2019年11月30日土曜日

1130 カムカムミニキーナ「両面睨み節」

日本の古代国家や相撲の由来が時空を行ったり来たりしながら展開する。近鉄アート館の三方囲みの舞台で真ん中に土俵らしきものがしつらえられ、トランプ大統領の大相撲観戦や救急救命のために土俵に上がった女性の是非など、時事ネタも織り交ぜつつ、歴史がごちゃまぜになるような感覚。八嶋智人と客演のラサール石井ががっぷり四つに組み合う。
子役の附田瑞姫がよかった。

1130 娘義太夫 豊澤住造一門の会

「由良湊千軒長者 山の段」を住年・住静。二人とも緊張した感じ。

「艶姿女舞衣」を住蝶・住輔。住蝶は風邪で声が本調子でなかったようだが、語る声はしっかり。お園のクドキが聴かせた。

2019年11月28日木曜日

11月28日 近松二題 鶴澤清治の会

「日本振袖始」
織、希、小住に清治、清介、藤蔵。
織はやっぱり朗々と歌い上げて浪曲みたい。三味線は清治のキレのいい演奏が際立つ。涼しい顔して弾いているけど、高度な技術が感じられる。清介、藤蔵とも、いつもの公演より緊張した面持ち。藤蔵は珍しく末席で必死な様子。

「女殺油地獄」
口上は病気休演の呂勢に代わって織。
冥土の近松門左衛門が現代に舞い戻った体で、暗がりから人形が登場。頭巾を被っているけれど多分玉佳。コミカルな動きに合わせた表情が見えるよう。女殺油地獄の制作話など語るのだが、茶屋で二人きりになって着物を脱がせるのは怪しいというのは賛同できず。諸説あるのにあたかも近松が言っているように自説を言わせるのはいかがなものか。

三味線組曲「殺しのテーマ」は清治を真ん中に清馗、清志郎。三連符の連続など、五線譜に書かれたように拍子に納まっているのが今風と思った。

豊島屋は前半が千歳・藤蔵の素浄瑠璃。なんだか急いでいるようで、忙しない。
後半は人形が入って、下手に呂勢の代役の津駒と清治、清馗、上手に靖・清志郎。
「不義になって貸して下され」はともかく、「そんなら油貸して下され」というところの間が詰まっていたように感じた。

途中休憩が10分と短く、9時前に終演したのは新幹線の最終を意識してか。せっかくの会なのだから、もっとゆったり聞きたかった。

1128 日本舞踊の可能性vol.2「信長―SAMURAI―」

第1部はそれぞれのソロ。「遊山」岩田守弘は和太鼓の生演奏とのコラボ。岩田の確かなテクニック。ピルエットの軸がぶれないので美しい。

蘭黄は「メフィスト・ワルツ」。踊り分けが見事。複雑なストーリーは完全には理解できなかったが、老若男女の違いははっきり。おどけたようなのは何かと思ったら、悪魔だった。

「レクイエム」は演技者ルジマトフを見た。天才モーツァルトへのサリエリの嫉妬、苦悩を克明にえ 描く。背景の映像の使い方も美しい。後半、上半身裸で鍛えられた肉体を見せたのは、必要かと思ったが。

「信長」
信長の半生を5場50分ほどで描く。信長役のルジマトフは花道からの登場シーンから王者の風格。蘭黄は斎藤道山と明智光秀。道山の老獪さ、光秀のプライド、危うさを舞で表現。秀吉の岩田が狂言回しのような役どころ。シンプルなセットで、ダンサーの表現力で場を形成するのが素晴らしい。最後は白い衣装のルジマトフが光りに包まれセリ上がる。昇天のイメージか。


2019年11月24日日曜日

1124 金剛定期能

「江口」
永謹のシテ、ツレは宇高竜成、山田伊純、ワキは村山弘。
三番目物の大曲で名曲というのだが、ピンとこなかった。2時間近くの上演時間のうち、前場は1時間弱と短め。間狂言(千三郎)を挟んで、後シテは2人の女を連れて橋掛りから船で登場。舞台に移ってからは、舞が長かったように思った。が、舞台をくるくると回るばかりの静かな舞なので、面白さが分かりにくい。

「千鳥」
忠三郎のシテ、山本善之の主人、山口耕道のり酒屋。千五郎家に慣れた目には、忠三郎は行儀がよく、ちょっと物足りない感じ。金を忘れたフリをして袖をパタパタするのがかわいかった。
隣にいた二人連れのご婦人が題名を「なんて読むの?」と言っていたのだが、ちどり以外の読み方って…?

「大蛇」
素戔嗚尊による八岐大蛇退治。
龍謹のシテ、ツレは宇高徳成、子方の南坊城碧子は宗家の孫だそう。ワキは江崎欽次朗ほか。
解説でも言っていたが、老夫婦は姫の親としては歳を取りすぎ。8人目の末娘とはいえ、どう見ても孫でしょ。
シテは始め、作り物の小屋の中で声を発するのだが、龍謹の声は明朗で聴きやすい。碧子は目鼻立ちがよくかわいいが、緊張したのか、終始不機嫌そうな顔が惜しい。
後場は大蛇と素戔嗚尊の立ち回り、赤毛に赤面の面をかけ、龍のような冠。勇壮な舞で、眼が覚めるよう。


2019年11月23日土曜日

1123 松山バレエ団「くるみ割り人形」

色々な意味で今まで見たことのないくるみだった。
プログラムには細かい文字でびっしりと記されたストーリーによると、クララは特別な少女で、世界を救う使命を持っているらしい…。くるみ割り人形は神様だし、物語を膨らませすぎで、お腹いっぱいな感じ。
クララ役の森下洋子は、70歳超という年齢を考えたら驚異的だが、いろいろシンドイ。あの歳でポワントで立ってるとか、タイツの脚を晒してるとか、全幕の主役を張るとか、前人未到の域に達しているのは確か。だが、アンドウォールが甘いのか5番で立つべきところが6番になっている感じで、緊張感に欠けるし、駆け寄ったり、ジャンプしたりという動きが重い。パートナーの支えがあってようやく成り立ってるのがありあり。少し上を見上げて、にっこりと微笑みを絶やさないのは可憐だが、もはや老嬢の域にあることは隠しきれない。
森下に遠慮してか、他のダンサーも6番になっているようで、インパッセで踊るバレエダンサーって初めて見たよ。
出演者がやたら多いのにも驚いた。舞台のアラを隠すため?と疑ってしまう。芸術を観るというより、森山洋子のお姿を見られれば満足みたいな、信奉者がたくさんいるのだろうなあ。

2019年11月20日水曜日

1120 宝塚星組「ロックオペラ モーツアルト」

礼真琴のトップ就任プレお披露目。フレンチロックのポップな歌と踊りも礼は難なくこなしたが、物語の深みが足りないのは脚本のせいか。モーツアルトが天真爛漫なのはいいとして、父との確執や破滅に向かう様が描き足りない。サリエリ(凪七瑠海)との対立も「同じ音楽を志す者同士」とか言って、がっちり握手して和解しちゃうのも、なんだかなあ。コンスタンツェ役の舞空瞳はかわいいし、歌も上手いが、研3だけあって、型どおりにとどまっている感じ。これからに期待したい。
振りはジャズっぽいところはいいのだが、R&Bっぽいリズムがどうにもダサい。ロックとか、現代ポップ音楽はどうも相性が悪いよう。フィナーレでモーツアルトメドレーは宝塚らしい曲調で、踊りもらしくてよかった。ジュースマイヤ役の極美慎がさわやかで目を惹いた。

