2021年2月6日土曜日

2月5日 イキウメの金輪町コレクション 甲

短編3作。
 
「箱詰め男」
前に見たことがあるなあと思っていたら、他の客もそうだったようで笑いが先回りしていた。
人の記憶をコンピュータに移して(アップサイクルといったか?)、肉体が死んでも精神は生き続けるという現代と地続きの近未来(設定は2050年くらい?)が舞台。ただ、記憶だけではいくら正確でも人間味に欠け、AIスピーカーのようなやり取りが可笑しく、空恐ろしくもある。香りという、感情を揺さぶる要素を加えることで、人間らしい対話ができるようになるものの、いつまでも鮮明で薄れない記憶に苦しめられる。箱男=不二夫の浜田信也は声だけで無機質な言葉つきから、感情に振り回される様への変化を表現。息子、宗男役の安井順平、不二夫の友人・時枝役の森下創。記憶に現れる不二夫の弟、輝夫役の大窪人衛はちょっとエキセントリックな役

「やさしい人の業火な『懐石』」
袋叩きに遭っていた男(仮釈放中の男・大窪)を助け、自宅に招き入れるコンサルタントの男(盛隆二)の偽善?ぶりがいかにもありそう。むやみに見知らぬ人を家に上げることに消極的な妻(松岡依都美)の常識が少し緩和剤になっていたが、ああいう根拠なく自信満々な男ってイライラする(そういう狙いなんだろうけど)。仮釈放中の男は、見ず知らずの男を容易く信用するというコンサルタントを試したのか、本当なのか。コンサルタント夫婦は子供を亡くしたらしく、そのことが今のあり方に影響しているようなのだが、詳しくは語られない。性善説のようにまず人を受け入れる姿勢って、どういう経験をしたらなるのだろう。ちょっと怖い、後味の悪さが残った。

「いずれ誰もがコソ泥だ、後は野となれ山となれ」
最後は万引き者のプロ・畑山(安井)と懸賞生活を送る女(瀧内公美)。畑山は必要以上には万引きしないという“美学”をもって万引きにいそしむが、やりたい放題の万引き犯・平雅(浜田)が現れ、店や社会の存続自体を危うくする。平雅の持っているスーツケースでは32インチテレビや高級シャンパン数十本は入りきらんだろう…というのは置いておいて、限度を無視して狩りつくそうとする空恐ろしさ。
万引きのプロの不文律を破ってス―パーの店長に平雅を突き出した畑山はどうなるのか…とハラハラさせておいて、意外なハッピーエンド?にほっとした。


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