2017年11月17日金曜日

11月16日 吉例顔見世大歌舞伎 夜の部

「仮名手本忠臣蔵」 仁左衛門の早野勘平は特に六段目に入ってからが素晴らしい。舅を殺してしまったのではと分かってからの表情に込められた心情があふれるようで、思いがけず大金を手にして仇討ちに加われるという喜びから、舅殺しの疑惑にかられた絶望、一転して無実と分かった安堵と目まぐるしく変わる心根が痛いほど伝わる。さらに腹を切ってからの姿の美しさたるや。懐から財布を出して確かめるところ、間違って手ぬぐいを出してしまうミスがあった。吉弥のおかやも情にあふれてよかった。秀太郎の一文字屋お才は顔を赤味を強くしていたのは若々しさを出すためだろうか? 「新口村」 藤十郎の忠兵衛に扇雀の梅川。顔を近づけるとよく似ているのが、恋人同士としてはなあ…。藤十郎と並ぶと扇雀が大柄に見えるのもよろしくない。藤十郎はお歳を考えると驚異的だが、セリフがはっきりしなかったり、動きがミニマムになっていたり。ちょっとロボットっぽい動きだ。歌六の孫右衛門は風情があってよい。 「元禄忠臣蔵 大石最後の一日」 幸四郎の内蔵助。見合いを保護にされたおみの(児太郎)が、相手の十郎左衛門(染五郎)の真意をただすため、男装して赤穂浪士らが謹慎している屋敷に入り込む。青果ものらしい、理屈っぽいセリフの応酬にへきえきする。細川内記に金太郎。すらりとしたハンサムだが、鼻にかかったセリフ回し。退場する際、うつむいて数歩回ったのちに、ガクリという感じで頭を上げる所作。どういう意味なのだろうか。 荒木十左エ門の仁左衛門がお上の意を伝える場面で幸四郎と対面。看板役者が対峙し、緊張ある一幕だった。

0 件のコメント: