「寿式三番叟」 又五郎の翁、米吉の千歳が厳かに。翁は面をつけないので、千歳が持ってくる面箱は何のため? 2人が引っ込んだあとに後見が持ち去るので余計に意味不明。 歌昇、虎之助の三番叟は全く合わせる気がなさそうなバラバラぶり。同じ振りでも音の取り方が違う感じで、違う踊りをそれぞれ踊っているみたい(そのくせ、出だし虎之介は歌昇の方を見ながら踊っていたのだが)。歌昇は足の運びはともかく(足踏みを蹴り上げるなど)腰を落としているので日本舞踊らしい身のこなしだが、虎之介は腰が高く踊りの体使いになっていないと感じた。 「義賢最期」 愛之助は顔面を大怪我してから封印しようとしていたそうだが、御名残公演なのでとあえて選んだそう。2年前に同じ松竹座で観たばかりだったのでまた⁉︎と思ってすまぬ。 適材適所の配役で、前半部分の物語が際立った。隼人演じる折平実は行綱とのやり取りで心底を明かすくだりの駆け引き、葵御前の吉弥との夫婦の別れ、生まれてくる子どもへの思いなど、立ち回り以外のところも丁寧に描かれ、物語がよく伝わった。迫力ある立ち回りはやはり見応えあり。戸板倒しでは、戸板の位置を微調整する様子もあり、周囲の役者たちも気を使っているのが感じられた。 子役がとても小柄で(多分、九郎助の松之助が背負えるよう)セリフも辿々しいのだが、しっかり演じていた。九郎助が振り返るたびに振り回されているくらい、小柄なのだが、しっかり剣を振るう姿が微笑ましい。 虎之介の進野次郎。義賢を引き上げるところで腰が引けているように見え(むしろ、愛之助が自力で上がっていたよう)、迫力が削がれた。 申し次ぎの侍に愛治郎、詮議の使者に松十郎、當吉郎、腰元に竹之助、折之助、りき弥、千太郎と、上方の役者がいい役で出ているのも御名残ならでは。 「鰯売恋曳網」 勘九郎の猿源氏、七之助の蛍火というゴールデンコンビで、面白くないはずがない。1時間5分ほどはショートバージョン?勘九郎は愛嬌が増した感じで、ほのぼのと笑いを誘う。 博労六郎左衛門に歌昇。こういう田舎者っぽい役はあんまり似合わないかも。
2026年5月24日日曜日
2026年5月23日土曜日
5月23日 第十一回 糺勧進能
5月23日 南座 歌舞伎鑑賞教室
解説は真山隼人。 歌舞伎の歴史を浪曲で紹介。声のよさが南座の広い空間でも響く。去年までは客席側で観ていたとか、子どもの頃歌舞伎役者になりたいと言って、歌舞伎の家の子でないとなれないと諭されたというエピソードを交え、親しみやすい。千次郎が隈取の実演。白塗りまでは映像で見せ、その後スッポンから登場。あらしの夜にの浴衣だった。 曽我兄弟の敵討を隼人が唸り、芝歌蔵、橋三郎、翫延の役者3人が紋付き袴で立ち回りで演じる趣向も面白かった。 「正札附根元草摺」 千次郎の曽我五郎に吉太朗の舞鶴。吉太朗は首から肩にかけて動きがしなやかで美しく、色気も感じさせる。千次郎はちょっと大きくなりきれないところもあったが、血気にはやる若武者らしさがあった。
2026年5月17日日曜日
5月17月 能狂言「日出処の天子」
2幕の冒頭、橋がかりに穴穂部間人媛(大槻文蔵)と共に来目王子(観世淳夫)が現れる。間人媛は来目に「厩戸と遊んではならない。石が降るから」「あまり勉強しすぎてはいけない」と諭すやり取りが加わる。来目王子は勉強しなくていいと喜んでスキップし、ほのぼの笑えるシーンになっているが、厩戸との違いを描き、厩戸との母子関係の歪さがより鮮明になった。 野村萬斎の厩戸王子は神秘的な雰囲気が役にあっているが、やはり美少年ではない。毛人と出会う池のシーンは10歳という設定だと知り、よりそう思った。