2023年3月30日木曜日

3月29日 ロイヤル・バレエ「赤い薔薇ソースの伝説」

映画にもなった小説が原作で、とても濃密なストーリー。メキシコが舞台だからか、主役の2人はフランチェスカ・ヘイワードとマルセリーノ・サンベは浅黒い肌でラテンアメリカの人らしい。官能的なパドドゥが美しく、際どいのだけれどギリギリ下品にならない。ラスト、2人が炎に包まれる(プロジェクションマッピング?)のはちょっと笑ってしまった。
あらすじを予習して行ったので、展開についていけないことはなかったけれど、とても物語性の強い作品なので、予備知識なしだったらチンプンカンプンだったかも。
ママ・エレナのラウラ・モレーラは、死後、髪を逆立てた姿で出てくるのが、ちょっとやりすぎというくらいに怖い。家族のしきたりでペドロとの関係を許されないティタも可哀想だが、ティタの代わりにペドロと結婚する長女のロザウラ(マヤラ・マグリ)はもっと哀れ。よそ者である革命騎士と駆け落ちしてしきたりから逃れる次女が一番うまくやった感じ。
舞台後方に一列に並んだ、花嫁姿(後ろ姿は髑髏)の人たちが無言で編み物をするのは何の暗示だろうか。 



2023年3月26日日曜日

3月26日 新作歌舞伎 FINAL FANTASY X

話題のFFX歌舞伎。好評判を聞き過ぎて期待値が高過ぎたのか、前編はそこまででも…という気分だった。ルールーの梅枝は格好いいし、ルウナの米吉はかわいいし、(ゲーム原作を知らないけど)キャラの再現度は高そう。ただ菊之助のリュックは(オリジナルに寄せているのだろうけど)「ッス」ってセリフにどうしても馴染めないし、ユウナやリュックが「君は…だよ」というような、「(男性が好む)女性アニメキャラ」みたいな口調が苦手だ。映像の活用も、ゲームの世界観なのだろうけど、アールのかかったスクリーンが動くのでクラクラするし、同時に客席が動くから余計につらい。6 列目の席は 役者の表情が見えていいけど、スクリーンも含めて舞台全体を見るには近すぎた。あと、ステージが低いので、前の方で芝居すると足元が見えなず、梅枝の立ち回りで、せっかくの海老反りが見えんかった(涙)。 

…と思っていたのだが、後編は良かった!何より、芝のぶ演じるユウナレスカの存在感たるや! 凄みがあって、ラスボス感があった。何より声の使い方がすごい。前編ではティーダの母やら、ブリッツボールのファンやら、色々や役をやってなお、というのがまたすごいなぁ。丑之助の祈り子も、重要な役を説得力を持って演じて舌を巻いた。 教え諭すような声で語るのが、誰か大人がアフレコしているのでは⁉︎と思うほど。子ティーダとは別人のようだった。カーテンコールは写真撮影OKで、客席降りもあって盛り上がった。終演時間が押すのではという懸念も、サクっっと切り上げてくれて、ちゃんと最終の新幹線に間に合って安心。





3月25日 霜乃会plus 番外編

会場の山村能舞台のある尼崎にちなんで、太閤記を講談と文楽で。

新作という、導入のような話を南龍が10分あまりしたのち、碩と燕二郎の素浄瑠璃で「絵本太功記」の夕顔棚。なんとなく、尼崎の場面を想定してしまったのだが、夕顔棚はその前段だったと聞いていて気付いた。碩は花粉症で調子が悪いとのことだが、よく通る声で、さつきや久吉、十次郎らの語り分けも明瞭。燕二郎は輪郭のはっきりした音で、清々しい感じがした。

南龍の「太閤記 尼崎一騎駆け」は、いろんな登場人物が入れ替わり立ち替わり出てきて、話の筋は把握し切れなかったのだが、口跡のよさで引き込まれた。話のテンポが良く、3万の軍勢をあえて小声で表現するなど、緩急の効いた語り。 

冒頭と最後に、進行役の朝原を交えてトーク。大汗かいて語る義太夫節に対し、講談や落語は汗をかいてはダメなのだとか。碩は、義太夫節は音曲の司だから音楽的要素が強いと思っていたが、この会でら他の芸能を知るなかで、語り物であることを意識するようになったそう。

2023年3月25日土曜日

3月24日 詁傅の会

「国姓爺合戦」獅子が城の段は睦・勝平。
いずみホールの音響が良過ぎて、残響が耳に障った。三味線の叩き撥や太夫の声が空間に広がって残るので、言葉がボヤけて頭に入らず、集中できなかった。掠れ声が気にならなかったのも残響のせいかも。1時間あまり、息切れせずによく語ったが、とても長く感じてしまった。もっと邦楽に適したところで聞き直したい。

