「BADDY」は上田久美子の力量に唸らされた。初演出のショーはこれまで見たことのない楽しさ。あっという間に時間が過ぎ、宝塚のショーを見てワクワクしたのは初めてだ。
サングラスにタバコというワルの格好や、全編ストーリー仕立てとかいう表面的なことではなく、なにかがこれまでとは根本的に違うのだが、上手く説明できないのがもどかしい。宝塚らしさという型にはまらず、振り切った演技に見えたのはなぜだろうか。テンポよく場面が進んだのだけど、それだけではないような。
かといって、ロケットや男役の群舞、デュエットダンスといった、ショーの個々の要素もそれぞれ満足のいく出来栄えなのだ。珠城りょうが片手で愛希れいかを抱えて回すダイナミックなリフトなんかは、このコンビの魅力が十分に発揮されてた。
「カンパニー」は、思ったより悪くないできだが、宝塚クオリティーとしてはという条件がつく。懸念してたバレエシーンもそれっぽく見せてたし。ダンス&ボーカルグループの歌や踊りがなんとも宝塚らしいダサさで、こそばゆかったのも、想定の範囲内というか。
2018年2月28日水曜日
2月25日 文楽2月公演 第3部
「女殺油地獄」
徳庵堤の段は靖の与兵衛、希のお吉・小菊、小住、亘、碩に錦糸。錦糸町の三味線が若手を的確に率いている印象。靖の語りは頼もしさを増しているが、与兵衛にしてはしっかりしすぎているというか、真面目過ぎるというか。小住が力強い。碩が娘お清と花車。女性の高音が意外によい。
河内屋内の段の口を咲寿・団吾。ぎょーてーぎょーてーはともかく、終始甲高い一本調子の語り。のびのび語るのは結構だが、元気ならいいという時期ではないと思うのだが。
奥は津駒・清友。清友の三味線は淡々としていて、エモーショナルな津駒の語りが引き立たない気がする。
人形は、玉男の与兵衛は二枚目。母に勘当を言い渡されるところで、戸口にもたれて足を組んでいる姿がモデルのよう。簑助のおかちは15歳より老けて見えた。
豊島屋油店の段は呂・清介。そろりそろりと足を進めるような慎重な語りは声が通らないせいか、感動が薄い。「不義になって貸してくだされ」とか、脇差を抜いてからとか、狂気も色気も感じられない。
逮夜の段は呂勢・宗介。艶のある声が心地よい。七左衛門が母を亡くした娘たちを嘆くところでは涙が出そうになった。
徳庵堤の段は靖の与兵衛、希のお吉・小菊、小住、亘、碩に錦糸。錦糸町の三味線が若手を的確に率いている印象。靖の語りは頼もしさを増しているが、与兵衛にしてはしっかりしすぎているというか、真面目過ぎるというか。小住が力強い。碩が娘お清と花車。女性の高音が意外によい。
河内屋内の段の口を咲寿・団吾。ぎょーてーぎょーてーはともかく、終始甲高い一本調子の語り。のびのび語るのは結構だが、元気ならいいという時期ではないと思うのだが。
奥は津駒・清友。清友の三味線は淡々としていて、エモーショナルな津駒の語りが引き立たない気がする。
人形は、玉男の与兵衛は二枚目。母に勘当を言い渡されるところで、戸口にもたれて足を組んでいる姿がモデルのよう。簑助のおかちは15歳より老けて見えた。
豊島屋油店の段は呂・清介。そろりそろりと足を進めるような慎重な語りは声が通らないせいか、感動が薄い。「不義になって貸してくだされ」とか、脇差を抜いてからとか、狂気も色気も感じられない。
逮夜の段は呂勢・宗介。艶のある声が心地よい。七左衛門が母を亡くした娘たちを嘆くところでは涙が出そうになった。
2月25日 KAAT竹本駒之助公演「義経千本桜 鮓屋の段」
江戸期の台本での上演ということで、現行文楽の弥左衛門が元役人で三千両を奪われたのではなく、盗賊で三千両を奪ったという過去が因縁になる。弥左衛門の心情は大きく違うのだが、正直、そこまでの深い変化は分からなかった。
駒之助の語りは、権太の造形が際立った。ホント手のつけられない悪そうな様子が声の調子、話し振りでよく伝わる。出だしで、津賀寿の三味線と息が合ってないようなところがあったせいか、心揺さぶられるほどの感動には至らなかった。
駒之助の語りは、権太の造形が際立った。ホント手のつけられない悪そうな様子が声の調子、話し振りでよく伝わる。出だしで、津賀寿の三味線と息が合ってないようなところがあったせいか、心揺さぶられるほどの感動には至らなかった。
2月24日 文楽2月公演 第2部
「万才」「鷺娘」
睦、津国、希、碩に喜一郎、清丈、寛太郎、清公、燕二郎。
始の空席が切ないなあ。
「口上」は淡々と。
「摂州合邦辻」
咲・清治はさすがの安定感。後半バテたのか、声に力がなかったような。
織・燕三。織は力みがなくなった一方、圧倒するような勢いがなかった。「オイヤイ」で遅れ気味に拍手があったが、「愚鈍なからぢゃ、阿呆なからじゃ」のほうがよかったと思う。
睦、津国、希、碩に喜一郎、清丈、寛太郎、清公、燕二郎。
始の空席が切ないなあ。
「口上」は淡々と。
「摂州合邦辻」
咲・清治はさすがの安定感。後半バテたのか、声に力がなかったような。
織・燕三。織は力みがなくなった一方、圧倒するような勢いがなかった。「オイヤイ」で遅れ気味に拍手があったが、「愚鈍なからぢゃ、阿呆なからじゃ」のほうがよかったと思う。
2月24日 文楽2月公演 第1部
「心中宵庚申」
朝イチで心中は重たすぎるのか、空席が目立つ。両サイドの後ろ5列はガラガラ。
上田村の段は文字久・藤蔵。地味のある語りが板についてきたが、心に響かないのはなぜだろうか。淡々として緩急がないせいか。勘十郎のお千代が出だしから項垂れた様子で哀れ。
八百屋の段は千歳・富助。今聴いていて、一番心地いい語り。婆のイケズっぷりが絶品。
道行思ひの短夜は三輪のお千代、芳穂の半兵衛、希、文字栄に団七、清志郎、友之助、錦吾、清允。お千代が刺されてからも主遣いの勘十郎は舞台に残り、半兵衛(玉男)が作法に則って切腹する。通常なら人形だけが舞台に残されることで死んだことが強調されるので、人形遣いの存在が目に付く。どういう意図なのだろうか。
朝イチで心中は重たすぎるのか、空席が目立つ。両サイドの後ろ5列はガラガラ。
上田村の段は文字久・藤蔵。地味のある語りが板についてきたが、心に響かないのはなぜだろうか。淡々として緩急がないせいか。勘十郎のお千代が出だしから項垂れた様子で哀れ。
八百屋の段は千歳・富助。今聴いていて、一番心地いい語り。婆のイケズっぷりが絶品。
道行思ひの短夜は三輪のお千代、芳穂の半兵衛、希、文字栄に団七、清志郎、友之助、錦吾、清允。お千代が刺されてからも主遣いの勘十郎は舞台に残り、半兵衛(玉男)が作法に則って切腹する。通常なら人形だけが舞台に残されることで死んだことが強調されるので、人形遣いの存在が目に付く。どういう意図なのだろうか。
2月23日 二月大歌舞伎 夜の部
体調不良により、「熊谷陣屋」はパスして、「芝居前」から。
我當が板付で床机に座って登場。滑舌が悪く、声が通らないのが辛い。滑舌の悪さは藤十郎も。両花道を使って、沢山の役者が出演する華々しさ。これだけの役者が出演するのは、歌舞伎座新開場以来だそう。
「仮名手本忠臣蔵 七段目」
白鸚の由良助の懐の深さに感心した。腹に決意を秘めつつ、遊興にふける様が由良助らしい。
染五郎の力弥は凛々しい美少年。上ずったような声がいただけなく、所作もまだぎこちないが、今後に期待すべきだろう。
仁左衛門の平右衛門、玉三郎のお軽は期待通り。仁左衛門の平右衛門のチャーミングなことと言ったら!玉三郎との息もピッタリで、いいもの見せてもらったと大満足。
我當が板付で床机に座って登場。滑舌が悪く、声が通らないのが辛い。滑舌の悪さは藤十郎も。両花道を使って、沢山の役者が出演する華々しさ。これだけの役者が出演するのは、歌舞伎座新開場以来だそう。
「仮名手本忠臣蔵 七段目」
白鸚の由良助の懐の深さに感心した。腹に決意を秘めつつ、遊興にふける様が由良助らしい。
染五郎の力弥は凛々しい美少年。上ずったような声がいただけなく、所作もまだぎこちないが、今後に期待すべきだろう。
仁左衛門の平右衛門、玉三郎のお軽は期待通り。仁左衛門の平右衛門のチャーミングなことと言ったら!玉三郎との息もピッタリで、いいもの見せてもらったと大満足。
0222 「二十一世紀の退屈男」
アイホールの現代演劇レトロスペクティブ企画。内藤の過去の代表作だそうで、若い勢いを感じる。西日の当たるアパートで退屈を持て余す男。空想と現実が入り混じり、様々な人物が入れ替わり立ち代り現れる、シュールな展開は唐十郎作品を思わせる。突如押入れが銭湯になり、裸の男優たちがふざけて踊る。わかさゆえの力技といおうか。ちょっと古臭い感じで、私は入り込めなかった。
