2023年9月22日金曜日

9月22日 永楽館歌舞伎 夜の部

「車引」

上方演出の上演は永楽館ならでは。愛之助の梅王丸が花道、莟玉の桜丸が上手側の通路を両花道のようにして登場する華やかな幕開き。愛之助の梅王は手慣れたものだが、発声が江戸っぽいというか荒事?という感じ。莟玉の桜丸は隈取はないのだが、目元がキリッとしていて、柔らかみのなかにも凛々しさがある。
先払いで通路から登場した愛三郎が堂々として、どこの御曹司?と思ったほど。晴の会メンバーは今回出ないのかと思っていたら、杉王が千次郎で嬉しい驚き(昼の部と夜の部の間の時間に街中を歩いているのを目撃したので、てっきり出ていないものと思ってしまった)
梅王が上半身を脱いで緋色の襦袢さがたになるところで感嘆の声が漏れるなど、歌舞伎慣れしていない観客の反応に、昔の芝居小屋の雰囲気を感じる。
松王丸は九團次、時平は男女蔵。悪くはないが、ちょっと大きさが足りないか。

恒例の口上の前に、過去公演を映像で振り返る一幕。昼の部は第一回から六回だったそうだが、夜は七回から十二回。全部見ているはずなのに、どんな話だったか思い出せないもの多数…。新作ばっかりだからねぇ。

口上は愛之助、男寅、男女蔵、九團次、莟玉。5人並んだうちの3人が市川家の柿色の裃にとんがり髷なのが変な感じ。博多座之襲名披露の流れで来たから?
初お目見えの男寅は、名前と「世界遺産検定一級」だけでも覚えて、と若手落語家のようなことを。同じく初お目見えの莟玉は、自己紹介で「莟玉」の名前の由来はありがたいけど、なかなか読んでもらえないもどかしさを吐露。(苔玉とかのりたまとか呼ばれるらしい)パンダ好きと歌舞伎好きを繋げたいという野望も。
莟玉の前に九團次が、九團次としては初出演で、前回は前名の坂東薪車だったが、諸事情あって名前が変わったと。なぜか莟玉は受けていて、俯きながらかたを震わせていた。

「釣女」

愛之助の太郎冠者、男寅の大名。男寅は初役だそうで、発声や所作が松羽目物の寸法になっていない感じがした。莟玉の上臈は期待通り。男女蔵の醜女が面白く、被衣を被って登場するところから体の大きさは隠せないし、化粧はやりすぎないのに十分面白い顔といい、愛之助とのアドリブ混じりのやり取りといい、嫌味なくおかしい。
太郎冠者が釣り糸を垂れるところで客席に向けていたの、初めて見た。ファンサービスは嬉しかろうが、万一取ってしまったらどうするのだろう(誰か取ってくれ!)



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