2022年8月28日日曜日

8月28日 坂東玉三郎特別公演「東海道四谷怪談」

愛之助の伊右衛門がよりクールに。あまり地声を使わず、かと言って超低音というほどでもなく、ほどほどの低さ。はじめはただ貧乏暮らしや赤子の鳴き声を疎ましく思っているのが、伊藤家へ赴き、岩に毒を盛られたと知るに及んで、裏切りの決意をするまでの心の動きを克明に描いた。
吉太郎のお梅は一見可憐なのに、思い詰めた目つきに恋の狂気が滲む。

千秋楽だったので、カーテンコールが2回。といって、何かを話すことはなく、2回目は皆で扇を振ってお別れ。華やかだった 。

2022年8月27日土曜日

8月27日 河東けい ひとり語り「母」のすべて

河原けいの最後の舞台と銘打った一人芝居。小林多喜二の母、セキの独白で多喜二の青年期から獄中死するまでを綴る。車椅子で登場死、声量は小さめだったけれど、ピッコロシアター中ホールでは十分に聞こえたし、声の張り、緩急、滑舌はしっかりしていて、もう2、3回はできるのではと思った。河東のセキは田舎の純朴な母親そのもの。2時間弱の舞台は濃密で、集中して観られた。

アフタートークで、演出のふじたあさやと対談。アンサンブル芝居への反動で一人芝居が流行りだした時に、何かいい題材はないかと探していた時に、三浦綾子の「母」と出会って戯曲化したこと。今回の公演は体調面での不安があったので、非常時に備えてふじたや朗読で参加した末永直美が控えていたことなど、舞台裏を話してくれた。

2022年8月25日木曜日

8月25日 上方歌舞伎会

「伊勢音頭恋寝刃」

愛治郎の福岡貢。セリフは固く、間も今ひとつだが、立ち回りはよい。奥庭の場に変わって襖を破って出てくるところからは、目つき、顔つきも変わって、殺気が滲む。
万野の折之助は吊り目の化粧で、意地悪そう。セリフの嫌味っぷりは十分だが、もう少し色気や柔らかみが欲しい。
お岸の千太郎は健闘だけれど、成長期のせいか顔立ちが角張ってみえるのが損している。
千野の千壽、お紺のりき彌、鴈政の喜助は手慣れた様子。お鹿の鴈大は特に不細工にしようとしていない化粧はいいが、芝居も素のままという感じで、もう少し可愛げがあったらと思った。
初めての女方という仲居の愛三郎が可愛らしい。若い頃の七之助を思わせるスッキリ系美人。


「 乗合船恵方万歳」

太夫の當吉郎の踊りはカウントで動いている感じ。オンカウント過ぎるのだろうか。才蔵の松四郎は三枚目らしい。白酒売の愛三郎は同じく可憐な女方。女船頭の當史弥に年増の色気。 


終演後の挨拶で、仁左衛門が「1週間の経過より2日の公演」、孝太郎も「稽古でできていなかったことができている」。客席の力を受けて成長するのだなあ。
仁左衛門が出演者一人一人に挨拶というか、役名と名前を言うように促し、客席には「拍手は最後にまとめて」と言っておきながら、最初の愛治郎が挨拶したところで率先して拍手してしまい照れ笑いする一幕も。

2022年8月21日日曜日

8月21日 坂東玉三郎特別公演「東海道四谷怪談」

愛之助の伊右衛門は色悪の悪どさが薄いなと思ったが、パンフレットの玉三郎のコメントによると、あえて写実にしたらしい。言われてみれば、浪宅に戻った伊右衛門にお岩が死後のことを聞くくだりで、はじめは遠慮や戸惑いがありつつも、冷酷な言葉を重ねるうちに吹っ切れていったように見えた。
玉三郎の岩は、武家の娘の気品を保ちつつも、醜くなってしまった女の哀れが悲しい。宅悦かっこ松之助)と揉み合って死ぬところはあっさり。
吉太郎の梅は、控えめで可憐ながら伊右衛門への恋慕をにじませる。乳母おまさの歌女之丞が手堅い。
小仏小平に喜多村緑郎、後家お弓に河合雪之丞と、新派に移った2人が歌舞伎の舞台に立つのが嬉しい。喜多村の小平は格好良すぎるけど。