0218 TERROR テロ
テロリストにハイジャックされた飛行機が満場のサッカー場に向かっている。7万人の命を救うために飛行機を撃墜し、164人の乗員・乗客の命を奪ったとして、空軍少佐の罪が問われる。検察官は殺人罪で起訴。法律で、命を天秤にかけることが許されていないこと、上官の命令がないなか独断で決行したこと、ハイジャックされてからサッカー場につくまでの時間に避難が可能だったことなどが理由としてあげられる。一方の弁護士は、現在は戦時下だとして少佐の行動を擁護。難しい問題で、当日の観客はわずか4票差で有罪の判決。
私は、軍人として命令違反の罪はあるものの、殺人罪として有罪にするのはためらわれる。弁護士(橋爪功)のほうに理があると思ったというより、検察官(神野三鈴)の杓子定規ぶりに共感できなかったせいかも。ここで責任を問われるべきは、ハイジャックに手をこまぬいて何も対応できなかった政府なのではないだろうか。
0209 石井アカデミー・ド・バレエ「石井潤追悼公演」
「マニフィカト」
バッハの音楽に合わせて、振り付けも古風。バロック・ダンスを彷彿とさせる動きなど、よく見るクラシックとは違うが、コンテンポラリーでもない。男性ダンサーで目を惹く人がいるなぁと思ったら、山本博之だった。
「カルミナブラーナ」
肌色の全身タイツに炎のような赤い模様という、インパクトのある衣装。途中、自転車に乗ってダンサーが出てきたり、料理が盛られたテーブルが出てきたり、ローストチキン?が踊りだしたりと、ユーモラスは場面も。トーンの異なるピンクの衣装の女性ダンサーたちが、紙吹雪を撒きながら踊るのがきれいだった。
バッハの音楽に合わせて、振り付けも古風。バロック・ダンスを彷彿とさせる動きなど、よく見るクラシックとは違うが、コンテンポラリーでもない。男性ダンサーで目を惹く人がいるなぁと思ったら、山本博之だった。
「カルミナブラーナ」
肌色の全身タイツに炎のような赤い模様という、インパクトのある衣装。途中、自転車に乗ってダンサーが出てきたり、料理が盛られたテーブルが出てきたり、ローストチキン?が踊りだしたりと、ユーモラスは場面も。トーンの異なるピンクの衣装の女性ダンサーたちが、紙吹雪を撒きながら踊るのがきれいだった。
0210 アンチゴーヌ
理想と現実、感情と理性の対立を描くのだが、蒼井優のアンチゴーヌより、生瀬勝久のクリオンのほうに共感してしてしまった。自らの純粋さ、献身ぶりに浸り、本当はクリオンも理想に殉じたいのだろうとせせら笑うのが鼻についたというか。死ぬのはある意味簡単で、生きて最大多数の最大幸福を求めるのは困難だ。アンチゴーヌのワガママで皆が不幸になるのがやりきれない。
蒼井のアンチゴーヌは期待通りの熱演。生瀬は声の良さに驚いた。深みのある声で、語る言葉に説得力がある。
蒼井のアンチゴーヌは期待通りの熱演。生瀬は声の良さに驚いた。深みのある声で、語る言葉に説得力がある。
0209 烏丸ストロークロック「まほろばの景」
山道をさまよう男。故郷の父や元カノ、大阪で働く旧友らとの回想シーンが挟まれ、男が東日本大震災の被災地の出身であること、実家が流されたものの比較的被害が少なかったことに後ろめたさを抱えていることが明らかになる。今は流れ着いた近畿圏の山奥の障害者施設で働いており、半年前に行方不明になった知的障害の青年を探している。青年の姉とも付き合いがあり、なんとなく生活を共するような流れになっていた。山中で出会う修行者に誘われ、たどり着いた山頂で見たものは、まほろばだったのか。私にはあまり幸せそうには見えなかった。
能舞台を思わせる黒い真四角の舞台には、天井から幅広の紗幕が無数にぶら下がる。紗幕の後ろにいる役者の唱える詩が地から湧き上がる言霊のよう。劇中で繰り返される神楽の踊りや、修行者の唱える念仏が神秘的な雰囲気を醸し出す。異空間に迷い込んだような、濃密な時間だった。
能舞台を思わせる黒い真四角の舞台には、天井から幅広の紗幕が無数にぶら下がる。紗幕の後ろにいる役者の唱える詩が地から湧き上がる言霊のよう。劇中で繰り返される神楽の踊りや、修行者の唱える念仏が神秘的な雰囲気を醸し出す。異空間に迷い込んだような、濃密な時間だった。
2018年2月8日木曜日
0208 劇団いちびり一家「ポラーノ 夜風に忘れて」
