「菅原伝授手習鑑」
車曳の段
小住の梅王丸に碩の桜丸が血気にはやる若者らしく、好演。碩の桜丸はおっとりというにはかちゃかちゃしていたが。松王丸の藤が舞台袖から声掛けしながら登場する文楽には珍しい演出。時平の津国は大笑いで手が入った。豪快といには枯れた感じだったが、悪い感じは十分。ずいぶん長かったような。三味線は宗介が1人で5人に対峙。
茶筅酒は三輪・団七。言葉が明快で語り分けもきっちり。団七はいつになく難しそうな顔。
喧嘩の談は咲寿・清馗。
いつもより落ち着いた語りは好印象。
訴訟の段は芳穂・錦糸。
前段と打って変わって厳粛な雰囲気。ここまで重々しかったか。錦糸が弾いていない時、目をキョロキョロしていたのは何だったのか。気になった。
桜丸切腹は千歳・富助。待ってましたの声が掛かる。
抑制された緊張感のなか、穏やかに語りが進む。八重の悲嘆、白太夫の「泣くないやい」の件もとても良かったが、なぜか拍手がなかった。雰囲気を壊したくない遠慮からか。前段できちんと場の空気ができていたからいっそう、胸に迫ったのかと思った。
天拝山は藤・清友。
きっぱりした激しい三味線。
菅丞相が怒り心頭で火を吹くのは覚えていたが、その前に髪を振り乱して大暴れするのに驚く道明寺とキャラ変わりすぎ。
人形は車曳で、玉佳の梅王、勘弥の桜丸、玉助の松王が力漲る熱演。一輔の八重がさまざま表情を見せてよき。勘十郎の白太夫は役が軽すぎるかと思ったが、天拝山で一人舞うなどしどころが多くて納得。おかしみのあるまろやかな動きが素朴な爺さんらしい。
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