2021年5月22日土曜日

5月21日 国立能楽堂 定例公演

 「蝸牛」

茂山逸平の山伏、網谷正美の主、丸石やすしの太郎冠者。この組み合わせは珍しいのでは。

逸平の間、丸石のとぼけた感じが面白く、久々に声を出して笑った。一部、話を先取りして笑う人がいて白けかけたけど、茂山家の狂言は素直に楽しい。


「西行桜」

梅若実のシテ、ワキは福王茂十郎、ワキツレに和幸ほか、アイは茂山七五三と、充実した配役だったのだが。実が造り物の中に入って舞台に上がるというのは今や恒例で驚かないが、舞台に配置されてから中でゴソゴソやっている様子が幕越しに見えるほど。幕を下ろすと、白い鬘に直面(髭をあしらっていたか)姿。花をあしらった杖を右手に、座ったまま体を左右に向けるのも覚束ない様子。謡にももはや声の力強さはない。「素囃子」の小書きがあり、舞は省略。杖を手に造り物の前に出ると、左手にも杖をもち、2本でようやく体を支えてゆっくりと一回転する程度。杖で床を突く音が足拍子の代わりか。後半はお囃子が奏でられるなか、橋掛かりへ。三の松の前あたりで一言発して、退場するのだが、足が滑って進まず、後見が3人がかりで支えてようよう引っ込んだ。最期はワキが脇正まで出て揚幕のほうを見やり、桜を惜しむ風情。この日のための演出か。当初90分の予定が70分ほどで終わった。いろんな意味で手に汗握る舞台に、いろいろ考えさせられた。

0 件のコメント: