浅野内匠頭切腹後から討ち入りまで。
朝廷、幕府、赤穂藩のそれぞれの思惑が交錯し、腹の探り合い、駆け引きがスリリングに展開する。
舞台に張ったゴムのように伸縮する紐はこれまでのなかで一番洗練されて見えた。縦横に、幅⒈5メートルくらいに連ねた白い帯が、時に扉や窓、時にスクリーンとして使われる。中納言や柳沢に嬲られるところでは、帯に絡められたようになり、討ち入りの場面では、照明の効果もあって、浪士らの影や隙間からみえる姿が緊迫感を高めた。
役者陣も男役が板につき、大石蔵之介役の高安美穂のどっしりした家老ぶり、吉良上野介=森田祐利栄の狡猾さ、吉田忠左衛門=大熊ねこの豪快さ、真っ直ぐさ、柳沢吉保=水谷有希の男前ぶりは相変わらず。
脚本では金にフォーカスしたのが興味深い。柳沢の小判の改鋳により貨幣価値が下がり、物価が高騰したことが、刃傷事件の遠因となり、中納言が赤穂藩取り潰しの噂を流して藩札の取り付け騒が起きたことが討ち入りへと追い込む。吉良を打ち取れば敵討ちになるのか。本当の敵は浅野どけに切腹を命じた幕府では?その裏には、将軍の母への叙位を巡る朝廷と仲介役を演じた吉良の存在が…と。力関係を簡潔に見せすぎた感もあるが、赤穂事件の因果関係を紐解く一つの解が示された。
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