山道をさまよう男。故郷の父や元カノ、大阪で働く旧友らとの回想シーンが挟まれ、男が東日本大震災の被災地の出身であること、実家が流されたものの比較的被害が少なかったことに後ろめたさを抱えていることが明らかになる。今は流れ着いた近畿圏の山奥の障害者施設で働いており、半年前に行方不明になった知的障害の青年を探している。青年の姉とも付き合いがあり、なんとなく生活を共するような流れになっていた。山中で出会う修行者に誘われ、たどり着いた山頂で見たものは、まほろばだったのか。私にはあまり幸せそうには見えなかった。
能舞台を思わせる黒い真四角の舞台には、天井から幅広の紗幕が無数にぶら下がる。紗幕の後ろにいる役者の唱える詩が地から湧き上がる言霊のよう。劇中で繰り返される神楽の踊りや、修行者の唱える念仏が神秘的な雰囲気を醸し出す。異空間に迷い込んだような、濃密な時間だった。
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