2026年10月17日土曜日

10月17日 第三回 新翔春秋会

「正札付根元草摺」 團子の曽我五郎に猿紫の舞鶴。 團子はニンに合った役柄で、力漲る熱演。猿紫の舞鶴もキリッとしてよき。 「鷺娘」 女方は苦手そうだが、娘の可愛らしさが十分に表現されていて驚いた。恋に一途な健気さが終始貫かれていて、舞台上で力尽き、倒れる最期まで、胸に迫った。 「善知鳥」 同じタイトルの能とは全く違い、横恋慕から殺生の罪を犯して死罪となった男が主人公という、同情し難い筋立てながら面白く見た。 善知鳥安方の團子はすっぽんから出てくるところの怪しさ、禍々しさ。絹売りとしての洒脱な様子、おかめとひょっとこの面を使っての舞踊など、さまざまな表情を見せる。3曲の大奮闘は立派で大汗かいての大熱演。汗っかきなのは仕方ないが、顔の汗は拭ってあげられないのかと気にかかる。尾上の前の笑也は安方をなんとも思っていないようなクールさがいい。義家の染五郎は普通の二枚目でいいのに、なぜか老けた芝居。

2026年10月14日水曜日

10月14日 フェニーチェ文楽 vol.7 第一部 第二部

第一部は「壷坂観音霊験記」。 床は靖・友之助に清方のツレ。 力一杯の語り、三味線はいいのだが、感情が迸るような激しさ。世話ものなのでもう少し柔らかみがあってもいいのではと思った。 人形は簑太郎のお里、勘次郎の沢市、勘吉の観音。 お里が浮気の疑いを晴そうと毎夜の観音参りを告白するところ、沢市にしなだれかかるような動きに違和感。商売女が口説いているみたいに見えた。お里が歩くところは、足遣いのつまむ位置高いのか、膝のすぐ下に足があるみたい。勘次郎の沢市は行儀がいい。 アフタートークは勘十郎とゲストの吉坊。 沢市のウジウジしたところは共感できて演じやすかったそう。人形遣いの人となりが現れるというが、勘次郎はいかに? 吉坊の聞き取りによると、靖は前半のウジウジいたところがしんどいのだそう。 第二部は「ひらかな盛衰記」の神崎揚屋の段。 床は碩・燕二郎、清方のツレ。 碩は出だしは音程が不安定だったが、後半に行くにつれ声ののびがでてよかった。燕二郎も複雑な手をしっかり弾いていた。 人形は簑紫郎の梅ヶ枝、簑太郎の梶原源太、勘次郎のお筆。 簑紫郎は格の高い傾城の凛とした姿勢が美しい。梶原源太は男前なのだが、なんか残念。勘次郎は女方の方がしっくりくる感じ。 アフタートークによると、傾城の人形は重量的には松王丸よりは軽いのだが、左遣いにサポートしてもらったり、つっかえ棒(名前を失念)で支えたりできないので、主遣いの負担はより重いのだそう。打掛を脱いでからは、頭の重さとのバランスが悪く持ちづらいのだそう。

2026年10月8日木曜日

10月8日 霜乃会プラス

燕二郎が胡弓を解説。 阿古屋の曲(巣篭もり)を実演したり、珍しい大弓(藤蔵所有)も披露。太棹三味線の裏に穴が空いていて、胡弓と同じ弓で弾く。チェロのような音色で、西遊記やファルスタッフで使うそう。燕二郎は紋四郎らとのやりとりも流暢になり、頼もしい。 司会の紋四郎が落語の「景清」について、清水寺の観音が十一面観音で楊柳観世音になのは、一度途絶えて江戸落語から米朝が取り入れたためという説を披露。江戸の清水寺の本尊が楊柳観世音なのだとか。林家一門は十一面で演じているそう。

10月8日 若手素浄瑠璃の会

「菅原伝授手習鑑」 杖折檻より東天紅の段を織栄・清丈。 45分声を枯らすことなく語り切ったのは健闘だが、浄瑠璃というより、何か別のもののように聞こえた。元気よすぎるのか。あまりメジャーでない曲を選んだのはなぜだろう。腹に一物ある悪役や複数女性の語り分けはまだハードル高いのでは。 寺子屋の段は芳穂・錦吾。 ちゃんとした浄瑠璃を聞いたという安心感。首実験の場面では三味線との丁々発止が緊迫感を高め、錦吾の三味線も聞き応えあった。芳穂は緩急のある語り分けが見事で、後半はしっとりと。錦吾のいろは送りはもうちょっと柔らかくてもいいかと思った。