2019年11月16日土曜日

1116 清流劇場「野がも」

悲喜劇ということだが、喜劇性があまり感じられなかったのは演出のせいか、役者のせいか。嘘を受け入れてそれなりの幸せを享受していたエクダル家。正義を振りかざすグレーゲルス(高口真吾)が真実を告げたことで、娘、ヘドヴィク(服部桃子)の死という悲劇に至る。グレーゲルスの高口、ヤルマールの孫高宏ともに、真面目さがあるのだが、それが面白みを生むところには至っていない。グレーゲルスの父、ヴェルレ役が倉増哲州と実年齢とかけ離れていたのもきつかった。老エクダルの藤本英治はセリフが怪しいところもあったが、風情がいい。
舞台に木片が散乱していて、役者が足をとられていたのは演出なのだろうが、あまり効果を上げていなかったように感じた。

2019年11月12日火曜日

11月12日 11月文楽公演 第2部

「仮名手本忠臣蔵」
足かけ8か月の連続上演の締めくくり。

八段目「道行旅路の嫁入」
津駒の小浪に織の戸名瀬、ツレに南都、亘、碩。三味線は宗助、清志郎、寛太郎、錦吾、燕二郎。
登場時、怒ったような表情の織。津駒の小浪とでは、年齢が逆だよなあと思いつつ。義母と娘の道行きって盛り上がらないよなあ。
人形は和生の戸名瀬に一輔の小浪。

九段目「雪転しの段」は芳穂・勝平。酔っ払い由良助の柔らかみが足りないような。

「山科閑居の段」は前が千歳・富助、後が藤・藤蔵。
千歳は前回の東京・国立が良かったので期待したのだが、期待外れ。がなるような語りがどうにも…。
本蔵が登場するところでの床交代は通例だったろうか?ブツリと切られたようで違和感。後がオクリから始まるのも、なんか変に感じた。
後は藤はともかく、藤蔵が熱演。藤は自由に語っているのはよいのだが、義太夫らしくなくなっている気がする。

十段目「天川屋の段」は口が小住・寛太郎、奥が靖・錦糸。
小住の語りは時間を気にしているのかせわしない。世話の場面だから、重々しくなりすぎてはいけないのだろうが、間尺があっていない感じがした。
靖は義兵衛が良く似合う。
錦糸の復曲で102年ぶりの全編上演。妻や子どもとの逸話が盛り込まれ、物語に広がりがでて面白かったが、分割上演で体力に余裕があったから楽しめた。通し上演のラスト前に1時間も、本筋ではない話を聞かされたら、正直しんどいと思った。

十一段目「花水橋引揚より光明寺焼香の段」は睦の由良助、津国の平右衛門、咲寿の若狭之介、碩の力弥・諸士と配役表にはあるが、それぞれ複数役を語っていた。三味線は清丈。睦に安定感が出てきた。
通常はどちらかのところを続けて上演。両方やっても25分くらいだが、なくてもいいおまけのような場面ではある。

2019年11月10日日曜日

1110 KUNIO15「グリークス」

休憩込み10時間15分の長丁場!にもかかわらず、長いと感じさせないのはライトな作りだからか。一幕ごとに見せ方が変わり飽きさせないのと、随所に織り込まれた笑い、意表をつく演出がいい刺激になっているのだと思う。

登場人物も多くて、とても全てを語れないが、アガメムノン役の天宮良、プリアモス/老兵役の外山誠二、ヘカベ役の松永玲子らが重厚な演技で要所を固めた。若手では、エレクトラ役の土井志央梨が迫力のある演技。面白かったのはヘレナ役の武田暁、ポリュメストル/アイギストス/エジプト王役の箱田暁史、タルテュビオス/テュンダレオス役の森田真如ら。
若手のなかには、長セリフが辛い人もいたが、総じて面白く観た。