福王和幸の毛人とのやりとり、初演時のような気恥ずかしさが薄まったのは慣れたせいだろうか。舞人に混じった厩戸に毛人が惹かれ、王子と知って「初めて惹かれた女人なのに」と嘆くなど、毛人も厩戸に惹かれていたことがはっきり描かれた(和幸の芝居はちょっとくさかったが)。厩戸が現代劇のような言い回しなのに対し、毛人は能のような発声でチグハグに聞こえたが、2人の立場の違いやすれ違う心情を描く狙いだろうか。 大槻祐一の刀自古、鵜澤光の布都姫と子という、厩戸と関係する女性たちが哀れ。刀自古は2幕のみの登場だが、長めの舞で毛人への激しい思いを描くなど、印象は強かった。 通常地謡が並ぶ後ろ(今公演では囃子方が並ぶ)にモニターが設置され、舞台装置に映す映像のいくつかが投影された。脇正面席からは見えにくい映像を補うためだと思うが、ちょっと無粋な感じがした。 第1幕60分、休憩20分、第2幕60分とあったけど、15時半開演で終わったのは18時過ぎだった。
5月16日 文楽公演第3部
5月16日 文楽公演第2部
5月16日 文楽公演 第1部
「二人禿」 南都、咲寿、津国、織栄、文字栄に団七、団吾、清允、清方、藤之亮。人形は紋秀、紋吉。 床の不協和音に重ねて、人形も振りが合ってなくてびっくり。シンの南都からしてどうしちゃったの?というくらい調子が外れていて、団七を筆頭に三味線もチグハグ。人形は紋秀はキッチリしてたが、紋吉の所作が甘い感じがした。 「生写朝顔話」 宇治川蛍狩の口は聖・燕二郎。 燕二郎は本公演での盆回しは初めてと言っていたが、聖もかな。若手らしい、楷書の芸で好感がもてる。 奥は三輪・清友。 三輪は痩せたのか、精彩を欠いた感じ。 真葛が原茶店は小住・友之助。 コミカルな場面で客席の笑いも多かった。小住はふざけた感じは全くなく、どちらかというと骨太な語りだが、笑いのツボは押さえている。元服して白塗りに月代姿になった祐仙に「映画国宝の吉沢悠みたい」。友之助は涼しげな顔で弾いてた。 岡崎隠れ家の中は亘・清公。 亘はガチャガチャした声がいただけない。チャリ場ならばともかく、どこか調子に乗ったような語り口は、特に深雪のような娘にはふさわしくない。 奥は藤・藤蔵。 あんまり合っていないような。今気づいたが、藤藤コンビだ。 明石裏船別れは呂勢・清治に清允の琴。 ようやく義太夫らしい語りが聞けた安堵。ただ清治はいつもの精彩がなく、心配。 弓之助邸の口は薫・錦吾。 薫はいつもの調子だが、視線をキョロキョロするのが気になった。錦吾は落ち着いた様子。 奥は靖・清志郎。 今日はいい靖。 人形は簑二郎の深雪に華がなく、勘彌の浅香と逆だったらと思ったら、ダブルキャストで後半はチェンジするのか。 和生の阿曽次郎が清々しい美青年ぶり。祐仙は勘十郎。真葛が原と弓之助屋敷があると、深雪への執心ぶりがよくわかる。左、足遣いも含めて、コミカルな仕草が達者で客を沸かせた。
2026年5月14日木曜日
5月14日 「メアリー・ステュアート」
宮沢りえのメアリーと若村麻由美のエリザベスという、この上ない2人の共演。宮沢のセリフがいいのは期待通り。よく通る声で、悲劇の女王の悲哀と周りを惹きつける魅力を表す。言われない罪を被された被害者なのだが、安易な同情を許さない狡猾さもあり、一筋縄では行かない感じ。対する若村は低く重々しい声で、エリザベスの抱える重圧や孤独を描出。絶対君主でありながら、周囲の跡形にに裏切られたり、利用されたりする様も見え隠れする。心から信頼できる者がなく、最後はひとりぼっちのような。タイトルロールはメアリーだが、この芝居の主役はエリザベスだと感じた。 レスター(橋本淳)の日和見ぶりを筆頭に、男たちが2人の女王をどこかで軽んじているというか、男尊女卑なところが透けて見えてしんどかった。