2026年10月4日日曜日

10月4日 錦秋十月大歌舞伎 第三部

「義経千本桜」 渡海屋から大物浦。 松緑の知盛はポスターのビジュアルがよく期待していたが、口跡の悪さは如何ともしがたく…。終盤の「生き変わり死に変わり…」のセリフが「生ききゃわり…」と聞こえた。芝居はてらいがなく、入水するときは潔かった。(2階席だったので、飛び込んだ後に跳ねた足が見えてしまったのはご愛嬌。飛び込みの勢いが良すぎたのかマットの反発力が高すぎたのか)時蔵の典侍の局は安徳帝を毛皮に座らせたところで、拵えはそのままなのに船問屋の女房から天皇の乳母にすっと様子が変わる。ちょっとした姿勢の違いなのだろうが、役者の力。銀平の天気読みを自慢するところはさらりとしていた。(このくだりは後日カットしたらしい。インタビューであまりやりたくないと言っていたが、時間短縮のためもありそう)安徳帝は一般の子役で、セリフはしっかりしていたが、終始首を右に傾げていたのが残念。幼くてもまっすぐしていないと高貴な人に見えない。 幕開きの船問屋の女中?に千寿と折之助。安徳帝付きの女御は他にりき彌、愛三郎、千太郎。千太郎はすっきりした化粧がきれいだった。立役も、船頭に仁三郎や松十郎、千次郎ら、上方の役者が活躍して嬉しい。 「屋敷娘」「近江のお兼」 壱太郎と眞秀の屋敷娘は可愛らしい。眞秀は脚が長いのは仕方ないにしても、だいぶ腰高に帯を結んでいるのはどうしてか。屋敷娘の終盤、壱太郎が紅葉の木の後ろに消え、花道で眞秀が踊っているうちに舞台装置を転換。早替わりでお兼が出てくる。 馬とのやり取り、奴が4人出てくるなど、華やか。長い晒の扱いも見事だった。 23時10分ごろ終演予定を、初日から21時にすべく壱太郎が工夫したと聞いていたが、千本桜が2分ほど押して終わったのでどうなることか思った。休憩時間をやや短縮して定刻スタートし、21時には終演した。

10月4日 国立劇場 歌舞伎公演

本朝廿四孝の筍堀りが珍しくかかるというので三等席で鑑賞。 主役の横蔵を又五郎。こういう骨太な役をするのは珍しいと思いつつ、全体的に配役が渋すぎ。錦之助の慈悲蔵は孝行息子と言いつつ気が利かないし、魁春の母越地の息子に対する仕打ちたるや、酷すぎないか? 魁春の婆は情が薄い感じ。受けの芝居が特に、無表情にじっとしてる。 桔梗が原の場で妻入江の齊入が立ち上がる時に派手に転んで、角隠しが半分ひっくり返ってた。夫越名弾正の松江が耳打ちして自分で少し直していたが、あまり変わらないまま。黒衣が何とかするとかできないものかと気になった。

2026年10月3日土曜日

10月3日 錦秋十月大歌舞伎 第二部

「盛綱陣屋」 仁左衛門の盛綱は5月の松竹座とはちょっと違う感じで、首実験での表情が抑えめに見えた。その分、腹に抱えた心情が重く伝わるような。 小四郎の梅枝は案外普通。セリフはしっかりしているし、やるべきことはやっているのだが、視線が泳ぐので心ここにあらずな感じに見える。成長して余裕ができ、こなしている風になってしまうのか。子役としては及第点以上なのだが、もっとできると期待するのは酷か。最後は瀬川の時蔵、微妙の萬寿と抱き合い親子孫の共演(役の上では祖母と伯母だが)。間近っで見ている父と祖父はどんな思いかといろいろ考えてしまった。 皐月は孝太郎。花道で立ち止まって極まる姿などちゃんとしてるのに、どこか残念なのはなぜだろう。和田兵衛の愛之助は二度目で余裕ができたのか、役が大きく見えた。 「山帰強桔梗」 巳之助の一人舞踊。軽快な動きで、演じ分けも見事。清元の延寿太夫が辛かった。

10月3日 錦秋十月大歌舞伎 第一部

「鯉つかみ」 ケレンあふれる(ケレンしかない)芝居ながら、愛之助がサービス精神を遺憾なく発揮して沸かせる。池の鯉が宙に浮いて、着ぐるみの中から夢の志賀之助が宙乗りで登場。本水には一回転して飛び込み、立ち回りでは鯉ともども大量に水を撒き散らす。バッタリでは鯉もツケに合わせて決まっていた。壱太郎の小桜姫は発声のくせが強く、ちょっと重い。幕開きの腰元に千次郎。姿はしっとりと美しく、声もいいが、慣れない着物の裾捌きにぎこちなさも。巳之助の篠村次郎がよき。 舞台転換中、大薩摩?が花道に出て演奏するのだが、三味線の調弦を緩めてまた引き締めるというアクロバティックな奏法にびっくり。 「義経千本桜 河連法眼館」 八代目菊五郎の忠信は本物の方が真面目なニンに合っている。前半の狐言葉に軽やかさがなく重たげで、心なしか織太夫みを感じた。狐であることを見破られ、床下に落ちて早替わりするところは、見慣れた縁の下でなく、上手の部屋から登場。欄干に飛び乗るところなど身のこなしが軽く、欄干に乗っての移動も危なげなかった。鼓を賜り喜ぶところなど、もっと可愛げがあってもいいかも。 義経は七代目で、幕の裏から出てきて10歩ほど歩く足取りはしっかりしていた。セリフは朗々として、気品があるのはさすが。静は雀右衛門で、気品とたおやかさがある。 最後は僧兵の襲撃はなく、鼓を抱えた忠信が花道を駆け去って幕。

2026年9月26日土曜日

9月26日 流白波燦星 碧翠の麗城

ルパン3世の歌舞伎化第2段。 愛之助のルパンは前回よりさらにセリフをアニメに寄せている感じで、語り出しがほぼルパン調。「とっつぁ〜ん」「ふ〜じこちゃ〜ん」などお馴染みのセリフが楽しい。五エ門との一人二役は諸事情あってのことだろうが、早替わりの面白さはあるものの、メインキャストが揃わないのは物足りなくもある。 中車の銭形がさらに磨きがかかり、誇張した見得はこの作品ならばアリと思う。 笑三郎の次元の格好良さ、笑也の藤子は色っぽいが、鼻筋を通した化粧のせいかケバケバしく、かえって老けて見えた。 米吉の瀬織姫は典型的な赤姫の造形。 ルパンのテーマに合わせたツケ打ちが沸る。 鳳凰の像を持って飛ぶ宙乗りは、あり得ないけど、もうなんでもあり。 ムカデの件が唐突感あったが、全体としては流れもよく、面白くみた。 千秋楽だったので、カーテンコールで愛之助、米吉、笑三郎、笑弥、中車のメインキャストに加えて、猿弥、青虎、弥十郎が登場。ムカデの場面は青虎出なく、猿弥と思っている人がいたらしい。

2026年9月25日金曜日

9月25日 第二回素浄瑠璃の会「釜淵双級巴」

桜の庄兵衛で素浄瑠璃を聴く会の2回目。 並木宗輔作の復曲で、五右衛門内の段を千歳・錦糸。 島原の遊女、滝川が石川五右衛門の後妻になり、五右衛門の息子五郎市をいじめていると思ったら実は、、、という話で、五郎市が健気で哀れ。滝川の養父三二五郎兵衛や五右衛門の手下の盗賊、三上の百助、堅田の小雀、足柄金蔵、小鮒の源五郎などふざけた名前の登場人物が入り混じり、怒涛の展開。千歳の語り、錦糸の三味線も力強く、聞いていてぐったりするほどの浄瑠璃の波動を浴びた心地。

2026年9月23日水曜日

9月23日 第八回霜乃会本公演「伝統芸能それぞれの愛のカタチ〜AIにはないええ愛〜」

トップバッターは京山幸太の浪曲「源氏物語 葵」。 源氏をチャラい、イラっとする男に造形しているのが面白い。六条御息所は嫉妬に狂う女だが、もっと凛としていてほしい。 素浄瑠璃「大井川の段」は碩・燕二郎。 朝顔の迸るような絶叫が胸を打つ。燕二郎も力演。燕三夫婦が客席で観ていて、いつものことながら弟子思い。 落語「宇治の柴舟」は紋四郎。 あまりふざけず、いい顔だった。 幕間の後、昭和生まれvs平成生まれのトークで、松井宗豊、南龍、燕二郎、芦田一坤。 昭和生まれの既婚者2人が未婚の平成生まれを質問攻めにしてセクハラでは、と思ったが、最後、燕二郎が「二人の話を聞いて結婚したいとは思わない」とオチを付けて笑い。 能楽「金輪」は面をつけない袴能で、前シテを林本大、後シテを今村哲郎。 無表情な直面でも目線が揺らぐのが見えたり。 最後は南龍の講談「明智光秀の婚礼」 顔の美しさでなく、心の美しさで妻を娶る。いい話なのだが、なんか釈然としない。 8回目にして文楽劇場小劇場が完売だそうでめでたい。(当日はいくつか空席があったけど、そういうもの)

2026年9月22日火曜日

9月22日 井上大聞×和田悠花 デュオリサイタル vol.5

「奥様女中」と「電話」というあまり有名でない小品だが、どちらも可愛らしく、面白かった。「奥様女中」はこんなに図々しい女中って、とか、主人は年上すぎではとか思いつつも、ハッピーエンドでほのぼの。「電話」は英語の作品なので言葉もわかりやすく、ダールの短編小説を思わせるような、ウイットの効いたオチで笑わせる。 和田の歌唱が伸びやかでよき。

2026年9月21日月曜日

9月21日 東京バレエ団「白鳥の湖」

秋山瑛のオデット/オディール、大塚卓のジークフリート、柄本弾のロットバルト。 秋山はたおやかでいいオデットだが、痩せたのか、メイクなのか、頬がこけたように見え、二の腕も骨と皮だけのような細さが痛々しいほど。柄本の長髪はロットバルトのため?大きな羽を振るのが大変そう。 道化の二山治雄は軽々と超絶技巧を見せる。

2026年9月20日日曜日

9月20日 文楽鑑賞教室 Bプロ

「二人三番叟」 睦、咲寿、薫、織栄に清志郎、清允、藤之亮。 聴きやすい床。 人形は玉翔、勘次郎で安心感があった。勘次郎が検非違使の首で、シュッとしていて、頭ひとつ背が高く見えた。足遣いの足音が乱れていたのが残念。 「仮名手本忠臣蔵」 山崎街道は碩・錦吾。 碩は声が若いのは仕方ない。錦吾の三味線に落ち着き。 二つ玉は小住・友之助に清方の胡弓。 安心して聞けた。 身売りは靖・清丈。 この日の靖は声が安定していい語りだった。 勘平腹切は呂勢・清馗。 語りはいいのだが、三味線が物足りない。 人形は一輔の勘平がよき。派手ではないが落ち着いた中に色気がある。玉勢の定九郎がワルい。

9月20日 文楽鑑賞教室 Aプロ

「二人三番叟」 藤、南都、聖、織部に勝平、燕二郎、清方。 力みすぎで、調子が外れがち。ユニゾンの不協和音も辛かった。 人形は玉誉、簑太郎。足遣いほ力が入りすぎで、登場時は壁が揺れるほど。籾の段なども、リズムが乱れ気味。 解説は小住、錦吾。 裏門の段の「腰元おかる、道にてはぐれ」を使って、腰元、姫、婆、武士の語り分け。錦吾の三味線も、ちゃんと違いが出ていて上出来。ただ、実演のあと少し間を置いてから次の話に入る方が、客が消化できていいと思う。 人形は玉路。客席からツメ人形を持って登場。女方の説明はいつも通り。 「仮名手本忠臣蔵」 山崎街道を亘・清公。 二つ玉を芳穂・団吾、舞台裏の胡弓は藤之亮。 定九郎は低い大声はいいのだが、格好いい二枚目風。もっと盗賊のすれた感じでいいのでは。団吾は唸りすぎ。 身売りは希・寛太郎。おかるの高音はいいのだが、義太夫節らしくないのは行儀が良すぎるからか。唱歌みたい。 勘平腹切は織・藤蔵。 力の入った熱演。勘平の語りで、織が見台に乗り出しすのは、芝居がかっていて、伯山を思い出した。 人形は玉助の勘平が熱演。定九郎は簑紫郎で、黒羽二重の拵えで色悪風。おかるは紋臣で、しっとりとした色気。簑二郎の与市兵衛女房が似合う。

