2016年8月29日月曜日

0828 女流義太夫 竹本駒之助の至芸

「良弁杉由来 二月堂の段」 駒之助を生で聞くのは初めて。やはり生のほうが迫力があるが、渋い声は私の好みではないのかものすごい感動というほどではなかった。生き別れた母と息子の30年ぶりの再会という感動的な話で、母の情感は女性のほうがもしかしたら適しているのかも。クライマックスに向けての盛り上がりはさすがと感じさせた。周りではすすり泣く人が多かったので、響く人には響くのだろう。 三味線は津賀花。軽いというのではないが、キレがよく、気持ちのいい音だった。

2016年8月28日日曜日

0827 堀内元バレエUSA Ⅵ

「ヴィヴァルディ・ダブル・チェロ・コンチェルト」 8人の女性と4人の男性、華やか。 「チャイコフスキー・パ・ド・トゥ」 木村綾乃、末原雅広。ピルえっとの後ふらつくところもあったが、総じて高いテクニックで見応えがあった。 「Bloom」 森ティファニー、上村崇人ほか。 スタイリッシュな衣装で、おしゃれな振り。 「ロマンティーク」 吉田都、堀内元ほか。 ジャジーな音楽で、楽しい雰囲気。男性の黒い短パンのような衣装が…。

2016年8月27日土曜日

0827 虚構の劇団「天使は瞳を閉じて」

防護服に身を包んだ人たちの体に放射能汚染などの文字が次々に映される。不穏な雰囲気のなか場面が変わると、放射能汚染地域から出るように指示する電力会社(?)の職員と、中に入れろという人々の押し問答。「安全だ」と言っているのに、急いで避難せよという矛盾。そうこうするうち、サイレンが鳴り、街は透明な壁に封鎖される。 時が過ぎ、放射能汚染で地球上の人類は滅亡。透明な壁に逆に守られた街の中の人だけが生き残ったが、人々は壁の外に出たいと思っている。現代社会のあちこちで見られるような皮肉。幸せだった人々がいつの間にか不幸に向かっている。 ギャグや踊り、歌が織り込まれ、テンポよく進んでいく舞台。振りも格好いいし、踊りもよくそろっている。面白かったとは思えども、この作品が伝えたいことは何だろうとしばし考えてしまった。福島原発事故のあとだけに、原発との関連を考えてしまうが、別に原発でなくてもいい話かも。人類が滅亡しそうな要因として最有力なだけで。 役者のなかでは、芽の出ないミュージシャン、ケイを演じた佃井皆美が印象的。ギャグが手だれていたのと、踊りが上手かった。

0826 ムムム!文楽シリーズ 中之島文楽

「日高川入相花王」 睦、希、亘と喜一郎、清公、清允。睦は高音がかすれるのはもう癖になっているのだろうか。 「曽根崎心中 天神森の段」 英、希、亘に清介、清公、清允。英の声は後ろまで聞こえたものの、舌先で転がしているようで胸に迫るものがないのだなあ。人形は勘十郎のお初に玉男の徳兵衛で、ある意味鉄板。

0825 若手素浄瑠璃の会

「伽羅先代萩」 竹の間の段  靖太夫と燕二郎。靖は前半は硬かったが後半は声もよく出てきて悪くなかった。健気な子どもがいい。気のせいか、背後に嶋太夫を感じた。 御殿の段  芳穂太夫と清丈。いやもう、情感あふれる語りで本公演にかけてもいいのではというくらい。先代萩というと玉三郎をイメージしてしまうのだが、それとは違った堅実な政岡だった。

