2018年3月9日金曜日

0308 ハイバイ「ヒッキー・ソトニデテミターノ」

 劇団主催の岩井秀人が開演前の挨拶・注意している間に役者が舞台に現れてそのまま芝居に入っていく不思議な展開。舞台上のテーブルや椅子を移動させて場面転換が行われたり、シーンに関係のない役者が舞台上に佇んでセットのようになったりするのがユニークだ。  引きこもりの支援団体を通じて、3人の引きこもりの青年とその家族が描かれる。23歳の鈴木太郎(田村健太郎)は小5から引きこもり、家では親に暴力を振るう。世間が思う引きこもりのイメージに一番近いだろう。斎藤和夫(古舘寛治)は28年間引きこもっている48歳の男で、妻を亡くした老齢の父親が面倒を見ている。穏やかな様子で理路整然と話す様子は一番問題がなさそうだが。作・演出の岩井秀人が演じる森田富美男は元が引きこもりで、今は引きこもりの支援施設で働いている。岩井自身がかつて引きこもりだったという予備知識のせいか、コミュニケーションの下手さ加減がリアルだ。支援施設の女性、黒木役のチャン・リーメイがはきはきして有能そう。  合宿所での訓練をはじめ、それぞれ就職が決まった太郎と和夫。両親や世間への不満を隠そうともせず、軋轢ばかり起こしている太郎ではなく、人当たりのよい和生が、初めて仕事に向かったその足で飛び込み自殺をする。引きこもりの問題が一筋縄ではいかないことが突きつけられる。「外に出ることがいいのかなんて分からない」という黒木に、森田が「外に出るほうが幸せになる可能性が高くなるから、いいのだ」と断言するところに、作者の意思を感じた。セリフでも、外に出ることで不幸になる可能性も高まるとは言っていて、事実そうなのだが、やはり、引きこもったままでいいとは言えないと思うのだ。引きこもりになる理由は様々で、簡単に批判などできないのだが、引きこもりでいられるのは生活を支えてくれる両親がいることが前提だ。引きこもりの高齢化が進んで、両親がなくなったらどうなるのか。遠くない将来の社会問題を思わずにいられない。

0 件のコメント: