「花の御所始末」
シェイクスピアの「リチャード三世」を翻案した新歌舞伎。40年ぶりの上演だそう。初演は白鴎(当時染五郎)に当てて書かれたそうだが、いかにも高麗屋がらしい芝居だ。
物語は、将軍の座に就くために、足利義満の次男、義教(幸四郎)が邪魔な兄(亀蔵)を罠に嵌め、障害となる人を次々に殺していく。権力のためなら何でもするが、何のために権力につくか分からない、非常な人物が当代幸四郎によく似合う。今までに見た彼の芝居で一番かも。最期は、殺した人たちの亡霊に脅かされ、百姓らの一揆に攻められて自害する。テンポよく飽きさせない構成ではあった。
愛之助が、後に一揆の首謀者役となる安積行秀で活躍。冒頭で暴君義教の怒りにふれ、片眼を傷つけられたまま出てこなくなったので、ちょい役かと思ったがさにあらず。ただ、件ののち追放されて、主君に使える人生から転換したと言いながら、腹を切った義教の首を切ることはせずに、そのまま死ぬに任せたのはなぜだろう?やはり旧主は切れないということなのか、「介錯せよ」という命令に従いたくなかったのか。
千壽が、義満の妾で後に義教の愛妾となる北野の方役で、なかなかいい役のようだが、人物の深みは全くない。ただ、トロフィーのように権力者の寵をうけるだけ。もっと陰謀術数に絡んでほしかった。最後、一条の局役のりき彌と二人並んだのは胸熱。
妹役の雀右衛門。幸四郎を「ちいにいさま」と呼ぶのはともかく、染五郎演じる左馬之助と恋仲になるの、歌舞伎らしい萌えポイント。大丈夫、親子には見えなかった。
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