「冥途の飛脚」封印切の段は千歳・富助。
こちらは前の2人よりは音響が気にならなかったが、やはりいつもよりは響いた。先週、京都公演で聞いたばかりだけど、語りに集中した分、梅川の切なさが迫った。語りのせいか、八右衛門がとてもいい男に感じ、忠兵衛のしょうもなさが際立った。


2023年3月22日水曜日

3月21日 三月花形歌舞伎 Aプロ

壱太郎の勘平。山城屋の勘平は見たことないと思うのだが、セリフの端々が似ていると感じた。純粋な上方の勘平は初めてかも。一番の違いは、部屋の片隅で後ろを向いて、知らぬまに腹を切っている。 
千之助のおかるは受け身の女という感じで、ちょっとキャラが違う。
千次郎のおかやが哀れ。本業に近く、おかやが主役の場面と思った。

鷹之資の定九郎は目張りのキリッとして格好いい。客席の正面を見据えるようなところは、ちょっと役と違う気がした。


「忠臣いろは絵姿」
Bプロと同じなのだが、八、九段目の場面の変わり目で、右近がボソリと何か言って、千次郎の顔色が変わったのが気になった。何言われたのだろう。

2023年3月19日日曜日

0319 老木も若みどり

 若手による浄瑠璃と能。

小住・寛太郎の「妹背山婦女庭訓」花渡しの段。定高の気品、大判事の無骨さ。懸命に語る小住を寛太郎の三味線が支えていたように感じた。

能「高砂」は山本麗晃のシテ、笠田祐樹のツレ、ワキに福王知登、ワキツレに福王和幸、喜多雅人、アイに野村太一郎。麗晃は成長途上というか、謡の調子や舞に不安定さが残る(アフタートークで話す様子がそのまま舞台にある感じだった)。


3月19日 三月花形歌舞伎 Bプロ

解説は壱太郎。テンション高く、早口なので、忠臣蔵を知らない人にはどれくらい伝わったろう。史実の赤穂事件と、時代を変えてあることの説明はあったが、名前を変えてあることの説明はなし。そもそも観客は赤穂事件を知らない前提なのか。

五段目、六段目は右近の勘平で江戸の型。キリッとした二枚目で、終始格好いい。間抜けなことをする時も、人倫にもとる行為をする時も、腹切りでさえも美しく見せる。今まで見た右近で一番格好いいと思ったが、二枚目過ぎて、あまり哀れは感じないかも。
莟玉のおかるは、吊り目気味の化粧のせいか少し冷たそうに見えた。
定九郎と数右衛門に吉之丞。吉右衛門門下だけあって、拵えがよく似ていた。
二つ玉からでなく、山崎街道からするのは、勘平が金を必要としていることがはっきりと分かるので、初心者には親切。

「忠臣いろは絵姿」

七段目から十一段目を舞踊仕立てでというのだが、初見の人には何が何やら分からないのでは? 芸者春虹の壱太郎、幇間栄寿の右近、茶屋娘おせんの千之助が、忠臣蔵の名場面を演じる。春虹が由良助、栄寿がお軽、おせんが平右衛門と、役の性別と逆を演じるのもわかりにくいし、千之助はガニ股になるなど所作が全く男になってしまっていた。八段目、九段目もあらすじの説明にはなっていないし、十段目は5つの面を使って右近が大奮闘だが、話の筋は分からないと思う。雪の討ち入りの場面をつけておけば、とりあえず客は納得ということなのだろうか。  


3月18日 文楽京都公演 Bプロ

「団子売」

遅刻したので最後の5分ほどだけ。靖の顎が上がっていたのが気になった。

「菅原伝授手習鑑」

寺入りを睦・団吾。声は掠れていたけど、だいぶマシと思った。 

寺子屋の前を藤・団七。芝居っぽい語り。三味線は音のズレが多かったような。
後は織・燕三。交代するなりテンションが高い。ガラリと場面が変わったようで、ちょっとボリューム大き過ぎかも。身代わりがうまくいったと喜ぶところ、手放しで喜び過ぎでないか?仮にも、寺子を殺めているのだから、その重みを忘れてはいかんと思う。

