2019年11月7日木曜日

11月7日 永楽館歌舞伎

「道成寺再鐘供養」

当地にゆかりの仙石権兵衛の物語。だが、権兵衛役の愛之助より、清姫役の壱太郎の活躍が印象に残った。

発端と序幕は、安珍清姫、道成寺の鐘供養のくだりを意外にしっかりと。壱太郎の清姫、白拍子花子が見られて眼福。安珍役は宗之助。

二幕でようやく権兵衛が登場。山中の一軒家で暮らす老女(吉弥)と娘(吉太郎)に一夜の宿を求めたところ、実は老女は旅人を手にかけて金品を奪っていたと。安達原のような展開。出刃庖丁を持った吉弥が堂々たる鬼女ぶり。娘は権兵衛に一目惚れして、こっそり逃してしまったために殺されてしまうのだが、吉太郎が愛之助に恋する役をするとは。後から鬼女を退治しに出てくるくらいなら、権兵衛はもっと早く出てきて娘を助けてやれば…と思った。赤い、龍のような頭の巨大な蛇がとぐろを巻いたり、火花を吹いたりと暴れまわる。石見神楽のようだと思ったら、本当に石見神楽だった。

大詰めは再び道成寺。筋隈の愛之助と青隈の壱太郎が対峙する、荒事らしい一幕。清姫の霊の壱太郎は青い隈取が細く、迫力に欠けると思ったら、権兵衛の姿を見て恋心を訴える女の顔を見せたので納得。いわゆる鬼女の顔ではこの展開は無理だろう。が、「安珍様にそっくり」とか言うのなら、発端の安珍も愛之助が演じる方がよかったのでは。

「滑稽俄安宅新関」

安宅の関守、富樫左衛門が関所を通る人に一芸を求める趣向。どこかで聞いたことのある話だが、落語「東の旅」だったか。

富樫の愛之助はなぜか老人の扮装。のっけから、巡礼おつるの當吉郎が笑わせる。下ぶくれの顔は少女らしくなくもないが、いかんせん柄が大きい。すね毛も出てるし、と思ったら、化けの皮が剥がれて、弁天小僧ばりに正体を表す。壱太郎は通人と小桜姫。通人では「壱ネット但馬」と称して、キャリーバッグから豊岡グッズを取り出していつもの宣伝大使。小桜姫では「夜桜お七」に乗って、大衆演劇にも負けないノリノリの踊りを披露。吉弥の梅川、吉太郎の忠兵衛の道行はお得感。吉弥は道成寺での老婆から変貌ぶりが素晴らしく、本役でも観てみたい。吉太郎とは年の差カップルだけど、「親子」と突っ込むほどではなかった。吉太郎の男ぶりにも惚れ惚れ。一芸は、吉太郎が下駄タップで「お祭りマンボ」を踊り、吉弥はりんごちゃんばりの股割りポーズでカラオケを熱唱。折之助は米沢彦八役で、猫の茶碗を一席。上方落語家にこんな人いそうだが、喋りはもう一つだった。愛之助が、国税庁の黒崎の弟とかで、例のオネエキャラを再現したり、千次郎率いるオールフラックスがハカ?を披露したりと、時事ネタを取り混ぜつつ、笑わせた。千次郎が弁慶のポジションで、富樫と押し戻しを演じる場面があったり、歌舞伎のパロディ満載なのが面白いかった。


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