2018年3月10日土曜日
0309 清流劇場「アンドラ」
アンドラという架空の国はスイスがモデルという。ナチスドイツによるユダヤ人差別、戦火が迫る時代の社会情勢を、架空の国に移して寓意的に描く。主人公のアンドリは教師の養父が隣国から救い出したユダヤ人の子供として育てられる。ユダヤ人差別から希望する職に就けなかったり、ともに育った妹との結婚を反対されたりして希望を失い、執拗に繰り返されるユダヤ人だからというレッテル貼りによって、次第に「ユダヤ人らしく」振る舞うようになる。養母が救いを求めた神父が、「ユダヤ人であることを受け入れ、自分を愛せ」と諭すのは、神父の立場からすると全くの「正論」なのだが、善意から出ているがゆえに一番残酷に聞こえた。アンドリは、教師の男が隣国の女と愛し合った末に生まれた子供で、ユダヤ人ではないといいう「真実」が明らかにされるが、時すでに遅しで当のアンドリ自信もユダヤ人でありつづけようとする。暴走した民衆は止めようがなく、悲劇劇な結末を迎えるのがキリストの最後にも似る。嫌な奴しか出てこないが、誰もが「自分は悪くなかった」と言い張る。明らかな差別主義者の指物師の親方ですら、「彼にふさわしい仕事を与えた」と言い張り、教養のあるはずの医師も「アンドリに非があった」という。差別問題の根深さに絶望的な気分になった。
アンドリ役の高口真吾が希望にあふれた若者が容赦なく追い詰められていく様子を克明に表現。医師の林英世の、嫌みなインテリぶりに説得力があった。兵士役はダブルキャストだそうで、私が観たのは上海太郎。スケベ親父といった風情なのだが、「俺は目を付けた女はすべてモノにしてきた」みたいなセリフがあったので、もっと男前の兵士だったら感じが違ったのかなと思った。
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