一輔の戸波が落ち着いた風情で舞台を引き締めた。文司の源蔵、玉助の松王丸、簑二郎の千代。 

3月18日 文楽京都公演 Aプロ

 「花競四季寿」より万歳・鷺娘

芳穂、咲寿、碩に錦糸、勝平、燕二郎。錦糸がシンだと音が際立って聞こえる。

人形は玉翔、玉勢の万歳。鷺娘の紋臣は引き抜きもうまく行って拍手。


「冥途の飛脚」

羽織落としを織・清丈。 「いてのきょうか」とうろうろするところ、なんだかコントみたい。

封印切を千歳・富助。八右衛門の好意をまったく理解しない忠兵衛。意地だけ張ってるどう仕様もない感じがひしひし。梅川は巻き込まれちゃったように見えた。

人形は玉男の忠兵衛、和生の梅川。

2023年3月16日木曜日

3月16日 COOL文楽SHOW

観音巡りと天神森を文楽、生玉と天満屋を講談で、短時間で曽根崎の全編を上演する趣向。現代アート後藤靖香のイラストがプロジェクションマッピングで、背景や人物を描く。

観音巡りは清介の作曲で、以前清治が作ったものとは違うよう。太夫は小住、ツレに清公、清允。会場のせいかマイクを使ったせいか音がとても耳に障り、集中できず…。観音巡りの良さが分からなかった。舞台は勘十郎の遣うお初。背景のイラストがアニメのように動いて、寺社を巡る。スクリーンに映し出された人形に蝶々が戯れるのは目に面白かった。

講談は玉秀斎。びっくりするくらいつまらなかった。曽根崎という物語が講談に合わないのと、セリフのやり取りが中心で芝居にし過ぎたのが敗因か。

天神森は呂勢、希、亘に藤蔵、清志郎、寛太郎。藤蔵の唸りが気にはなったが、浄瑠璃を楽しめた。希の徳兵衛が異次元に行っていたかはともかくも。手摺は、徳兵衛の清十郎が不慣れなのか、最期に帯を体に巻き付けるところがもたつき、解けてしまっていた。


2023年3月12日日曜日

3月12日 三月大歌舞伎 第三部

 「髑髏尼」

ノートルダムの鐘にヒントを得た作品だそうだが、色々モヤモヤ。源氏方に息子を殺され、出家した美しい尼を玉三郎。その尼に懸想する醜い鐘楼七兵衛を中村福之助。お堂に忍び込んだ七兵衛は髑髏尼に自分と一緒に逃げてくれ、と懇願するのだが、どうして願いを聞き入れてもらえるなどと思うのだろうか。偶然見かけた髑髏尼が自分に笑いかけてくれたとか、優しくしてくれたとかいうならまだしも。そして、断られたからといって逆上し、縊り殺してしまうのも分からない。

平重衡の亡霊に愛之助。背後には平家の武士らが透けるようにならび、幻想的な場面だが、この人もなんのために出てきたのか分からなかった。


「吉田屋」

浅草歌舞伎の時よりはだいぶマシではあったけれど、もっと上方の柔らかみが欲しい。登場シーンなどは、男前すぎない発声が写実なのかなとも思ったけれど、通して見てみると何か物足りない。

吉弥のおきさも、ちょっと違うと思ってしまった。脳内に秀太郎のおきさがはっきり残っているせいもあるけれど、吉弥のは廓の女房にしては現役感があるというか。阿波の大尽、松之助はピッタリ。

3月12日 シアターコクーン「アンナ・カレーニナ」

休憩20分を挟んで3時間45分の芝居は、懸念していたほど冗長には感じなかったが、やはり長かった。飽きさせなかったのは、場面転換がほとんどなく、連続的に芝居が続いたことと、複数の話を並行して進める脚本の巧みさ。例えば、夫(小日向文世)と愛人ヴロンスキー(渡辺圭祐)とそれぞれとアンナ(宮沢りえ)が語る場面は、テーブルを挟んで2人の間を行き来しながらセリフが進行する。
色々なキャストがセリフの途中で、客席に向かって本音を吐露するのも面白かった。

2幕野終盤、ヴロンスキーの愛を試すアンナのわがままがエスカレートしていくところ。だんだん嫌な女になっていくのは全く同情できないのに、胸が締め付けられるような思いがしたのは、宮沢の芝居に悲壮感があったからか。ヴロンスキーはよく耐えていたよなあ。

ピアノとバイオリン、コントラバスの音楽や照明の使い方も効果的。

キティ(土井志央梨)とリョービン(浅香航大)カップルの微笑ましさが救い。 


3月11日 ハンブルク・バレエ団「シルヴィア」

菅井円加のシルヴィア。1幕のアマゾネス集団の先頭に立って狩りに勤しむ様は少女というより少年のような勇ましさ。時折奇声を発したりして、乱暴な仕草やぶっきらぼうな感じ。アミンタ(アレクサンドル・トルーシュ)にアプローチされるもの拒むのは、男まさりな女の子が照れてるような。ディアナ(アンナ・ラウデール)に咎められて、許しを乞うも、すぐに次のお気に入りに取って代わられてしまう。
1幕のアマゾネスたちの踊りはそんな感じであまり好みではなかったのだが、ディアナとエンディミオン(ヤコポ・べルーシ)のパドドゥが素晴らしい。とても官能的で、互いの頭を寄せ合うように横たわって手を組むところなど、直裁的ではない情緒にうっとりした。