2026年9月19日土曜日

9月19日 東京バレエ団「白鳥の湖」

永久メイのオデット・オディールに期待していたが、ちょっと物足りなかった。ロールデビューもあってか、動きが少し硬いというか、かっちりした感じ。この感じは他の白鳥たちも同じだったので、東バのスタイルなのかしら。ただ、アラベスクのポジションなどは美しく、スタイルの良さがいきたい。アイメイクが濃いめだったのも好みではなかった。踊りも含め、オディールはもかく、オデットはもっと儚げなほうがいい。一方、オディールはキレのある踊りが役に合っていて、王子を挑発する様子もいい。 王子の柄本弾もアイメイクくっきりで、髪ももさっとしていたので、少年マンガのヒーローのよう。 パドカトルは生方隆之介、鳥海創のうち、生方がのびのび、余裕のある跳躍、回転で目をひいた。 道化の池本祥真はよく回り、よく跳んで、テクニックを発揮。ただ、あまりストーリーに関係のない道化という役柄は好まないので…。 ブルメイステルス版は、見慣れた版とは演出や曲が違い違和感がある。1幕の王子ソロの曲が、オディールで馴染みの曲だったり、3幕のオディールのグランフェッテが聴き慣れない曲だったり。3幕の各国の踊りが全てロットバルトの手下で、オディールはロットバルトのマントに隠れて登場したと思ったら、スペインのマントに隠れて姿を消したり、となかなか姿を見せずに王子を焦らす演出は面白い。が、その分、お妃候補の影が薄い。そもそま道化という役が好きではないのに、3幕では4人増えて5人の道化。4幕はオデットを追って湖にやってきた王子の元に水が押し寄せて溺れるの? 最後はオデットが湖に飛び込んで、人の姿になってぐったりしたのを王子が抱き抱えていたと思ったら、息を吹き返してハッピーエンドというのも、うーん…。 1幕で、パーティー?に飽きた王子がどこかへ行ってしまったのに、道化が率先して皆で踊っているのも不思議だった。 オケは大阪フィル。テンポが速かったり揺れるのは指揮者ゆえだろうが、金管が外したり、スペインの冒頭カスタネットとリズムが合わなかったり、曲終わりで弦を弾いた音がしたりと色々残念だった。

2026年9月13日日曜日

9月13日 秀山祭九月大歌舞伎 夜の部

「雛鶴三番叟」 魁春、雀右衛門、萬寿の女方3人の華やかな舞。魁春は首が前に出て姿勢の悪さが気になるが、さすがベテラン。萬寿の踊りがうまく見えた。 「沼津」 仁左衛門の十兵衛の若々しく、颯爽としていることに驚嘆。平作の歌六とは年齢が逆転しているのだが、全くそうと感じさせない。平作に歳をきいて70を超えたと言うと、「わしより年下かと思った」とか、お米と本当の親子かと尋ねて「本物の親子でございます」と答えるなど、現実との倒錯にジワっと笑ったり。客席降りもたっぷりとあり、間近を通る楽しさ。後半は怒涛の展開で息つく間もないほど、感動の渦に巻き込まれる。平作宅で、お米(孝太郎)に夫がいると知って気まずくなるくだりの居心地の悪さがなんとも。不美人に言い寄られて困ってるみたいに見えてしまった… 孝太郎の次男が、冒頭の旅夫婦の息子役で初お目見え(公式なアナウンスはないが)。茶屋で腰掛けて団子を食べ、旅路に戻るだけだが、毎回出演とは限らないらしい。引っ込むところで景色を眺める体で客席の方を向かせて顔を見せていた。 「京人形」 時蔵の京人形の変わり身の鮮やかさ。魂の入っていない時は無骨でガニ股ぎみですらあるのに、鏡を懐に入れた途端、はんなりと柔らかくなる。松緑の左甚五郎との息もあって、舞踊の楽しさを堪能。女房おとくは新吾。いい妻だが、甚五郎は勝手すぎないか? 「一条大蔵譚」 染五郎の大蔵卿は浅草歌舞伎ならともかく、歌舞伎座の大歌舞伎としてはまだ厳しいと言わざるを得ない。化粧のせいか何でだか分からないが、少年のような顔で、大蔵卿の風格がない。作り阿呆は幼児のよう。長刀を振り回すところで欄干にぶつけたりと、立ち回りにも課題あり。 常盤御前の雀右衛門、鬼次郎の歌昇、お京の種之助はそれぞれ役に合っていた。幸四郎の勘解由は上置きのつもりなのだろうか。あまり役に会っていないように思った。