2016年8月25日木曜日

0824 第26回上方歌舞伎会

「夏祭浪花鑑」 女形は総じて良かったが、立ち役は今一つの印象。 お辰の千寿は期待通り。粋ないい女っぷりで、セリフの言い方など吉弥を思いだした。「こちの人の好いたのは…」のくだりが出ないなあと思っていたら、引っ込みのときに花道の上で。ちょっとあっさり目だけれど。 三婦女房おつぎの當史弥がよかった。 女形初挑戦という娘おてるの未輝は声が地声のまま?吉太朗の若旦那と若々しいカップル。 団七九郎兵衛は松十郎。化粧のせいか海老蔵のように見える。端正な二枚目なせいか、市井のやんちゃな男である団七にはちょっと似合わないように思った。ざんばら髪になったラストは落ち武者のようで。 義平次の千次郎は年齢的に無理があるのは仕方なく、拵えで薄汚さを出す工夫はしていたが、やはり爺には見えず。 三婦の當吉郎は数珠を切る前の「やかましい」など声はよかったが、動きが硬いというか、窮屈そう。 「五条橋」 牛若丸の翫政、弁慶の光。光は弁慶にしては小柄で大きさがほしい。 「団子売」 松四郎の杵造と當史弥のお臼。中堅らしく手だれた感じ。

2016年8月23日火曜日

0821 内子座文楽 午前の部 「仮名手本忠臣蔵」

三段目 下馬先進物の段は靖太夫・清馗 何でか、靖の語りの裏に嶋太夫が透けて見えた。時代物は性に合うのか、安定感がある。 殿中刃傷の段は呂勢太夫・藤蔵 今回の公演で一番の聞き応え。意地悪な師直の憎らしいことといったら!判官の無念、悔しさが何倍にも膨らんだ。呂勢の大笑いはもしかしたら初めて聞いたが、声の重々しさはないものの、長い時間をかけて会場を釘付けにしたのはさすが。三味線はあまり手数が多くはなく、じっと待っているところが多いのだが、要所要所で効果的な一音。判官が切り掛かってからはアグレッシブな音で盛り上げる。師直の人形は勘十郎で、表情豊かに憎たらしい。判官の和生も動き少なく堪える様がよかった。 四段目 塩谷判官切腹の段は津駒・宗介。 黒紋付に黒の裃という渋い出で立ち。 判官切腹の場合など、床なしの静寂のなか人形の動きだけで進めるシーンが多くあったので、少々間延びする印象。城明け渡しの段の一言を待ちわびてしまった。

0820 内子座文楽 午後の部 「仮名手本忠臣蔵」

五段目 山崎街道出会いの段は希・清公。 会場のせいか、三味線の音が軽く、語りもあっさり。 二つ玉の段は芳穂・團吾。 芳穂の安定感が増している。定九郎の低音がいい。 人形は玉男。歌舞伎風の、黒羽二重の拵えだったが、文楽の定九郎は山賊姿がいいと思う。歌舞伎では言葉少なく一撃で惨殺し、「50両」と一言だけ言うのが格好いいのであって、文楽のようにベラベラしゃべる奴にあの拵えは似合わない。 六段目 身売りの段を睦・清志郎。 睦は高音が掠れぎみなのが惜しい。 早野勘平切腹の段は英・團七。 会場が狭いせいか、声はよく聞こえたが、何でか語りが頭に入ってこず。勘十郎の寛平は腹を切るときに大きな動き。迫力はあるけれど。

0819 BENT

いい舞台だろうと予想していたけど、それを上回るものだった。主人公マックスが享楽的な日々を送る前半部、一夜の相手との明け透けな性描写に驚く。中島歩はかわい子ちゃんタイプのゲイを好演。グレタ役の新納慎也はきれいな脚で、スカート捌きが美しい。 佐々木蔵之介は熱の入った演技で、収容所でのホルスト(北村有起哉)のセックスシーン(といっても2人並んで直立したままなのだが)が圧巻。極限状態で心を通わせる2人が切なかった。ホルストが最後の抵抗をして銃殺された後、マックスはゲイを現すピンクの星がついた囚人服に着替え、電気鉄線に向かう。護送列車の中で、ルディが殺されかけているときには見捨てて自分の命を守ったのに、ホルストが死んだあとを追ったのは、本当の愛に気づいたから?

