2021年5月13日木曜日

5月12日 渋谷・コクーン歌舞伎「夏祭浪花鑑」

 緊急事態宣言で中止になっていた公演が再開された初日のチケットが運良く取れて参戦。(昼の部もあったようだが、夜の部)コロナ禍の鬱々とした気分を晴らすにはもってこい。正直、前半は失敗したか…と思っていたのだけれど、最後の屋根の場でスカッとした。

客入れの時から舞台の幕は開いていて、役者たちが行ったり来たり。市松役の長三郎が走り回っていたり、町人たちが小芝居をしたりと楽しませる。開演時間が近づくと、神主を中心に役者が囲み、成功祈願のお祓い。勘九郎と松也は拵えの途中といった体で、現実と芝居の世界が重なったような演出。

前半は笹野高史を狂言回しに、登場人物や状況を説明するのだが、時間短縮のためかちょっとせわしない。勘九郎の団七は、父・勘三郎の団七を彷彿とさせる。…というか、真似しているように見えたし聞こえた。ただ、江戸の団七だなというのが残念な点。どうしても、スッキリ格好良くなってしまうのだ。大阪弁が特に不自然というわけではなかったと思うのだが(イントネーションが?と思うところはいくつかあったけど)、なんかこそばゆい。勘三郎のは愛嬌でカバーされていたものが、勘九郎の真面目な性質があだになった気がした。

泥場は本水を使っていたけれど、舞台転換にあまり時間を取らない工夫か泥の量は少なめだったよう。前半は蝋燭をかざして照明にしていたが、殺しのクライマックスでは黒衣が手持ちのスポットライトで下からあおったり、影を印象付けたり。照明で情景を描く現代劇の手法だけれど、従来の歌舞伎の型がしっかりしているので、少々くどくも感じた。

2幕の九郎兵衛内の段からは、あまり歌舞伎ではかからない場面なので目新しさがあったのと、団七と徳兵衛の友情が、大立ち回りの中で描かれ、息をつかせぬ展開。逃げ場がなくなり、ストロボライトに照らされた2人が走る姿がストップモーションのように見えた。終演後はカーテンコール1回では飽き足らない観客の拍手が続き、すでに化粧を落とした勘九郎がガウン姿であいさつ。久しぶりの生の舞台を堪能した。

松也は徳兵衛とお辰の2役。徳兵衛は前にも江戸風のを見ていたので想定の範囲内。お辰はすっきりと粋で格好良かった。

七之助のお梶は二幕の九郎兵衛内の場からが見せ場。情のあるいいおかみさんだった。長三郎は元気いっぱい。楽しそうなのがいい。

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