舞台装置はシンプルで、幽閉されているメアリーの場面は薄暗い中に一筋の光、表舞台のエリザベスは全体的に眩いほどと、照明で変化を出していたのが興味深かった。2026年5月9日土曜日
5月9日 御名残五月大歌舞伎 夜の部
「盛綱陣屋」 仁左衛門の至芸を堪能。初め出てきた時は少ししんどそう?と心配したが、芝居が進むにつれ杞憂に。何より、首実験が見もので、セリフなしで心情の移り変わりを詳細に描出するのは他では観られない。小四郎の種太郎は歌昇をそのまま小さくしたよう。芝居もよくこなしていたが、比べるのは酷だがこの前に観たのが丑之助だったので物足りなく感じてしまう。小三郎の秀乃介は幼さが残り可愛らしい。 愛之助が和田兵衛秀盛で、久しぶりの仁左衛門との共演が嬉しい。歌六の北条時政が舞台を締める。魁春の微妙は秀太郎を思い出させた。孝太郎の篝火、壱太郎の早瀬。 「心中月夜星野屋」 おたかを演じる七之助のコメディエンヌぶりが魅力。扇雀の星野屋は何か嫌みっぽくて、面白さが損なわれる。虎之助の和泉屋藤助もなんかなあ。母お熊の鴈治郎はいい風情。 「當繋藝招西姿繪」 仁左衛門監修の舞踊。紋付き袴姿ながら、上方の芝居のハイライトが嬉しい、吉田屋はは孝太郎の夕霧に愛之助の伊左衛門。孝太郎の夕霧が初役ではないかと思うが思いのほか良い。封印切は孝太郎に梅川に扇雀の忠兵衛。車引は虎之助の梅王丸に壱太郎の桜丸、進之介の杉王に鴈治郎の松王。櫓のお七で壱太郎が人形振り。雁のたよりは鴈治郎と壱太郎?引窓は愛之助と扇雀。 冒頭、進之介が愛之助に向かって「久しぶり」というのはネタなの? ラスト、出演者そう並びで、孝太郎より進之介の方が真ん中に近くて、色々思うなど。
2026年5月6日水曜日
5月6日 團菊祭五月大歌舞伎 昼の部
「南総里見八犬伝」 巳之助の犬飼権八、右近の犬塚信乃など。芳流園と利根川の上演だが、何度か観た八犬伝ってあまり面白いと思ったことがないと気づいた。誰もが物語やキャラクターを知っている時代ならいざ知らず、今の観客(含む私)には背景や人物の説明なしの見取りでは楽しめないのでは。立ち回りは見応えあった。 「六歌仙容彩」 八代目菊五郎が5役を踊り分ける趣向で、僧正遍照、文屋康秀、有原業平、喜撰法師、大伴黒主と姿を変えるが、1時間40分の舞踊はキツい。時蔵の小野小町が品があり美しい。所化が9人並ぶ中、鷹之資の体幹のよさが際立つ。 「寿曽我対面」 新辰之助の五郎は血気あふれる若武者の意気が清々しい。姿勢が良いので、力一杯のポーズが美しい。後見の松緑は自身は顔もはっきりとは見せず、後見に徹する姿勢に息子の襲名を全力で支える思いが見えて胸熱。八代目菊五郎の十郎が柔らかみのある姿で、五郎と好対照。七代目菊五郎舞台が工藤祐経を務め、舞台の格を上げる。 一通り芝居が終わった後に劇中口上で、2人の菊五郎のほか、團十郎、雀右衛門、萬寿が並ぶ。松緑は「先輩方と同輩」と述べ、平成の三之助は戦友ではないのねと思うなど。團十郎は「歳は離れているけど、令和の三之助としてよろしく」と息子をアピール。
2026年5月5日火曜日
5月5日 團菊祭五月大歌舞伎 夜の部
