「新版 伊達の十役」
序幕の足利家奥殿の場はたっぷりと50分近く。
猿之助の政岡は山城屋を思わせる。慈愛や母性は薄いものの、濃厚でこってりしてる。顔をアップで見ると、目張りがキツイせいか、悪役のように見えてしまうのだが(八汐といい勝負と思った)、遠目に見れば気にならない。千松の死を嘆くところは、胸を揺さぶるような情は感じられなかったが、いい発声で型をきっちりすると悲しみは伝わるのだなあと思った。義太夫の葵太夫もあって、重厚な義太夫狂言を堪能した。
冒頭、笑也の沖の井と笑三郎の松島という、澤瀉屋の美女2人並びがうれしい。
千松の市川右近が楽しみだったのだが、上手だったし、決して悪くはなかったのだけれど、特筆すべきほどでもないというか。千松ってだれがやってもそれなりに健気に見えるのかも。殺されて放置される時間が結構ながいのだが、じっと動かないのは立派。
鶴千代の幸一郎ってだれ?と思ったら、幸四郎の弟子だそう。
栄御前は中車。女形の白塗りで並ぶと、猿之助とよく似ている。
猿之助が節之助に替わる床下の段は短く。
休憩を挟んで、大詰は早替わりの猿之助ショー。絹川与右衛門、足利頼兼、三浦屋女房、土手の道哲、高尾太夫の霊、累、仁木弾正、細川勝元の8役に次々と入れ替わる鮮やかさはさすが。道哲の軽妙な踊りに、体幹の確かさを感じた。
猿弥と弘太郎が狂言回しの旅の尼に扮し、笑いを誘う。
玉太郎がねずみとあるので、着ぐるみ?と思ったら、鼠が変化した若衆姿で安堵。
2時間あまりの公演で、重厚な義太夫狂言やら早替わりやら笑いやらのてんこ盛り。すごく計算されていて、観客を楽しませる。コスパがいいと感じた。
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