」の三席。 マクラから、笑いを取りに行く様子が嫌らしくなった。客いじりとか物販の宣伝とか。「駆け付け」の前半は、「ばばあ」と執拗に言って笑いを狙ったり、やたらと見台を叩くのが耳障りで、途中で帰ろうかと思ったほど。十人切りのところでは、口裁きのよさで一気にまくしたて、引き付けた。「婿入り」は「この続きは…」と何度も勿体つける演出がうっとおしい。「荒川十太夫」はさらりとして、どこが人情噺なのかと思った。他の講釈師だと十太夫の妻が登場し、夫を励ましたり、2人で内職したりと葛藤がもっと描かれるのだそう。松之丞は不幸な生い立ちゆえの陰のようなものがあって、それが芸に凄みを与えていたのだが、売れたせいかその陰がなくなった。私生活が幸せになるのはいいことなので、前のように戻る必要はないのだけれど、芸の魅力を保つには何か他のものがいるように思う。

11月8日 劇団新派「犬神家の一族」

新派の女優陣(女形含む)の力量が充分に発揮された舞台。松子の波野久理子を筆頭に、竹子の瀬戸摩純、梅子の河合雪之丞が濃厚な芝居で重苦しい世界観を形成。瀬戸がどすの利いたセリフで渡り合っていたのに驚いた。宮川香琴の水谷八重子は浮世離れした様子がそれらしい。一方、男優は今一つで喜多村緑郎の金田一はおたおたと走り回っているばかりで、あまり活躍していないような。佐清と静馬の二役の浜中文一が健闘。

1107 11月文楽公演 第2部

「雲雀山姫捨松」
靖・錦糸から千歳・富助の流れが定着しつつある。錦糸の三味線は足取り確かにリードするも、靖はこのところ停滞気味のような。踏ん張りどころなのかな。千歳は確かな語り。胡弓に錦吾。
人間は簑助の中将姫がノリノリで哀れさを醸し出す。自身の体を支える介添え役もいないようで、お元気そう。移動時に足遣いが立っていたのは、体を支えるため?

「女殺油地獄」
徳庵堤を三輪・清友。
河内屋内の口は亘・清丈。ガチャガチャしたところはあるが、声はよく出ていた。奥は文字久・團七。落ち着いた語り口で安心して聞けた。
豊島屋は呂・清介。語り出しの声が気味悪くゾワッとする。そろりそろりとした調子はいつもながらだが、声の響きが何故か不快。全体的に平坦な語りで、クライマックスが盛り上がらない。勘十郎の与兵衛、お吉の和夫と人形は熱演。

1107 11月文楽公演 第1部

「蘆屋道満大内鑑」

「葛葉子別れの段」の中は咲寿・勝平。咲寿は時々声が外れるものの、老若の女の語り分けがはっきりしてきた。
奥は津駒・宗介。何でか泣けず。狐言葉は歌舞伎に比べ少なめ。
前半は主遣いも頭巾を被って。和夫の葛の葉は細やかな情に溢れる。保名の清十郎が品のある二枚目。
「信田森二人奴の段」は芳穂、津国、南都、咲寿、碩に藤蔵、清馗、友之助、錦吾、清允。三味線が華やか。津国の豪放な語りが役に合っている。人形は野勘兵衛が玉助、与勘兵衛が玉佳ということは、野勘兵衛が主役か。途中、狐足になるところがあったけれど、狐らしさは薄い。

「桂川連理柵」
六角堂の段は希、小住、文字栄に団吾。
帯屋の段の前は呂勢・清治。呂勢のおとせの意地悪婆さんぶり、弟儀兵衛の嫌みっぷりが秀逸。長吉を笑い者にする執拗さ。何だか楽しそう。切は咲・燕三。咲は声に力強さが戻り、復活を感じさせるものの、楽器が古びた感じは変わらず、高音部が辛い。  
道行朧の桂川は織、睦、亘、碩に清志郎、寛太郎、清公、燕二郎。寛治の紋の肩衣を付けて、個人を偲ぶ。
勘十郎のお半は後ろ振りで登場。道行の場面では後ろ振りになるところで「はっ」と掛け声。ここが見せ場と知らせるためか。