2016年8月13日土曜日

0813 葛河思想社「浮標」

休憩を挟むものの4時間余りの舞台だが、意外と長いとは感じなかった。 単純化してしまえば、結核の妻が死ぬまでの話なのだが、主人公の画家、久我五郎(田中哲司)の演技力のせいなのか。迫りつつある妻の死に何もできない無力感から、芸術と生活の間で苦悩する中共感できるセリフが沢山あった。妻、美緒(原田夏希)の透明感、母や妹、弟の様はこんな人いるよなあというリアリティがあった。

2016年8月12日金曜日

0811 エトワールガラ2016

オペラ座のダンサーはスタイルが何しろ美しく、ほれぼれと見た。技術的には、もの凄い、というほどではないと思うのだが、容姿が美しいということはバレエの要素の一つなのだ。 レオノール・ボラックとジェルマン・ルーヴェのペアが若々しくフレッシュで好感。 「ランデヴー」は大人っぽくスタイリッシュな踊り。ラスト、剃刀で首を切りつけるのが衝撃。 「ル・パルク」の、女性が首に抱き着いた格好でぐるぐる回るところは、いつもハラハラしてしまう。 「ラ・シルフィード」 レオノール・ボラック&ジェルマン・ルーヴェ   「ランデヴー」 アマンディーヌ・アルビッソン&バンジャマン・ペッシュ   「See」 シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ   「シルヴィア パ・ド・ドゥ」 ローラ・エケ&ユーゴ・マルシャン 「ロミオとジュリエット」 レオノール・ボラック&ジェルマン・ルーヴェ (マドリガル) ドロテ・ジルベール&ユーゴ・マルシャン (バルコニーのパ・ド・ドゥ) アマンディーヌ・アルビッソン&マチュー・ガニオ (寝室のパ・ド・ドゥ)    「病める薔薇」 エレオノラ・アバニャート&オードリック・ベザール 「人魚姫」第1幕よりパ・ド・ドゥ シルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコ  「それでも地球は回る」 〈女性版世界初演〉 アマンディーヌ・アルビッソン   「With a Chance of Rain」より 〈日本初演〉 ローラ・エケ&オードリック・ベザール ドロテ・ジルベール&マチュー・ガニオ   「ル・パルク」より“解放のパ・ド・ドゥ” エレオノラ・アバニャート&バンジャマン・ペッシュ

2016年8月11日木曜日

0810 空の驛舎「ただ夜、夜と記されて」

痛いというか、辛い芝居だった。精神を病んだ人の思考はこうも辛いものなのだろうか?ファンタジックに、と演出家は言っていたが、夢の世界が私にはどうにも受け入れ難くしんどかった。主人公がなんで、今のままでいいと悟るのか。もう少し生きたいと思うのか。少し唐突な気がした。だって、状況はなにも変わっていないのだし。あんな、先生の一言で救われるなら、もっと早くに楽になっていたのでは?

2016年8月8日月曜日

0805 空晴第15回公演 「ここも誰かの旅先」

小さな誤解が誤解を生んで、もどかしさが笑いになるという、いつものパターンではあるのだが、今回はとても面白く、何度も笑った。古いアパートに引越してきた初老の男・藤堂に南河内万歳一座の河野洋一郎、手伝いに来た妙にハイテンションな男に太田清伸という2人のゲストがよかったのか、テンポというか、間なのだろうか。藤堂を「とうさん」と呼ぶことや、顔の似ていない兄弟の血のつながっていないことが暴露されたりと、ありえへんやろ、と突っ込みたくなるような展開なんだが考える間もなく笑ってしまった。 母と伯父との関係を疑っていた甥(上瀧昇一郎)との関係修復をうかがわせるラストに余韻があった。

0807 林家たい平独演会 「たい平ひとりvol.7」寝床!寝床!寝床!

