2021年2月9日火曜日

2月8日 宝塚雪組「f f f -フォルティッシッシモ-」「シルクロード~盗賊と宝石~」ライブビューイング

 「f f f -フォルティッシッシモ-」

望海風斗の退団公演の大劇場千秋楽。上田久美子作・演出で期待の舞台。コロナ禍で延期されなければ、ベートーベン生誕250周年に上演されるはずだったものの、コロナ禍だからこその演出もあり、十二分に楽しませた。

冒頭、モーツアルトやヘンデルが天の裁きを待っているという設定。神のために音楽を作ったバッハは先に天国へ行くことができ、王侯貴族のために音楽を作ったモーツアルトらをどうするかは、後世の音楽家に委ねられているとして、音楽は誰のものかが一つのテーマであることが明かされる。

「英雄」の演奏会のシーンではベートーベンや演奏家がオケピから登場。コロナ禍で生オケが使えない状況を逆手にとった憎い演出。肖像画でよく見る、ぼさぼさの頭で情熱的なベートーベンの姿が望によく似合う。

幼少期に父親に虐待されたり、思いを寄せた女性に裏切られたりと、ベートーベンが苦境に陥るたびに現れる謎の女(真彩希帆)は、銃を差し出して死へ誘うなど「エリザベート」のトートを思わせる役どころ(思えば、冒頭の死者が裁きを待っているという設定も)だが、中盤からは作曲作業に打ち込むベートーベンの世話を焼くなど、少しずつ関係が変化していく。運命のテーマをピアノでつま弾いていたベートーベンに女が加わって連弾になり、壮大な交響曲に発展。最後は、女を運命と受け入れ、愛することで歓喜の歌が生まれるという展開に舌を巻いた。(余談だが、執筆中のベートーベンと女のちょっとほっこりするやり取りでファンサービスも忘れないのが心憎い。「一つだけやってほしいことがある」「(迫られと誤解した風にうろたえて)…なに、いやよ」などのやり取りや、パンを投げつけるシーンなどアドリブが交じり、トップ2人の関係性が垣間見えて微笑ましい)

曲はそれほど印象に残らなかったものの、歌上手のトップコンビらしく、ソロやデュエットで歌う場面が多かったのはよかった。せっかくベートーベンなのだから、全曲ベートーベンのアレンジでもよかったのではと思う。

ベートーベンが当初は心酔して交響曲をささげようとまでしたナポレオン(彩風咲奈)や度々曲を送ったというゲーテ(彩凪翔)との関係も丁寧に描かれ、物語に厚みを加えた。終盤のロシア遠征で壊滅状態のナポレオンとベートーベンが本音で語り合う場面は一つの山場だった。サヨナラ公演だけあって、お金をかけて丁寧に作っているなあと感心したのは、ナポレオンの戴冠式。ほんの数分なのに、豪華な衣装といったら!


「シルクロード~盗賊と宝石~」

生田大和演出のショーはシルクロードを中東から中国へと旅する。トップお披露目の「ひかりふる路」のとき、「悲劇ばかりやらせているから、次は明るい役で」と言っていたのだが、全体的に暗い色調で「明るい」というほどはじけてはいなかったような。

続く、サヨナラコンサートは「ドン・ジュアン」から始まり、「ファントム」や「ひかりふる路」など、名曲のオンパレード。コンサートの名に恥じず、歌をたっぷり聴かせてくれたのが何より。トップ2人のデュエットも楽しめ、幸せな気分。満足度の高い舞台だった。

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