1105 ゲゲゲの先生へ

水木しげるへのオマージュとしてみればとてもいい。子供が生まれなくなった平成60年という未来で人間と妖怪(精霊?)の世界が混然と描かれる。前川作品に期待したスリルや手に汗握る感じは少なく、何度か意識を飛ばしてしまった。佐々木蔵之介が半妖怪という特異な存在を飄々と演じ、松雪泰子が妖怪花役のときの妖しく美しい発声が不思議な雰囲気を醸し出す。リポーター役の時の絶叫との使い分けにも舌を巻いた。白石加代子のおばばの妖しさは期待通り。イキウメの役者たちが世界観をしっかり作っていた。

11月4日 十一月歌舞伎公演「名高大岡越前裁」

将軍の御落胤を騙る天一坊の経緯から、大岡越前によって嘘がバレるまで。右団治の法沢は馴染みの老女お三(歌女之丞)から吉宗の御落胤の孫と誕生日が同じと知ったばっかりに、魔が差して悪事に手を染める様がリアル。解せないのは、せっかく同じ紀州で生まれ、誕生日も同じなのに、佐渡生まれの天一になりすましたこと。そのせいで悪事ご露見してしまったわけだし。
右近の忠右衛門が健気で涙を誘う。役の設定は11歳だが、実際には8歳なので、幼さが強調され、父に討たれようとするところで自ら切腹を希望するなんざ、大したお子だ。
梅丸が下女お霜役で可憐な少女。彦三郎は下男久作と越前家来池田大助の二役が全く別人。侍の時は低い声で重々しく、声の引き出しの多い人だ。
名高い大岡裁きというタイトルの割に、大岡自身は大したことしてないような。そもそも何で天一坊を疑ったのか。

11月4日 宝塚月組「エリザベート」

総じて、人間らしい「エリザベート」だった。予想していた通り、珠城りょうのトートは健康的すぎ、青い血でなくて真っ赤な血が漲っていそうだし、愛希れいかのエリザベートは死神なんか張り倒しそうな強さだったのだが、やはり曲の良さ、物語の構成の良さで楽しめた。愛希は演技派だけあって、ルドルフの死を嘆くところがいちばんぐっときた。「私が踊る時」の凛とした力強さもよかった。珠城と並ぶとどうしても姉さんのようで、エリザベートに再三振られてがっかりするトートがわんこのよう。衣装のせいか、肩幅のせいか、冒険ファンタジーの主人公(アーサー王のような)にも見えた。月城かなとのルキーニは狂気が薄く、普通に男前だし、組長憧花ゆりのは少々軽く、ゾフィーは貫禄がもう少し欲しい。美弥るりかのフランツは歌声が真風涼帆を思わせた。全体的に歌には難あり。オケもファンファーレで金管が音を外すなど、残念な出来だった。
フィナーレでラテン風にアレンジした楽曲はいかがなものかと思ったが、珠城と愛希のデュエットダンスがたっぷりあったのはいい。リフトの高いこと。他の男役なら腰の高さで済ますところ、胸でリフトしていたのはさすが。

1103 京都バレエ団公演~屛風・京の四季~

「京の四季」
春夏秋冬それぞれの小品。琴の演奏に合わせたり、舞台奥で花を生けたり。春の着物風の衣装がかわいい。四季のなかでは冬場がよかった。雪の降る中、白い衣装を纏った10組くらいの男女が踊る。コンテらしい振り付けで、視覚的にもきれい。

「屏風」
サティのピアノ曲と和風の物語は存外違和感なく観られたが、いくつかの曲がブツ切れでモザイクのように切り合わせ、同じメロディが何度も繰り返されるので、少々飽きた。ピアノに笛と小鼓を合わせるのは違和感なく調和してた。3場、金剛永謹の謡が緊張感を高め、一番の見せ場。屏風売りが死の商人のようで怪しい雰囲気。屏風の女役の光永百花(牧阿佐美バレエ団)はスタイルがいい。

1102 吉例顔見世興行 夜の部

「寿曽我対面」
愛之助の曽我五郎はいいなあ。きびきびした動きで荒事らしい豪快さがある。孝太朗の十郎のたおやかさ。秀太郎の舞鶴、吉弥の大磯の虎、壱太郎の化粧坂少将、と見覚えがあるとおもったら数年前の松竹座と同じ配役だった。
工藤の仁左衛門が敵役の貫禄で役者の器の大きさをみせた。

