2021年5月17日月曜日

5月16日 文楽公演 第三部

 「摂州合邦辻」

中を睦・勝平。声はよく出ていたのだけど、何か制御されていない感じで聞き苦しい。講中ががやがやするのをチャリっぽくしようとしたのかもしれないが。

前は錣・宗助。なぜか心地よく眠くなってしまい…。「惚れてもらふ…気」がかわいかった。

後は呂・清介。合邦の「これが坊主のあらうことかい」で一度びっくりするような大声だったけど、ほかは節約モード? 玉手に鳩尾を切り裂いて…と頼まれたのを入平に振るところなど、コントみたいで、客席の笑いを呼んでいた。ここはうろたえたあまり突飛なことを言ってしまうのではないのか。

人形は和生の玉手は錯乱しすぎないのがよい。「蹴殺すぞ」では蹴らず、その後の取っ組合いで脚が出ていたのは工夫か。だいたいあそこで笑いが起こるからねえ。合邦の玉也、合邦女房の勘寿は適役。勘寿はもう婆と同体に見えた。紋臣の浅香姫が可憐、俊徳丸の簑紫郎もよかった。総じて人形はよかった。


「契情倭荘子」

蝶の道行き。織の助国、芳穂の小巻、南都、亘、碩のツレ。三味線は藤蔵、清馗、寛太郎、清公、清允。

パステルカラーの舞台に華やかな音色。織は気持ちよさそうに歌っている。

人形は玉助の助国、一輔の小巻。玉助の右手の二の腕がなくなっていたのが気になって気になって…。景事は所作が目立つから。一輔と並ぶと特に。

2021年5月16日日曜日

5月15日 五月大歌舞伎 第三部

 「八陣守護城」

吉右衛門が病気休演のため、佐藤正清は歌六。…だったのだが、拵えのせいか歌六に見えず戸惑った。雛衣の雀右衛門は琴の演奏がたどたどしい。途中から、下座が加わっていたよう。種之助の轟軍次、吉之丞の鞠川玄蕃。20分あまりの短い演目なのに、意識が飛んでしまった…。


「春興鏡獅子」

菊之助の弥生が充実。﨟󠄀たけた美しさ、麗しさに、確かな芸。踊りの名手はほかにもいるけれど、見た目が伴うとより目に楽しいのは否めない。自らの意志で手足を動かしているというより、内からの衝動に突き動かされるような舞いに引き付けられた。胡蝶の精に亀三郎と丑之助。懸命に舞うのがかわいらしい。亀三郎のほうが少しお兄さんなのか、足腰がしっかりしているように見えた。

2021年5月13日木曜日

5月12日 渋谷・コクーン歌舞伎「夏祭浪花鑑」

 緊急事態宣言で中止になっていた公演が再開された初日のチケットが運良く取れて参戦。(昼の部もあったようだが、夜の部)コロナ禍の鬱々とした気分を晴らすにはもってこい。正直、前半は失敗したか…と思っていたのだけれど、最後の屋根の場でスカッとした。

客入れの時から舞台の幕は開いていて、役者たちが行ったり来たり。市松役の長三郎が走り回っていたり、町人たちが小芝居をしたりと楽しませる。開演時間が近づくと、神主を中心に役者が囲み、成功祈願のお祓い。勘九郎と松也は拵えの途中といった体で、現実と芝居の世界が重なったような演出。

前半は笹野高史を狂言回しに、登場人物や状況を説明するのだが、時間短縮のためかちょっとせわしない。勘九郎の団七は、父・勘三郎の団七を彷彿とさせる。…というか、真似しているように見えたし聞こえた。ただ、江戸の団七だなというのが残念な点。どうしても、スッキリ格好良くなってしまうのだ。大阪弁が特に不自然というわけではなかったと思うのだが(イントネーションが?と思うところはいくつかあったけど)、なんかこそばゆい。勘三郎のは愛嬌でカバーされていたものが、勘九郎の真面目な性質があだになった気がした。

泥場は本水を使っていたけれど、舞台転換にあまり時間を取らない工夫か泥の量は少なめだったよう。前半は蝋燭をかざして照明にしていたが、殺しのクライマックスでは黒衣が手持ちのスポットライトで下からあおったり、影を印象付けたり。照明で情景を描く現代劇の手法だけれど、従来の歌舞伎の型がしっかりしているので、少々くどくも感じた。

2幕の九郎兵衛内の段からは、あまり歌舞伎ではかからない場面なので目新しさがあったのと、団七と徳兵衛の友情が、大立ち回りの中で描かれ、息をつかせぬ展開。逃げ場がなくなり、ストロボライトに照らされた2人が走る姿がストップモーションのように見えた。終演後はカーテンコール1回では飽き足らない観客の拍手が続き、すでに化粧を落とした勘九郎がガウン姿であいさつ。久しぶりの生の舞台を堪能した。

