3人の吉三と並行して歌舞伎ではほとんど上演されない丁子屋の人々が描かれ、物語がより重厚に。今までに見たキノカブの中で一番面白かったかも。休憩を挟んで5時間20分の長丁場だが、全く時間を感じなかった。
何より3人の吉三の誰もがいい。お坊の須賀健太は小柄ながら弾けるような身体性で、悪ガキのようなやんちゃさの裏にお坊ちゃん育ちの甘えが見え隠れする。和尚の田中俊介は長身が映える。お坊、お嬢との義兄弟の関係に加え、おとせ、十三郎という実の弟妹との関係に苦悩する様を的確に描いた。お嬢は坂口涼太郎。芸達者ぶりを発揮し、巧みな台詞回しで男と女を行き来する。当初配役の矢部昌暉が体調不良で降板したため急遽代役となったとは思えない 。「月も朧に〜」の件はなかったものの、「こいつは春から縁起がええわい」の決め台詞や躍動感に溢れる大川端の立ち回りなど1幕から見どころ満載だが、印象的だったのはラストの本郷火の見櫓の場。捕手はおらず、3人の吉三が見えない敵に向かってスローモーションで立ち回りを演じる。お坊とお嬢が助け合い、手を伸ばして互いを求めながら事切れたのをお坊が両者の手を結ぶエンディングは泣けた。
吉原丁子屋ではお坊の妹、一重(藤野涼子)と、一重に入れ上げる刀剣商の木屋文蔵(文里、眞島秀和)を軸に、文蔵の妻おしづ(緒川たまき)らの物語が進行。正直、眞島や緒川でなくても…とは思ったし、吉三らの物語に比べて弱い感じがした。
おとせ役の深沢萌華はセリフがいいと思ったら劇団四季出身だそう。丁子屋花魁吉野役の高山のえみは目を引く美しさ。八百屋久兵衛や丁子屋主人長兵衛を演じた武谷公雄が脇を締めた。土左衛門伝吉と賽の河原の地蔵を演じた川平慈英はコメディーリリーフみたいな感じ?
2幕の冒頭は地獄正月斎日の場は閻魔大王や紫式部が出てきて???だったが、初演時の台本にもあるそう。(じゃんけん勝負が面白かったが、これも原作にあってびっくり)
10月19日、兵庫県立芸術文化センターにて再見。
涙は出なかったが物語の世界に引き込まれ、長いとは感じなかった。
2回目なので、馴染みのなかった一重と文理の物語により目が行った。はじめつれなかった一重が、家とゆかりのある者と分かって文理に気持ちを向けていくのが唐突でなく理解できたし。消し幕など歌舞伎の仕掛けをうまく使っているのにも気づいたり。緒川たまきは役不足かと思っていたが、紫式部での存在感に納得。
涙は出なかったが物語の世界に引き込まれ、長いとは感じなかった。
2回目なので、馴染みのなかった一重と文理の物語により目が行った。はじめつれなかった一重が、家とゆかりのある者と分かって文理に気持ちを向けていくのが唐突でなく理解できたし。消し幕など歌舞伎の仕掛けをうまく使っているのにも気づいたり。緒川たまきは役不足かと思っていたが、紫式部での存在感に納得。
三人の吉三の中では、お坊とお嬢が傑出していたため、和尚が少し物足りなく感じた。
0 件のコメント:
コメントを投稿