「口上」
襲名する3人に藤十郎、仁左衛門のみというシンプルな構成。その分一人一人がしっかり話できていい。藤十郎は書きつけを読んでいるのに言葉に詰まるところがあってハラハラ。仁左衛門が「白鷗さんについては私からいうことありません」と素っ気ない。新幸四郎は頭を下げながら苦笑してたような。

「勧進帳」
幸四郎の弁慶は気合が漲り、これまでより線が太くなった感じ。といって力みすぎることもなく、懐深く落ち着きのある様子だ。白鷗の冨樫は丁寧な芝居。山伏問答では丁々発止の緊張感はそれほどでもなかったが、過不足ない満足感。染五郎の義経は1月より発声がよくなっていた。弁慶の滝流しは、花道のところに出るやつ?流麗で面白い踊りだが、再び舞台中央に戻って義経らを逃がすのは余計な動きに見えなくもない。

1102 吉例顔見世興行 昼の部

「毛抜」
左團次が弾正にこんなにハマるとは。秦秀太郎(壱太郎)や腰元巻絹(孝太郎)を口説く、ちょっとエッチな場面の面白いこと。間者の翫政は抜擢かな。天井裏から降りてくるところは2段の足場があってちょっと間延びした。もっと勢いよく落ちてほしい。

「連獅子」
前シテの衣装は肌色っぽい地に藍色の模様でちょっと地味かと思ったら、幸四郎が白鷗と初めて踊った時のものなのだとか。よくよく見たら花模様が刺繍で手が込んでいる。染五郎は体ができていないので軸がぶれ、ポーズも決まり切らないところがあるが、若々しく躍動感のある子獅子。幸四郎の親獅子はうまく見えた。毛振りが弧を描くようだとよりいい。
宗論で愛之助と鴈治郎。ほのぼの。

「封印切」
仁左衛門の忠兵衛の匂い立つ色気ったら。花道の出からチャームが全開で、客席が温かい空気に包まれる。訪ねてきたところで他の人に見つかりそうになると奥の壁にへばりついて「蝙蝠のマネしてましてん」…て可愛すぎるやろ。松嶋屋型は久しぶり。おえんの手びきで忠兵衛と梅川が会うのは裏の離れ、廓の2階が舞台上手に設えられている。おえんは八右衛門をなじる時に「ゲジゲジの八っつぁん」とは言わず、「総すかんの八っつあん」(24日再見時はアブラムシ、ゲジゲジなど言っていた)。八右衛門の挑発をじっと耐えていた忠兵衛は、梅川が声を上げて泣くのを聞いたところで自ら封印を切る。忠兵衛の告白後、梅川の「しぇぇっ」もなかったな。おえんので秀太郎はいるだけで世界観を作る。花道を出入りするところで、りき弥が手を引いていた。下駄だから足元がおぼつかないのだろうか。

「御存鈴ヶ森」
愛之助の白井権八。白塗りの美少年の風情。立ち回りも多いしね。白鷗の長兵衛は、歴代の長兵衛になぞらえて鼻高の五代目幸四郎や先代白鷗に触れ、自らの襲名を入れ事で。

1029 和JAZZ

ジャズミュージシャンと邦楽のコラボ。1部は常磐津美沙希と「乗合船」。ベース、ピアノ、ドラムのジャズトリオの演奏は少々重たく、軽妙さが削がれた印象だが、明るくたのしげな曲調は和洋のミスマッチ感が面白かった。
本日の眼目、義太夫節との共演は、ジャズか華々しすぎるのか、義太夫が押されている印象。義太夫節の節は変えず、演奏だけ洋楽器にしたとのことだが、三味線の旋律を取り入れた風でもなく、単にジャズと義太夫節をミックスしたよう。芳穂太夫の力量不足なのかもしれず、もっと力のある太夫なら違ったのかも。

1028 友五郎の会

「善知鳥」
山村流の舞として新たに振り付けたそう。能が題材だけに、抑制された動き。初演なので硬い部分もあったのだろう。再演を重ねたら面白くなりそう。途中、橋がかりから笠を投げて独楽のように回す演出が面白かった。

「たにし」
若と侃の兄弟が息のあった踊り。柔らかみのある面白さ。

「石橋」
二枚扇が鮮やかで、度々客席から感嘆の声が漏れる。踊り慣れた様子で素直に楽しめた。