「元禄花見踊」は打って変わって華やか。玉三郎の美しさは言うまでもなく、吉弥や千次郎ら上方の役者が加わったのも嬉しい。

2022年8月20日土曜日

8月20日 文楽素浄瑠璃の会

「碁平太平記白石噺」 逆井村の段

千歳・富助。51年ぶりの上演ということで、馴染みのない話だからか、話の筋が分かりづらい。演奏もこなれていない感じがした。
千歳は仰反るような姿勢が度々あり、声が前に出ていないように感じた。富助の三味線も精彩を欠いた。 

「奥州安達原」 袖萩祭文の段

呂・清介。出だしはさすが年の功と思ったのだが、聴きつづけるにつれ、起伏に乏しいのがしんどく、冗長に感じた。音量を抑えた語りも、弱っている袖萩の表現としてはアリかなとや思ったが、やっぱり義太夫らしくない。遠くの出来事を眺めているようで、泣けなかった。

「源平布引滝」久郎助住家の段 

錣・藤蔵。 語りと三味線のバランスが良く、情感のある語りで、今日一番聞き応えがあった。藤蔵の掛け声もほどほどで。知っている話ではあるけれど、ちゃんと情景が目に浮かんだ。

2022年8月16日火曜日

8月16日 地主薫バレエ団「未来へ繋がるダブル・ビル」

「シンデレラ」
案内役の岩本乃蒼アナによるあらすじやマイムの説明を交えて約1時間の短縮版だったが、そうとは感じさせない充実した一幕。シンデレラの奥村唯はほっそりした肢体が可憐で役に合っている。バレエ学校の子どもたちによる小ネズミが可愛く、シンデレラに甘える様子などほのぼのした。義理の姉たちの大久保沙耶、徳彩也子はイジワルだけどキュートさがあり、嫌な感じはない。継母の金克潤もいい味出してた。
王子の石神航一は抜擢だそうだが、ごめん。登場したとき王子を先導する従者かと思ってしまった。王侯貴族の威厳を醸すには経験がいるのだろう。

「ジゼル」
倉永美沙が直前で来日できなくなり、急遽小野絢子が代役だったが、さすがの一言。ジゼルの可憐さ、健気さ、優雅な舞が素晴らしい。そして、奥村康祐のアルブレヒトがすごくチャーミングで、このアルブレヒトだったら許してしまうのも納得。身分の差はありながらもジゼルを愛しいと思っているのが感じられたし、婚約者に素性を明かされそうになった時にシーッと口に手をやって気遣うところなど、細かいところまで行き届いた演技。2幕では精霊となったジゼルを捕まえようとしてもすれ違うもどかしさ。ウィリーたちに踊らされるところの連続シャンジュマンは本当に辛そうで。新国立劇場の公演がますます楽しみになった。

2022年8月14日日曜日

8月14日 東京シティバレエ団「白鳥の湖」

藤田嗣治の舞台美術に惹かれて劇場へ。1幕の王子の誕生会が緑の中で、森の中のガーデンパーティーの雰囲気。2幕の湖の場面とは一続きの場所という感じがあった。緑の木々が絵本の中のよう。3幕の宮殿はワインレッドでガラリと印象が変わる。とはいえ、観たことのない白鳥という印象は、舞台美術というより、振付や物語の展開によるところが大きい。
古風というか、パがシンプルで、昨今のを見慣れていると物足りなく感じるほど。4幕の幕開きの白鳥の群舞は4×4の隊列に囚われないフォーメーションの変化が面白く、綺麗だった。ラストはオデットをはじめ白鳥たちが人の姿に戻る。早替わりは見事だったけど、ストーリーとしては釈然としなかった。

オニール八菜のオデットはニンではないのかしっくりこない。理知的で自らの境遇を理路整然と説明している風に見えて、哀れさ、儚さが感じられなかった。本調子でないのか、ポワントてのバランスがぐらつくところも。一方のオディールは本領発揮というか、俄然イキイキして見えた。フェッテはシングルに時折ダブルを混ぜる感じだったが、最後は3〜4回転?(少しぐらついたが)
王子のジェルマン・ルーヴェは背が高く、手足の長いこと!オニールとのバランスはよかった。ノーブルな二枚目なのだが、(彼のせいではなく演出のためだろうが)苦悩する王子ではなくあまり考えていないボンボンといった感じ。3幕幕ではまんまと騙される間抜けぶりに失笑してしまった。