松也は徳兵衛とお辰の2役。徳兵衛は前にも江戸風のを見ていたので想定の範囲内。お辰はすっきりと粋で格好良かった。

七之助のお梶は二幕の九郎兵衛内の場からが見せ場。情のあるいいおかみさんだった。長三郎は元気いっぱい。楽しそうなのがいい。

2021年5月9日日曜日

5月8日 新国立劇場バレエ団「コッペリア」

 配信のラストを飾った小野絢子・渡邊峻郁ペア。小野の実力を再認識した。圧巻だったのはポワントワークの美しさ。配信だから細かな動きまでよく見えたというのもあるのだろうけど、一つ一つのポーズがお手本のようにキレイだった。演技もよく、少女の愛らしさとちょっとコミカルなところがスワニルダに合っていた。正直、最近の舞台ではあまり演技は…と思っていたので、見直した。コッペリウスの山本隆之との踊りも素晴らしく、今回の4組では一番。渡邊は初役だということもあってか、ちょっと硬かったか。

2021年5月5日水曜日

5月2日、4日、5日 新国立劇場バレエ団「コッペリア」

 緊急事態宣言で無観客開催になった公演を、4組のキャストで無料配信するという太っ腹。

まずは2日の米沢唯・井澤駿、4日の木村優里・福岡雄大、5日の池田理沙子・奥村康祐祐を視聴。それぞれキャラクターの個性が異なって、同じ演目なのに違って見える面白さ。米沢のスワニルダは理知的。端正な踊りでちょっとお姉さんぽい。木村は少女らしいコケティッシュさがありコッペリウスを手玉に取る感じ。池田は少し硬かったようだが、素直でかわいらしい。フランツはちょっと気取った井澤、ハンサムな福岡、陽気な奥村。福岡が普段のノーブルな様子と違って、少し柔らかい雰囲気がよかった。コッペリウスは2日、5日の中島駿野も悪くなかったが、何といっても、4日の山本隆之が素晴らしい。人形とのダンスの流れるような軽やかさ、同じK☆バレエスタジオ出身の福岡と対峙する場面は、なんとも贅沢。生で見られなかったのが本当に惜しい。

5月3日、4日 エリザベート TAKARAZUKA25周年 スペシャルガラコンサート  アニバーサリースペシャルver

 望海風斗のトートが聴きたくて、3日を視聴したのだが、通信環境がわるくて後半が満足に聞けなかったので4日にリベンジ。

望海のトートは、間違いのない歌唱力。役の表現も緻密で、こういうトートが観たかったし、聞きたかった。歌声が会場に広がって場を制圧する感じが黄泉の帝王を体現した。惜しむらくは、対するエリザベートの歌唱力が追い付いていなかったことと、金管が大事なところで調子はずれだったオケ。残念。

エリザベートはact1が夢咲ねね、2が明日海りお。夢咲は少女時代は悪くないと思ったが、大人になってからも子供っぽさが残るというか、皇后らしさにかける感じ。歌唱も高音域が不安定で、1幕終盤のソロの最後の「私に~」はえいやっと発生している風でハラハラ。明日海は女性にはなっていたけれど、エリザベートの苦悩を裏付ける弱さや繊細さのようなものがなく、死に救いを求めなくてもやっていけそう。歌もずっと裏声だったせいか、感情の起伏が感じられなかった。

ルキーニの宇月颯はキャラクター造形がくっきり。フランツの鳳真由は誠実な人柄はいいが、歌唱に難あり。ルドルフは3日の澄輝さやとのほうが4日の七海ひろきより好み。やはり本役での経験があるほうが役作りがしっかりしてるし、澄輝の少し繊細そうなところがルドルフらしいと思った。

2021年5月2日日曜日

5月1日 エリザベート TAKARAZUKA25周年 スペシャルガラコンサート ’16宙組ver

 緊急事態宣言をうけて急遽無観客開催となった公演をオンライン配信で視聴。

'16ということはもう5年前か。朝夏まなとのトートに実咲凛音のエリザベート、蒼羽りくのルドルフ、純矢ちとせのゾフィーという当時のキャストに、望海風斗のルキーニ、北翔海莉のフランツを迎えて、歌唱力がアップ。全体的にもパワーアップした感があり楽しめた。

朝夏トートは退団して声のキーが高くなったのと、歌いだしの音程が安定しないのが難点ながら、感情表現は増したようで、物語にぐっと引き込まれた。ミルクから民衆を扇動するところではぞくっとしたし、フランツとの最終弁論も丁々発止が楽しめた。これは北翔フランツの功績も大きい。

実咲エリザベートは高音域が安定していて安心して聞けるのと、懸命に自由を希求する人物造形に好感が持て、私のなかでは一番のエリザベート。

望海のルキーニは少し気だるい様子。持前の歌唱力で、狂言回しとして作品を引っ張る。北翔のフランツは、結婚し、子どもを持ったことで役への理解が深まったと自身も言っていたが、役の深みが増した。皇帝の謁見の場から、揺れ動く心情表現が見事だった。