2019年7月24日水曜日

7月19日 エイフマン・バレエ「ロダン」

ダンサーの肉体で彫刻を表現する写真に惹かれてチケットを買ったのだけど、正直「アンナ・カレーニナ」ほどの衝撃はなかった。
幕開きは精神病院の場面。ギョロついた目付きの女たちに混じって、狂気に堕ちたカミーユがもがく。セリフなしの演劇的表現が雄弁。
ロダンの工房では、創作に苦しんでいるロダンのもとに現れたカミーユが刺激となり、傑作が生まれる。粘土をこねるようにダンサーの手足を動かし、不自然なポーズをとらせ、彫刻が出来上がっていく様が面白い。カミーユとローズ、2人の女の間で揺れるロダンだが、終始どっちつかずなというか、むしろカミーユは利用しているだけみたいなところがあって、感情移入を妨げる。ローズは家に帰ったロダンに食事を、与え餌付けして離れられなくしているよう。
2幕のカミーユとロダンのパドドゥはドラマチックだったが、すぐにローズが割り込んで泥沼のようなパドトロワに。ラストは精神を病んだカミーユを患者たちが誘う背景で、創作に打ち込むロダンで幕。ただただ、カミーユが哀れ。
タイトルロールはロダンだけど、主役はカミーユと思った。
ロダン役のオレグ・ガブィシェフは一見普通の男のようで、芸術のためには犠牲を厭わない秘めた狂気をにおわせる。カミーユのリュボーフィ・アンドレーエワは長い手足をが美しいが、狂気に陥るにつれ捻じ曲げるようにした身体表現が哀れを際立たせる。ローズのリリア・リシュクはカミーユへの嫉妬をにじませながら淡々と妻の立場を主張して空恐ろしい。

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