「鬼一法眼三略巻 菊畑」 左近改め辰之助の襲名披露。 狂言としては面白みに欠けるが、虎蔵実は牛若丸という役は辰之助によく似合う。清々しく、品のある佇まい。時蔵の皆鶴姫は赤姫として不足はないのに、小柄な辰之助と並ぶと釣り合いが悪く、相当背を盗んでいた。松緑の奴知恵内はセリフが辛い。 劇中口上には松緑が「戦友」という彦三郎、亀蔵、時蔵が並ぶ。「○○でございます」の名乗りなしで、新辰之助への餞の言葉だけを述べるのは古風な感じで良き。時蔵は「新辰之助は女方もするので期待している」と。 「助六所縁江戸桜」 十三代目團十郎の助六に八代目菊五郎の揚巻と、当代の看板役者が並ぶと華やか。團十郎は横顔やセリフの声や言い回しが父の十二代目に似てきたが、表面的な感じは否めない。幕開き口上は新之助で、スラスラと淀みなく口上を述べるのは立派だが、癖のある抑揚が聞きづらく、親子して悪いところがよく似ている。 菊五郎の揚巻は美しいのはもちろん、吉原一の花魁としての風格がある。白玉の時蔵も、赤姫と打って変わっった佇まいd位取りの確かさ。並び傾城に新悟、玉太郎ら。 髭の意休は男女蔵。左團次を彷彿とさせる。くわんぺらの松緑、福山かつぎの辰之助の親子共演が楽しく、白酒売の梅玉がほのぼのと可愛らしい。通人の右近は初めての連獅子が團十郎の親獅子だったとか、自分に引き付けたエピソードを交える。股潜りの前に連獅子の振りを入れたり、梅玉が好きなYOASOBIの曲に乗ったりと、趣向を凝らした。
2026年5月4日月曜日
5月4日 「獨道中五十三驛」
幕開きの口上で言った通り、團子が13役早替わりで大奮闘。花道やすっぽんのない舞台なので、パターンの変化はないものの、老若男女に次々と姿を変え、飽きさせない。後半は汗だくで、首の白粉がはげていたほど。大奮闘ではあったが、形は変わっても声や所作で見せるところまでは至らず、変化舞踊として面白いかというと、そうでもない。丁稚長吉の声が女方並みに高かったのは何でか分からないが、信濃屋お半や長吉許嫁お絹など女の声にも変化がなく、女方の拵えなのに時折男の体つきになったりするところも。 おさん実は猫の怪を演じた中車は不気味な婆を好演。時折猿翁に似て見えたり、セリフが四代目みたいに聞こえたりしたところもあってドキッとした。最後は宙乗りで盛り上げ、大詰の赤堀水右衛門の敵役ぶりも良かった。 笑也の重の井姫は團子と並んでも姫に見えるのがすごい。笑三郎のお袖は久しぶりの娘役で本領発揮。 こえかぶとのコラボで、声優による朗読劇。置鮎龍太郎は初めて聞いたが、さすがの美声で、声色を使い分けての語りも見事。ただ、いかにもアニメ声優という語り口がだんだん耳についてきたのと、長時間の一人語りに飽きてきたのとで、終盤はしんどかった。声優が変わると印象が変わりそう。
2026年5月3日日曜日
5月3日 新国立劇場バレエ団「ライモンダ」
直塚美穂・速水省吾ペアの千秋楽。 主役デビューの直塚は身体性が高く、確かなテクニックを見せつけるよう。終盤は少しバテたのか、ふらつくところもあったが、脚を上げれば一段高く、回転は軸がぶれず、姿勢の良さが際立つ。上中佑樹のアブデラクマンに言い寄られると、眉間を寄せて本当に嫌そう。速水は線が太くなった印象で、武人らしい逞しさがあった。 周りのキャストは前日と同じで、印象も変わらず。4階席から見ると、衣装のキラキラがよく見え、コールドがより華やか。フォーメーションも鮮やか。
2026年5月2日土曜日
5月2日 新国立劇場バレエ団「ライモンダ」
小野絢子・李明賢ペア。 李はタイトルデビューで、初々しさのあるジャン・ド・ブリエンヌ。スラリとした容姿で、高い跳躍、長い手足が映える。リフトは心持ち余裕がない感じで、片手リフトはもうちょっと長くてもと思った。小野のライモンダは危なげなく、ポワントワークの美しさはピカイチ。アブデラクマンは上中佑樹で、野獣のようなワイルドな魅力。クレメンス東真帆とヘンリエット飯野萌子のバリエーションは東に一日の長あり。2幕のスペインと3幕のパドカトルで中島瑞稀の姿の良さが目を引いた。 牧阿佐美版は舞台装置と衣装が美しいので、群舞が映える。