2019年11月9日土曜日

1109 野生能」火魔我蹉鬼、洲波羅、富久破裸」

森村泰昌による、三間四方の舞台、鏡板の代わりのスクリーンと、能の形式を取り入れた舞台。冒頭は、戦火に焼かれた街並みを美しいと感じた美術家や坂口安吾の随筆を引用。黒いジャンパーとスラックス、黒のキャップという出で立ちの森村と太田宏が黒のキャリーケースを引いて現れ、シンメトリーな動きで、ケースから譜面台や台本を取り出してセッティング。正座をして語るのは朗読劇のよう。釜ヶ崎についての思い出を語る森村に、あいりんセンターの霊が忘れられようとしている労働者の無念を語る。スクリーンには、閉鎖数日前のセンターの模様が淡々と写し出される。
二幕は京都。地元の小学生による歌、森村と太田が掛け合い漫才のような場面も。途中、森村が背広姿で町下路地蔵という政治家?に扮し、下町とはと一席ぶつ。三幕は海の映像。船に乗った森村がどこかへ上陸するところで幕。
野生「能」と銘打ってはいるが、能らしさはあまり感じられなかった。

2019年11月8日金曜日

1108 宝塚雪組「はばたけ黄金の翼よ」

1980年代の少女マンガが原作だけあって、キュンとするポイントがたっぷり。王家の娘ながら、父や家の都合で人生を決められることをよしとせず、自由を求めるところや、ぶっきらぼうで意地悪な男が実はヒロインを愛しているとか、一線を超えた男の友情とか。
望海風斗は皮肉っぽい笑みや、強引な振る舞いが、少女マンガのヒーローらしい。真彩は抜群の歌唱と繊細な演技で共感を誘うヒロイン像を描出。王の幼馴染で影のように付き従う朝美は男同士の愛憎がもっとあってもいいかも。
昭和感溢れる音楽や踊りは古くさいが、ベルばらほどではない。脚本の小柳奈津子の功績もあってか、再演に耐える作品だと思った。

後半のショーは「ミュージックレボリューション」
大劇場の半分くらいの人数であることを感じさせない、華やかなショー。歌が上手いトップだと、安心して楽しめる。


2019年11月7日木曜日

11月7日 永楽館歌舞伎

「道成寺再鐘供養」

当地にゆかりの仙石権兵衛の物語。だが、権兵衛役の愛之助より、清姫役の壱太郎の活躍が印象に残った。

発端と序幕は、安珍清姫、道成寺の鐘供養のくだりを意外にしっかりと。壱太郎の清姫、白拍子花子が見られて眼福。安珍役は宗之助。

二幕でようやく権兵衛が登場。山中の一軒家で暮らす老女(吉弥)と娘(吉太郎)に一夜の宿を求めたところ、実は老女は旅人を手にかけて金品を奪っていたと。安達原のような展開。出刃庖丁を持った吉弥が堂々たる鬼女ぶり。娘は権兵衛に一目惚れして、こっそり逃してしまったために殺されてしまうのだが、吉太郎が愛之助に恋する役をするとは。後から鬼女を退治しに出てくるくらいなら、権兵衛はもっと早く出てきて娘を助けてやれば…と思った。赤い、龍のような頭の巨大な蛇がとぐろを巻いたり、火花を吹いたりと暴れまわる。石見神楽のようだと思ったら、本当に石見神楽だった。

大詰めは再び道成寺。筋隈の愛之助と青隈の壱太郎が対峙する、荒事らしい一幕。清姫の霊の壱太郎は青い隈取が細く、迫力に欠けると思ったら、権兵衛の姿を見て恋心を訴える女の顔を見せたので納得。いわゆる鬼女の顔ではこの展開は無理だろう。が、「安珍様にそっくり」とか言うのなら、発端の安珍も愛之助が演じる方がよかったのでは。

