2018年5月21日月曜日
5月13日 コクーン歌舞伎「切られの与三」
木ノ下歌舞伎の木ノ下裕一が補綴で参加。歌舞伎の原作だけだけでなく、落語や講談からもエピソードを引いて創作した部分があったそうで、なるほど木ノ下っぽくない部分も感じられる脚本だった。与三郎の生母?を殺した容疑でお縄になるところや、島流しになる下りがやや唐突。演出の串田和美が「夢と現実の境目がわからないような」という方針だったそうで、けむに巻かれたような気分だった。久次の唐突な告白に「ええっ!?」と突っ込むところや、傷の特効薬を使わずに、過去の傷ごと引き受けて生き続けようとする与三郎は現代的。舞台や客席を走り回る与三郎の疾走感は感じられた。
「しがねえ恋の情けがあだ」など、歌舞伎でおなじみのシーンやセリフを楽しめる一方、玄冶店の後日談で転落していく与三郎の人生や、次々と頼る男を変えるたびに変質していくお富のしたたかさなど、歌舞伎では見られない展開が興味深かった。与三郎の七之助は、冒頭のたよりないが二枚目のボンボンぶりがよく似合うが、傷を負って手ぬぐいをかぶったところなどは女形らしさが抜けきれず。お富の梅枝は強かないい女ぶり。笹野高史は与三郎づきの下男忠助役で、いつもの敵役とちがって、七之助との絆が感じられる情のある演技にぐっときた。
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