初めて観た小劇場でのミュージカルは優等生な印象。歌も踊りも、バンドの生演奏も悪くないが、突出したものもないような。宮沢賢治をモチーフにしたためか、童話のような世界が広がる。噛み合わない会話は笑いどころなのだろうが、冗長に感じた。
2018年2月6日火曜日
0205 宝塚星組「ドクトル・ジバゴ」
轟悠のゆるぎない男ぶり。冒頭、語尾を上げる話し方が気になったが、若々しさの表現だったのか。後半の髭を着けてからの格好良さは比類ない。歌声はたまに作り声の無理が露呈してしまうのだが、低音の響きにほれぼれする場面も。ラーラ役の有沙瞳は美しく、歌声もきれい。ラーラの恋人、パーシャ(瀬央ゆりあ)がなぜ人が変わったように冷酷な軍人になっていくのかが不明で(寝落ちしてしまったせいかもしれないが、そんなに長時間ではなかったはず)最後まで腑に落ちなかった。革命家の女オーリャ役の紫りらに新劇女優のような存在感があった。
0202 泣いたらアカンで通天閣
新世界のディープ大阪で暮らす、ラーメン屋の父娘を赤井英和と三倉茉奈が自然体で演じる。というか、赤井は演技してない感じだ。脇を山田スミ子や紅壱子、松竹新喜劇の曽我廼家八十吉川や奈美弥生といった、これぞ大阪という人たちが固め、安心感がある。娘の幼馴染で後に結婚する辻本祐樹が嫌みのない好青年だ。初の芝居出演の笑福亭松喬は不器用な様子が大輔花子の大輔のよう。若くして亡くなった母親役の桜花昇ぼるはちょっと浮いた存在だが、死んだ人の役なのでそれほど違和感はない。歌はちょっと唐突に感じたが。ヤクザと組んで地上げを仕掛ける叔母役の小川菜摘は、敵役みたいに登場しながらうやむやのうちに和解してしまうのが物足りなかった。
2018年2月5日月曜日
0201 黒蜥蜴
中谷美紀の黒蜥蜴は美しく、セリフもはじめは無理をして老けた喋り方をしているように感じたが、芝居が進むにつれて説得力が増してきた。2幕の明智への恋心を吐露するところが官能的で。井上芳雄の明智は優等生すぎてちょっと物足りなかったが、黒蜥蜴とのやり取りはスリリング。これまで見た黒蜥蜴のなかで、最も恋愛劇の要素が強かったように感じた。早苗役の相楽樹がお嬢様らしく、役に合っていた。雨宮役の成河は美青年らしくはないのだが、終盤の狂気の演技に迫力があった。スタイリッシュな舞台装置、衣装にルヴォーのセンスが光る。恐怖美術館は薄い布越しに裸の像が透けて見える演出。生々しくて滑稽になってしまいがちな場面を品よく表現していた。
0131 チェルフィッチュ「三月の5日間」
イラク戦争が勃発した2003年の東京の5日間。7人の登場人物が入れ代わり立ち代わりモノローグのような形で物語が進む。偶然出会った男女がホテルにこもって数日を過ごすというだけで、これといった出来事はないのだが、若者の風俗を描写してるのかなあ。過剰なまでのだらしない若者言葉は狙いなのだろうがイラっとする。女優が男性キャラのセリフを言ったり、人物とセリフ、シチュエーションが必ずしも一致していないのがふわふわした印象だ。英語の字幕が出ていたけれど、外国人はこのしゃべり方をどう思うのだろうか。天井から字幕を映すための箱のようなものがぶら下がっているのが、雲のようにも見える。床にはM字型にラインが引かれていて、何かのマークかと思ったら違うらしい。
0129 能×現代劇「ともえと、」
能「巴」を題材に、木曽義仲を巡る3人の女を描く。義仲と思しき男は、10年前に亡くなった格闘技の戦士。共に戦っていたのに戦場を離れるよう命じられた女、男亡き後も戦い続ける女、故郷で待つ女。シュールなダンスのような格闘技の動きやプロレスのようなアナウンスなど、ふざけているみたい。空晴の岡部尚子が脚本・出演なのでどうしても笑いに寄ってしまう。能楽堂なので仕方ないのだが、ジャージに白足袋という恰好がシュールだ。
0129 青年団「さよならだけが人生か」
工事現場の休憩所で繰り広げられる人間模様。雨で待機している作業員や警備員に加え、遺跡が発掘されたとかで考古学を学ぶ大学院生や文化庁の職員、彼女の父親に結婚の許しをもらいにくる男などが入れ替わり立ち代り現れる。特に何も起こらず、リアルだけど取り止めのない会話が紡がれる。途中、ミイラがいたといって見に行くのだが、真偽は不明だし、最後に民芸品のような仮面をつけて現れる女も不可解だ。
登録:
投稿 (Atom)