2幕は黒燕尾(一部タキシードや上半身裸)の群舞。宝塚以外でこんな踊りが見られるとは! その中に一人、赤いベルベットのドレスのシルヴィアの戸惑いや高揚感が際立つ。黒燕尾の男たちに混じって、男装のディアナ。
3幕は時が経って、再開するシルヴィアとアミンタ。共に白髪混じりで、過ぎた日々を取り返すことはできない悲しみ。
アミンタが「森を守ろう」と書いたプラカードを持っているのはなぜ?とか、アムール(クリストファー・エヴァンズ)の白いパンツ(しかも、右は一分丈、左は三分のアシンメトリー)がふざけているように見えるとか、不思議なところもあったけど、全体としてはいい作品だった。
カーテンコールでノイマイヤーが出てくると、客席は総立ち。


3月11日 三月大歌舞伎 第一部

「花の御所始末」

シェイクスピアの「リチャード三世」を翻案した新歌舞伎。40年ぶりの上演だそう。初演は白鴎(当時染五郎)に当てて書かれたそうだが、いかにも高麗屋がらしい芝居だ。

物語は、将軍の座に就くために、足利義満の次男、義教(幸四郎)が邪魔な兄(亀蔵)を罠に嵌め、障害となる人を次々に殺していく。権力のためなら何でもするが、何のために権力につくか分からない、非常な人物が当代幸四郎によく似合う。今までに見た彼の芝居で一番かも。最期は、殺した人たちの亡霊に脅かされ、百姓らの一揆に攻められて自害する。テンポよく飽きさせない構成ではあった。
愛之助が、後に一揆の首謀者役となる安積行秀で活躍。冒頭で暴君義教の怒りにふれ、片眼を傷つけられたまま出てこなくなったので、ちょい役かと思ったがさにあらず。ただ、件ののち追放されて、主君に使える人生から転換したと言いながら、腹を切った義教の首を切ることはせずに、そのまま死ぬに任せたのはなぜだろう?やはり旧主は切れないということなのか、「介錯せよ」という命令に従いたくなかったのか。

千壽が、義満の妾で後に義教の愛妾となる北野の方役で、なかなかいい役のようだが、人物の深みは全くない。ただ、トロフィーのように権力者の寵をうけるだけ。もっと陰謀術数に絡んでほしかった。最後、一条の局役のりき彌と二人並んだのは胸熱。

妹役の雀右衛門。幸四郎を「ちいにいさま」と呼ぶのはともかく、染五郎演じる左馬之助と恋仲になるの、歌舞伎らしい萌えポイント。大丈夫、親子には見えなかった。


2023年3月5日日曜日

3月4日 瑠璃の会 第7回

「加賀見山旧錦絵 草履打の段」
呂秀、呂響、呂萬に駒清。
先輩2人は大分落ち着いてきた感じ。呂秀は岩藤にしては可愛らしい声で、首に合わないのではと思った。もっと低い声で憎々し気なのがいい。尾上の呂響と逆の方が合うのでは。呂萬は初めて聞いたが、役のせいもあってか、落語家のような話ぶり。詞中心で掛け合いの場面なので、義太夫節と朗読劇の違いは何なのだろうと考えた。あまり役に没入しすぎないのが義太夫なのか。

「由良湊千軒長者」
住年・住静。
拐かされた姉弟の悲劇。哀れな境遇が涙を誘う。住年の語りはぐっと義太夫らしい。

「艶容女舞衣 酒屋の段」
住蝶・住輔。
住蝶はドラマのあるいい語り。声が華やかだし、上手い。こういうのが女義の魅力なのではと思うなど。お園のクドキより、父の述懐のほうに拍手があった。やっぱりお園には同情しにくいのか。

「本朝廿四孝 十種香の段」
土佐絵・駒清。
この段は三味線の手が派手なので、駒清の為の選曲か。土佐絵は淡々と語る風だったので、今一つ盛り上がりに欠けた。


2023年3月4日土曜日

3月3日 若手素浄瑠璃の会

「妙心寺の段」

薫・清志郎。
5日前の京都の会より、ぐっとよくなった。薫の語りは言葉が明瞭で、聞きやすい。女性の詞にたると掠れるのが気になった。
清志郎はいつもながらの気合の入った演奏。後半、詞のみで演奏がないところでも息を詰めて、太夫と息を合わせていた。

「袖萩祭文」

芳穂・清馗。
よく声が出ていて、袖萩の詞などしっとりと美しかった。ちょっと綺麗すぎでどこぞのお姫様?という感じだが。お君が賢し気で可愛くなかった。
三味線はなんか気が抜けたようで…。芳穂が盛り上げて語っても、三味線の音で水をかけられるような。