9月13日 秀山祭九月大歌舞伎 昼の部

「春調娘七草」 染團辰の五郎、十郎、静御前が並び、若々しく、フレッシュな美しさ。力みすぎなくらい血気にはやる五郎、凛として清廉な十郎、たおやかで可憐な静と、三人三様の個性が見られて眼福。 「三社祭」 歌昇、種之助の悪玉、善玉。元気なのはよろしいが、力みすぎ(弾みすぎ)と思った。 「ひらかな盛衰記」 大津宿で暗がりの中、駒若丸(秀乃介)の打掛?が脱げて、近くにいた槌松に誤って着せかけたのが取り違えの原因かになるという件はうまくできてる。でも数えで6歳って満5歳なのだから、されるがままに取り違えられるというのは無理があると思う(あんまり幼い子役は使えない歌舞伎の事情だけど)。 笹引きでは立ち回るお筆(菊五郎)が凛々しくてよき。 逆櫓は後半の松右衛門(幸四郎)が急に隈取で出てくるのはなんで?? 先頭の染團辰は嬉しいが、團子は船頭にしては姿勢良く凛々しすぎ。逆に染五郎は力抜きすぎで農夫みたいに見えた。辰之助が一番役に合っていた。文楽では見どころ(聞きどころ)の「やっしっし」は遠見で子役に変わってしまうので物足りない。雀右衛門のおよし、又五郎の権四郎親子に説得力がある。

2026年9月10日木曜日

9月10日 能狂言「刀剣乱舞」

能の「土蜘蛛」の世界に刀剣男士の膝丸、髭切が入り込んだような構成で、これまでの漫画原作の能狂言化で一番無理がないというか、しっくり感じた。 冒頭、客席から髭切(野村裕基)と膝丸(大槻裕一)が現れ、自己紹介?とともに指令を受けるくだり。裕基は声優のような台詞回しでなかなかの役者ぶり。舞台に上がってからはどちらも能狂言調に戻る。源頼光を狙う僧実は土蜘蛛の精を大槻文蔵というご馳走。頼光は浦田保親。ワキは独武者の役どころで福王知登。 上演時間1時間半という触れ込みだったが、正味1時間10分、撮影タイムを入れても1時間15分というのは値段の割に短すぎでは…。

2026年9月5日土曜日

9月5日 マルコス浄瑠璃「金閣寺」

三島由紀夫の「金閣寺」がモチーフだが、物語をなぞるのではなく、抽象化したイメージのような、後日談のような構成。焼け落ちた金閣寺の灰?を敷き詰めた舞台に、白いローブのようなドレスを纏ったダンサーが灰を巻き上げながら踊る様はカルト宗教の祭礼のよう。寝台に横たえられた眞秀は神の化身か。ダンサーたちのなすがまま、人形のように抱き上げられ、運ばれる。7人のコンテンポラリーダンサーは身体能力が高く、自在に四肢を操り観客を飽きさせない。 「浄瑠璃」とタイトルがついているものの、マリア・アルナルの歌が6〜7割を占め、義太夫節が主で物語を引っ張ると言う感じではない。マリアの歌声は北欧民謡のような、聖歌のような、神秘的で澄んだ響き。歌舞伎竹本の浄瑠璃はポエティッな詞章で、唸るような語りぶりといい、義太夫節と言うより浪曲や演歌のようでもある。 玉助の遣う人形は、マリアと揃いの衣装で、スタイリッシュ。物言わぬ存在ながら、狂言まわしのような位置付けか。ダンサーとシンクロする動きなどもあったが、意外と出番は少なく、要所要所で進行するような感じ。 壱太郎と眞秀は同じ白塗り、髪型で、1人の人物を2人で演じているよう。壱太郎は身体能力の高いコンテのダンサーに混じっても引けを取らない、日本舞踊家としての足腰の強さを感じたが、人形振りのような振り付けはあまりなく、人形との共演もよく分からない。眞秀は自ら踊る場面では体幹が弱く、見劣りした。 アイドルの末永光はコロスの一員としてダンサーに加わったり、ひとり積み木を重ねたり。コンテンポラリーダンサーにうまく溶け込んでいたが、なぜアイドルが配役されたのか。彼ならではの個性や必然性は感じられず、やはり客寄せなのかと思った。