「滑稽俄安宅新関」

安宅の関守、富樫左衛門が関所を通る人に一芸を求める趣向。どこかで聞いたことのある話だが、落語「東の旅」だったか。

富樫の愛之助はなぜか老人の扮装。のっけから、巡礼おつるの當吉郎が笑わせる。下ぶくれの顔は少女らしくなくもないが、いかんせん柄が大きい。すね毛も出てるし、と思ったら、化けの皮が剥がれて、弁天小僧ばりに正体を表す。壱太郎は通人と小桜姫。通人では「壱ネット但馬」と称して、キャリーバッグから豊岡グッズを取り出していつもの宣伝大使。小桜姫では「夜桜お七」に乗って、大衆演劇にも負けないノリノリの踊りを披露。吉弥の梅川、吉太郎の忠兵衛の道行はお得感。吉弥は道成寺での老婆から変貌ぶりが素晴らしく、本役でも観てみたい。吉太郎とは年の差カップルだけど、「親子」と突っ込むほどではなかった。吉太郎の男ぶりにも惚れ惚れ。一芸は、吉太郎が下駄タップで「お祭りマンボ」を踊り、吉弥はりんごちゃんばりの股割りポーズでカラオケを熱唱。折之助は米沢彦八役で、猫の茶碗を一席。上方落語家にこんな人いそうだが、喋りはもう一つだった。愛之助が、国税庁の黒崎の弟とかで、例のオネエキャラを再現したり、千次郎率いるオールフラックスがハカ?を披露したりと、時事ネタを取り混ぜつつ、笑わせた。千次郎が弁慶のポジションで、富樫と押し戻しを演じる場面があったり、歌舞伎のパロディ満載なのが面白いかった。


2019年11月5日火曜日

1105 地主薫バレエ「人魚姫」

正直、四季の(というかディズニーの)ミュージカルよりよほどいい。感動した。 色彩は似ているところもあるが、フライングを多用したり、逆立った鬘を使ったりしなくても、ダンサーの動きで海中の浮遊感が感じられた。衣装が素敵で、トビウオ(?)のひれがひらひらするのや、小さい子どもたちの黄色い魚の群れが鮮やか。ヒトデ役のコミカルな動き、亀やロブスターの泳ぐ様子など、それぞれが役割を果たしている感じ。 人魚姫役の奥村唯が可憐。オペラ歌手を起用し、美しい声を失うところを表現。1幕の終わり、宙づりになって上へ向かいながら、尾っぽがとれて足が現れる。ラストは、王子を刺そうとして果たせず、海に身を投げた人魚姫が、父王や姉たちに迎えられ、金粉が降り注ぐところで終わりかと思いきや、そのあと、ウィリーの群れに迎えられ、天国への階段に向かう。息を呑む美しさだった。人魚姫は悲劇のほうがいい。 海の魔女役の奥村康介が新境地で存在感を発揮。ドラァグクイーンのようなメイクで、シナを作ったり。女装すると唯とよく似ている。

11月5日 文楽公演

「心中天網島」 織太夫は元気すぎというか、口三味線はがさつな感じに聞こえる。 呂勢太夫病気休演のため、津駒が代役。清治の三味線はやや遠慮気味にも聞こえた。日を追っていくと変わりそう。 希→呂の子弟リレーは、すまん、寝てしまったよ。團七の三味線が、ふんふん唸っていて耳に障る。 咲太夫が回復し、力強い語り。切場語りの面目躍如。「小春さんは二階に寝てじゃ」で上を見上げるのは、どうなんだろう。下男?は面倒くさそうに答えているのではないのかと。 道行は三輪、睦、靖、小住、文字栄。睦が良かった。 人形は簑一郎から簑助に代わると小春が別人のよう。うなだれてじっと耐えているところ、なんとも言えない風情、哀れさがただよう。他の人だと何も考えていないように見えなくもないのに。

