ちょっとした言い間違いや言葉のすれ違いが誤解を生んで、こじれた話が最後にほどけるという、岡本尚子らしい作品。
冒頭の、暗転から絵本が浮かびあがる演出が印象的。
関西圏の郊外にある、住宅の裏のガレージを舞台に(柱だけのようなセットなので、はじめは何かわからなかったが…)、ミュージシャンを目指して上京するも夢破れて地元の工務店で働く竹内(太田清伸)や宅配の配達員(上瀧昇一郎)、白衣の男(小池裕之)らが出たり入ったり。住宅で暮らすのは、兄のまっさん(横田雄一郎)、次女梅ケ谷(岡部)、その娘うーちゃん(古谷ちさ)。その日は傘寿の父の祝いのために出かける準備をしているのだが、そこへ長女の元夫、松戸(稲垣卓夫)や、うーちゃんの幼馴染たけちゃん(駒野侃)も現れ…、と様々な立場の人が入り乱れる。
夢を追いかけるために地元を出ようとする若者(たけちゃん、うーちゃん)と、夢破れて地元にもどった年配組(竹内、梅ケ谷?)を対比しつつ、未来への希望を思わせる。
ドッペルゲンガー(ドップラー効果)にからめて、過去、現在、未来について語るところが分かりにくかったが、タイムカプセルとタイムマシンの言い間違いはよくできてる。タイムマシンじゃないけど、タイムカプセルにも同じような効果があるよね、という。
大阪弁満載のテンポが楽しい。岡部の貫禄が増していて、大阪のおばちゃんというより、経営者が政治家のようだった(悪口ではなくて)。容量の得ない小池の話を古谷が引き取る場面があったのだが、とたんに安心して聞くことができて頼もしく感じた。
2021年12月26日日曜日
12月26日 空晴「向こうの景色」
2021年12月25日土曜日
12月25日 新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」
イーリング版は1幕の前半はクララを子役が演じ、ほかの子どもたちが多く出演。男性主役がくるみ割り人形と王子に加え、ドロッセルマイヤーの甥という役どころで、冒頭からほぼ出ずっぱりというのは嬉しいのだが、クララの夢の中で憧れのお兄ちゃんがくるみ割り人形の化身になるという物語に共感できない。1幕が終わった段階では、やっぱりくるみは…と思っていたのだが。2幕の、金平糖の精と王子のグランパドドゥが圧巻。笑顔のチャーミングな池田理沙子・奥村康祐ペア。微笑みが絶えず、アイコンタクトがやさしく幸福感があふれる。これまで、くるみのパドドゥで感動したことってなかったのだけれど。2幕は花のワルツが優美で素晴らしかった。
指揮のアレクセイ・バクランが、曲と曲の間でやたら演奏者と対話してるのが印象的だった。
12月24日 十二月大歌舞伎 第二部
「吉野山」
七之助の静に松緑の忠信。
七之助は美しいのだが、痩せた顔が薄幸そうにも見える。踊り上手の2人なので不足はないのだけれど、やはり舞踊は苦手だ。
義太夫だけというのは歌舞伎では珍しいそうだが、三味線の音が軽いというか、頼りない。本業と違って聞こえるのはどうしてだろう。
「信濃路紅葉鬼揃」
玉三郎が若手5人(橋之助、福之助、歌之助の3兄弟に尾上左近、上村吉太郎)を率いる。前場は能仕立てで、静かな舞が続くのだが、6人の揃った動きが美しく、飽きさせない。フォーメーションの変化も見事。なかでも吉太郎が大健闘で、玉三郎と扇の向きや角度もピタリとそろっていた。体感がブレないのも素晴らしい。
左近はまだ子どもと思っていたら、15歳?ただ、5人の中では小柄で、圧倒的に顔が小さいのでよく目立った。後シテの鬼の化粧をしてしまうと誰が誰やら分からなくなってしまうのだが、左近だけは見分けられた。
維盛の七之助がすっきりとした美丈夫で、清々しい。静よりよかったかも。松緑の山神はすこしおどけた感じ。
2021年12月23日木曜日
12月23日 十二月大歌舞伎 第一部
「新版 伊達の十役」
序幕の足利家奥殿の場はたっぷりと50分近く。
猿之助の政岡は山城屋を思わせる。慈愛や母性は薄いものの、濃厚でこってりしてる。顔をアップで見ると、目張りがキツイせいか、悪役のように見えてしまうのだが(八汐といい勝負と思った)、遠目に見れば気にならない。千松の死を嘆くところは、胸を揺さぶるような情は感じられなかったが、いい発声で型をきっちりすると悲しみは伝わるのだなあと思った。義太夫の葵太夫もあって、重厚な義太夫狂言を堪能した。
冒頭、笑也の沖の井と笑三郎の松島という、澤瀉屋の美女2人並びがうれしい。
千松の市川右近が楽しみだったのだが、上手だったし、決して悪くはなかったのだけれど、特筆すべきほどでもないというか。千松ってだれがやってもそれなりに健気に見えるのかも。殺されて放置される時間が結構ながいのだが、じっと動かないのは立派。
鶴千代の幸一郎ってだれ?と思ったら、幸四郎の弟子だそう。
栄御前は中車。女形の白塗りで並ぶと、猿之助とよく似ている。
猿之助が節之助に替わる床下の段は短く。
休憩を挟んで、大詰は早替わりの猿之助ショー。絹川与右衛門、足利頼兼、三浦屋女房、土手の道哲、高尾太夫の霊、累、仁木弾正、細川勝元の8役に次々と入れ替わる鮮やかさはさすが。道哲の軽妙な踊りに、体幹の確かさを感じた。
猿弥と弘太郎が狂言回しの旅の尼に扮し、笑いを誘う。
玉太郎がねずみとあるので、着ぐるみ?と思ったら、鼠が変化した若衆姿で安堵。
2時間あまりの公演で、重厚な義太夫狂言やら早替わりやら笑いやらのてんこ盛り。すごく計算されていて、観客を楽しませる。コスパがいいと感じた。
2021年12月19日日曜日
12月19日 「能あそび」特別企画<さかさま会>
10日の公演を オンラインで視聴。予想以上に面白かった。
独鼓「四海波」は有斐斎弘道館館長の濱崎加奈子の謡に林 宗一郎の小鼓。発声がしっかりしているのは、普段から稽古しているからか。
ごあいさつは有松遼一。
落語は茂山逸平の「酒の粕」。桂枝雀の出囃子「ひるまま」を桂吉坊、林宗一郎、森田玲が演奏。
逸平の落語は軽やか。悪くないけど、普通のおしゃべりみたいだった。マクラのほうが知から入ってた?
狂言「柿山伏」は林宗一郎と有松遼一
能楽師の調子でセリフを発すると、重々しいというか…。軽妙な笑いではなかったけれど、それはそれで面白い。
能「船弁慶」
静御前は華道家の珠寳、知盛は笛方の杉信太朗、義経は茂山逸平、弁慶は林宗一郎、従者は森田玲、船頭は桂吉坊というオールスターキャスト。囃子方も、笛の有松遼一、小鼓の味方團、大鼓の河村晴道、太鼓の田茂井廣道と見慣れぬ顔ぶれ。
前場は比較的真面目にやっていたが、狂言方が入った後半は、吉坊や逸平が笑いを取りに行くから、面白くってしかたない。船頭が従者にからんだり、義経は船が揺れてグラグラしたり、知盛と対決して両手をあげて喜んだと思ったら、終わってふう、とため息をつくだけで笑いをとるのはさすが。そして、意外な活躍を見せたのが、知盛の杉信太朗。はじめは面をつけていたが、終盤は直面になって、膝立ちのまま義経達に迫る大立ち回り。弁慶の宗一郎が笑いをこらえられなかったのもツボった。生で見てたら拍手喝采だろう。
2021年12月17日金曜日
12月17日 国立能楽堂 定例公演
「成上り」和泉流
能村晶人の太郎冠者、炭哲男の主人、炭孝太郎のすっぱ。
やまいも がウナギになるのはいいとして、蛙がカブトムシとか、燕がトビウオって成り上がりなのか?
「海人」
金剛流にのみ伝わる変成男子の小書き。けど、女は成仏できないから男子に変ずるってなんだかなあ…。
廣田幸稔のシテ、子方は孫の明幸。前シテは体調もあって意識を飛ばしてしまったが、玉之段の舞はとんでもない。奪った玉を胸を切り裂いて隠すとは。後シテの龍王は、全長1メートルはあろうかという大きな龍の冠を被っての勇壮な舞。しっぽのあたりが動くようになっていたのには理由があるのだろうか。
2021年12月13日月曜日
12月12日 吉例顔見世興行 第二部
りき弥の名題披露で、夜鷹おとせ。花道の出で大向こうがかからないのが寂しいが、大役に緊張した面持ち。姉さん被りの手拭いの影から見える横顔が美しく、声もいい。ござを持ったまま、手拭いを外して、しまってとやることが多く、少し手間取っているようにも見えたが、他の人ならこんなに凝視しないから分からなかっただけかも。
お嬢が孝太郎、お坊が隼人と年齢差があるが、意外に(失礼!)違和感はなく。隼人のお坊はニンに合う。和尚の芝翫と3人並ぶのもしっくり。
「身替座禅」
仁左衛門の右京は品があり、見ているだけでこちらまでウキウキしてくる愛嬌に溢れる。驚いたり、膨れたり、バツが悪かったりと、表情のひとつひとつがチャーミングで、つい引き込まれる。
芝翫の玉井は、濁声のわわしい奥方。可愛さより強さが勝るが、笑いどころはしっかり押さえていた。
太郎冠者の隼人は、びっくりして飛びのく動きがややオーバーに感じたが、軽妙なのがいい。
千枝の千之助、小枝の莟玉はビジュアルは人形のような可愛さで、声も可憐。莟玉と並ぶと千之助の所作が至らないのが目についたが…。