まずは古典の「寝床」。番頭が長屋の一人一人のこられない理由をたっぷりと語る。病気だったり、臨月だったり、急な仕事で手が離せなかったり…。実際に義太夫を語るところはなかった。 くまざわあかねの「寝床」は婚活。小学4年の息子がいるのを言い出せない女と、親父ギャグが止まらない男。なぜか大阪弁の息子が健気で、ええ話に仕上がった。女とその友人のガールズトークもいい感じにおばちゃんぽくて面白かった。 小佐田定雄の「寝床」は怪談。流しの「寝床屋」の言う「安らかな眠り」というのがそもそも怪しい。てっきり寝たら最後二度と起きられないのかと思ったら、意外にスプラッタホラー。3作のカラーがまるで違うので面白かった。

2016年8月7日日曜日

0806 下鴨車窓「旅行者」

町から追われてきた3姉妹。父の兄弟である伯父を頼ってきたのだが、教えられた住所はすでにほかの人が住んでおり、幼いころに養子に出されたというもう一人の妹、紛争(?)を逃れるときにい生き別れになったさらに別の妹が現れ、混乱する。父は伯父に「3姉妹」の分しか切符やお金を用意しておらず、姉妹として暮らしていた3人のうち2人は偽物か思い込みということになると指摘する弁護士。父からの手紙という「証拠」がある後からの2人と違って、証拠となる書類のない3人は法的には認められないというのだ。私たちが信じているものが、実はもろいものだということを考えた。

0806 納涼茂山狂言祭2016

丸石やすしのお話から。フランクな話しぶりが親しみやすく面白い。舞台は演者と観客で作るもの、面白くてもつまらなくても半分の責任は観客に。樋の酒の竹は茂山家では丸のまま使う(野村は半分に割ったもの)といううんちくも。 「樋の酒」 太郎冠者と次郎冠者、そこまでして酒が飲みたいか。太郎の宗彦が樋を伝って注いだ酒に浮いたごみをとる様子など細かい演技で笑わせる。あきらの主人、千三郎の次郎。 「磁石」 茂の田舎者と童司の男が息の合った様子で楽しそう。田舎者なのだが、したたかで、世情にたけたはずの男が翻弄されるのが爽快だ。ちょっとばたばたしすぎの感もあるけれど、ばかばかしいお笑いなのでそれもありか。磁石の機能というか、役割というか、「毛抜」とは違うのね。 「死神」 落語が原作なのだが、ちょっとダイジェスト版な感じ。確かに何人もの病人を診るのは狂言では冗長だ。 主人公の男を千五郎。とぼけた雰囲気が笑いを誘う。金持ちの重病患者を診察して唱える呪文が、どこかで聞いたような鼻歌で、しまいには「フレー、フレーフレーフレー」(←阪神タイガースの応援歌)。もう自由すぎて、笑いが止まらない。 最後、男の命のろうそくが消えてこと切れてしまうのだが、しばらくするとむくりと起き上がる。狂言は自分で歩いて引っ込まなければならないから仕方ないのだけど、少し違和感があった。

0806 ピッコロ劇団ファミリー劇場「オズのおじさんやーい」

「オズの魔法使い」よりということだが、ほぼオズの魔法使いのダイジェスト版のような。 竜巻に巻き込まれる幕開き、天井から何枚もの布が降ってきて花畑?を現すなど気の利いた演出。 「にじからおじへ」のような言葉遊びは子どもには楽しいのかな。 ドロシー役の樫村千晶は少女っぽい可憐んさがもう少しほしいが、歌が上手い(というか高音が出ていた)。

2016年8月2日火曜日

0801 第二回あべの歌舞伎「晴の会」

「伊勢参宮神乃賑」 落語「東の旅」を題材に、清八(松十郎)と喜六(千次郎)のドタバタ道中。 千寿が煮炊屋の婆から、遊女、狐と多彩な役を演じ、芸達者ぶりを発揮していた。 途中、勧進帳のパロディなどの見せ場も。 佑次郎とりき弥も加わり、にぎやかな舞台ではあったが、約2時間の間ではダレるところもあった。