瀬戸山美咲作・演出で大竹野正典の半生を描く。妻の小寿枝が一人で登山している場面から始まるのは、「山の声」の冒頭を思わせる。高校時代の映画製作から始まり、横浜の専門学校、卒業後は関西に戻り、結婚。バイトをしながら劇作に打ち込む姿と、海難事故で亡くなった日の模様が織り交ざり、テンポよく芝居が進む。劇作に行き詰り、山登りに打ち込む日々、ブランクの後、登山家をモデルにした「山の声」を書き、絶賛された直後の死。壮絶な人生が2時間余りで描かれるのは濃密な時間。
自信がないのか、評価されることへの不安か、戯曲賞で入選しても専業の劇作家になることを拒み、技師として働き続けることにこだわる。大竹野の作品を世に知らしめようと、戯曲賞に応募したり、専業のプロになることを望む小寿枝へとの諍いの様子が壮絶で辛い。業の深い人だなあというか。演劇をするということは、客を入れて公演するということは、他人に認めて盛りたいからではないの?作家というものは多かれ少なかれ、身勝手なものなのだろうけれど、妻という理解者への甘えなのかもしれないけれど、私はとても付き合いたくないと思ってしまった。
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