2017年11月25日土曜日
1124 イキウメ「散歩する侵略者」
映画よりも先に舞台で観たいと思っていたのは正解だった。行方不明になった後、別人のようになって戻ってきた夫。実は宇宙人(というか人外の生命体?)に身体を乗っ取られている。宇宙人の目的は人間の概念を奪うこと。概念を奪われた人はそのことについて理解できなくなり、周囲の人との軋轢を起こす。夫役の浜田信也が穏やかな見た目ながら底の知れない不気味さを体現。ジャーナリスト役の安井順平が話を引っ張る。宇宙人の仲間、天野役の大窪人衛、立花あきら役の天野はなが人ならぬ突拍子もない様子を上手く出して、引き込まれた。破たんしかけていた夫婦が、夫の体や記憶を持ちながら別の人格のようになってしまった夫との間で、良好な関係を再構築できるという皮肉。最後、元居たところへ去ろうとする夫に、愛をいう概念を奪わせる妻。侵略者が愛について知ったとき、愛する相手は愛が分からなくなっているという、絶望。アンハッピーなのだけれど、すごいラブストーリーだなと感じた。
開演前から波の音が聞こえ、海に近い町であることがわかる。暗いうちは砂浜のように見えていたセットは、明るくなると板張りの坂。付きの表面のような映像を投影したりして、様々な場面に変化する。基地が近くにあり、航空機の音で会話がしばしばかき消される。海の向こうの隣国との軍事的緊張が高まり、戦争の足音が近づいているという設定は非常に今日的。厭世的気分から「いっそ戦争になってすべてをリセットしてしまえ」と思っていた男が、「所有」という概念を奪われたことで解放され、反戦運動に値めり込む。平和な時代に反戦を叫ぶのは大衆迎合で格好悪いが、戦時下に反戦を叫ぶのは逆に格好いいという理屈は面白い。
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