2017年12月11日月曜日

1210 エイチエムピー・シアターカンパニー「盟三五大切」

客席に向かって扇状に広がる舞台には黒いラインが貼ってある。伸縮するラインで部屋を区切ったり、生死の境を現したり。小道具はほとんどなく、黒い紙で畳や煙草盆、食器などを表現。衣装は「四谷」と似たデザインだが、こちらは黒ずくめ。源五兵衛、小万、三五郎の3人のみが白塗り。役名や場面などの映像は床面に投じる。「本心」がキーワードのようで、源五兵衛が小万のために100両を与えるところや、八右衛門が源五兵衛の身代わりにとらわれるところ、意に反して義士に列せられるところなどで「本心」が語られる。原作と異なり、三五郎が源五兵衛の生き別れた息子としたのは、人物関係を簡潔にするためだろうか。忠義のために思ってしたことが実は主君を損なうことだったという皮肉がぼやけるように感じた。 女ばかりの妖狐組は高安美帆の源五兵衛。小柄で華奢なのは源五兵衛という役には不利と思う。小万の林田あゆみも期待が高すぎたのか、ちょっと物足りなかった。2人とも白塗りのメークがそぐわない感じで、もうちょっと格好良く/可愛くできたのではないかとモヤモヤした。ラストちかく、小万の首を落としたところは、照明の効果もあって顔が白く浮き上がり、美しい舞台だった。八右衛門の水谷有希が恰好いい。思えばぶれずに忠義を貫いたのはこの人だけで、作中で一番格好いい役かも。芸者菊野との変り身の早さも鮮やか。 男ばかりの鬼組は澤田誠の源五平衛に岸本昌也の小万。澤田の男前ぶりが源五平衛にはまり、はじめは義のためにと自制していたのが、小万の「本心」と言われて心が揺らぐところなどの心理描写が明快だった。岸本は四谷のお梅の時にはやしていた髭を剃ったせいではなかろうが、こちらのほうが役らしかった。そしてなぜか、こちらも八右衛門(高橋絋介)が格好良かった。

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