大竹野正典の遺作で、槍ヶ岳登山で命を落とした大正〜昭和初期の登山家加藤文太郎がモデル。最後の登山の様子に絡めて、山登りの人生が回想される。男2人だけのセリフ劇で、登山にさして興味野ない者としては途中退屈に感じるところもあったが、吹雪のなか進むラストは圧巻。
雪山の単独登頂を数々達成し、世間にもてはやされていた“ヒーロー”について、単に金がなくて案内者を雇えなかったことや、単独登山は人付き合いが悪くてチーム行動ができないから単独登山だったこと、たまたま居合わせた他所のパーティーのルートを辿ってただのりと批判されていたこたなどと負の部分も描いていたのが興味深い。最後の登山では、加藤を先輩と慕う吉田富久と2人で行動したため、相手への見栄から判断を誤ったという描写。途中の山小屋に装備を残し、わずか2日分の食料だけで頂上を目指したのは驕りではなかったと指摘する。犯罪者を多く描いてきた大竹野だけに、山に魅せられた男たちを美化するでなく、むしろ心の闇を暴露するかのよう。そのせいもあって、山家のロマンに少しも共感できなかった。
大竹野としては、山登りと劇作を重ね合わせるところもあったよう。けど、妻子のために山で死んではいけない、と言われながら、結局は死んでしまったのだよね…。
劇中では名前を呼んでいるのだが、役名は登山者1(戎屋海老)、登山者2(村尾オサム)。
2019年5月27日月曜日
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