「篁」
2020年6月の予定か、コロナ禍で延期され、ようやく上演。
西野晴夫法大名誉教授の解説によると、篁は隠岐で死んではいないので、隠岐に流された後鳥羽院と逢うのは史実に反することなどが嫌気されて上演されなくなったのではとのこと。
今日の上演を見て、登場人物たちの立ち位置や詞がよく伝わり、面白いと思ったが、それは復曲の初演で、演じ手たちが手探りなため、より心情がストレートに現れたからかもと思った。復曲にあたっては創成期の手順に従ったといい、台本の意図を伝えるための試行錯誤がまだ荒削りのため、長い年月を経て磨き抜かれた古典にはない、生々しさがあるのではと。
シテの小野篁は味方玄、ツレ(両シテ?)後鳥羽院は片山九郎右衛門、ワキ宝生欣哉、アイ小笠原由祠。
シテは前場はワキとのセリフ劇。船に乗り隠岐島へ行きたいと求めるワキとの緊迫感のあるやり取り。後場は鬼の面に笏を持ち、閻魔大王の補佐をしていたという伝承を思わせる。笏を放ったり、飛び上がって胡座で着地したりと、躍動感のある舞。
後鳥羽院は後場で登場。橋掛かりでの詞が会場に響きわたる。直面で遮るものがないせいでもあるのだろうが。篁が舞っている間、脇座で座っているのだが、視線が中正面席の方を向いていて篁を見ていないのは何故だろう。
仕舞
「実盛」河村和重
足元がおぼつかなく、立ち上がる時によろけたり、足の運びも不安定でハラハラ。
「雨の段」大江又三郎
「山姥 キリ」井上裕久
「葵上」
古演出によるとあり、破れ車の作り物と青女房が出てくる。
シテ河村晴道、ツレの巫女・片山伸吾、青女房・大江信行、ワキの横川小聖・有松遼一、ワキツレ岡充、アイ泉慎也。
大江信行の青女房が、頭ひとつ高く、小ぶりの女面をつけると9頭身くらいあって異世界の人のよう。
ワキは六条御息所を鎮めるところが格好いい。橋掛かりに追い詰めてから押し戻されるところで、後ろ向きに舞台へ戻りシテ柱にぶつかるアクシデント。何事もなかったように続けていたけれど、びっくりした。
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