2019年11月4日月曜日

1104 全京都洋舞協議会60周年記念公演

「精霊たちの森」

メンデルスゾーンやモーツァルトの曲に乗せ、シフォン素材のパステルカラーの衣装が妖精らしい。石原完二のコンテっぽい振り付けは特に見るべきところがなく、少し退屈。
パック役の少年、石川瑛也の溌剌とした踊りに好感。

「コッペリア」より

古典がベースなので、振り付けはちゃんとしてるのだが、ダンサーのレベルに疑問符が残った。群舞が揃ってなかったり、回転でぐらついたり。

「カルミナブラーナ」

この日の目玉。藤川雅子が運命の女神で、最初はやや硬かったが、後半に向かうにつれ存在感を発揮。ほとんどはだかのような、体の線がでる衣装でも美しく、神秘的なムードが女神役に合っている。途中のコミカルな場面も、しれっとした表情でイタズラを仕掛けるのがいい。
酒場の場面で、ローストチキン?の役に吉田旭。

2019年11月3日日曜日

11月3日 吉例顔見世大歌舞伎 夜の部

「鬼一法眼三略巻」

梅丸改め莟玉の披露。
師匠で義父になる梅玉の知恵内、その弟の魁春の皆鶴姫という配役で、莟玉は虎蔵。瑞々しい若衆姿で、ひたむきな姿勢が好感度高し。皆鶴姫が虎蔵に恋心…というので年の差が気がかりだったが、魁春が若々しくてびっくり。
鴈治郎演じる湛海が登場したところで口上を挟む。梅玉、魁春、芝翫、鴈治郎という少人数だが、心温まるいい口上だった。

「連獅子」

幸四郎・染五郎親子の連獅子は去年の南座顔見世以来1年ぶり。染五郎は多少手馴れた感はあるが、その分がむしゃらさが薄れ、かといって技術的にはそれほど成長は感じられず。
争論が萬太郎と亀鶴という、アンバランスなコンビ。2人ともちゃんとしてるのだが、ならではの面白さはなかったかも。

「市松小僧の女」

時蔵が演じるお千代は男勝りの剣術の達人で、ひょんな事から出会った年下の巾着切り、又吉(鴈治郎)と恋に落ちて、所帯を持つ。女相撲のような、堂々とした時蔵の姿が珍しく、鴈治郎が紅顔の?美少年というのも面白い。カタギになったと思った又吉が、手グセを抑えられずスリをしてしまい、そんなことなら指を切ってしまえばと千代が出刃包丁を持ち出す覚悟を見た同心与五郎(芝翫)が見逃してやり、2人が涙ながらに抱き合って終わりというのは、少々後味が悪い。ちゃんと改心して、ハッピーエンドにしてほしかった。
秀太郎演じるお千代の乳母おかねが、庶民的な小母さんながら、皮肉の効いたチャーミングさがあった。

2019年11月2日土曜日

11月2日 11月歌舞伎公演「通し狂言 孤高勇士嬢景清-日向嶋-」

9月の文楽との連続企画。吉右衛門が景清で、日向嶋な前段にあたる東大寺の場面で頼朝と対峙する場面が加わって、前後関係が分かりやすいという触れ込みなのだが。平家の驕りが没落の理由とか、頼朝に諭されただけで、はいそうですかと引き下がるようなららそもそも復讐など企てないのでは…?とか、白旗を引き裂いたくらいで恨みが晴れるの?とか、逆に腑に落ちないのは私だけだろうか?
神崎揚屋は、強欲な女房と気弱な旦那の対比が面白く、糸里か16歳というのに驚いたが、雀右衛門は健気さがあった。
肝心の日向嶋は何故かウトウトしてしまった。盲目の景清と糸里のやり取りが動きが少なく、つい目を閉じてしまったのが敗因か…。初日だったので、吉右衛門のセリフか所々怪しかったのま痛かった。娘が百姓に嫁いだと聞いて怒ったり、実は女郎に身を売って金を工面したと聞いてころっと態度が変わったりというのも、いろいろ腑に落ちないところではある。